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どうなる? どうする? コロナ後の世界|自転車界の行方【 #RideSolo】

5月2日にスペインで、さらに4日にイタリアでも外出が制限付きで許可された。11日からはフランスもこれに続く。ここではUCI公認選手代理人で欧州自転車事情に詳しい山崎健一さんが、欧州のサイクリング事情、外出自粛、その後のレース界、さらに都市交通として巻き起こる自転車待望論についてお伝えする。

※メインカットはイタリア・フェストレ(ベネト県)でのロックダウン明けの初日のサイクリストの様子。PHOTO:Anna Valerio for Sportful Dolomiti Race

欧州ではようやく屋外自転車トレーニングが解禁へ

まず初めに、新型コロナウイルスの犠牲となられた世界中の皆様のご冥福をお祈りすると共に、愛する方々を失くされた皆様方に対し心よりお見舞いを申し上げます。

世界で最も新型コロナウイルス(COVID-19)の被害を被っているヨーロッパ諸国では、ウイルス撲滅&医療崩壊緩和に向けて、3月中旬ごろから大胆な「外出制限」が施行されました。特に厳しい外出「禁止」措置を取ったイタリア、フランス、スぺインでは、許可のない外出者に少なくとも日本円にして約15,000円の罰金が科される事に。

コロナへの危機感が少ない地方都市をも対象とする全国的な外出制限のため、施行開始翌日のフランスではなんと約4,000人が検挙&罰金が科される始末に。都市部だけの問題だ!なんてコロナを舐めてかかっていた人々の眼を覚まさせるのに十分なインパクトを与えました。

当然サイクリストも例外ではなかった

フランス政府が出したコロナ禍に於けるサイクリングガイド。「一日1時間、自宅から1㎞以内での健康維持、及び仕事などでの移動手段ならばOK。スポーツ&レジャーとしてのライドは禁止」

イタリア&スペインでは、プロアマ問わず屋外でのライドが完全に禁止に。フランスでは単独/自宅から1㎞の範囲内/一時間に限っての屋外健康維持ライドのみOK。イギリス&ドイツ政府は屋外サイクリング自粛要請を出すに留まりましたが、各自治体が自転車乗りが集いそうな峠などを独自に通行止めにして、サイクリストの流入を制限。

このように自転車の本場である欧州のサイクリストでさえも、厳しい走行制限下に置かれていました。

緩急の違いはあるものの、各国が自転車による外出禁止・自粛を要請した最大の目的は、急激なウイルス罹患者増加で逼迫した医療現場に、落車で怪我をしたサイクリストを送り込まない様にするためです。もちろん外出する事によりサイクリスト自身がウイルスに感染するというリスクも無きにしも有らずですが、やはりスポーツとして自転車に乗る人口が多い欧州では、「落車」が最大の懸念だったわけです。

そんな欧州も感染者数の鈍化や経済封鎖への限界を背景に、5月上・中旬より段階的に外出制限を解除し、徐々に経済活動を再開する段階に入ってきました。職業サイクリストにとっては、スペイン+イタリア&フランスがそれぞれ5月4日&5月11日から屋外での単独走行トレーニングを解禁。現状では9月ごろに再開予定のレースに向けての計画を立てられるようになり、ようやくトンネルの出口が見え始めてきました。

イタリアでは5月4日に7週間ぶりの解禁

ジロのバーチャルレースに参加したエリア・ヴィヴィアーニ(チーム・コフィディス) PHOTO:RCSsport

欧州で最もコロナの被害を受けたイタリアにおける、屋外自転車ライド解禁への例を見てみましょう。

1月30日にイタリア北部で初の感染者が発見されたのを皮切りに感染者数は急速に増加し、2月21日にはとうとう北部地域の一部がロックダウン(都市封鎖)されます。とはいえ、その間も封鎖区域内であれば自転車での外出は厳しい制限を受けていませんでした。

