ワールドチームも経営難⁉ 「UCIワールド&プロチーム」リストから見たUCIライセンス裏事情
山崎健一
- 2021年01月01日
INDEX
ロードレース界の2021年が本格的にスタートする。コロナ禍の経営破綻で多くのチームの存続が危惧されたが、12月にはUCI(国際自転車連合)から2021年度「UCIワールド&プロチーム」リストが発表された。
ツール・ド・フランスはじめ、トップカテゴリーのUCIワールドチームの多くのチームも例外ではなく、特別許可によりなんとか19チームが維持した異常事態となっている。
日本人選手の所属するチームもその例外ではない。
新城幸也が所属するバーレーン・ヴィクトリアス、別府史之、中根英登が所属するEFエデュケーションNIPPO(アメリカ)、去年まで入部正太朗が所属していたクベカ・アソス(旧NTTプロサイクリング)は特別許可により、ようやくワールドチームへ参加することができ、ひとまずは一安心といいった状況だ。
ここではUCI(国際自転車連合)公認代理人の山崎健一さんがUCIのプロチームライセンスの仕組み、そしてライセンスを維持するためのチームの経営規模、そして、今回の例外だらけのライセンスに関する問題をリアルに解説する。
遅ればせながら発表された
2021年度「UCIワールド&プロチーム」リスト
コロナ禍により世界プロロードレース界も大いに翻弄され、本格レースシーズンが8月〜11月上旬にずれ込むという非常事態となった2020年。
ツール・ド・フランスなどの主要ワールドツアーレースは辛うじて開催されたものの、多くのプロレースが開催中止に追い込まれ、プロチームは「レースでスポンサーロゴを露出する」という仕事を満足に遂行出来ない結果となりました。
TVやメディアでの自社名露出と引き換えに、チームに金銭を供給するスポンサー企業にとっても、本業ビジネスがコロナ禍により急激に圧迫される事態に。
結果、通常シーズンを通して分割でチームに支払われるスポンサーフィーの入金が滞り、選手やスタッフへの給与支払いに難儀するチームが発生。
細々と選手代理人職をしている小生の視点ですと・・・世界の選手移籍市場というのは例年5&6月から選手の履歴書が出回り始めてジワジワと活発化するのですが、2020年は既に3月から履歴書が出回り始めました。つまりチームの予算繰り悪化から翌年の契約更改がされないのでは!?と察知する選手が既に3月には存在し出したのです。
個人的には半数ぐらいのチームが経営破綻するのではないか⁉と恐れ慄いていた次第ですが、その懸念を打ち破って例年から2週間ほど遅れの12月23日に発表された「UCIワールド&プロチーム」リスト。チーム関係者、UCI、スポンサー様の血のにじむ様な努力があったことは想像に難くありません。
そんな栄えあるUCIチームライセンスを付与されたのは下記のチーム達です。
UCIライセンスを付与されたチーム
UCIのチームのカテゴリー
©UCI
UCIが認定する男子自転車ロードチームのカテゴリーには、上から下記の3つがあります。
- 「UCIワールドチーム」
- 「UCIプロチーム」
- 「UCIコンチネンタルチーム」
UCIのレースイベントのカテゴリー
©UCI
チームカテゴリーに準じたレースにしか出場は許可されません。ここでは男子の「UCIワールドチーム」と「UCIプロチーム」について紹介していきます。
「(WT)UCIワールドチーム」(第1ディヴィジョン)
計19チーム(本来の上限枠は18)
- AG2Rシトロエン(フランス)
- ボーラ・ハンスグローエ(ドイツ)
- コフィディス(フランス)
- ドゥクーニンク・クイックステップ(ベルギー)
- グルパマFDJ(フランス)
- イネオス・グレナディアーズ(イギリス)
- ユンボ・ヴィズマ(オランダ)
- ロット・スーダル(ベルギー)
- モビスター(スペイン)
- トレック・セガフレード(アメリカ)
- UAEチームエミレーツ(UAE)
UCIの直接審査ではライセンス付与保留も、ライセンス委員会によって特例許可されたチーム
- アスタナ・プレミアテック(カザフスタン)
- バーレーン・ヴィクトリアス(バーレーン)
- グリーンエッジ サイクリング(オーストラリア)
- アンテルマルシェ・ワンティゴベール(ベルギー)
- イスラエル・スタートアップネイション(イスラエル)
- チームDSM(ドイツ)
