BRAND

  • FUNQ
  • ランドネ
  • PEAKS
  • フィールドライフ
  • SALT WORLD
  • EVEN
  • Bicycle Club
  • RUNNING style
  • FUNQ NALU
  • BLADES(ブレード)
  • flick!
  • じゆけんTV
  • buono
  • eBikeLife
  • Kyoto in Tokyo

STORE

MEMBER

  • EVEN BOX
  • PEAKS BOX
  • Mt.ランドネ

バーチャルサイクリングで東京-大阪550㎞を17時間、自転車夫婦が仲間と「ズイキャノ」

バーチャリサイクリングでのチャレンジが流行しているいま、1月23日に新潟県在住の本田竜介、母映夫妻と東京都在住の前川聡朗さんが、バーチャルサイクリングZwift(ズイフト)を使ってインドアで東京-大阪間にあたる距離550㎞にチャレンジし、17時間で走り切った。ここではその準備からチャレンジの様子、さらにノウハウまでお伝えする。

ズイフトでやるキャノンボールだから、通称「ズイキャノ」⁉

前川聡朗さん、通称トシゴローMGWとしてズイフトで走っている

コアな自転車ファンの間でいつかはやってみたいといわれるチャレンジが、東京―大阪間を24時間以内に走り切る、通称「キャノンボール」と呼ばれるライド。そのキャノンボールの推定走行距離にあたる550㎞を、バーチャルサイクリングで走破するチャレンジを本田夫妻が企画した。さらに前川さんも加わり自転車仲間3人が揃って走る超ロングライドに挑む姿は多くの共感を呼び、たくさんのライダーがズイフト内へ応援に駆け付け、SNS上でも盛り上がった。本田さんたちはこのズイフト上で550㎞を走るキャノンボールチャレンジを「ズイキャノ」と呼んでいる。

エベレスティングに続き、本田夫婦が選んだチャレンジが「ズイキャノ」

本田夫妻といえばメディカルサイクリストとして活動、夫の竜介さんが救急救命士、妻の母映さんが医師という医療関係者。先日このズイフトを使って獲得標高8848mを上る「エベレスティング」にチャレンジし、「バーチャルエベレスティング」を達成したばかり。強豪ホビーライダー夫婦としても有名だ。ところがバーチャルエベレスティングでは夫婦で同じ部屋で走っていたもののペースはバラバラで、ゴールも別々となってしまった。

「せっかく夫婦でやるならば、協力しながら一緒にできるチャレンジにしたいと思い、長距離走行に挑戦しようという話になりました。長距離走行で真っ先に頭に浮かんだのが東京-大阪間を24時間以内に走破する『キャノンボール』です。数年前に知人が挑戦しているのを見て知りました。基本的には国道1号線沿いを走りますが、細かいルートは決められておらず、経験者の方の走行記録を見ると大体550㎞ほどで完走している人が多いようです。なので、今回はズイフト内で協力しながら550㎞を走破するという目標を立てました」

このチャレンジに一緒に挑んだ前川さんは、もともと新潟に住んでいたときは本田夫妻とライド仲間だった。いまは東京へ引っ越してしまったが、バーチャルライドならば住む場所は関係なく一緒に走れるため参加することにした。その目的はダイエットだ。今回の消費カロリーは8000Kcalを超えるというから十分に達成したといえる。

スタートしたのは超早朝! 2時から

今回のチャレンジは超早朝の2時からスタートした。

「時速35㎞で走るとノンストップでも約16時間かかります。実際は休憩含め、18時間くらいかかるのではないかと予想し、深夜2時スタートで20時ゴールを目指しました」

前回のズイフトでのエベレスティングでは3時半にスタートし、竜介さんが12時間19分、母映さんが14時間26分だったことを考えると、より朝早くにスタートする必要があった。実際には順調なペースで走り、夜の19時にはフィニッシュ、実走時間15時間、途中2時間の休憩をはさんでの目標達成となったが到着は夜になった。

「あまり深く考えず、3人で無理がないペースで完走出来ればと思っていました。走り出してから思ったより時間がかかりそうなのに気づき、焦っていました」と前川さん。

550㎞も走ってお尻は痛くならない、その秘密はDHバー

一般的に自転車が動かないホームトレーナーに乗ると、1時間でもお尻が地獄のように痛くなってしまうが、550㎞という未知な世界にどう挑んだのだろうか?