しかし3月9日に発効された全国規模の外出禁止令で様相は一変。生活維持活動(行政・医療関係者)以外の“あらゆる”屋外での自転車ライドが禁止となりました。世界チャンピオンだろうが、五輪代表選手であろうが例外なくNGです。ルールを破って警察に捕まった場合の罰金額はなんと3,000ユーロ(約35万円)。

そんな厳格な禁止令発効からの暗黒の7週間ののち、ようやく5月4日より段階的にソロでのトレーニングライドが解禁されました。

7週間ぶりに外で走る事が出来た解放感を、イタリア人プロ選手のエリア・ヴィヴィアーニ(チーム・コフィディス)はこう語ります

「サイクリングとは“自由”を意味するもの。この世で唯一無二のものなんだ。しかし我々は頭をフル回転させて新型コロナウイルスとの戦いを続けていかねばならない。まだ戦いは終わっていないんだ。」

まだまだ新型コロナウイルスを封じ込めるための根本的な解決策が見つかったわけでありませんが、人類は「ソーシャル・ディスタンシング」(他者との距離を取り、接触を最小限にする)対策を十分に意識した「新しい生活様式」の中で生きていく覚悟を固め始めてきたようです。

そのような新しい生活様式の中では、当然自転車界に住む我々から見える景色も異なるものになるはずです。

イタリア、ヴィチェンツァ(ベネト県)に住むバッソバイクに務めるジョシュア・リドルさん。自転車乗るのは仕事に行くときと、トレーニングするときは許される。ただし、移動できるのは自分の町の制限内で、人と一緒に走ることは許されないという。PHOTO:bassobikes

欧州主要国に於ける新型コロナウイルスに係る「外出禁止」等状況(5月4日現在)

国名 死者数/感染数(約) 人口(約) 外出制限
開始日
外出制限の種類
(生活必需品等の買い出し外出を除く)
自転車の外出制限度
(社会維持活動従事者を除く)
中止・延期となった
主なイベント(5月4日現在)
イタリア 2.9万/21万 6,000万 3月9日 外出禁止
(違反時は罰金)
屋外でのスポーツ&レジャー目的ライド禁止 ・「ジロ・デ・イタリア」(延期)
・サッカー「セリエA」(中断中)
・カーニバル「ヴェニス・カーニバル」
イギリス 2.85万/18.5万 6,800万 3月20日 外出自粛要請 厳格な禁止はないものの、自粛要請有。 ・サッカー「プレミアリーグ」(中断中)
・テニス「ウインブルドン」(中止)
・「ツール・ド・ヨークシャイア」(中止)
スペイン 2.5万/24.5万 4,700万 3月14日 外出禁止
(違反時は罰金)
屋外でのスポーツ&レジャー目的ライド禁止 ・「ブエルタ・ア・エスパーニャ」(延期)
・サッカー「ラ・リーガ」(中断中)
フランス 2.5万/13万 6,700万 3月17日 外出禁止
(違反時は罰金)
屋外でのスポーツ&レジャー目的ライド禁止。
しかし1日に1回1時間、自宅から1㎞範囲以内に於ける単独・家族での健康維持ライド、及び業務移動で必要な場合のみ容認。
・「ツール・ド・フランス」(延期)
・サッカー「リーグアン」(中止)
・テニス「ローラン・ギャロス」(延期)
ドイツ 0.6万/16万 8,300万 3月18日 外出自粛要請 単独、または家族での健康維持ライドは容認 ・サッカー・「ブンデスリーガ」(中断中)
・フェスティバル「オクトーバー・フェスト」

自転車ロード「競技界」に長い冬が訪れる覚悟を

本来ならば開幕していたジロ・デ・イタリア。コロナ禍による世界経済衰退は、五輪金メダリストを擁するプロチームでさえも存続の危機へと陥れようとしている。 PHOTO:RCSsport

