エアロと軽さを両立させた最強のヒルクライムバイク|トレック新型エモンダ登場!
Bicycle Club編集部
- 2020年06月18日
INDEX
トレックから最強のクライミングバイク、新エモンダが発表された。
新型エモンダは前作同様の軽さはそのままに空力性能を高めるために、新素材のOCLV800カーボンを採用。
新ジャンルともいえる軽量エアロロードの新たなベンチマークとなるバイクの誕生だ!
エアロをまとった最強クライマー!
トレックの誇る軽量バイクのフラッグシップ、エモンダSLRが待望のフルモデルチェンジを果たした。
2014年に極限までぜい肉をそぎ落とした軽量バイクとして初代がデビュー。2017年に発表された2代めもさらなる軽量化と剛性の確保、つまり正常進化を進め、トップクライマーからアマチュアまで多くのライダーに支持されてきた。そして登場した3代めには、これまでの軽さと剛性のほかに空力性能という新たな要素が追加された。
軽量バイクで常について回るのが完成車で6.8㎏というUCIレギュレーションだ。現代のロードバイクではこの数値をクリアすることは容易で、技術的には軽さの追求はすでに不要になっているといえる。軽さと剛性のバランスにおいて、すでに完成の域に達していた前作を上まわる性能を与えるため、トレックが選んだのが空力性能をさらに高めたフレーム形状の採用だ。
だが空力性能に優れた形状を作り出すためには必然的にフレームのボリュームも増加し、そのままの手法では重量の増加を避けられない。また前作の時代とは異なり、重量面でハンデのあるディスクブレーキモデルのみの展開になっているという側面もある。
これらを解決するために採用されたのが新開発のOCLV800カーボンだ。2年の開発期間をかけて完成した新素材は従来比で30%も強度が高められており、全面的に空力性能に優れたKVF形状を採用。ケーブルの内装工作や新型のT47BBを盛り込みながらも700gを切る前作同等のフレーム重量を実現した。同時にミドルグレードのエモンダSLも6年ぶりの全面刷新を果たした。
エアロロードやTTバイクで使用される
KVF形状を全面的に採用!
エアロロードのマドンやタイムトライアル&トライアスロンバイクのスピードコンセプトと同様の開発プロセスである、ライダーが乗車した状態を想定したコンピューター上のCFD解析に加えて、風洞実験も繰り返して生まれたエアロ形状を採用する新型エモンダ。翼断面の後端をカットしたKVF形状は横風に強く、最も抵抗値の大きくなる右側20度からの風に対しても、前作が1300gのドラッグ値であるのに対して、新型は1000gを切る低い空気抵抗を実現した。
後述する新型のハンドルバーやホイールによる効果も合わせて、勾配0%の平坦路で1時間あたり60秒、8.1%の上り勾配でも1時間あたり18秒を短縮する空力性能を確保した。これは350Wで走行したときの比較データとなる。
車重6.8㎏のUCI規定に合わせたバイクでは、上りにおいてもエアロダイナミクスの追求が有効であることがデータの面から実証されたのだ。
前作から大幅に変更されたKVF形状のフレーム断面
チューブにKVF形状を採用した。重量面では不利になる構造だが、OCLV800カーボンによってほぼ同じ重量を達成。仮にOCLV700カーボンで同じ形状にした場合よりも60g軽くなるという
OCLV800カーボンとは?
トレックが培ってきた30年近い経験を元にアップデートが繰り返され、新型エモンダにはそれまでの最高峰であった700シリーズよりも強度を30%高めた800シリーズOCLVカーボンが採用される。
エモンダと同時開発の一体型バーステム
空力性能を高めながら車両重量をUCI規定の6.8㎏ギリギリまで抑えるために、新型エモンダではパーツ類の開発も同時進行で行われた。エモンダSLRに標準装備されるアイオロスRSLバー/ステムは、正面からの風を受けるハンドル上部をフラットに成型することで空気抵抗を軽減。
ステムも合わせてカーボンで一体成型することで軽量化にも貢献する。ケーブル類についても露出部分を最低限にしたセミ内装ケーブルルーティングを採用した。これにより完全内装では犠牲になりがちなメンテナンス性もスタンダードなロードバイクと同水準を確保した。また通常のハンドルバーとステムも使用可能な汎用性を持ち合わせているのが特徴だ。このハンドルは単品でも販売され、エモンダSLのアップグレードはもちろん、ドマーネやマドンのカスタムにも最適だ。
ケーブル類はステム下部でわずかに露出するのみ。完全内装との空気抵抗の差はごくわずかでありながら、優れたメンテナンス性を確保している。これにより通常のステムやハンドルバーも使用可能で、多様なライダーのあらゆるニーズに対応できる
スレッドタイプのT47BBを新採用!
