自作クロモリフレームでJBT優勝を目指す!?【ホビービルダーの続・鉄バカ日記】
トモヒロ
- 2018年09月14日
一部の強烈なコアファンに支持されていた人気(?)連載がカムバック!編集部員がまさかのフレームビルドに挑戦し、今度はレース優勝を狙う?現実と夢の区別がつかないキワモノ編集者の、鉄バカ日記が再びはじまった!
ホビービルダー・トモヒロの新たな挑戦
バイシクルクラブ編集部員にして、フレームを自作するホビービルダーでもあるトモヒロ。
連載(月刊誌バイシクルクラブにて2014~2015年に掲載)が終了してからもフレームを作り続け、ここ数年は自身のブランド「Tomo’s works(トモズワークス)」でハンドメイドバイシクル展にも出展している。
もはや趣味を通り越してライフワークとなっており、「美しい自転車とは何だ」という哲学を探究しながらトーチを握っている日々だ。
「2019ハンドメイドバイシクル展」のレポートはこちらから。
とはいえ、作業は当然仕事の合間であって、作れたところで年間3本が限界(少なっ)。製作本数が限られているからこそ、考えることはつねに「他とは違う自転車」で、えらそうなことを言わせてもらえば「他の人が作らない自転車」を作りたいと思っている。
そんななか、ある自転車ショップからメールが届いた。京都のレストアショップ、アイズバイシクルの土屋さんからだ。
「プロフェッショナルとして自転車製作に携わる者が、自分でエントリー車両を製作して参加するレースをしようと思っているんです。ぜひ出場してみませんか?」
ジャパンバイクテクニーク(JBT)にオレ、出ます
かつてフランスで行われていた「コンクールマシン」というレースを知っているだろうか?まだレース用自転車がハンドメイドで作られていた時代に、お互いの技術力向上を目的として開催されたものだ。古い時代なのでフレーム素材は当然スチールで、車重を軽くするためにはパーツに穴を空けたり、極薄のパイプを使ったり、あるいは装備にも工夫を凝らしたりして、誰がいちばん速く、かつ壊れないバイクを作れるかを競っていたという。
土屋さんいわく、このコンクールマシンの日本版として「ジャパンバイクテクニーク」を開催するというのだ。
レースは長野県高山村をスタート、ゴールとする75kmの周回コース。途中16kmのダート林道を含み、さらにお土産として「まんじゅう」を渡され、それを潰さないようにゴールしなければならない……という妙なレギュレーション。
え、それってめちゃおもしろいんじゃないの!?と思うのは当たり前の話。ルールを調べると、現代版に解釈されている部分もあれば、ハンドメイドということで古典的なポイントもいろいろあるらしい。ここに書くとキリがないので割愛させていただくが、設計上重要となることに関してはこれから記載していこうと思う。
※詳細を知りたい人はコチラを参照。けっこう細かいのでおヒマな人のみどうぞ
ともあれ、聞けば有名ビルダーをはじめ、若手ビルダーやホビービルダーも参加する予定とのことで、トモヒロもすぐさま参加の意思を伝えた。
Tomo’s works・グラベルロードは失敗?どうするJBT号
当編集部のコアなムックを読んでいただいている人ならご存知かもしれないが、以前『クロモリバイク徹底レストアBOOK』にてグラベルロードを製作した。
これは当時、スチールバイクではまだメジャーではなかったスルーアクスルやフラットマウントの油圧式ディスクブレーキに対応し、流行の大型シートバッグを装備する前提で作ったモデル。と同時に、じつはこの手のスチールバイクでは必ず起こる問題(上下異径ヘッドのカーボンフォークや極太ヘッドチューブによるヘッドまわりの高剛性化と、主に後ろ三角の剛性とのバランス)、そして、これらをクリアしてなお「スチールらしい美しいシルエット」を演出できるかという問題へのチャレンジでもあった。
精度が必要なスルーアクスルでは、既成のエンドを使うのが作業工程上効率的だ。パラゴンマシンワークスのエンドを加工し、野暮ったくなりがちなエンドまわりをスマートに仕上げられるよう心がけた
キャリパーマウントの都合もあり、長い板が目立ってしまうスルーアクスル用エンド。板を外側から覆うようにステー先端を曲げてロウ付けし、ゆるやかなカーブを見せることでスチールらしさを演出(加工自体は相当めんどうだった……
紆余曲折ありながらもどうにか仕上がり、乗り心地もほどよくねばりを感じられる、我ながらいい出来だった。
実際に通勤で乗ったり、ツール・ド・おきなわを走ったりもしたのだが……じつは大きな欠陥があった。
グラベルロードということで、タイヤ幅32Cを装着できるようにしていた。通常のロード用チェーンステーでは難しいので、S字ベンドのチェーンステーを採用したのだが、間違って微妙な角度でBBハンガーに接合してしまい、つぶしを入れたにもかかわらずクランクのチェーンリングボルトがペダリング中に接触するという、致命的ミスをしていたのである!