「そもそもお尻なんて最初からなかった。いいね?」と竜介さん。冗談交じりに、550㎞走り切るコツを教えてくれた。

「冗談はさておき(笑)、ハンドルにDHバー(タイムトライアルやトライアスロンで使用するようなツノ)を装着し、ポジションの選択肢を増やしたことが良かったですね。様々なポジションを取る事でサドル接地面へのダメージを分散できました。また、休憩のたびにボディクリームを塗って擦れも防ぐよう意識し、サドル接地面と衣擦れ両方のダメージを軽減する事が出来たと思います。もちろんダンシングも多用しています」

さらに前川さんはバイク2台を使い分けて疲労軽減をしていた。

「3時間目安で小休憩することになっていたので、休憩ごとにロードバイクとTTバイクに交互に乗り替えて疲労の分散とポジション練習としました。最近、2台めのキッカースマートを購入したのが役に立ちました」

前川さんはノーマルバイクとDHバー付きのバイク2台を用意してズイキャノに挑んだ。

仲間がいるから乗り切れた550㎞

実際に走った感想を母映さんに聞くと、300㎞を超えてからがきつかったという。

「280㎞くらい走ったところで『300㎞超えたら楽になるかも~』ってコメントを呟いていたんですが、300㎞超えたあたりからどんどん苦しくなってきて、千切れてはペースを落として待ってもらうことが多くなりました。今となってはなんで300㎞超えたら楽になるって思っていたのか謎です(笑)。千切れ始めてからは精神的にも辛くなってきて、『諦めてしまおうかな…もう辞めたい…』とぼやくようになりました」

さすがにこれを1人で部屋でやっていたらめげてしまうが、隣にいる夫の竜介さんがポジティブな言葉をかけ、さらに前川さんもペースを緩め、1時間休憩することで回復したという。体力は1時間では回復しないかもしれないが、休憩を取った後はメンタルも回復し、最後まで走り切りきれた。こうした休憩のとりかたもズイキャノを走り切るコツなのかもしれない。

ここではさらにズイキャノについて本田夫妻と前川さんにQ&Aで詳しく聞いていこう。

ズイキャノに関するQ&Aを3人に聞いてみた

Q 目的はなんですか?

A 竜介&母映:

まず、トレーニング目的ではないですね(笑)

コロナ禍でレースやイベントが中止になったり、外乗りができない冬の新潟だからこそ、バーチャルサイクリングで何かにチャレンジしながら楽しむことが目的でした。また、チャレンジを通じて「こんな楽しみ方がある」ということを発信出来たらいいなと思いました。

夫婦の絆を深めるとかは、特に考えていませんでした(笑)

A 前川:

自転車を通じて交流させてもらっていました。お二人と走ってみたかったという単純な目的です。それと、一気にダイエットできそうと思って参加しました。

Q 実際にやってみていかがでしたか?

A 竜介&母映:

楽しかったです!!!
それは、たくさんの方が応援ライドに来てくださったおかげです。わたしたち3人をひっぱってくれたのはもちろん、チャットで場を盛り上げたり、励ましてくれました。

15時間は長かったのですが、ひとりで黙々と走る15時間とは全く別物でした。応援がこんなに力になるとは思いませんでした。感謝の気持ちでいっぱいです。

また、550㎞というわたしたちにとっては未知の距離だったので、成し遂げられるのかという不安もあったのですが、3人そろって無事にゴールできたことは素直に嬉しいです。この喜びと達成感を3人で共有できるのも素敵なことだと思います。身体へのダメージが予想以上ではありますが……(笑)

