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この夏のバカンスは自転車で! 世界中で自転車が売り切れている問題

各国政府やメディアが「コロナ後には自転車が重要な交通手段となるはずだ!」と大いに盛り上げ、我々自転車ファンの心をくすぐっている昨今。さて、実際のところロックダウン最中、及びそれが明けた現在の自転車の売れ行きはどうなっているのでしょうか? 

海外事情に明るい、国際自転車連合(UCI)公式選手代理人山崎健一さんが世界各国のニュース報道などをもとに、その実態をお届けします。

イタリアでは自転車が売れ過ぎて、補助金が底をつくリスクも!?

写真はドイツの大型ショップ。ヨーロッパではコロナ渦による自転車人気と、流通が止まったことで自転車店の在庫が少なくなっている(PHOTO:中村達人)

イタリア

2月21日ごろからよりロックダウン開始。5月11日から段階的に解除。

政府はコロナ禍後の自転車使用を促すため、18歳以上の都市部(人口5万人以上の自治体)住民が5月4日〜年末までに自転車本体などを購入した場合、購入金額の60%、上限500ユーロ(約6万円)の補助金給付を発表しました。補助金対象となるのは約1,400の自治体で暮らす約3,000万世帯。ざっくり言いますと、イタリア人の約半数が補助金の恩恵を受ける事になります。

イタリア自転車・モーターバイク協会(ANCMA)によると、補助金給付対象期間初日である5月4日からの一ヶ月間で売れた自転車の総数は、例年同時期の倍となる50~60万台で、売れた自転車の平均金額は約380ユーロ(約45,000円)。

しかしイタリアの自転車店はここまでの需要急増を予想していなかったため、店舗によっては自転車が売り切れとなる事態に。さらにイタリアで売られる自転車(及び部品)の大半は台湾や中国を含む海外からの輸入となるため、コロナ禍による生産&輸送ストップの影響で再入荷の目途がなかなか立たず・・・需要に供給が追い付くまでにあと2ヵ月程かかる予定だそうです。

ちなみに本補助金、6月9日時点で受給申請のオンラインページが稼働していない上に、政府により確保されている補助金予算1億2,000万ユーロ(約145億円)では、予想される受給希望者全員に補助金が行き渡らない計算になる事が指摘されています。一見素晴らしい補助金ですが、もしかしたら今後ひと悶着起きそうな予感……。どうやら補正予算で乗り切るうとごきもあるとかで、なにはともあれ、イタリアでも自転車の販売台数が爆発的に伸びているのは間違いないようです。

オーストラリア

3月23日からロックダウン開始。5月8日から段階的に解除。

COVID-19封じ込めのロックダウンが開始された時、ジャイアント・シドニーの店員であるショーン・マーシャルさんのもっぱらの心配事は「仕事が無くなったらどうしよう・・」に尽きました。そしてロックダウン開始から一週間が過ぎた頃、グラント・カプラン店長から運命の連絡が入ります。解雇を言い渡される覚悟のショーンでしたが、すぐにそれが取り越し苦労だったことが判明します。

「ショーン、今までよりも長いシフト(勤務時間)で仕事に入れるか!?」

コロナ禍による公共交通機関回避の流れで、自転車を買うお客さんが飛躍的に急増したため、人手が足りなくなっているのです。

通常、土曜日の店舗の売上高は約1万豪州ドル(約75万円)でしたが、ロックダウン開始後のそれは約4万豪州ドル(約300万円)にまでアップ。なお、利益率は高いながらも、少々時間のかかる修理業務に割くスタッフが足りないため、新車販売を優先的に行ってきたそうです。

カプラン店長は「どのぐらい売り上げが上がっているのか、正直計算する暇がない」とうれしい悲鳴を上げています。

中国

写真はイメージです PHOTO:Sharon Ang(Pixabay)

1月23日より(地域単位で)ロックダウン開始。4月8日より段階的に解除

中国政府が2018年に行った調査によれば、全人口約14億のうち約3.5億人が自転車シェアサービスを体験済み。この自転車シェア定着の背景には、自転車の盗難が極めて多いお国柄な上、平均年収も上海や北京を除いては高いとは言えず、自転車の新車購入が伸びにくいのと、単純に自転車シェア料金が魅力的に安い!という事情があります。

中国最大級の自転車シェアサービス企業「滴滴出行(ディディチュウシン)」によるシェア自転車使用の価格設定は、ノーマル自転車の使用で30分1元=約15円程度、月間パスの場合でも20元=約300円。電動自転車の場合はその倍の価格になりますが、いずれにせよ激安です。

