カンパニョーロから世界初2×13速対応のワイヤレス変速機「スーパーレコード13」｜Campagnolo

Bicycle Club編集部

2025年06月04日

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カンパニョーロは、ロードサイクリング界に衝撃を与える新製品「スーパーレコード13」を正式に発表した。これは、同社の輝かしい歴史における新たなマイルストーンであり、業界で初めて実現された2×13速ワイヤレス変速システムを搭載したフラッグシップロードバイク用グループセットである。カンパニョーロは、この製品を単なるギア数の増加ではなく、「新時代の幕開け」であり、パフォーマンスの概念を再定義するものと位置づけている。長年にわたり変速段数の進化をリードしてきた同社が、満を持して投入するこの革新的グループセットは、最高のパフォーマンス、妥協なき革新性、そして洗練されたイタリアンスタイルを追求する全てのサイクリストに向けて開発された。

技術的優位性の追求：2×13速ワイヤレスシステムとその詳細

「スーパーレコード13」の核心は、その名の通り13速化されたリアカセットと、それをワイヤレスで制御するシステムにある。これにより、ライダーはかつてないほど広範かつ緻密なギア選択肢を手にし、あらゆる地形や走行状況において理想的なケイデンスを維持することが可能となる。

カセットスプロケットとチェーン – 13速化の鍵とスムーズネス

カンパニョーロは、グラベルコンポーネント「Ekar」で培ったリア13速技術をロード用に最適化。スプロケット間の距離を詰め、各スプロケットの厚みをわずかに削減することで、従来の12速カセットとほぼ同等のスペースに13枚のギアを収めることに成功した。これにより、既存のN3Wフリーハブボディとの互換性を維持し、専用ハブボディを必要としない。

提供されるカセットは、10-29T、10-33T、11-32T、11-36Tの4種類。これにより、トップスピード重視のレースシーンから、厳しい山岳コースまで幅広く対応する。特に10Tのトップギアは高速域での効率的なペダリングを可能にし、ロー側のワイドレンジ化は激坂への対応力を高める。ギア間の歯数差が小さくなることで、よりスムーズな変速とケイデンスの急激な変化を防ぎ、長距離ライドでの疲労軽減にも貢献する。

チェーンも新設計され、ブラッククローム表面処理が施されている。これは耐久性の向上と作動音の低減に寄与し、より静かで滑らかな駆動系を実現する。

クランクセット – パワー伝達と計測の進化

クランクセットは、カンパニョーロ伝統の美しいカーボンファイバー製で、アーム長は165mm、170mm、172.5mm、175mmが用意される。Qファクターは148.5mm。チェーンリングは、45/29T、48/32T、50/34T、52/36T、53/39T、54/39T、そしてプロユースを見据えた55/39Tの7種類の組み合わせから選択可能。これは4種類のカセットと組み合わせることで、市場で最も多彩なギアコンビネーションを提供する。チェーンリングの歯先形状と表面処理も改良され、フロントディレイラーによる変速時のチェーンエンゲージメントがより迅速かつ確実になった。

ボトムブラケットは、チタン製セミアクセルをクランクアームと一体化させたウルトラトルクシステムを採用し、剛性と軽量性を両立。

オプションで用意されるHPPM（High Precision Power Measurement）パワーメーターは、クランクアームに内蔵され、左右独立計測が可能。16個のセンサーが5ミリ秒ごとにパワー（N/m）を連続的に検出し、内蔵ジャイロスコープが角速度をリアルタイムで計測することで、極めて高精度なパワーデータを提供する。

また、ユーザーの柔軟性を高めるため、クランクアームとチェーンリングセットは個別に購入可能となった。

ディレイラー – コンパクト化と高効率化の結晶

フロントディレイラーは、より軽量なデザインとなり、カーボン製フォーク（アウターケージ）を採用。バッテリーハウジングを前方に配置することで、昨今のワイドタイヤへの対応力を高め、リアタイヤとのクリアランスを確保している。その内部構造も一新され、チェーンに大きな負荷がかかっている状況でも、スムーズで確実な変速動作を実現する。対応するチェーンリングの歯数差は最大16T、最大歯数は55Tまでカバーする。

リアディレイラーは、従来の12速ワイヤレスモデルと比較して横方向の張り出しを25%削減し、よりスリムでエアロダイナミクスに優れた形状となった。プーリーケージには14Tの大型プーリーが上下に配置され、特にアッパーガイドプーリーにはセラミックベアリングを採用することで、フリクションを徹底的に排除し、変速精度と駆動効率を向上させている。フレームへの取り付けは、新しいカンパニョーロUDH（Universal Derailleur Hanger）ダイレクトマウントと、従来のドロップアウトに対応するアダプターを介した取り付けの2種類が用意される。

両ディレイラーのバッテリーは、1回のフル充電で約750kmの走行が可能（通常使用時）。充電はマグネット式の専用USBケーブルで行い、ディレイラーに取り付けた状態でも、取り外した状態でも充電できる。フル充電は約1時間、45分で90%の充電が可能で、LEDインジケーターでシステムステータスを確認できる。

