ORBEA・ORCA M10iLTD-D【ハシケンのロードバイクエクスプローラー】
ハシケン
- 2019年11月20日
スポーツバイクジャーナリストのハシケンによる100kmインプレッション連載。
気になる最新フラッグシップモデル1台を徹底的に掘り下げて紹介。
テクノロジーからライドフィールまで、その特長を明らかにする。
時代は19世紀、1840年にスペインの銃製造業として誕生したオルベアは、1930年から自転車メーカーとして歩みだした。現在では、スペイン最大の自転車総合ブランドとして世界中にファンを持つ老舗だ。
そのオルベアにおいて、レーシングブランドとしての地位を確立した旗艦モデルこそオルカだ。海のハンターことシャチから名を取るオルカ(オルベアとカーボンの造語)は、2003年に誕生以来、じつに16年間にわたりオルベアのトップモデルとして君臨。
ピレネー山脈の麓、自転車競技が盛んなバスク地方を拠点にした地元スペインチームのエウスカルテル・エウスカディの活躍は多くのサイクルロードレースファンの記憶に刻まれている。北京五輪のロードレース制覇をはじめ、グランツールでの栄光も数知れず。
第6世代まで進化を遂げてきたオルカシリーズは、2020モデルでフレーム名がOMXとして生まれ変わりディスクブレーキ専用設計になり、さらなる空力性能と軽量化を追求。これにより、オルカは、軽量オールランダーのO MR、エアロモデルのAERO、そして万能型のOMXフレームというラインナップの拡充を実現している。
今月は、オルカに生まれたニューの実力をあきらかにしていく。
俊敏な反応性から流れる加速性、軽量エアロを追求した新生オルカ
実走派サイクルジャーナリスト・ハシケンが、
スパニッシュブランドに新たに誕生したオルカOMXを徹底インプレッションする。
ディスクブレーキ化とケーブル類の完全内装化は、近年、各メーカーのフラッグシップモデルに課せられた至上命題と言ってもよいだろう。17年めのロングセラーとなるオルカに加わったOMXも例に漏れず、先進性を感じる。
そして、従来のオルカには見られなかったシートステーの位置を下げた設計などエアロダイナミクスを追求した一台へと変貌している。オーダーシステムMyO(マイオー)のオリジナルカラーで彩られたバイクとともに、秋空の中へ駆け出していった。
期待しながらクランクを上死点から踏み込んでいくと、ゼロ発進からの軽やかな加速性能が全身を突き抜けていく。エアロ性能を高めた万能モデルとしては非常に高い加速性能に驚きさえ感じる。まるで超軽量なヒルクライム専用機のようなレスポンスのよさだ。
全体的にパリッと乾いたトーンのカーボンフレームで、パワーの入力に対してタイムラグなくダイレクトに応えてくれるため、ライダーの期待どおりの推進力を発揮して、短時間で高速域へと到達する。ここまでゼロ発進から時速35km超までの加速にパワーを費やした感覚は皆無だ。さっそく、オルベアが開発テーマに掲げる「Less is more(より少ないことは豊か)」を実感するのだった。
オルカらしい路面をしっかりと捉えるエッジの効いたソリッドなフィーリングも特筆すべきだ。ハイパワーでのスプリントにはパワーラインがしっかり作用して、推進力を生み出す。正直、OMXよりも剛性重量比が高いフレームは数あるが、この抜けのよい踏み感は多くのライダーにマッチすることだろう。加速時に無理することなくケイデンスを高めやすかった。
サイクルコンピューターに表示されるスピード表示を目安にしばらく高速巡行を続ける。エアロポジションを取りながら、空気の抜けのよさを実感しながらのクルージングを満喫しつつ、山岳へとシチュエーションを移していく。