もともと「滴滴出行(ディディチュウシン)」社の主力事業は、自動車配車&シェアサービスで、2016年には自動車配車ビジネス世界最大手であるUberの中国事業を買収した事でも有名。この業界の風雲児はコロナ禍を絶好チャンスと捉え、自転車シェアサービスビジネスの拡大を一気に進めていくようです。

コロナ禍真っただ中の3月には、自社の電動シェア自転車数を増強するため、約100万個の電動自転車用バッテリーを電池業者に発注した事が業界誌レポートで明らかになっています。

中国自転車シェア市場をウォッチする経済アナリストによると「2019年時点で中国市場に存在するシェア電動自転車数は約162万台だったが、2020年には一気に400万台まで急増する見通しだ」との事。ユーザー自身のよる自転車購入数が増えた他国の事情とは異なるものの、中国でのシェア自転車企業による自転車購入数は今後も増え続けそうです。

フランス

パリ郊外の人気にサイクリングスポットとして知られるロンシャン競馬場周回路 PHOTO:D.YAMAGUCHI

3月17日よりロックダウン開始。5月11日から段階的に解除。

フランス政府は自転車使用を促す目的で、上限50ユーロ(約6500円)の「自転車修理」補助金支給を決定したばかり。

しかしこの政策は、フランス全国の自転車店を窮地⁉ に陥れる事になったようです。

フランス中部のリヨンにある小規模自転車店、バルドゥール・シクルのジュリアン=ラフリエール店長は「修理需要が多過ぎて人手が全く足りないんだ・・自転車修理の場合、いつもは48時間程度でお客さんに自転車を返せていたんだけど、今では1カ月半後のお返しで納得してもらっている。休日返上で週7日働いて、1日に15台修理してもそんなにかかるんだ」

休日が大好きなフランス人をここまで働かせるとは!コロナ禍の恐ろしさ?を思い知らされるエピソードですね……。

自転車の販売台数ももちろんアップしています。

「通常は週に5台しか売れないんだけど、ロックダウン解除後は週に15台。やっぱりみんな公共交通機関の使用を嫌がっているんだよね。単純に自転車の移動が気持ち良い事にみな気が付いたんだと思うし、リヨンは自転車で動くにはいいサイズの街という事も皆の背中を押しているんだと思う。」

既に自転車大国とされるフランスに於いても、新規サイクリストが着々と誕生しているようです。

日本では子ども車と意外にも一輪車が売れた!

さて最後に、4月7日に緊急事態宣言が発令され6月1日から段階的に解除された、我が日本ではどうなのか?

ちょっと自身でお店の生の声を聞くため、自宅近所にある某自転車全国チェーン店の店長さんに聞いてみました。

「緊急事態宣言中に急激に売れたのは、子供用自転車と一輪車です。既に一輪車の在庫はなくて入荷は7月です・・。これはやっぱり学校が休校になって、子供が家に居るので、運動をさせたい親御さんが増えたからでしょうね。あとはやはり運動不足解消のために久しぶりに自転車に乗りたい方による修理依頼が急増して、通常は翌日までに修理を完了させられるのに、今は3~4日ぐらい頂いています。一番忙しかった時期は、修理完了まで一週間もかかっていました。

大人向けの自転車販売に関しては、倍増とまでは行きませんが、クロスバイクが良く出ていますね。週末にカジュアルに乗るのではなく、ガッツリ乗る方が増えているためか、ボトルケージや、ウェアも売れています。不謹慎かもしれませんが、自転車販売業界にとっては、コロナ禍は大きな特需を生み出していますね」

このようにコロナ禍による「新しい生活様式」の導入で、三密も避けられる上に、環境にも健康にも良いとされる自転車の特需に沸く全世界。

不幸がきっかけで起こった流れとは言え、我々自転車を愛する者にとっては同好の志が増えるまたとないチャンス。

これを更に長期的な業界繁栄に繋げるべく、我々ファンや業界人を含めた“自転車人“は、自転車道設置などのインフラ構築をより声高に求めていくタイミングなのかもしれません。

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PROFILE

山崎健一

Bicycle Club / UCI公認選手代理人

山崎健一

UCI公認選手代理人&エキップアサダマネージャー。日本人選手の育成に尽力し、プロ選手からの人望も厚い。バイシクルクラブ本誌では連載「フ●ッキンジャップくらいわかるよ、コノヤロウっ!」を担当。

山崎健一の記事一覧

UCI公認選手代理人&エキップアサダマネージャー。日本人選手の育成に尽力し、プロ選手からの人望も厚い。バイシクルクラブ本誌では連載「フ●ッキンジャップくらいわかるよ、コノヤロウっ!」を担当。

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