パールイズミ開発者に聞く「着たくなるサイクルウエア」とは?

世界に誇る日本のサイクルウエアブランド、パールイズミ。
サイクリストの五感すべてにフィットさせるべく誕生したのが
新シリーズ「VISION(ビジョン)」だ。
前人未踏の快適性が生み出された背景、そのテクノロジーについて
開発者の佐藤充さんに聞いた。

パールイズミらしくない? 常識から疑って目指したもの

ロードバイクがより一般化し、サイクルウエアも昔では考えられないほど増えた。
ちまたにはさまざまなモデルがあふれているが、そのなかでもいま、ひと際注目を集めているのがパールイズミのビジョンだ。

2019年SSから新たに展開されたビジョンは、文字どおり「ブランドの未来を具現化したもの」として登場。
シンプルなデザインはここ数年の流行を取り入れたものだが、よく見ると、ただそれだけではないクオリティの高さを醸し出している。

「いつものパールイズミとは何か違う」

そう思ったユーザーも少なくないのではなかろうか?
ビジョンの秘密に迫るべく、パールイズミの開発者、佐藤充さんに話を聞いた。

ウェアではなくライダー自身が引き立つものを

「サイクリストの増加によって楽しみ方が多様化し、ウエアに求められるものも変わってきたんだと思うんです。いまの時代に合ったサイクルウエアとは? 本当の意味で着てみたいと思うウエアって、そもそも何だろう?というところがスタートでした。」

と語る佐藤さん。
サイクルウエアという常識をゼロから考え直し、本質的に大事なこととは何かを問う。
たどり着いたのは、「着心地」と「デザイン」の新境地だ。


「半世紀以上もサイクルウエアを作り続けてきたブランドとして、機能性の確保は当前ですし、そのノウハウにも自信がありました。でも、これまではバイクに乗っているときのことを軸に考えすぎていたんですね。そのためのウエアなのでおかしい話ではないんですけど、リアルなシーンではバイクから降りたときの着心地も重要。だから、素材やパターンのすべてをいちから考え直して、いつでも快適なウエアを目指したんです。」

パールイズミでは、目的に合わせた独自素材を合繊メーカーとオリジナル開発し、そのなかからべストな素材をセレクトするケースもある。
ビジョンではバイクを降りたときにも快適でいられるよう、よく伸びて身体にフィットする、かつ見栄えもいい素材をセレクトした。
そして、その素材の特徴を最大限生かせるよう、パターンにも徹底的にこだわる。

「素材や部位によって、細かく縫製を変えているのも重要なポイントですね。たとえば襟まわりですと、襟よりも身ごろのほうをやや長くカットして、襟側を伸ばしながら縫製するんです。こうすることでよりフィット感が高まり、自然な着心地になるんです。」

ライディングポジションではもちろん、降車時もストレスなく着れるビジョン。手にとるだけでわかるほどの柔らかい着用感は業界内でも注目を集める

膨大な素材サンプルで検証を繰り返し、目的を満たすベストなものをセレクトする。パターンはパタンナーという専門スタッフが手掛ける

デザインについては、とにかく単色であることがキーになると考えていたそうだ。

「好みはもちろんありますけど、一般的なシーンでは普段着のように着られる単色がいいです。また、ロードバイクで走ることを考えると、やっぱり主人公はライダーだと思うので、ウエアが目立つものじゃないなと。でも、じゃあ単色なら何でもいいのかというとそうじゃなくて、上質感や特別感はあってほしいし、もっといえば、これ着たい!と思ってもらえるものにしたかったんです。」

ひと言で言えばシンプル。しかし、単純なものほどカンタンではない。

佐藤さんはこれまでのサイクルウエアがロゴや柄を足していく「+」のデザインだとすれば、ビジョンが目指したのはムダなものをそぎ落とした「-」のデザインだという。
何が必要で、何が不要なのか。シンプルなようで奥深い考察の末に生み出されたのは、極めて単色に近い、同系色を組み合わせたエレガントかつ先進的なデザインだ。

立体裁断でありながら、特殊編み構造によって平置きできるほど柔らかいイタリア製素材「センシティブ」を採用。ソデを通せばすぐに実感できるズバ抜けた快適性は、心地よい肌触りと極上のフィット感、見るものを魅了する高い質感をもつ。ロゴやアクセントのストライプをマット調の同系色とし、上質感のなかにオリジナリティをうまく融合した

フロントファスナーもシンプルを追及。一般的なジャージと比べるとステッチがなく、さらにファスナーを裏使いしてスッキリとした印象に仕上げた

バックポケットは薄い素材を採用した切りっぱなしだが、縁部分だけステッチを入れ、軽やかな印象と使いやすさを両立した

普遍のテーマを新しいアプローチでクリアする

こうして見ると、シンプルながらもそのすべてが新しく生み出されたように思われるビジョンだが、逆にこれまでのサイクルウエアと変わらない、普遍のものはあるのだろうか?

