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100年前のロードレーサーを分析! オーケストラ楽器と同じ素材の進化【革命を起こしたいと君は言う……】

音楽の歴史

西洋音楽の歴史はさまざまな楽器(音色)が登場し、ひとつずつオーケストラに加わり、作曲家の頭脳に入り込み、音色が作曲家と結びつき、新たな表現方法が生み出されてきた。

すべての楽器や音色には意味があり、どの音色も足すことも引くこともできない絶妙なバランスで成り立っている。

100年前のレーサー

1920年代のフランス車、その名も「ラボール(LABOR)」ツール・ド・フランスも走ったという、当時最先端のロードレーサーが工房に来た。

当時のツールは15ステージで5000kmという。もっとも過酷だったとされている時代をこの自転車で走破していたことに驚くばかりだ。フレームの修理依頼だがせっかくの機会なのでいろいろ考察をした。

溶接方法

ロウ付けと思っていたが、塗装をはがしてみると、電気(アーク)溶接での接合だった。溶接後、ヤスリで仕上げを行っていた。ガスでの鉄付けかとも思われるが、溶接の歴史から見ても20世紀に入ってからフランスは飛躍的にアーク溶接も普及している。どちらなのか判断は難しいが……。

この時代の自転車はほとんどがラグ付け工法で製作されておりラグレスはあまり見かけない。おそらくラグレス車はアークなどが主流に考えられてたのかもしれない。新たな工法を組み合わせた美しい仕上げはさすがだ。

100年物フレームの修理依頼。湾曲したチューブが特徴。ツールにも出たフランスの名車

さまざまな規格

ヘッドやBBの規格が今とほぼ変わらない。BBはここ10年でさまざまな規格が登場しては消えているが、今の主流は68mm規格に落ち着きそうだ。100年前と同じことに驚かされる(ネジピッチなどは微妙に異なる)。

フレームのパイプなど

チェーン&シートステーは独特なD型形状となっている。現在も多くのパイプが製造されているがこれだけ凝った物はそうはない。肉厚は0.8mmのプレーン管。

前三角に関しては驚くべきことにバテッド加工が施されていた!シート部に行くにつれ肉厚が0.8から1.0mmとなっている。

試走してみた

オーナーに同時代のロードレーサーを借り試乗させてもらった。見ためから、ハンドルが重いのでは?と思ったが期待を裏切られる軽い操作性だった。これでレースに出ていたのだから、あたりまえといえばそうだが。

当時はヘッドアングル70度、オフセット65度以上が主流でトレールは今より少なめなのが理由のひとつだろう。

自転車は変わってない

誤解を恐れずにいえば、自転車は100年前と変わっていない。

構造、スケルトン、車輪にチェーンなど根本的に違うところは見当たらない。迫力でいうならこのラボールに勝るバイクは現代でもそうはないだろう。

あえて進化をいうならば、素材や工法数の違いだ。19世紀のレーサーは鉄、木、皮、ゴム。現代は、鉄、チタン、ステンレス、アルミ、カーボン、ゴム、シリコン、プラスチック、ナイロンなど。しかし根本的に変わらず、役者が変わっただけだ。

オーケストラのようにすべての素材の特性(音色)に意味をもたせ、その音色の特徴を引き出すことに自転車デザインの原点があると思う。

アルミをカーボンに変えるだけで何かが変わったと思うのは危険な解釈だ。オーケストラでいえばバイオリンの素材が変化しようが根本的な演奏に変化はない。19世紀に突如登場し、オーケストラに加わったクラリネットこそが、新素材であり革新だったといえる。

本来、新たな音色(素材)を足すことは慎重にならなければならない。自転車に新たな素材や工法が加わることを歓迎するとともに新たなフォルムや役割を生み出す使命がある。

それができなければ自転車には必要のない素材なだけだ。現代レーサーは素材の特性を引き出せているだろうか?

UCI規定によるところも大きく「自転車スポーツ」が大きな産業と化したバックグラウンドも関係しているだろう。しかし自転車の発展につながることなので考えてほしいところだ。

これが100年前のレーサーを眺めて思ったこと。しかし、ブレーキは効かなかったなー。

オーナーのT氏と。古い自転車を愛すが、レーシングカーのカーボンエンジニアだ

Cherubim Master Builder
今野真一

東京・町田にある工房「今野製作所」のマスタービルダー。ハンドメイドの人気ブランド「ケルビム」を率いるカリスマ。北米ハンドメイド自転車ショーなどで数々のグランプリを獲得。人気を不動のものにしている
今野製作所(CHERUBIM)

 

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Bicycle Club編集部

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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。

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