SCOTT・ADDICT RC PRO【ハシケンのロードバイクエクスプローラー】
ハシケン
- 2020年03月18日
スポーツバイクジャーナリスのハシケンが、今もっとも気になる最新モデルをピックアップ。
テクノロジーの詳細はもちろん、前モデルとの比較など徹底的に掘り下げて紹介。
100km走行から感じたライドフィールを明らかにする。
軽量モデルの代名詞がエアロ武装により5年ぶりに刷新
2000年代以降、軽量化という開発テーマはレーシングバイクを飛躍的に進化させてきた。それを牽引したきたブランドこそスコットだ。
ブランドの歴史を振り返ると、1958年にスキーのポールメーカーとして事業を始め、自転車業界への参入は1987年からになる。そして、2年後のツール・ド・フランス、最終ステージの個人TTでグレッグ・レモンが大逆転勝利を収める。このとき、TTバイクに装着されていたのが、スコット製のDHバーだった。
そして、2000年に入ると、カーボン素材を駆使した冒頭の軽量化時代が始まる。なかでも、2007年に誕生しフレーム重量790gを実現したアディクトは軽量ロードのベンチマークとして輝きを放つ。当時、年間132勝をあげるなど最強チームであった「HTCコロンビア」の活躍を支えてきたことをレースファンなら覚えていることだろう。
この名機が2020モデルとして5年ぶりにフルモデルチェンジを果たし、第3世代へと進化した。時代は軽量化からエアロ化へと移り変わったが、空力性能と融合しながら新型アディクトはベールを脱いだ。今月はそのテクノロジーや実力を明らかにしていく。
TECHNOLOGY 【テクノロジー詳細】
6年ぶりに生まれ変わった軽量万能モデルのアディクト。空力性能を追求しつつ、
さらなる軽量化も実現させた新型のテクノロジーにフォーカスする。
システムインテグレーションによる軽量化と空力性能の獲得
新型アディクトはディスクブレーキモデルだけで開発された。素材も従来の廉価なHMFカーボンを廃して、高品質なHMXとHMX‐SLの2グレードを採用。ともに高剛性を実現できることで細部まで軽量化を可能にし、アディクトの軽さをもたらしている。なお、ミッチェルトン・スコットチームはHMXカーボンモデルを使うが、さらに軽量なHMX‐SL採用の最上位モデルも展開する。
軽さと同時にトレンドである空力機構も融合。最大のトピックはケーブルインテグレーションの実現だ。まずハンドルにはクリストンiC1・5ハンドルバーを採用し、ヘッドは特許を取得している「エキセントリック・バイクフォークシャフト」機構により、各社が試行錯誤する内装ケーブルルーティングをスマートに実現。
フレーム形状は、エアロロードのフォイルでおなじみの「F‐01」エアロフォイルデザインを多用し空力性能も高める。
ジオメトリーは、ミッチェルトン・スコットチームによるプロトタイプでのテストを経て、前作アディクトとフォイルのレーシング設計の延長線上でベストな数値を導いた。前作よりもアグレッシブな姿勢を取りやすく設計される。
軽量で強靭なプロ仕様のHMXカーボンを採用
一体型ハンドル「クレストンiC SLカーボンコンボ」を開発
ケーブル内装化を実現する新機構へと刷新
エアロカバーと独自構造の融合で軽量化
独自の「F-01」エアロフォイルチューブを採用
コンパクトに再設計したリアバック
エアロシートピラーと超軽量シートクランプ
オリジナルハンガー構造で細部まで軽量化
GEOMETRY
100km IMPRESSION 【100km徹底乗り込みインプレッション】
軽量モデルの代名詞であるアディクトが、大幅な空力機構を取り入れて生まれ変わった。
その実力はいかに。実走派ライター・ハシケンが100km徹底インプレッション。
軽量モデルらしからぬ万能性を備えつつも、登坂への対応力は輝きを失っていない
ブレーキシステムがディスクブレーキへ切り替わる時代、ロードバイクの剛性は高まる傾向にある。スルーアクスル化だけでなく、ディスクブレーキの性能を引き出すホイールシステムの変更も影響している。
今回の新型アディクトも例にもれず、以前よりもより骨太で力強さを備えていた。しかし、それだけではあまりに表面的なインプレッションだ。さまざまなシチュエーションのなかで乗り込むことで、新型モデルならではの気づかされる点が多くあった。
まず、初速性能は高いレベルにある。ペダルの入力に対してダイレクトでBB剛性の高さも実感しながら、パワフルに加速していく印象だ。ただし、バイクの全体の硬さに身体がダメージを受けることはなく、力をスムーズに推進方向へと変換してくれる。
ライド中、気づけば時速35kmを超え、時速40kmの壁もさほど感じさせない加速性能とペダリングのしやすさを終始感じられた。
最先端のエアロコクピットへ進化したヘッドまわりも剛性を高めており、とくにフロントフォークの安心感は強い。アディクトは軽量ラインではあるが、操縦性がシビアではなく、とてもニュートラルでコントロールしやすい。
これはプロ選手はもとよりホビーレーサーの安心材料になる。とくに、タイトコーナーや高速ダウンヒルのシーンでは軽量モデルであることを微塵も感じさえない安定性を主張してきた。
ふと、以前所有していた初代アディクトを思い出した。当時、量産フレーム最軽量だったアディクトは、高い登坂性能にフォーカスされる一方で、それに負けない万能性を備えていた。
振り返れば、ヒルクライムレースで勝てるだけでなく、ツール・ド・宮古島の勝利、ツール・ド・おきなわ市民210kmでの上位リザルトなど結果を残せた。その万能性は第3世代のアディクトにも継承され、最先端のエアロ機構も融合して磨きがかかっている。
一方、アディクトの存在意義を示す軽さはどうだろうか。ディスクブレーキ専用、エアロチューブの採用など質量の軽さに対してはネガティブ要素が増えるなかで、登坂でも背中を押してくれる進みのよさは健在だ。
しかも、高ケイデンスだけでなく、ある程度トルクフルに踏み込んでも推進力を得られる。ダンシングにも気持ちよさを感じることができる点は、エアロロードにはない軽量ロードの魅力だ。
完成車スペックの足まわりは、あくまで万能性にフォーカスした仕様だ。ヒルクライムに特化させるなら、今より軽量なタイヤにカスタマイズが必要だろう。
エアロロードのフォイルと性能比較をすると、両者ともに万能性が高いためクロスオーバーする部分が多い印象だ。そのなかで、新型アディクトを選ぶ理由は、やはり登坂への優れた対応力といえそうだ。
初代アディクトから変わらぬ軽さと剛性の両立は、新型アディクトを走らせたことで、さらなる成長を感じさせた。
INFO
スコット/アディクトRCプロ
完成車価格:87万8000円(税抜)
■フレーム材質:HMXカーボン
■フォーク材質:HMXカーボン
■ハンドルバー:シンクロス・クレストンiC SLカーボンコンボ
■ヘッドセット:シンクロス・アディクトRCインテグレーテッド
■シートポスト:シンクロス・ダンカンSLエアロ
■コンポーネント:シマノ・デュラエース R9100
■ホイール:シンクロス・キャピタル1.0 35 ディスク
■タイヤ:シュワルベ・ワンV-Guard Fold(28C)
■完成車実測重量:7.18kg(Mサイズ・ペダルなし)
問:スコットジャパン www.scott-japan.com
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