まずは残念なお知らせからしなければなりませんが、コロナ禍は世界自転車ロード競技界に史上最大の試練を課す事になりそうです。

世界自転車ロード競技界の経済構造は極めて脆く、プロチームやレース主催者の99%は民間企業スポンサー財源&自治体等のスポーツ文化補助金に頼って存続しています。他のスポーツに見られるような、レースのTV放映権がチームに分配されるシステムも存在しません。

更に、これまではロードレース大会の売りであった、国際色豊かな観客たちが至近距離で選手に接することが出来るという開催形態も、「ソーシャル・ディスタンシング」が謳われるコロナ直後に於いては、見直しが余儀なくされそうです。

よって、世界中のあらゆる企業が経済的被害を被ったコロナ禍の後における企業スポンサー費用の激減は避けられず、確実にチーム&レース数が減少します。チーム&レース主催者からの登録料が運営予算の大半を占めるUCI世界自転車競技連合も、助け舟を出せる余裕はまず無いでしょう。

実際、3月にはリオ五輪金メダリストであるフレフ・ファン・アヴェルマートを擁するトッププロチーム「CCC」でさえも来期からの存続に黄信号を灯し、その他多くのプロチームも選手&スタッフの給与を既にカットし始める始末。ロード競技界の脆さは長年指摘され続けてきましたが、いよいよ待ったなしで根本的な改革が必須に。

これからプロ選手を目指す選手たちにとっても、確実にプロ選手への門が狭まるため、自身の実力や将来の生活をシビアに見据えた、現実的なキャリアプランの構築が必要です。

欧州のコロナ収束後に於ける出口戦略
「移動手段としての」自転車待望論

「外出制限解除:自転車専用の大通り出現」との見出しが、躍る5月4日版仏「リベラシオン」紙の表紙。写真は正にパリのど真ん中に位置するリヴォリー通りを走るサイクリスト。ツール・ド・フランス最終パリステージのゴール数キロ前にあたるあの場所だ。

いっぽう、移動手段並びにレジャー&健康促進としての自転車には、かつてないほどの追い風が吹く兆候が現れています。

元来、欧米諸国では自家用車の排気ガスによる公害削減にあたって、バスや電車などの公共交通機関利用を市民に勧める事が「正義」とされてきました。しかし、コロナ禍による全世界的な「ソーシャル・ディスタンシング」意識の高まりと共に、様相は一変。3密がどうしても避けられない公共交通機関の使用は市民に敬遠され、行政も推しにくい。結果として、既に欧州ではそれなりに市民権を得ていた「移動手段としての自転車」が、より徹底的に都市部の交通手段として推奨される流れが出てきています。

フランスでは自転車修理補助金として1人あたり6000円支給

フランス政府は5月11日の外出禁止令解禁に向けて「自転車は人々の密集を避けるのに最適な交通手段である」と断言。手始めとして、より多くの国民に自転車を促すべく「自転車修理補助金(50€=約6,000円)」の支給を発表。

更にフランスのパリ市では、市民に自家用車と公共交通機関の使用を敬遠させるべく、5月11日の「外出禁止令解除」時を皮切りに、パリのど真ん中であるルーブル美術館周辺道路への自家用車進入禁止計画(バス・タクシーはOK)をぶち上げました。これは元々存在した10年を要するレベルの計画でしたが、コロナ後のサイクリスト激増を見越して、大幅に前倒しして実行する勢い。

パリのアンヌ・イダルゴ市長は「コロナ後に自転車で通勤する人々が激走する中で、排気ガスや自転車の行動範囲を狭める自家用車が街を走り回るなんてとんでもない。自転車に乗りながら車の排気ガスとコロナウイルスが混ざった最悪のカクテルを吸いたいなんて誰が思うのよ!」と息巻きます。

イギリスにおいても同様のシナリオが進む

コロナウイルス感染から生還したボリス・ジョンソン英首相は、5月1日に開催されたイギリス国内主要都市市長たちとの電話会議で「コロナ禍で衰退した経済を迅速に回復させるためには、国民が安心出来るクリーンでエコな交通網の推進が必要。その実現のために都市部に於ける自転車の交通インフラを強化し、自家用車の削減を更に進めて欲しい。」と通達。