「肩まわりのカットですね。前傾ポジションになるため、普通の服に比べてソデが前に付くのは避けられません。ただ、やはりライド中はこれでいいんですが、バイクから降りたときに胸まわりが突っ張ってしまうという不快感もあるんです。また別の視点でいうと、ショップで試着するときって、じつはこの降りたときと同じ姿勢なんですよね。だから、ファーストインプレッションで「キツいなぁ」と思ってしまうことが多々あって、ここも改善したいポイントでした。」

これに対してビジョンでは、銃を素早く構えるハンター(猟師)用ウエアに採用されるピボットスリーブというパターンを肩まわりに取り入れ、さらに伸縮性に優れる素材と組み合わせることで、どんなシーンでも圧迫感のない着心地を実現した。

腕まわりの動きやすさを追求して採用されたピボットスリーブ(V字カットのパターン)。ワキ下の通気孔はレーザーカットによるもので、より空気が抜ける位置に開けられている

細かな改良とテストを繰り返し、徐々にブラッシュアップされていくプロダクト。全体とディテールの両方を多角的にとらえて、理想像への精度を高めていくという果てしない作業だ

リアルサイクリストだからたどり着けた答え

佐藤さんのプロダクトに対する深いこだわりは、どこから来ているのだろうか?
そして、パールイズミが導き出したビジョンという答えは、ユーザーに何を伝えたいのだろうか?

「単純に着たくなるもの、手に取りたくなるものを作りたいということに尽きます。僕自身もそうですが、うちの社員の多くはリアルサイクリストなんです。ロードバイクで走ると、その先で何かを見て、楽しいとかうれしいとかいろんな感情や感動に出合うじゃないですか。僕らはその手助けを、ウエアを通してできれば幸いだと思っているんです。」

創業以来培ってきたノウハウが生かされていることはいうまでもないが、時代に合ったサイクルウエアを発信するために、最新のテクノロジーと先進的発想を積極的に織り交ぜる姿勢。
メーカーとして、そしてユーザーとしてのふたつの目線をほどよくバランスできるのは、社員たち自身がリアルサイクリストだからだろう。

パールイズミの社内合宿のひとコマ。お揃いのウエアに身を包み、みんながリアルサイクリストとしてロードバイクを楽しみ、そして製品にフィードバックする

「ふだんは試作を着ては走って、作り直してまた着て……の連続。それほどウエア愛にあふれた社員ばかりなので、毎日が刺激的ですよ」と佐藤さん

「とはいっても、作っているときに、自分たちでもよくわからなくなるときもあります。山のような試作品を前にどうすればいいの?みたいな(笑)。そんなときはいつでも、ユーザーはどう思うか?というスタンスに戻って、みんなで話し合う。何かの試験結果に対しても数字優先ではなく、最終的に「で、使ってみてどうなの?」と、人間の感性を大事にするのが僕たちのやり方です。」

 

創業50年以上の老舗がたどり着いた現代サイクリストへのベストアンサー、ビジョン。
常に新しいものを取り入れながらも、そこにあるのはいまも昔も変わらない情熱と技だった。
このウエアにソデを通せば、「ああ、サイクルウエアってこういうものだったんだ」と改めて気付くだろう。
そしてきっと、もっとロードバイクに乗りたくなる。

2019SS「VISION」ラインナップ

ビジョン ジャージ
1万8000円(税抜)
柔らかな肌触りと極上のフィット感を実現したコンセプトモデル。サイズはS / M / L / XL / 3L、ブラックとディープレッドの2カラー展開

ビジョン ビブ パンツ
2万円(税抜)
ストレッチ性に優れるビブを採用し、動きやすくペダリングしやすい設計。ハイエンドパッド(3D-ネオプラス)によりロングライドも快適。サイズはS / M / L / XL、ブラックとグレーの2カラー展開

ビジョン ウルトラメッシュ ノースリーブ
6500円(税抜)
身体のいかなる動きにも追従する、抜群のストレッチ性とフィット感が魅力。フリーサイズ、カラーはブラックのみ

ビジョン グローブ
5000円(税抜)
こだわりの中厚+低反発ウレタンパッドにより、ダイレクトな操作性と高いクッション性を両立。手の平には天然皮革素材を採用。サイズはS / M / L / XL、ブラックとレッドの2カラー展開

ビジョン ロング ソックス
2000円(税抜)
サポート機能を搭載し、疲労を抑えながら力強いペダリングを持続させる。サイズはM / L、ブラックとディープレッドの2カラー展開

 

 

問い合わせ:パールイズミ
https://www.pearlizumi.co.jp/vision

 

 

TEXT:友廣睦(編集部) PHOTO:大星直輝

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PROFILE

トモヒロ

トモヒロ

自転車に関してだけ遠距離パワー型の、元『BiCYCLE CLUB』編集部の新参Webディレクター。趣味の文房具が手放せず、会議も取材もいまだ手書きメモがやめられないアナログ派。

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