白神ラインの未知の道が、雨のなか興奮を呼び起こす|筧五郎が白神を往く【後編】
Bicycle Club編集部
- 2021年04月22日
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青森、白神山地に40㎞以上続くグラベルロード「白神ライン」がある。日本海と弘前を結ぶ日本有数のグラベルロードだ。ここを酷道の旅をライフワークとする筧五郎とフォトグラファー管洋介が紹介する。
列車の旅を終え、スタート地点のウェスパ椿山駅へと到着した五郎さん。雨は小降りとなり、嵐の前の静けさとも映る日本海を前に、いざ白神ラインへ!
筧五郎が青森・白神を往く「前編」はこちらから
筧五郎が青森・白神を往く【前編】
スタート地点の岩崎からいよいよ白神ラインへ
AM11:00 小雨のなか、白神ラインへ
雨は小降りとなり、嵐の前の静けさとも映る日本海を前に呼吸を正し、いざ白神ライン入り口へ。山へ吸い込まれるように進んでいく2台のロードバイク。笹内川を上流に進み森が濃くなっていくほど、行く先の期待に気分が高揚する。「まったく知らない土地、どんなコース、起伏は、峠は?」そして今日は心強い相棒もいてくれる。気心知れた管さんとのライドは純粋にライドを楽しめる。
季節は秋だが寒い。そして豪雨。冷えは旅の天敵、このカステリ・ガバは雨に濡れれば濡れるほど保温性が上がっていく、さすがツールで鍛え上げられたウエアだ
雨対策がこのクロスポイント・ウォータープルーフ ニットグローブ。雨を快適に走るには雨用のツールを使いこなすのもポイントだ
ブナの原生林を走る喜びと、予想以上の雨と寒さに苦戦
雨雲がパッと開けた瞬間、白神山地の奥深さを実感できた。雨が木々を潤し、太陽がエネルギーを与えこのすばらしい景観を作る
12:10 グラベル区間に差しかかる
12kmほど上ったところで舗装路から未舗装路に変わった。
未舗装に入るとペースは落ちるが、悪路で身体中の感覚が敏感になる、どうやら大自然の中で嗅覚が研ぎ澄まされる気がする。タバコの匂いがしてきて、「この先で工事でもしているのかなぁ」と思ったら、2カーブ先で道路工事をしていた。雨宿りをしながら工事関係者さん数名がタバコを吸っていた。おいちゃんと目が合って、お互いにペコっと頭を下げた。おいちゃんから見たら こんな雨の中、なんで走っているんだと思っただろうに……。
まだ最初の一つ森峠の中盤、すでにジャージの内側まで濡れてしまった。ひとつめの峠、一つ森峠を下り、追良瀬橋を渡ると雨脚は目の前が真っ白くなるぐらい激しくなってきた。再びレインウエアを着直し雨宿り。時計を見れば13時半、まだ行程の半分も来ていないことを確認し、意を決し、ヒルクライムを続行。雨に打たれて体力も奪われ、道のりが遠く感じる……。
視界一面が木々に囲まれた1本道を上り続けていると不意に一ツ森峠に到着。
なんの前触れもなく到着してしまったので「え?ここが峠の頂上?」と一瞬あっけにとられたが、こうした峠が地元の生活を結ぶ重要な道であり、なにより人知れず峠を制するのも気持ちがいいものだ。
白神ラインにある3つの峠、その1つめの峠一ヶ森峠。ようやくたどり着いたというような悪天候だったが。まずはお決まりのポーズ
深い自然に囲まれた白神ラインにも要所要所にトイレが完備されている。それも頑丈でもしもの時の避難小屋としても利用できそうな佇まいなので、ちょっと安心する。
一つ森峠を下り追良瀬橋を渡ると雨足は目の前が真っ白くなるぐらい激しくなって来た。天狗峠の途中のトイレで脱いでいたレインウエアを着直し雨宿り。時計を見れば13時半、まだ半分の行程にも来ていないことに焦りを感じ、意を決してヒルクライムを続行。
雨に打たれて体力も奪われて来たのか回せど回せど道のりが遠く感じる……。するとふと現れた舗装路!
