シクロクロスは短いダッシュが勝負! パワーデータから考えるシクロクロス
中田尚志
- 2020年11月26日
冬になるとロードレースに代わって多く開催されるのが、シクロクロスと呼ばれるオフロードのレースです。皆さんはシクロクロスと聞いて何を思い浮かべますか? 泥、シケイン、担ぎ、そしてまたドロ…。一見ロードレースとシクロクロスは全く関係がないように見えますが、シクロクロスは取り組むことですべてのロードバイク乗りに恩恵がある競技です。
ここではシクロクロスをクローズアップ、ピークス・コーチング・グループの中田尚志さんがパワーデータで解説します。
シクロクロスはダート・クリテリウム
シクロクロスは2.5-3.5km程度の様々な周回コースで行われます。路面は様々でダートロード、林間のシングルトラック、砂地、さらには舗装路や石畳を含むコースもあります。これらの荒れ地を集団で走る様子は、さながらダートで行われるクリテリウムのようです。
シクロクロスとクリテリウムをパワーで比較してみると
パワーデータを見てみてもシクロクロスとクリテリウムはよく似ていて、両方とも1時間にわたってコーナーごとにダッシュを繰り返すインターバルトレーニングのようです。
先日行われたJCX マキノ・ラウンドとおおいたクリテリウムに参加した小坂光選手(宇都宮ブリッツェン)のデータを比較してみましょう。
JCXマキノ・ラウンドはスキー場のゲレンデの斜面を使ったコースで起伏に富むコースですが、それでも一番長い直線で30秒足らずで、殆どは15秒以内のダッシュが続きます。
シクロクロス(JCXマキノ・ラウンド)でのデータ
JCXマキノのデータ。絶えずパワーは変化するが心拍は高いまま。
シクロクロスはダッシュの繰り返し。最も長い上りでも30秒
一方おおいたクリテも一番長い直線で35秒程度。あとはコーナー後の14秒以内のダッシュの繰り返しです。
クリテリウム(おおいたクリテリム)のデータ
おおいたクリテのデータ。こちらもコーナーの度にダッシュを繰り返しパワーは常に変化している。
データをパワーゾーンごとに分けてみると、シクロクロス、クリテリウムともにロードレースのようなFTP巡航は殆ど無く、アネロビック(無酸素領域)とリカバーの繰り返しであることが分かります。
ハートレートに関してはトップ選手でも心拍数がリカバリー領域まで下がることはありません。ホンの少しでも心拍が下がったら、すぐに再度踏み出すのでレース中心拍はFTP領域まで上がりっぱなしです。パワーでいうとON / OFFの繰り返しでありながら、ハートレートで見ると完全回復することがない。両者とも15秒前後のダッシュを1時間続けるマイクロ・インターバルトレーニングといえます。
このようにシクロクロスとクリテリウムは似ている点が多くあります。シクロクロスの方がより専門性が高いので、シクロクロスに参戦することでクリテリウムやロードレースさらにはロングライドにまで役立つことが沢山あります。
オフロードで一列棒状になることもあるシクロクロス
クリテリウムやロードレースとは違うシクロクロスの専門性
ではシクロクロスの専門性とは何でしょう?
それは何よりもオフロードで行うことが影響します。刻々と変わる路面状況、滑りやすい路面でのコーナーリング、乗車できない荒れた路面での担ぎなど、舗装路では考えられないようなタフなコンディションで走る能力が要求されます。オフロードならではの上下動に対応できる動体視力も要求されます。
これらのオフロードでの専門性を身につけることは、ロードで悪条件を走れる能力も伸ばしてくれます。
雨の日のロードレースでシクロクロス選手が「天気が荒れたら自分に有利だ」と聞いたことがあるライバル選手は多いはずです。
ロードレースでライバルたちが思わずひるんでしまう悪条件は、シクロクロスでの悪天候に比べたら比較的にラクに感じますし、ライバルと比べて自身は有利だという心理的アドバンテージを与えてくれます。
シクロクロス | クリテリウム | ロードレース | |
時間 | 1時間 | 1-2時間 | 3-6時間 |
ハンドリングスキル | ◎ | ◎ | ○ |
ペダリングスキル | ◎ | ○ | ○ |
ダッシュの繰り返し | ◎ | ◎ | △ |
FTP | ○ | ○ | ◎ |
エンデュランス能力 | △ | △ | ○ |
特徴 | ・高度なハンドリングスキルがつく
・悪天候に強くなる。 ・寒さを感じずに取り組める。 ・落車のダメージが少ない
|
・ハンドリングスキルが付く
・スピードが付く
|
・多岐にわたる能力が要求される
・トレーニング、レース共に長時間
|
担ぎや階段など高度な専門性も要求される
’20-’21 JCX #5: Kansai Cyclocross UCI Makino Grand Prix
11月28日、29日はシクロクロスの頂上決戦「全日本選手権」
今週末は長野県飯山市でシクロクロスの全日本選手権が行われます。2015年にも全日本選手権が行われた歴史ある会場です。日本シクロクロスの頂上決戦にご注目頂ければと思います。
第 26 回 シクロクロス全日本選手権大会
日時: 2020年11月28〜29日
開催地: 長野県飯山市長峰スポーツ公園
女子エリート:11月29日(日) 12:50〜
男子エリート: 11月29日(日) 14:00〜
JCF公式WEBサイト
https://jcf.or.jp
小坂光(宇都宮ブリッツェン)
1988年生まれ 2017年シクロクロス全日本選手権優勝。オフロードからオンロードまでマルチな活躍を見せる。宇都宮市役所に勤務する公務員レーサーでもある。
https://www.blitzen.co.jp/team/blitzen/kosaka_hikaru/
中田尚志 ピークス・コーチンググループ・ジャパン
https://peakscoachinggroup.jp/
ピークス・コーチング・グループ・ジャパン代表。パワートレーニングを主とした自転車競技専門のコーチ。2014年に渡米しハンター・アレンの元でパワートレーニングを学ぶ。
中田尚志の著書「ロードバイクのパワートレーニング」はこちらから読むことができます。
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