ズイフトで550㎞走るのも大変だったので、実際にキャノンボールをしている人たちは本当にすごいと思いました。

A 前川:

淡々と3人でローテして進んでいくのを想像していました。実際は、本当にたくさんの方が応援に来てくださり、かなりの時間を10人以上の集団で走行していたのが印象的です。

個人的には、序盤にダンシングした時にハンドルにヒザをぶつけて流血するということがあり、室内でも予想外があるのを痛感しました。幸い、軽傷だったので続行できましたけど(汗)。

Q どんな計画でおこないましたか?
コースやペース設定を教えてください。

A 竜介&母映:

ズイフトのTempus Fugitという1周17.3㎞、標高差16mのコースを周回することにしました。ズイフトの中で最も平坦で距離を稼ぎやすいコースです。ちなみにTempus Fugitはラテン語で、直訳すると「時は飛ぶ」、日本語でいう「光陰矢の如し」という意味だそうです。

ノンストップでも約16時間かかる長丁場が予想されたため、一定ペースを心掛けました。3人で走ることを想定して、女子の母映をひっぱるために竜介と前川さんが無理なく続けられるペース(※PWR 2.7倍前後)で走ることにしました。ズイフト内では36~37km/hのペースなので、予想タイムよりも少し速く走れる計算になります。

※PWR=パワーウエイトレシオ。体重当たりのパワーのこと。

Q 550㎞走るために補給食はどうしましたか?

A 前川:

補給食は、3時間単位で、パラチノースとスポドリを合計50g溶かしたボトルを1~2本、薄皮あんぱん、肉まん、冷凍焼きおにぎり、コーヒーなどを少しずつ食べました。これを短い休憩時間に毎回準備するのが大変でした。3時間ごとに2000kcal弱消費すると予想し、半分は糖質で賄う必要があるので、1000kcal弱を食べていくのを目安にしました。

上の補給食に加えて、今年色々なロングライドに挑戦されていた高岡亮寛さんがカップ焼きそばで補給されていたのが印象に残っていて、自分も真似しようと思っていました。

前日にカップ焼きそば自体は買い込んでいたのですが、チャットで応援のなかに「ちゃんと煮卵をトッピングしないと」と指摘があり、休憩時間にコンビニに走って煮卵を調達することになりました。煮卵トッピングの焼きそばを何とか完成させたのですが、食べ始める前に休憩時間が終わってしまい、ローラーを回しながら食べることになりました。9時間の折り返しを過ぎたあたりでしたが、焼きそばを食べると元気が回復し、絶対に完走しようという気持ちがわいてきました(笑)。

A 竜介&母映:

具体的に炭水化物を何グラム……のような計算はしていませんが、2日前から炭水化物を多めに摂ることを心掛け、前日は水分も多めに摂るようにしました。

さらに、補給はなるべく走りながら摂るようにしました。用意したものは、おにぎり、パン、たこ焼き、焼きそば、肉まんなど(笑)その他に、ボトルの水にBCAAやパラチノースを溶かしたもの、コーラ、オレンジジュースを準備しました。固形物だけでも1人約3300~3500kcal摂取しました。

1回でたくさん食べると消化・吸収が追い付かず内臓疲労にもつながるため(←前回のエベレスティングで経験済み。笑)、こまめな補給を意識して20~30分に1回を目安に少量ずつ食べるように心がけました。それでも疲れてくると補給を摂るのを疎かにしてしまうことがありました。

【表】実際のライダーの平均パワーと消費カロリー、疲労度TSS
ライダー 平均パワー(PWR) 消費カロリー TSS
本田竜介 143w(2.6w/kg) 7100kcal 400
本田母映 123w(2.4w/kg) 6170kcal 507
前川聡朗 154w(2.4w/kg) 8200kcal 419

※TSS=トレーニングストレススコアで体への負荷がわかる。例えばFTPで1時間走るとTSSは100となる。

さらに各ライダーの平均パワー、消費カロリー、TSSをまとめてみると、6000~8000Kcal消費していることがわかる。

Q 上手に休憩するコツはありますか?