エルゴパワー – 直感的コントロールとカスタマイズ性の融合

エルゴパワーレバーは、カンパニョーロのエルゴノミクスの哲学をさらに推し進め、完全に再設計された。あらゆるグリップポジションで確実なホールドとコントロール性を提供し、長時間のライドでも快適性を損なわない。

特徴的なのは、3つのコントロールレバーの配置である。カンパニョーロ伝統のブレーキレバー内側のシフトダウンレバーに加え、内側に配置された「サムシフター」は、よりミニマルなプロファイルとなり、様々なポジションから操作しやすくなった。これは単なる過去への回帰ではなく、グリップコントロールを向上させるための新しいソリューションである。さらに、ブレーキレバーの裏側には第3のレバー「シフトレバー」が配置され、シフトアップ操作を担う。

レバーフード上部の内側には、新たに「スマートボタン」が追加された。このボタンの機能は、MyCampyアプリ（2024年レッド・ドット・デザイン賞受賞）を通じてライダーが完全にカスタマイズ可能。ギア設定の変更、サイクルコンピュータのページ送り、さらにはBluetoothでペアリングしたスマートフォンと連携して音楽プレイリストの操作など、多彩な機能を割り当てることができる。

MyCampyアプリは、ファームウェアのアップデート、各シフトボタンの機能割り当て変更、バッテリー残量確認、チェーンのディレイラーに対する精密な位置調整など、「スーパーレコード13」の性能を最大限に引き出すためのコントロールプラットフォームとして機能する。システムはANT+プロトコルおよびShifting Profile 2.0にも対応し、主要なサイクルコンピュータとの互換性も確保されている。

油圧ブレーキホースの取り回しも改良され、ブレーキキャリパーに直接接続される方式となった。これにより、組み立てや輪行時のハンドルバーの取り外しが容易になる。

ブレーキレバー本体はカーボンファイバー製で軽量化に貢献。ハイグリップポジションからでも指が干渉しにくい形状に改良され、支点位置の最適化により、より少ない力で強力かつプログレッシブな制動力を得られる。リーチアジャスト機能も備え、手の大きさを問わず最適なレバーポジションを設定可能。UCI規定に準拠した範囲での角度調整も考慮されている。

ブレーキシステム – 信頼の制動力と軽量化の両立

カンパニョーロのディスクブレーキシステムは、その高い制動力とコントロール性で定評がある。「スーパーレコード13」では、鍛造アルミニウム製のブレーキキャリパーに2本の新しいチタン製リテンションスクリューを採用することで、コンポーネント全体で6gの軽量化を達成した。

ブレーキパッドは、ウェットコンディションや低温時に優れた耐久性を発揮する新しいシンタードバージョンと、標準装備のオーガニックバージョンの2種類を用意。どちらのコンパウンドも、振動を低減する吸音ブレード上に配置され、広い摩擦面積によって優れた放熱性を確保し、コンパウンドのガラス化リスクを低減する。パッドには摩耗インジケーターが備わっており、交換時期を容易に把握できる。

ディスクローターは、160mm（スパイダーとの7点固定）と140mm（6点固定）の2サイズ展開。アンチカッティングプロファイル（エッジの丸み処理）と、高温によるディスク膨張時の変形を補正する特殊なフローティングC3スロットを備えた温度コントロールシステムが特徴である。ディスクとパッドのクリアランスは0.1mm単位の精度で管理され、キャリパーの精密なキャリブレーションと合わせて、カンパニョーロならではの迅速かつ確実なブレーキレスポンスを実現する。

パフォーマンスの飛躍と市場競争力

「スーパーレコード13」は、単にギアを1枚増やしただけではない。そのパフォーマンスは、従来の12速スーパーレコードWRLと比較して明確な進化を遂げている。

シフトスピードの向上

フルカセットを駆け上がるアップシフトは従来の3.3秒から2.1秒へ、ダウンシフトは3.6秒から1.9秒へと大幅に短縮された。

軽量化

グループセット全体の重量は2,520g（12速WRL）から2,445gへと約3.07%削減され、市場で最軽量クラスの2xグループセットとしての地位を確立している。

価格戦略

カンパニョーロは、この高性能グループセットをより多くのサイクリストに届けるため、価格戦略も見直した。パワーメーターなしのスタンダード・バージョンの希望小売価格は 781,000円～と、従来の12速WRL（916,000円～）と比較して約15%低く設定された。これは、デザイン・トゥ・コストアプローチ、コンポーネントデザインの最適化、ライン生産、そして生産工程における自動化への投資によって実現されたものである。

カンパニョーロのフィロソフィー：「Made in Europe」の誇りと革新の伝統

1933年の創業以来、カンパニョーロは常にサイクリング界の革新をリードしてきた。1973年に初代スーパーレコードが登場して以来、10速、11速、そして12速と、常に変速段数のフロンティアを切り拓いてきた歴史は、この「スーパーレコード13」へと受け継がれている。この新製品は、ワールドツアーチームであるチーム・コフィディスとの緊密な協力のもと、プロトタイプ段階から実戦投入に近い環境でテストとフィードバックが繰り返され、その性能は磨き上げられた。

カンパニョーロは、「Made in Europe」の伝統と品質に誇りを持ち、この「スーパーレコード13」がブランドアイデンティティの再定義と、将来の製品ラインナップ展開のための新たな開発プラットフォームの礎となることを強調している。