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機械は手で作られる?【革命を起こしたいと君は言う……】

手作りが最高峰?

工房は取材や見学者も多く作業のプロセスを説明することも多い。驚かれることがいくつかあるが、なかでも機械での作業、外注作業などの多さを驚かれる。「パイプは作ってないんですね〜」と残念がる人も。

日本人の多くの人の意識には、職人による手作りが最高峰で量産品は二流という感覚がある。

わからないでもないが、われわれには手作りにこだわっているという考えは毛頭ない。この場を借りて、そもそも機械がいいのか手作りがいいのか、ものづくりの原点を考えてみたい。

日本の物作り

物作りの進歩はいわば機械や道具を使うことを増加させる歴史だ。物は機械で作ることが前提となっている。手作りといってもすべてのプロセスを手でつくっているのではなく、なんらかの道具なり機械なりを使う。物作りは道具作りと言っても過言ではないほど機械や道具は偉大だ。

しかし戦前の日本は富国強兵のスローガンのもと、欧米に遅れをとった兵器増強を最優先事項とし、兵器を作るために欧米の工作機械を大量に輸入しまくった。そのほとんどが軍需に使われた。

日本人は兵器は作ったが、道具は作らなかった。その後も輸入機械の生産ラインで高度成長した。機械自体も海外のライセンス機やコピー品がほとんどだ。

欧米では最初に蒸気機関などが発明され、その後に兵器開発のための工作機械が開発され、機械をみずから作り上げて行った。日本はこの機械開発というプロセスを欠いたために工作機械の基本技術が立ち遅れたといわれている。

機械があるから何かを作るという思考回路で設計者や職人が物を作っている時代が長すぎた。機械の性能に縛られてしまえば職人は機械の性能以上のことはできず、その呪縛から抜け出せない。

機械作りの大切さ

機械はある目的のために作られ、その目的以上の作業はできない。その機械に不満を感じたら、新たな機械を作る。

このプロセスが発想力の原点となり新たな製品が生まれる。しかし機械を作る発想が抜けるとそこで止まってしまう。

機械を作ってこなかった日本人は、ぼんやりと「機械作り」と「手作り」という対立概念を生み、差別化しているのかもしれない。日本人特有の概念とも思う。

自転車界

機械も自転車の在り方も同じかもしれない。こんな自転車があったらあんな旅ができるかもしれない。ここをこうすれば通勤がラクになる。ゴール前の伸びを解決してくれるフレームが欲しい。そんな欲求が新しい自転車を作り出し人生を豊かにする。

この自転車ではここまでしか行けないから旅はここまでにしよう。あの自転車ではスピードは出せないからレースはやめよう。ライダーがみずからの自転車を作るプロセスを欠いてしまえば自転車との付き合い方はそこで終わる。その発想プロセスを今のライダーは奪われてしまっていると思う。

しかし本来自転車はあなたの発想や選び方しだいなはず。その広がりは無限だ。

まとめ

物作りにおいて、機械生産は悪、手作りは正義、というのは日本人の幻想だ。手作りか? 量産品か? そんな議論は意味をなさない。

その製品を作るにいたったプロセスが重要だ。商売のためか安く作るためなのか、中国に量産工場があったからか。はたまたいい自転車作りを目指しているのか?

兵器を作るために海外の機械を買いあさり、そのため創造するプロセスを奪われてしまった日本人。自転車という名の機械。同じ失敗は繰り返したくない。

1930年代ドイツの名機デッケル社FP1のプラモデル。日本では理研ライセンスモデルが有名だがこちらが本家。早く作りたい

Cherubim Master Builder
今野真一

東京・町田にある工房「今野製作所」のマスタービルダー。ハンドメイドの人気ブランド「ケルビム」を率いるカリスマ。北米ハンドメイド自転車ショーなどで数々のグランプリを獲得。人気を不動のものにしている
今野製作所(CHERUBIM)

 

革命を起こしたいと君は言う……の記事はコチラから。

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Bicycle Club編集部

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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。

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