松浦まみのエタップ紀行「旅するエタップ、ツール・ド・フランス」第1回

バイシクルクラブ読者の皆様、こんにちは。
宮澤崇史マネージャーの松浦まみと申します。
これから4回に渡って、2019年のエタップ、ツール・ド・フランスの
参戦&観戦記を連載させていただきます。

出国前の不安と開き直り

昨年の夏、スタート直前の土壇場でミヤザワ監督を臨時コーチに立てて初挑戦したエタップ・デュ・ツール。完走できたのは間違いなく監督のおかげで、一人で走っていたら完走は叶わなかったと今でも思っています。

私という人間は並外れて身体能力が低いので、並外れて身体能力の高い監督の指導があってどうにか人並みに走れたのでした。昨年は出発前に体調を崩したので今年は体調管理には相当気をつけたつもりが、やはり直前に風邪をこじらせて肺炎を発症。

我ながら全く学習しません。

しかも今年はチームを組んでの参加。自分ひとりなら自業自得で済みますがが、人様の足だけは引っ張ってはならない。いつもは飲まない抗生物質を飲み、高濃度ビタミンC点滴をし、酸素カプセルに入り、ひたすら休んで渡仏の日を迎えました。

さて当日。集合地のジュネーブ空港で皆さんをお迎えすべく一番乗りで到着する予定が、フライト遅延のため一番遅い便になってしまい…まあ、私らしいスタートと言えましょう。

今回Team Bravoメンバーとなった広里さんと久保田さんは、チームメイト募集の開始直後に真っ先に参加を表明された二人。

たくさんの問い合わせを頂いた中で、このお二人は詳細も訊ねず「ぜひ参加させてください」でした。

私たちの描いたストーリーが特別な意味を持って響いたのでしょう、これぞご縁というもの。

自転車と人生についての深い想いが綴られた自己紹介文が添えられ、私達もこの方達となら楽しいチームが組めそうだ、と直感で決めました。

そしてその直感は間違っていませんでした。

しかし七ヶ月間かけてトレーニングのアドバイス、情報共有、キックオフ会など、交流を深めてチームビルディングが順調に出来上がっていった末に私の体調不良とは。とほほ。

「遠慮なく私を置いてみなさんはゴールに向かってください」という私に

「そんなこと言わないで、一緒にゴールしましょう!」と返してくださるお二人(涙)

私という人間は誰かのハンデになってその人の経験値を高める役割なのだ、と開き直って前向きに考えるしかありません。

数年前、ベルナール・イノーさんと数名でライドをした時のこと。全日本選手権で優勝したばかりの佐野淳哉選手ほか、走れる男子に混じって走れない紅一点の私。当然ついていけず置いていかれましたが、しばらくしたらイノーさんが戻ってきて「一緒に走ろう!」と声をかけてくださいました。

イノーさん曰く「速く走りたければ脚の揃った仲間とだけ走ればいい。脚力の異なるメンバーで走る時は、必ず一番走れない人を思いやって走らなければいけない。疲れていないか、安全に走れているか。強者は弱者を助ける責任があるし、そこには相互の成長と感謝がある。グループライドは全員一緒にゴールしてこそ楽しいし、意味があるんだ。」

足を引っ張るだけの私でも存在する価値があるのだと、イノーさんは教えてくれたのでした。

ベルナール・イノーさんと(2014年)

全員ジュネーブ空港で合流し、アルプスへ!