A 竜介&母映:

理想は3時間ノンストップ+小休憩(15分程度)のサイクルを刻むことでしたが、そううまくはいきませんでした(笑)。休憩の回数、タイミング、その時点での走行距離、休憩時間は下の表にまとめたとおりです。

【表】休憩タイミングと時間
回数 タイミング 走行距離 休憩時間
1 3時間 110㎞ 15分
2 6時間 219㎞ 15分
3 9時間 325㎞ 20分
4 11時間 400㎞ 60分
5 13時間 473km 15分
フィニッシュ 15時間 550㎞
A 前川:

全体的には、3人で声を掛け合い、応援の方にも上手くペースコントロールしてもらい、最初から最後まで一定ペースを刻めました。最低限の休憩以外はほぼノンストップで走っていたので、400km地点で少し苦しくなりました。ここで長めの休憩を入れる判断ができたので、残りの150kmを集中して走り切れました。

最後に「応援ありがとうございました」

「今回550㎞を走り切れたのは、誇張表現抜きに応援してくださった皆様のおかげだと思います。わたしたちが想像していた以上に多くの方から応援していただき、本当に力になりました。この場をおかりして改めて感謝申し上げます。わたしたちも応援ライドに駆けつけますので、ぜひ皆さんも550㎞ライドに挑戦してみてくださいね。ね?!(^_^)」と、本田夫妻からのコメント。

「新潟やZwiftのチームの方々、屋外・Zwiftでエベレスティングやキャノンボール、長距離ライドを達成されている方々、ツイッターなどを見て駆けつけてくれた方々、書ききれないくらいたくさんの方に来てもらえました。中には、深夜2時のスタートから早朝まで伴走してくださり、いったんお仕事で抜けて最後のゴールでもう一度ジョインしてくれた方もいました(笑)。応援の方の引きが強すぎてハイペースすぎると感じることもありました(笑)」と前川さん。

 

「ズイキャノ」、ハードルは高いですが、いつかはチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

 

プロフィール

りゅーじ(本田竜介)

救急救命士で妻のもえまぐろ(本田母映)とともにメディカルサイクリストとして活動。ヒルクライムを得意とし、新潟ヒルクライムでは男子Bで優勝。「バーチャルレース新潟県選手権2020」には自身も参加し、僅差で2位ゴールとなっている。

もえまぐろ(本田母映)

2015年に自転車漫画「弱虫ペダル」に影響を受けてロードバイクに乗り始め、2016年からはトラックレーサーにも乗る。現在は勤務医として働きながら、国体や実業団レースに参加する。日本初のインターナショナル女子チーム、High Ambition 2020 jpに所属。主な戦績:ツールド沖縄市民レース 優勝(2017年)、Mt.富士ヒルクライム 3位入賞(2017年)、国民体育大会新潟県代表(2019, 2018, 2016年)、Zwift national championship 優勝(2018年)など。ブログメディカルサイクリストでは、救急救命士の夫と情報発信を行っている。

メディカルサイクリストWEBサイト
https://medicalcyclist.com/

としごろー(前川聡朗)

新潟の実業団チーム「サガミレーシング」、オンラインのズイフトチーム「NICO-OZ」に所属する自称:暇人系フルタイムワーカー。東京に引っ越したあともズイフトなどで新潟の自転車乗りの皆さんと交流を続ける。Kickr Smart 2台のほか、何種類かのパワーメーターを所持するほどものズイフトマニア。

SHARE

PROFILE

Bicycle Club編集部

Bicycle Club編集部

ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。

Bicycle Club編集部の記事一覧

ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。

Bicycle Club編集部の記事一覧

No more pages to load