クロモリロードバイク完全ガイド!フレーム素材や特徴からオーダーメイドまで徹底解説

トモヒロ
- 2019年07月13日
スチールパイプ(チューブ)の種類と性能
クロモリバイクの骨格ともいえるパイプ(チューブともいう)は、その径(太さ)や厚み、または組成によってさまざまな性能をもつ。また、熱処理をすることでさらに性能が向上をすることもあれば、ロウ付けすることで物性が変化してしまうものもある。いいフレームを作るには、適材適所でパイプを選び、それらを正しく組み上げていかなければならない。ここではスチールパイプに関する基本的な違いと特徴を解説する。
パイプの径
自転車におけるスチールパイプには規格があり、たとえばノーマルサイズのヘッドチューブ径は31.7mmというように、ほぼ決まっている。具体的にはイタリアンとJIS(BSC)が同じで、ノーマルサイズならヘッド31.7mm、トップ25.4mm、ダウン&シート28.6mm、シートステー(シート側)14mm以上、チェーンステー(ハンガー側)22.2mm以上……というイメージ。フレンチはそれぞれ若干径が異なるが、ヴィンテージフレームで出合わない限り現実的にはほぼ関わらない。また、オーバーサイズやスーパーオーバーサイズといった大径チューブなどもある。
パイプの厚み
クロモリは強度が高いので、一般的なスチールよりも薄くできるのが特徴。よく使われるパイプでいうと、肉厚のところで0.9mm、肉薄のところで0.3mmといったものもある。
バテッド
パイプをより軽くするため、比較的応力がかからないパイプ中央部の肉厚を薄くする段付き加工のこと。バテッドにはシングルバテッド、ダブルバテッド(もっともポピュラー)、トリプルバテッド、無段階バテッドなどがあり、バテッドしていないパイプをストレート(プレーン)という。また、バテッドとは異なるが、強度向上のためにスパイラルリブを入れたパイプなども存在する。
スチール(鋼)に含まれる元素
スチールは添加物の含有率によって性質(物性値)が変わる。おもに含まれる元素は炭素(C)、ケイ素(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)の5つで、そのほかにもモリブデン(Mo)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)などがある。
C【 炭素 】
鋼にとって重要な元素で、硬さや強度に影響する。炭素量が多いほど硬くなるが、そのぶんもろく(折れやすく)なる。焼き入れ性にも影響する。
Si【 ケイ素 】
最大降伏点や引っ張り強さを向上する元素で、耐熱性にも影響する。効果は炭素の約1/10程度だが、添加しすぎるともろくなる面もある。
Mn【 マンガン 】
ねばり強さ(靱性)に影響する元素。マンガンが多いほど引っ張り強さや耐衝撃性が向上し、また焼き戻し時の軟化を抑制する働きももつ。
P / S【 リン / 硫黄 】
加工性を向上するために添加されるが、リンは低温(氷点下)でもろくなり、硫黄は溶接性が悪化する面もあり、極力少ないほうがいいとされる。
Mo【 モリブデン 】
焼き入れによる硬化層を深くし、ねばり強さや引っ張り強さ、耐摩耗性を向上する元素。レアメタルのひとつで、非常に高価なのがデメリット。
Cr【 クロム 】
炭化物を生成し、鋼の焼き入れ性を向上する元素。また、焼き戻し時の軟化を抑制し、耐摩耗性や耐食性、引っ張り強さも向上する。
Ni【 ニッケル 】
ねばり強くなり、耐衝撃性を向上する元素。また、熱処理をしやすくし、耐食性や耐熱性もよくする。貴重な元素でもあり、価格が高いのが難点。
V【 バナジウム 】
鋼の組織を微細化して、強い靱性を発揮する元素。金属としてはやわらかいが、組織内では硬い炭化物を生成し、耐摩耗性を向上する。
熱処理
パイプの引っ張り強さや疲労強度などを向上させるため、高温に熱したあとで冷やし、組成を変化させる技術。ヒートトリーテッドともよばれる。何度まで熱するか、何度まで冷やすか、どうやって冷やすかによって効果が異なり、また材質によっても異なる。焼き入れだけすることはなく、焼き入れ後に焼き戻しまたは焼きなましをするのが一般的だ。
焼き入れ
金属をある一定の温度(変態点)まで加熱し、その後急冷する熱処理のこと。パイプの組織をマルテンサイト化することで、硬く、耐摩耗性や引っ張り強さ、疲労強度を向上することができる。
焼きなまし
金属をある一定の温度(変態点)まで加熱し、その後ゆっくりと冷やす熱処理のこと。組織をオーステナイト化させ、焼き入れで生じた残留応力を取り除く。焼きなましは金属をやわらかくする。
焼き戻し
金属をある一定の温度(変態点以下)まで加熱し、その後急冷する熱処理のこと。マルテンサイトは硬いがもろいので、焼き戻しをして靱性や硬度を取り戻す。温度によって異なった効果を得られる。
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