既にイギリスの首都ロンドンは慢性的の大渋滞を緩和する目的で、市内を走る乗用車に一律の「渋滞税(コンジェスチョン・チャージ)」を課している事で有名ですが、更に脱自動車を進める構え。

ちなみに体格がスリムとは言えないボリス・ジョンソン首相との会議に参加したある市長によると、ジョンソン氏が自転車推進策を強硬に進めたがる背景には、肥満による免疫力低下が自身のコロナウイルス感染を招いたと感じているためだとか?

何はともあれ、フランス&イギリスに見られる様な:

「ソーシャルディタンシング実現のための脱公共交通機関推進」

「自転車移動の推進」

「自転車の安全を妨げる自動車の排除」

の流れがコロナ後の世界的なトレンドになりそうです。

日本にも到来する自転車待望論の前に大胆な自転車政策が必要になる

コロナ収束後に於ける出口戦略時期に持ち上がる「電車の替わりに自転車」という自転車望論を実現するには、レーンを増やすなどのほか、思い切った安全対策を盛り込んだ政策が必要だ。日本の都市部でいまの制度のまま自転車利用者が激増することは、危険な状態を生むことになりかねない。

この世界的なサイクリストへの追い風のうねりは、これまで煮え切らなかった日本でのサイクリスト市民権獲得運動にも当然追い風となってくれるはず。まずは欧米の都市部で当然のものとなっている、「バス自転車共用レーン」の更なる導入や、都市部への自動車流入を挫けさせる目的での「既存自動車レーンの、自転車レーン化」等の大胆な施策を導入するチャンスなのかも知れません。

ただし、いまの日本の体制のまま、野放図に自転車利用が推奨されることが「危険」ということは間違いありません。いまから早急に自転車の安全対策、駐輪場のスペース確保も進めなければなりません。

編集部では“RideSolo”(ライドソロ)をお薦めします

世界中で「ロックアウト(都市封鎖)していない自転車に乗れる国や地域」では、社会的距離をとるために「一人で走る“#RideSolo”(ライドソロ)」が、感染拡大を防ぎつつ健康的に欠かせない運動として自転車に乗る上でキーワードとなる。

この先、各国、地域ごとの事情。そして刻一刻と変化すると状況は変化する。さらにそれぞれ置かれた立場が異なるのでこの“ライドソロ”がいつまでベターな方法かはわからない。今現在(5月5日)、編集部では感染が広がりつつつある地域でできることは、集団ではなく、一人で安全に自転車に乗ることだと考えている。

ただし、これは自主的なもので、決して他人に強要したり非難するものではない。あくまでも安全で、健康的に自分たちが走り続けられる環境を維持するために、自分たちができる行動をしようというものだ。

いままでクルマ、自転車、そして歩行者の間は安全のため距離1.5mが求められてきた。そしてCOVID-19の感染拡大対策として、さらに人と人と社会的距離(SOCIAL DISTANCE)も求められる。そのキーワードが”#RideSolo”だ。

最後に、基本は健康で安全であること。住んでいる国や地域の自治体からの要請、指示に従うことが前提であることをあらかじめ付け加えさせていただきたい。編集部でもひきつづき#RideSoloをキーワードにヒントとなる情報をアップデートしていく。

※新型コロナウイルス(COVID-19)に関する最新情報は 厚生労働省 や 首相官邸、お住まいの各自治体など公的機関の情報でお確かめください。

参照
厚生労働省「新型コロナウイルス感染症について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html

首相官邸
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/coronavirus.html

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PROFILE

山崎健一

Bicycle Club / UCI公認選手代理人

山崎健一

UCI公認選手代理人&エキップアサダマネージャー。日本人選手の育成に尽力し、プロ選手からの人望も厚い。バイシクルクラブ本誌では連載「フ●ッキンジャップくらいわかるよ、コノヤロウっ!」を担当。

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