PINARELLO(ピナレロ)・プリンスFXディスク|ニューモデルインプレッション
管洋介
- 2020年08月25日
注目の最新モデルを徹底インプレッション! 直近5回のツール・ド・フランスを制するなどロードレース最強バイクの呼び声も高いドグマF12。そのテクノロジーを受け継ぎプリンスFXディスクがフルモデルチェンジを果たした!今回はその、PINARELLO・PRINCE FX DISK(ピナレロ・プリンスFXディスク)をベテランライダーの管洋介がテスト!
INDEX
ドグマF12の技術を受け継ぐ
究極のエアロダイナミクス
ピナレロのラインナップにおいてドグマに次ぐレーシングバイクとして位置づけられるプリンスシリーズがフルモデルチェンジを果たした。
旗艦モデルのテクノロジーをフィードバックし、ピュアレーシングからホビーレーサーまでを許容するプリンスだが、前作のプリンスFXディスクは昨年登場したばかりだ。つまりこの2021年モデルが2年連続のモデルチェンジとなり大幅な性能向上を果たした。
プリンスFXディスクが短期間の間に2度のフルモデルチェンジを果たしたのはドグマF12の影響にほかならない。前作がドグマF10をベースにしていたのに対してニューモデルでは昨年登場したばかりのドグマF12のテクノロジーがおしげもなく投入された。 最大の変更点はTiCRと呼ばれるシステムの採用によるケーブルの完全内装化だ。ケーブル周辺の空気抵抗を85%軽減した。
さらにフレーム各部の形状もドグマF12と同様の効果をねらいながら、プリンスのターゲットユーザーに最適化した剛性が与えられた。
プリンスFXディスクは、高弾性のT900 3Kカーボンを採用し、ノーマルのプリンスよりも剛性を高めた上位モデルだ。そのブラッシュアップしたポイントを徹底的に掘り下げるとともに、気になるインプレッションをお届けしていこう。
ケーブル完全内装化をはじめ
ドグマF12のDNAを継承する
さまざまな部分でドグマF12のテクノロジーを継承するプリンスFXディスク。TiCR(トータル・インテグレーテッド・ケーブル・ルーティング)と名付けられたシステムによりケーブルを完全に内装化した。
ヘッドベアリングの上側にも1.5インチ径のベアリングを採用することで、1.1/8インチ径のコラムとの間にケーブルを通すスペースを設けたものだ。機構自体はドグマF12と同様だが、モストブランドのステムとハンドルバーを新開発。ドグマF12ではハンドルステム一体式のみだったが、セパレート化により細かい角度調節を可能にした。
空気抵抗を軽減するフレーム各部の形状も、ドグマF12を継承した左右非対称のものに変更。
ただしそのまま流用するのではなく、ターゲットライダーの出力や目的の違いを考慮して、剛性や味付けに変更しているのが特徴だ。たとえばペダリングの剛性を演出するチェーンステーではカーボン積層の調整でマイルドな味付けとしている。
さらにさまざまな体格やポジションに幅広く対応すべく、ジオメトリーを新設計。これはフレームサイズの変化に対してリーチとスタックが滑らかに変化するもの。サイズのすきまをなくして、すべてのライダーに最適なフィッティングを提供する。
スタンダードなスレッド式のイタリアンBBを採用。ボリュームを確保してペダリングを受け止める剛性を備えている。
ドグマF12と同様のエアロシェイプを用いるが、わずかにボリュームを抑えることで剛性を最適化した。
ピナレロの代名詞ともいえるオンダフォークは、ドグマF12と同様にヘッドに近い部分のボリュームを増して整流効果を高めた。
スルーアクスルのエンド部分を引くことで取り外し用のレバーが出てくる新機構を採用。整流効果を高めるフォークフラップは健在。
TiCRによりヘッドチューブのボリュームも増加しているが、整流効果に優れた形状により空気抵抗は軽減している。
ヘッドベアリングの上側も1.5インチ径として、その中にケーブルを通し内装化するTiCRを採用。ハンドルとステムも新開発した。
ピナレロ
プリンスFXディスク
68万9000円(アルテグラDI2完成車/税抜)、58万9000円(アルテグラ完成車/税抜)、46万9000円(フレームセット/税抜)
■フレーム:ハイストレングスカーボンT900 3K ■フォーク:オンダT900ディスク ■コンポーネント:シマノ・アルテグラDI2 ■ハンドル、ステム:モスト・ジャガーXA TiCR、タイガーALU TiCR ■サドル:モスト・リンクス ■ホイール:フルクラム・レーシング800DB ■試乗車重量:7.48kg(545mm/ペダルなし実測)
※ホイールアップデートプログラムにより差額でホイールをグレードアップ可。例:フルクラム・レーシングゼロDB完成車価格78万6000円(税抜)
前作よりも格段の進化を果たした
ペダリング&ハンドリング性能
管洋介がインプレッション
高剛性の芯をしっかりと感じるのに、滑らかで踏みやすく雑味のない走行感を味わえる優雅で風格をもったバイクだ。
ドグマF12のテクノロジーを継承しつつマイルドな味付けがなされたというが、昨年モデルのプリンスと比べれば駆動力が軽く、トントンと加速していくのが特徴だ。高速域では頼りがいのある駆動力を発揮し、中低速でゆっくり踏み流していても走行トーンの軽やかさにより心地よくバイクを転がしていける印象だ。
オーバル形状でオフセットされたオンダフォークによる効果だろうか、ハンドリングは信頼できる接地感により安心してバイクに身をまかせることができる。
腰を落ち着けて乗れるシートアングルが重心の安定を生み、ワイディングコーナーでバイクを倒し、きれいなラインを描くシーンが重なっていく。
ダンシングではハブ軸を中心にスムーズな8の字を描いて立ちまわれる印象だ。剛性のあるヘッドまわり、滑らかなハンドリングを生み出す接地感によってバイクの乗り味を上げてくれている。
チームイネオスのプロライダーも使用するドグマF12から受け継いだ美しいデザインにより、所有することの満足度も非常に高い。アマチュアライダーのパワーや脚質であれば、ドグマF12より扱いやすいレーシングバイクだろう。総合性能の高さも際立っているバイクだ。
インプレッションライダー
管洋介
競技歴24年のベテランライダーで自身のチーム、アヴェントゥーラサイクリングの代表も務める。長年の経験を生かした的確なインプレッションが持ち味。身長168cm。
ピナレロのアザーモデル
パリ ディスク
33万9000円(105ミックス完成車/税抜)
コンフォートジオメトリー採用ですべてのライダーに楽しさを提供
伝統のパリのネーミングを復活させたニューモデル。ショートリーチ&ハイスタックで自由度を高めたコンフォートジオメトリーにより、すべてのサイクリストがライディングの楽しさを満喫できるエアロロードとして登場した。フレーム素材にはT600 UDカーボンを採用する。
アングリル ディスク
25万9000円(ティアグラ完成車/税抜)
快適に長距離に挑めるグランフォンドモデル
快適性に優れたT600カーボンを採用したグランフォンドモデル。伝統のオンダフォークによるコーナリングの安心感に加えて、弓なりのシートステーが走破性と快適性を向上。油圧ディスクブレーキを標準装備としたことで、さらに安全にコンフォートライディングを楽しめる。
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問:ピナレロジャパン
www.pinarello.jp
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