Team Bravo Etape2019のメンバー

ジュネーブでは全員無事に集合。

トランジットのフランクフルトでリースリングを飲みながらツール観戦をしていたという広里さんと久保田さん、すでにほろ酔い加減にできあがっています。

荷物をレンタカーに積んで、いざアルプスへ。山間部に入ると素晴らしい景色が次々に現れます。

迫り来る荒々しい山肌に圧倒されていると、さらにその奥にひときわ高い山脈が。

「ひょっとしてあれは」

「…モンブラン」

「ですね」

偉容を放つその姿に一同、魅了されます。

1時間半かけて宿に到着。点在する有名リゾート地から離れて森林の中にひっそり佇むツリーハウスが私たちの合宿所です。

男子の憧れ、ツリーハウス

殆どの参加者はスタートかゴールの町に宿を取るけれど、せっかくアルプスまで来て市街に滞在するのはもったいない。

大自然の中、鳥の声で目覚める朝は格別です。

毎朝、久保田さんはテラスでヨガをした後に露天風呂を楽しみ、広里さんはモンブランを眺めながらコーヒーを飲む至福の時間を堪能していました。

広里さん「何もしないで一日ここでぼーっと過ごしたいなあ」

バカンスとは「空っぽ」という意味がありますから、頭を空にしてゆったりと過ごすことこそバカンス。

まさにここはそういう場所。

ツリーハウスから遥かモンブランを望む

初日の朝、近所を散歩しようと麓の小さな町まで降りていきました。カフェが開いていたので入ると、奥には渓流に突き出たテラス席があり、思いがけず美しい景色を堪能。

渓谷を見下ろすカフェで朝のコーヒーを楽しむ

カフェを出て少し歩くと本格的な肉の専門店が目に入り、男性陣は吸い込まれるように入っていきます。

天井から沢山ぶら下がっているドライソーセージ、奥のカウンターに鎮座する立派な肉に釘づけ。

サラダやパテなどの惣菜も美味しそう。

ここで食材を買い込んでその晩はバーベキューをすることに決定。日本より断然安い!さすが農業&酪農大国です。

美味しそうなソーセージや肉が鎮座するショーケース

宿に戻ると、朝食の入ったバスケットが玄関扉にかけられていました。

搾りたてのオレンジジュース、近所の牧場から届けられたフレッシュな牛乳、コンフィチュールも蜂蜜も地元の村で作られたもの。

朝の時間をゆっくり楽しんでから、ウォームアップ・ライドへ出発。

森林浴をしながらテラスで朝食

走ってわかるフランスの自転車事情

シャモニーまでウォームアップライドへ

自転車が文化として認められた国、ロードに限らず様々な種類の自転車が走っています。

車はスピードを落とし、幅を広く空けて自転車を抜いていきます。

サイクリストへのリスペクトがあり、日本のように「自転車ウザい」という意識も、幅寄せされることもありません。

勢いよく私たちの車を追い抜いていったチーム、よく見たらなんとグルパマFDJ。

こんな簡単にプロ選手達のトレーニング風景に出くわすのも、ヨーロッパの旅ならでは。

トレーニング中のグルーパマFDJに出会う

途中でスーパーに寄ってワインを買い込み、モンブランの雪解け水が注ぎ込む川に冷やし置いてからシャモニーへ。

冬季オリンピック発祥の地であるシャモニーは、登山やスキーなど様々なスポーツを楽しみに世界中から人が集まってくる華やかなリゾート地。

夏のヨーロッパらしい賑やかなテラスで昼食をとってから帰路につきます。

川に沈めておいたワインを取りに戻ると…

ない!誰かが見つけて持っていったらしい。

一同の落胆ぶりときたら(笑)…

いやいや、誰かが幸せな思いをしたならそれでいいじゃないの!

気を取り直して再びワインショップに寄って調達し直し。

冷やしておいたはずのワインが…

ツリーハウスのテラスで暮れゆくモンブランを眺めながらのBBQ…楽しみにしていたのに、うっかり私は夕方から寝落ちしてしまい気がついたら午前過ぎ。一口も食べられませんでした(泣)

極上の食材でBBQの準備

2日目も車に自転車を積んでサイクリングへ。

なにせ山間部なのでつづら折れの連続。体調が優れなかった私は次第に気分が悪くなり、途中で薬局に寄って酔い止め薬を購入。これが体に合わなかったらしく、余計に具合が悪くなって苦しみ始め、お医者さんの久保田さんが私を診て「…よくありませんね、全部吐いてしまった方がよいです」。

出すもの出してしまうと次第に吐き気はおさまり、これ以上時間のロスは申し訳ないので「大丈夫です、行きましょう」と車に乗り込む。

「横になってた方がいいですよ!」と久保田さんの指示で後部座席に仰向けになって横たわる。本当に情けない。

しばらくしてふと目を開けると、空を切り裂くような尖った山の連続が窓から見え、”COLD’ARAVIS”と書かれた標識が目に入りました。

これが有名なアラヴィ峠、なんとダイナミックな景観。

三人がライドに行っている間、私は車内から見えるこの一幅の絵画を飽くことなく眺めていました。

アラヴィ峠を車内から眺める

午後はアルベールヴィルへ。

「ヴィラージュ」と呼ばれる会場で登録を済ませてゼッケンを受け取り、リュックサック、ボトルなどの参加グッズをゲット。サイクルキャップも大判振る舞いで配られます。

会場を一通り冷やかしてこの日は早々に戻り、麓の町のレストランで夕食をとって早めに休みます。

明日は、ついにエタップがスタート!

エタップ会場にて

 

松浦まみ

宮澤崇史マネージャー&TEAM BRAVO協働仕事人

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BiCYCLE CLUB 編集部

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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。

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