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クルマと自転車の距離は1.5m! 自転車事故多発だったスペインの安全対策とは?

サイクリストの心配事の一つは、「道路を安全に走ることができるか」ということではないだろうか。スペインでもサイクリストが交通事故の被害にあうニュースは珍しくなく、2019年には40人のサイクリストが路上で命を失っている (※1)。今回の記事では、スペイン在住のジャーナリスト、對馬由佳理がスペインにおけるサイクリストの安全対策についてレポートする。

#PorUnaLeyJusta運動による法律改正

Photo by Yukari TSUSHUMA.

プロ・アマ問わずたくさんのサイクリストが活動するスペイン。同時に、毎年多くのサイクリストが交通事故による被害者となっています。2016年にはスペイン・アリカンテでトレーニングをしていたジャイアント・アルペシンの男子選手6人が交通事故に遭い、当時このチームに所属していたジョン・デゲンコルブ選手が指を切断しかねないほどの大怪我を負いました。

悲しいことに、かつてこうした車とサイクリストの衝突事故が起こった際には、多くの運転手はサイクリストを助けず、そのまま逃げてしまうことが頻繁にありました。

しかし、そうした流れに対し、スペインの国会は2019年にひき逃げした車の運転手への罰則の強化に踏み切ります。そして最終的には法律が改正され、下記の罰則が定められました。

・ひき逃げ事故により複数の死亡者があった場合には、運転手に対して最大で9年間の懲役を課すること。
・死亡者がなかった場合でも、ひき逃げによる被害者があった場合には、運転手に最大で4年間の懲役を課すること。

この法律改定の原動力となった人物が、スペイン人のアナ・ゴンザレス氏です。彼女の夫は2013年に自転車でマドリード近郊を走行中にトラックにひき逃げされ、亡くなりました。その後事故を起こしたトラックの運転手は警察に逮捕されますが、わずかな罰金を払い、逮捕後数時間で釈放されたのです。
こうした経験から、ゴンザレス氏は#Por Una Ley Justa (ポル・ウナ・レイ・フスティシア)という社会運動を展開します。この運動の最大の目的は、スペインの道路交通法を改定し、ひき逃げ事故をおこした運転手への罰則を強することでした。

彼女の呼びかけに、元プロ・サイクリストのアルベルト・コンタドール氏やホアキン・ロドリゲス氏など多くの人々が賛同し、この運動をバックアップしました。
彼女の活動の結果、2019年にスペインの道路交通法が改定され、ひき逃げ事故を起こした運転手への罰則が強化されました。その一方で、この法律改定とほぼ同じ時期に、スペインでサイクリストを事故から守るもう一つのキャンペーンが発生していたのです。

1.5mキャンペーンとサイクリスト優先道路

1.5mキャンペーンを伝えるスペインの標識。Photo by Yukari TSUSHIMA.

そのキャンペーンが “Distancia Lateral 1.5m(ディスタンシア・ラテラル・1.5m)”と呼ばれるものです。このキャンペーンの内容は、「自動車がサイクリストを追い抜くときには、両者の距離を最低でも1.5mは開けましょう」というものです 。スペインではこの数年でこのキャンペーンが広く認知されるようになり、このキャンペーンのステッカーを張っている車を街中で見かけることも珍しくなくなりました。
もちろん、サイクリストが頻繁に通る場所では、このような大きな看板が設置され、自動車に注意を促します。

祝祭日の9時~14時までサイクリスト優先道路となる示す標識。Photo by Yukari TSUSHIMA

この写真は、スペイン郊外でよく目にする看板です。祝日の9時から14時の時間帯にこの先6kmほどの道路は、サイクリスト優先道路となることが示されています。こうした道路の設置により、サイクリストたちがより安全に走ることができるようになったのです。

「自転車学校」の役割

スペインの「自転車学校」で練習する子供たち。Photo by Yukari TSUSHIMA.

そして、サイクリストの事故を防ぐもう一つの手段として、スペイン各地に存在する「自転車学校(エスクエラ・デ・シクリズモ)」が果たす役割にも注目すべきでしょう。

スペインではプロ・サイクリストが現役を引退すると、自分の地元で「自転車学校」を設立することが頻繁にあります。こうした「自転車学校」に入学するのは主に6歳以上の子供たちです。そして、元プロサイクリストが先生役となり、子供たちに自転車の乗り方を教えます。
多くの「自転車学校」で先生が子供たちに一番最初に教えることは、「自転車に乗るときには必ずヘルメットをかぶること」です。そして子供たちは最初の1年間で、基本中の基本である自転車で「走る・曲がる・止まる」ことをしっかりと学びます。

こうした基礎的なトレーニングは、たとえプロの選手にならなくても、サイクリスト自身の安全を守る有効な手段となります。また、たった1年間だけでもこうした場所で自転車の乗り方について学んだ子供は、その後大人になり自動車を運転するときでも「道路にはサイクリストがいるものだ」という認識を持って、車を運転するようになります。

スペイン各地にある町の「自転車学校」は、「プロサイクリストを発掘し、育てる場」であるだけではなく、長い目で見た「自転車との付き合い方」を子供たちに教える場でもあるのです。

多方面からの対策が必要

スペインのとあるサイクリストが次のように話していたことがあります。「自分の子供に『将来サイクリストになれ』なんて言えないよ。だって今の道路状況が危険すぎるもの。」この言葉の通り、いまだにスペインでは交通事故にあうサイクリストが多いのも実情です。しかし、その一方で、サイクリストの安全対策が、法律面・インフラ面・教育面と多岐にわたるアプローチによって実行されています。
誰もが安全に自転車を楽しむことができる日がくること、それが多くのスペインの自転車関係者の願いなのです。

注1 スペイン内務省の統計より スペインの総人口は4693万人で交通事故による死者数は1098人(2019年)。ちなみに日本の人口は1億2,596万人で交通事故による死者数は3215人(警察庁資料より)
http://revista.dgt.es/es/noticias/nacional/2020/01ENERO/0102balance-accidentes-2019.shtml#.Xr1TOdtS81h

著者紹介
對馬由佳理
スペイン在住。当地で10年以上ファンとして自転車レースを追いかけた後、ジャーナリストへ転向。スペインで開催される男子のレースはもちろん、女子のレースやパラサイクリングも取材経験あり。
Twitter: @TsushimaYukari
Instagram:yukaritsushima1

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BiCYCLE CLUB 編集部

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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。

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