- EFエデュケーションNIPPO(アメリカ)
- クベカ・アソス(南アフリカ)
「(PT)UCIプロチーム」 (第2ディヴィジョン)
計19チーム
- アルペシン・フェニックス(ベルギー)
- アンドローニジョカトリ・シデルメク(イタリア)
- バルディアーニCSFファイザネ(イタリア)
- ビンゴールWB(ベルギー)
- ブルゴスBH(スペイン)
- カハルラル・セグロスRGA(スペイン)
- エオーロ・コメタ(イタリア)
- エキポ・ケルンファルマ(スペイン)
- エウスカルテル・エウスカディ(スペイン)
- ガスプロム・ルスヴェロ(ロシア)
- ラリーサイクリング(アメリカ)
- スポートフラーンデレン・バロワーズ(ベルギー)
- チーム ノボノルディスク(アメリカ)
- トタル・ディレクトエネルジー(フランス)
- ウノエックス・プロサイクリング チーム(ノルウェー)
- ヴィーニザブKTM(イタリア)
UCIの直接審査でライセンス付与保留も、ライセンス委員会によって特例許可されたチーム
- B&Bホテルズp/bKTM(フランス)
- デルコ(フランス)
- アルケア・サムシック(フランス)
トップ2「UCIプロチーム」に付与されるUCIワールドツアーレースへの招待
・グランツールを含む全UCIワールドツアーレースへの招待
アルペシン・フェニックス(ベルギー)
・UCIワールドツアーレース中、ワンデーレースのみへの招待>
アルケア・サムシック(フランス)
「(WWT)UCIウィメンズ・ワールドチーム」(女子第1ディヴィジョン)
UCIが認定する女子自転車ロードチームのカテゴリーには、下記の2つがあります。
① 「UCI
② 「UCI チーム」
レースカテゴリーが4つに分けられており、UCI
ワールドチームはUCI プロシリーズを中心にUCIプロシリーズなどにも出場できるが、出場チーム数に制限がある。計9チーム
新規
- チームSDワークス(オランダ)
継続
- アレBTCリュブリャナ(イタリア)
- キャニオン・スラム レーシング(ドイツ)
- FDJヌーヴェルアキテーヌ・フチュロスコープ(フランス)
- リブレーシング(オランダ)
- トレック・セガフレード(アメリカ)
UCIの直接審査でライセンス付与保留も、ライセンス委員会によって特例許可されたチーム
- モビスター(スペイン)
- グリーンエッジサイクリング(オーストラリア)
- チームDSM(ドイツ)
UCIライセンスをどうやって獲得するのか?
さて、チームリストが発表されたものの、そもそもこのUCIチームライセンスってなんなの!?という疑問を持つ方も多いかと思います。そこで、このチームライセンスの性質や、どうやって取るのか?獲得難易度は如何ほどか?などを出来るだけ分かり易く書いてみたいと思います。(細かいところは端折るか丸めて書いてしまいますので、何卒ご容赦を!)
① そもそもUCIチームライセンスってなんなの?
UCIチームライセンスとは、UCI世界自転車競技連合“等”による厳正なる審査ののち、「君たちのチームは世界トップクラスのレースで走るにあたって、十分な予算、チーム運営体制などを備えるチームや!」という事が認められ、チームに与えられるライセンスの事です。
UCIのプロレースは、UCIチームライセンス所持チームを招待して活躍の場を与え、チームはそこでTV等メディアでの露出に努めてチームスポンサーの広告塔となり、資金を得る事が出来ます。仮にこのライセンス取得が却下された場合、チームは自チームの露出機会を失い、一気にスポンサーを失う事態になりかねません。
② お幾らほどでUCI「ワールド」、「プロ」チームは作れるの⁉
チームの設立予算に関しては諸説ありますが、UCIルールが規定する“理論上の最低予算”でチームを作っても目立った活躍は難しく・・・やはりある程度の予算が無いとトップレベルでは戦えないのが現実。
そこで、私の独断と偏見(+チーム関係者からのナマ情報)にはなりますが・・・、現実的なチーム予算を下記の通り挙げてみます:
(※「選手・スタッフへの給与」、「UCIへ支払う銀行補償金」、「会社運営費」、「諸経費」などのチーム年間予算総計。)
「(WT)UCIワールドチーム」(第1ディヴィジョン)
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