グラベル仕様とはいえオンロードのありがたさをこれほど身に感じたことはない。
ようやく着いた2つめの峠、天狗峠では、看板を見るなりフキの葉っぱで天狗になり切った。しかしここで待っていたのが激しいダートの下り! 再び雨脚も強くなり先も見えないうえ、大きな石がむき出しでハンドルが取られる状況……それでもカウンターステアを当てながらスムーズに走れた。これがグラベルの醍醐味だ。
14:40 ハンガーノックの2人に天の恵みが
天狗峠を下り、赤石川を渡る手前のトイレで小休止、背中のポケットを探ると、弘前駅のコンビニで購入した補給食を食べつくしてしまったことに気付いた(笑)。
そこへ一台のジムニーが止まった。乗っていたのは年配のご夫婦。僕は話しかけた。
「白神ラインをツーリングしていて補給食を食べつくしてしまったので何か食べるものをいただけませんか?」
ご婦人は黒糖棒1袋、お茶2本に、まだ温かい手作りおにぎりを僕ら二人に優しい笑顔で渡してくれた! 赤石川に架かる橋を渡るときにはご夫婦の笑顔に元気をもらい、疲れも一瞬忘れて二人して「イヤッホー!」と叫びなら水しぶきをあげながら走った。雨なのに元気なのは楽しいからだ(笑)。
奥赤石の公衆トイレ近くで出会ったご夫婦。温かいおにぎりと、お茶、そして黒糖棒を分けていただき、元気を取り戻した。寒さで想像以上にカロリーを消費しており、感謝!
16:30 第3の峠、遠かった津軽峠に到着
しかし、最後の津軽峠登頂がまた遠い、空を見上げれば雲の隙間から西日がちらつく…そして、二人から笑顔も会話も消えてきたのだ。想像以上に長距離のダートの走りは身体へのダメージが大きいのだ。
あえぎながらふと山が開け、空を見上げるとそこが津軽峠だった。
その先には小さな小屋、トイレがあり、近くにはバス停があった。その先には駐車場がある。
バス停近くに駐車場があり そこにから歩き出そうとしている方に話かけると「近くにマザーツリーがある」という。白神のシンボルと言われるブナの木があり、しかし、残念ながら2019年の台風21号で折れてしまったらしいのだ。
バス停の時刻表を見てみると1日2便。しかも入山カウンターがあり 去年(2019年)の入山者数は4000人を超えている。余裕があればぜひ「白神の守り神」と言える 巨木に会いたかったが 歩いて10分は掛かると聞いて管君と目が合う。時刻は16時半、お互いに先を急ごうとウンとうなずいた!
そこにいる人に聞くと、近くにマザーツリーという白神のシンボルと言われるブナの木があるらしい。歩いて10分というが時刻は16時半、残念ながら先を急いだ。
最後の峠津軽峠に到着。近くには白神のシンボルと言われるブナがある人気のスポット。バス停もあるが1日2便!
案内看板によると晴れていれば、白神岳の眺望を楽しめるという。残念……
16:55 ようやく暗門に到着、カップラーメンに生き返る
後はゴールのアクアグリーンビレッジANMONまでの下り。わずかに残る気力を振り絞ってダウンヒルをすること30分。アクアグリーンビレッジANMONの大きな看板が突然目に入った! 着いたぁぁぁ!!
管さんが「温かい物を食べましょう!」と閉店間際の売店へ入りカップラーメンをすすり一息ついた。
「旨い!!!」
こんな美味い食い物ないぜ!3分の待ち時間も待てず、硬い麺を無心無言で食べつくした。
今度来るときにはもっと装備を完璧に! ぜひマザーツリーを拝みたい
振り返れば60㎞余りの行程と短めでありながら、ハードなグラベルの山岳、土砂降りの雨は破壊力抜群だった! そのため、正直撮影どころではなくなってしまった。次回は快晴のもとリベンジしたいと誓うのであった。
それから補給食は あまるだろうなぁと思うぐらい持っていくのがおススメだ。
今回のコース
ウェスパ椿山駅からアクアグリーンビレッジANMONまで3つの峠を越える64km、獲得標高1749mを走った。例年は11月中旬から5月下旬まで冬季閉鎖。2021年は5月30日、12:00開通予定だが、最新情報は「青森みち情報」などで確認しよう。
プロフィール
筧五郎
全日本マウンテンサイクリングin乗鞍で優勝したほか、シクロクロスマスターズ元日本チャンピオン。酷道の旅をライフワークとする56サイクル店主。名古屋でメンテナンスやトレーニング指導を行う。
www.56cycle.com
管洋介
アヴェントゥーラサイクリングでレースを走りながら、スクールなどで指導を行うプレイングマネージャー。本誌ではインプレライダーとして活躍する。本職はフォトグラファー。
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筧五郎が青森・白神を往く【前編】
筧五郎が青森・白神を往く「機材編」はこちらから
筧五郎が青森・白神を往く【機材編】
青森のサイクリングに関する情報はこちら
青森県サイクル・ツーリズム推進協議会
https://aomori-cycling.com/
- BRAND :
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TEXT & PHOTO:筧五郎/管洋介 MAP:オゾングラフィックス
協力:青森県サイクル・ツーリズム推進協議会
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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。
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