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霊峰富士は見えたのか!? 初開催「Panaracer 富士グラベル」ライター安井が参加レポート

ここ数年で遊びのフィールドをオフロードまで広げつつあるライター・安井行生が、第1回「富士グラベル」に参加。そのリアルな走行体験と、富士山麓の地形・風景がもたらす独自の魅力、そしてイベントの裏側までをレポート。ビギナーにも優しい構成と地域との連携が光る、注目の新グラベルイベントの全貌に迫る。

さすが晴れ男

関東地方の週末は大荒れとなるでしょう。数日前までお天気お姉さんがそう言っていたのに、イベント前日には予報が曇りになり、空模様は回復。主催者であるトム・ボシスさんとトライクルの田渕君幸さんの晴れ男っぷりが発揮された結果だ。5月18日に開催された第1回「富士グラベル」である。

日本一の山にして日本一の集客力を持つ富士山だが、それと自転車をダイレクトに結び付けたイベントはさほど多くない。しかし、傾斜の緩やかな富士山南麓は林業が盛んで、林道が張り巡らされている。近年大きな盛り上がりを見せているグラベル遊びに最適な地域だ。地理的に関東圏からも関西圏からも行きやすいというメリットもある。

そこに着目したトムさんや田渕さんらが地元との調整を続け、業界関係者を招いて何度も試走会やミーティングを行い、「ビギナーに対してグラベル遊びの間口を広げること」を趣旨として実現したイベントである。開催日前日には嵐のような荒天に見舞われ、田渕さんが「準備中に心が折れそうになった」というほどトラブルが続出したというが、注目度は高くエントリー開始から数時間で定員に達したという。

奇跡的な富士山全貌

会場は、富士山麓の雄大な自然の中にある大規模公園「富士山こどもの国」。タイトルスポンサーであるパナレーサーをはじめ、キャノンデールの取り扱いを始めたインターテック、キャニオン、アクティバイクなどのブースが並んでいる。当日朝の会場は深い霧に包まれていたが、第一回ながら業界の期待度の高さが伺えた。

8時にスタートし、まず舗装路で林道入口まで上がっていくと、風が霧を飛ばして青空が広がり、富士山がくっきりと見えた。結局、イベント当日に富士山が見えたのはこの一瞬だけだったが、スタート直後の一番の絶景スポットで富士山が見えるという神がかったタイミングだった。

グラベル巧者のガイドスタッフの先導で、参加者たちとわいわいしながら走り始める。コースはショートコース(約25km、獲得標高約500m)と、ミドルコース(約45km、獲得標高約950m)の2つ。未舗装率は両コースとも約7割だ。

コースの大半は立ち入りが禁止されているエリアで、今イベントのために特別にオープンされる。前日が大雨だったので泥んこ大会になるかと思われたが、富士山周辺を覆う火山噴出物は水を通しやすいので、すぐに地下に染み込んでしまう(だから富士山には地表を流れる川が少ない)。よって思ったほど泥だらけにはならなかった。フェンダーを忘れて焦ったが、無駄な心配だった。

とはいえ筆者はえぐれて谷になっている箇所に無謀にもチャレンジし思いっきりコケで泥とお友達になったが。仲間に「ナイスチャレンジ!」と喝采をもらって照れ笑い。いい大人がコケて泥まみれになって笑い合えるのがグラベル遊びのいいところ。

幻想的な林道

森の中のグラベルをじゃりじゃりと行く。すぐに霧が立ち込めはじめ、ゴールまでずっと濃い霧の中を走ることになったが、乳白色の霧の向こうに砂利道が消えていく風景は幻想的で、個人的にはこんな景色の中を走れて幸せだった。

16km地点の第一エイドステーションでは、つけナポリタンが振る舞われた。トマトベースのナポリタンスープに麺をつけてチーズを絡めて食べる富士市のご当地グルメで、「たいして美味しくないのに旅の思い出補正でなんとか体裁を保つ」という当地グルメも多いなか、これは本当に美味しかった。

激坂もなく走りやすい上質な砂利道を25kmほど走ると、国道に出る。ショートコースはそのままゴールで、ミドルコースはそこから愛鷹山(「あいたかやま」ではなく「あしたかやま」と読む)に向かう。