BBは昨年モデルチェンジしたドマーネにも採用されたT47規格を使用する。クリスキングらによって開発されたこの規格は、圧入式ではなくねじ切り式で整備性に優れるのが特徴。BBシェル幅も85.5㎜が確保されていることで、大径チューブのカーボンフレームにもマッチした規格だ。ワイドなスタンス幅によりペダリング効率にも優れる。
汎用性の高いH1.5ジオメトリーを採用
トレックセガフレドレーシングやドロップスプロサイクリングチームと開発し、2019年モデルのエアロロード、マドンから実装されたH1.5ジオメトリーを採用する。最も空気抵抗を軽減できるレースポジションの構築を可能としながらも、ヒルクライムに最適なアップライトなポジションにも対応できるバランスに優れたジオメトリーだ。
スペシャルカラーもプロジェクトワンでオーダー
完成車パッケージとして用意されるのはシマノ・アルテグラDI2仕様のエモンダSLR7のみ。トレック独自のオーダープログラム、プロジェクトワンによってパーツアッセンブルを選択していく方式がメインとなる。カラーリングのカスタマイズオーダーが可能で、所有欲をかき立てる新しいアイコンテーマとKOMグラフィックも用意される。
IMPRESSION
「プロのペダリングトルクに呼応する
高剛性フラッグシップモデル」
軽量カーボンバイクとして正統派の造型だった前作から大幅に進化したフレームのシルエットに、トレックの意気込みが伝わってくるバイク。エアロダイナミクスに優れたフレームやケーブルがほぼ完全に内装されたコックピットまわりから、軽量ロードの新たな時代を感じることができる。
乗り味を一言で表すならば、プロのトルクに呼応すべく高剛性に仕上げられたフラッグシップモデルだ。常に一歩前にバイクが押し出されていく特徴的なフィーリングが持ち味であり、低速域から軽快に
スピードが上がっていく加速性能は異次元の快適ささえ感じさせる。ハイスピード域の巡航に入っても、強化されたエアロダイナミクス性能に包まれて、ペダルを合わせるだけでスピードを維持できる。この感覚には思わずレースでの活躍を期待してしまう。
トレイル量の設定や、低重心のBBハイトにより安定したコントロール性も持ち合わせている。グランツールの超級山岳に挑むバイクには、クライミングと同等にダウンヒル性能が求められる。新型エモンダSLRは、コーナーに理想のラインで進入し、素早い立ち上がりで抜
けていく最速を極める走りができる。ライダーの能力を最大限に高めてくれるスーパーマシンだといえる。
IMPERSSION RIDER 管洋介
競技歴21年のベテランライダーで自身のチーム、アヴェントゥーラサ
イクリングの代表も務める。長年の経験を生かした的確なインプレッションが持ち味。身長168㎝
EMONDA SLR9
価格:130万9000円(スラム・レッドEタップ仕様 プロジェクトワン完成車/税抜)
※ペイントアップチャージ11万2000円含む
SPEC.
●フレーム:ウルトラライト800シリーズOCLVカーボン
●フォーク:SLRフルカーボン
●コンポーネント:スラム・レッドEタップアクセス
●ハンドル/ステム:ボントレガー・アイオロスRSL
●シートポスト:ボントレガー・カーボンシートマスト
●サドル:ボントレガー・アイオロスプロ
●ホイール:ボントレガー・アイオロスRSL
●タイヤ:ボントレガー・R4 320ハンドメイドクリンチャー
●サイズ:47、50、52、54、56、58、60、62㎝
●試乗車重量:6.78㎏(本誌実測・52㎝/ペダルなし)
翼断面の後端をカットしたKVF形状がもっともわかりやすいダウンチューブ。前作よりもボリュームは増しているが、OCLV800カーボンによりフレーム重量は同水準をキープしている
本作よりディスクブレーキのみの展開に。空力面でもメリットがあり、前面投影面積の軽減にも寄与している。フォーク断面もKVF形状を採用する
シートチューブやシートステーにもKVF形状を用いる。タイヤクリアランスは28Cに対応した
ミドルグレードのエモンダ
EMONDA SL 6
36万円(税抜/完成車)
ハイエンドのエモンダSLRと同様のフレーム形状を採用したミドルグレード、エモンダSLも同時開発された。前回のモデルチェンジはSLRのみであったことから、SLのフルモデルチェンジはじつに6年ぶりになる。フレーム素材に500シリーズOCLVカーボンを採用することでコストダウンを実現した。
105コンポーネント採用のSL5で28万円(税抜)、アルテグラモデルのSL6で36万円(税抜)などのラインナップをそろえる。エアロダイナミクス性能に優れた形状はSLRと同様であり、軽量エアロロードの恩恵を多くのライダーが享受できるモデルへと仕上げられた。
SPEC.
●フレーム:ウルトラライト500シリーズOCLVカーボン
●フォーク:SLフルカーボン
●コンポーネント:シマノ・アルテグラ
●ハンドル:ボントレガー・エリートVR-C
●ステム:ボントレガー・プロ
●シートポスト:ボントレガー・カーボンシートマスト
●サドル:ボントレガー・アイオロスコンプ
●ホイール:ボントレガー・パラダイムディスク
●タイヤ:ボントレガー・R2ハードケースライト
●サイズ:47、50、52、54、56、58、60、62㎝
●カラー:リチウムグレー/ブラッシュドクローム
●試乗車重量:8.33kg(本誌実測・52㎝/ペダルなし)
標準タイプのステムとハンドルバーを装備する。スムーズかつ空気抵抗の少ないケーブルの取りまわしを採用
フレーム形状はSLRと同様で価格と剛性、軽さのバランスの取れた500シリーズOCLVカーボンを採用する
トップモデル同様にコントロール性と制動力に優れた油圧式ディスクブレーキを採用する
問:トレックジャパン
https://www.trekbikes.com/jp/ja_JP/
- BRAND :
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