まあいまだから言えるものの、ビルダーとしては完全アウト(笑)。正直、沖縄で走ってから以降はバラしてしまい、いまは乗れる状態にない。今回のJBT号ではこの致命的ミスをまず改善し、それでいて現代ツーリングにマッチする新境地を開拓したいと思う。
製作中、いい形のつぶし器がなかったので自作。工場に落ちてた鉄の破片を加工することに
板を半円状にカットし、不要なパイプにロウ付け。つぶす面に合わせてエッジを調整する
定盤にフレームをセットし、つぶし器を当てながらハンマーでゴン!でも接触したという(爆)
JBT号はモダンツーリングを追及
元がコンクールマシンとはいえ、現代を走る以上「いま」にとっていいバイクを作るべきだ。モダンツーリングというと曖昧な言葉になってしまう気もするが、このモダンツーリングとはそもそも何か?ということから考えよう。
結論からいうと、「650×38B」「油圧式ディスクブレーキ」「フロントシングル」「無線コンポ」を今回のキーポイントとする。その理由はこうだ。
650×38Bホイール
じつは今回のレース、走るのはトモヒロではなく、トモヒロの友人だ。身長が164cmなので700Cにこだわる必要がなく、クッション性も期待できる650Bホイールで組むことに。設計上は自分(同175cm)のほうがやりやすいのだが……じつはけっこう多い170cm以下の人でもカッコよく乗れるデザインにできるなら、がんばる価値はある。
油圧式ディスクブレーキ
ロングツーリングでは、ブレーキの操作性はラクであることに越したことはない。これは前作のグラベルロードでもたしかに実感したことなので、積極的に取り入れようと思っている。問題はコストだが……編集部ネットワークでいいものに出会えたのでそれを採用したい。詳細は後日。
フロントシングル
ワイドレシオのスプロケ、ワイドキャパシティのリアディレイラーが多くなってきた昨今、ツーリングであればフロントダブルの必然性は低い。フロントディレイラーが不要になれば、台座やケーブルの問題(穴開けなどの加工)もクリアになるので好都合だ。なによりいまっぽいスペックにできるので、いろいろな意味でモダンになれる。
無線コンポーネント
バイシクルクラブでも紹介した、Xシフターという後付けの無線コンポキットを導入したい。
ディレイラー(メーカー、モデル)や段数を気にせずカスタムできるし、ダウンチューブの加工を最小限にできるのもビルダー的に魅力。
それ専用の台座を設ける必要はあるが、そこもうまくできればかなり画期的なのでは?というチャレンジ的意味もある。
そして、考えたジオメトリがこちらだ。
カーボンフォークはコロンブス・フーチュラグラベルを採用し、フロントアライメントもどうにか収めた。ボトルケージを3つにしているのは、うち1つを輪行袋(オーストリッチ)を入れる用としているためだ。
バイシクルクラブで紹介した、シマノ・105ハブ&DTスイス・RR481dbリムで組んだ650Bホイール(写真右)。650×38B(ETRTO 40-584)はリム外径が小さくなるが、比較するとわかるとおり、外周は700×25C(写真左)とほぼ同じになる
機械式コンポと組み合わせることで、簡単に無線化できるスグレモノ、Xシフター。今回はシマノ・105(RD-7000)をリアディレイラーに採用し、フロントシングルのリア11速で走ることに。スイッチはハンドルに装着する
パイプやフォークなどの部材は、埼玉県某所にある「エンマバイシクルワークス」へ買い出し。ホビービルダーにもこころよく販売してくれるのがうれしい
ちょうど入荷していたコロンブス・フーチュラグラベルを発見し、オフセットや肩下寸法を実測。軽くてよく走ってくれそうなイメージだ
こうして書くと、とくに変わったことをしていないフツーのグラベルロードなんじゃないの?と思われるかもしれないが……まあそこは今後のレポートを見てご判断いただきたい。
毎度おなじみにオリジナルカットラグと、ラグレス(フィレット仕上げ)を組み合わせたデザインをイメージしているが、あわよくば……ダート走行に備えて、チェーンの干渉を防ぐ工夫も取り入れたいと考えている。
さあ、はたしてどうなるか? 次回から製作のようすをレポートしていく。
ジャパンバイクテクニークについてはコチラから。
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