ミドルコースでは、グラベルバイクとなぜか(絵的に)相性のいい貯木場や渡渉が登場し、参加者たちが自身のスマホに写真を納める。渡渉では、あえてスピードアップして水しぶきと奇声を上げて一気に突破。レーパンに染み込む水がびっくりするほど冷たくて、雪解け水であることを実感する。普段、歩いているときに水溜まりに飛び込んで喜ぶのは子供だけだが、グラベルバイクの上では誰もが子供だ。

世界の「FUJI GRAVEL」へ

第2エイドでは、お茶の名産地でもある富士市ならではのメニュー、お茶とほうじ茶餡の団子を楽しむ。富士市の茶農家が立ち上げたほうじ茶専門店「茶舗焙焙焙」の出展だ。ちなみに、この「茶舗焙焙焙」を営む会社の社名は「日本茶茶茶(ニッポンチャチャチャ)株式会社」。なかなかイカしてる。これらのエイドステーションは富士商工会議所のアイディアによるものだという。富士グラベルに対する地元の期待を感じられる内容だった。

最終エイドでは、富士グラベルに協賛しているアクティバイクのエナジージェルが配られる。上りが続くエリアのため、参加者は「助かった……」と胃にエネルギーを流し込んでいた。

富士山麓のグラベルを堪能し、ゴールしたのは昼過ぎ。会場では各メーカーのグラベルバイクの試乗会や物販、バイク相撲などのイベントも行われ、走り終えた参加者の笑顔で溢れていた。なお、今大会の最年少完走者は小2。

主催者トムさん「自転車遊びのブランドとして富士グラベルを育てていきたい」

イベント終了後、主催者のトム・ボシスさんに話を聞いた。

「まず、無事に終えられてよかったです。満足度がどれくらいだったのかはこれから分析しなければなりませんが、皆さんの笑顔を見るとおそらく楽しんでいただけたのではないかと。第一回を無事に開催できたことで、次のステップに進めます。これからどのように展開していくのかは協議をしないといけませんが、目指す方向としては『初心者・中級者への間口を広げて、グラベル遊びを本格的に始めやすいようなイベントであること』。そういう立ち位置のイベントが首都圏からも関西圏からも来やすい場所で開催されることが必要だと思います。また、年一回のイベントですぐにキャパオーバーをさせてしまうのではなく、通年型のイベントとして発展させていくことも考えられます。5月は新茶の季節ですし、夏は避暑地としての魅力があります。秋は紅葉の名所になります。それに合わせてコンテンツを組み立てていく。富士グラベルを単なるイベントの名前ではなくて、自転車遊びのブランドとして育てていければと思っています」

トムさんが言うとおり、富士山でグラベルイベントが開催されたことがまずめでたい。富士山がほとんど見えなくても、道そのものに十分な魅力があった。今後は、小学生低学年でも走れるようなハードルの低さは維持しつつ、コースの拡充や、富士山こどもの国との協業(園内のキャンプ場や宿泊施設を使って2日間のイベントにするなど)も考えられるだろう。富士山は日本最大の観光資源であり、政府の取り組みによって日本が今以上の観光立国になっていくことを考えると、海外からの注目も高められるはずだ。もちろん会場のキャパ的に参加者数を倍増させることは難しいかもしれないが、イベントの価値は参加者数で決まるわけではない。

残念ながら仕事で参加できなかった先輩ライターはこう言っていた。

「単なるライドイベントに留まるのではなく、グラベルフェスにできるといいと思う。最新グラベルバイクの試乗ができて、パーツも試せて、ウエアやバッグも手にとれて、グラベルに付随するアクティビティの提案もあって、トークショーなどのイベントもあって、『あそこに行けば今のグラベル遊びの全てが分かる』というような」

グラベルはアメリカから始まったムーブメントだが、本場の彼らにも「日本にはフジグラベルという素晴らしいフェスがあるらしい」と言われるほどにこのイベントの価値が高まることを期待したい。

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PROFILE

安井行生

安井行生

大学卒業後、メッセンジャー生活を経て自転車ジャーナリストに。現在はさまざまな媒体で試乗記事、技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆する。今まで稼いだ原稿料の大半を自転車につぎ込んできた。

安井行生の記事一覧

大学卒業後、メッセンジャー生活を経て自転車ジャーナリストに。現在はさまざまな媒体で試乗記事、技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆する。今まで稼いだ原稿料の大半を自転車につぎ込んできた。

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