変わらず一定トルクでケイデンスをキープしやすく、ディスクブレーキロードのなかでも登坂性能は一級だ。ダンシングに切り替えれば、独自のフロントフォークが力強く路面をキャッチし続けるので、急斜面でも上体の安定を取りやすい。また、最近のディスクブレーキロードには山岳シーンでアタックするようなパンチャー的な走りを得意とするモデルが少ないが、OMXは攻撃を仕掛けたくなる俊敏な加速性能を有している。
ステアリング性能に関しては、鋭さがありピュアレーサーらしさ全開だ。攻撃的なライディングを好むライダーの琴線に触れるだろう。
ひとしきり走り終えて、OMXにネガティブな要素はいっさいなくは好印象。個人的には、ツール・ド・おきなわなど、しびれる展開が続くロードレースで使ってみたくなる一台だ。
一見すると最近のトレンドを全盛りした万能型モデルに感じるが、最大タイヤサイズは32mmとクリアランスは標準的となっている。もはやグラベルロードなのか見分けがつかないほどに守備範囲を広げてしまうトレンドには乗らずに、あくまでピュアレーサーたちが求める性能を冷静に取捨選択した、潔いロードレースモデルといえるのではないか。
INFO
オルベア/オルカ M10iLTD-D myOカラー
完成車価格:111万9000円(税抜)
フレームセット価格:44万円(税抜)
■フレーム:オルベア・オルカOMXカーボン
■フォーク:オルベア・オルカOMXカーボン
■コンポーネント:シマノ・R9150デュラエースDI2
■ハンドル:OC2ロードカーボン
■ステム:オルベア・ICR -8°
■ホイール:マヴィック・キシリウムプロカーボンディスクUST CL
■タイヤ:マヴィック・イクシオンプロ(25C)
■サイズ:47、49、51、53、55
■カラー:MyOオーダーカラー
■完成車実測重量:7.2kg(53サイズ・ペダルなし)
GIOMETRY
テクノロジー詳細!
細部までエアロと軽さを追求し、オルカ史上最高の万能性を獲得
エアロダイナミクスと軽さを追求したオルカの新型モデル。
「オルベアコクピットシステム」など新機構を搭載するオルカのニューモデルのテクノロジーに迫る
初代オルカから数えて7代めとなる新型オルカは、空力性能と軽さを追求した万能型モデルを目指して開発された。フレームはオルカ初となるディスクブレーキ専用モデルとし、ICR(インターナルケーブルルーティング)を実現。フレーム設計は後ろ三角をコンパクトにし、チューブの後ろ断面をフラット気味に設計した最新エアロチューブを特徴とする。
また、「オルベアコクピット」と呼ばれるフレームとインテグレートされた専用エアロステムを開発。ディスクブレーキホースやシフトケーブルはハンドル下部を伝い、ステム内部そしてフレーム内部を通る。
このほか、独自の内蔵式シートクランプは前作比で20%のコンパクト設計を実現する。D型断面のエアロシートチューブも新型オリジナル設計だ。
エアロと軽さを高次元で追求しており、前作と比較して空力性能を10%向上させつつ、フレーム重量は796g( 53サイズ)に抑えることに成功している。
一方で、フレーム剛性はダウンチューブからBBエリアにかけて15%高めとなっており、プロフェッショナルライダーが求めるパワフルな動力伝達性も獲得したエアロ軽量レーシングモデルになっている。
セッティングの自由度を残すオルベアコクピットを新採用
エアロダイナミクスを高めるフリーフローフォークの採用
最大タイヤ幅32mmに対応し走行性能を高めるフォーク設計
フレーム単体796gを実現する新型エアロフレーム
空力性能と快適性を高めるコンパクト設計のリアバック
前作比マイナス20%の小型化を実現する独自機構のシートクランプ
空力と軽さを追求するD型エアロシートチューブ
BB幅を最大化するBB386を採用
高い反応性を生むチェーンステー
IMPRESSION RIDER
ハシケン
問:サイクルクリエーション http://cyclecreation.co.jp
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