「ケルビム カフェ」オープンに思う【革命を起こしたいと君は言う……】
Bicycle Club編集部
- 2021年06月05日
歴史を振り返る
夜中に「自転車の歴史」なる本を読み、そのサクセスストーリーに感動した。ダ・ヴィンチのイラストから始まり(諸説あり)、現代のレーサーに変貌していく有様が断片的に記載されている。気の遠くなるような歴史のなかで、多くの技術者や乗り手たちが情熱を注ぎ現代の自転車が走っている。
鉄、パイプ、ゴム、ギヤ、空気タイヤ、チェーン、舗装道路、などの発明が、偶発的に重なり今がある。
自転車は、ダヴィンチが創造した物ではなく、多くの偶然の上に今の自転車がある。言い換えればわれわれはその偶然にただただ縛られてるだけなのかもしれない。
ロードエンド
例をひとつあげよう。自転車のリアエンドは長らく車軸をスライドできるエンドが採用されていた。フレーム製作に従事したころ、なぜスライドさせるのか?という疑問が湧いた。
ランドナーは泥除けがあり、スライドさせてホイールを抜くことができなかったので、現在のストレートエンド方式が採用されていた。しかしロードはなぜかスライド方式だ。
フレーム精度の悪さを調整するためという説もあったが。半世紀前だって、このくらいの精度のフレームは問題なく作れたはずだ。
なぜだろう……。答えは過去を振り返れば導きだせる。定説は変速システムの元祖カンパニョーロ・カンビオコルサの名残だ。
そのシステムはチェーンテンションを車軸をスライドさせることで解消していた。その形状が残り、ロードレーサーの証としてのアイコンとなっていた。
またカンパニョーロ製のエンドがダントツに性能がよかったという理由もありそうだ。他社のエンドがポキポキ折れる時代にカンパニョーロだけは折れなかった。
さらには鍛造エンドは一度に多くの量を作らなければならずメーカー事情的に市場に大量に流通していたという理由もある。(現在もこのエンドは数多く出まわっており希少価値も低い)。現代では無意味な理由ばかりだ。
理由がわかった私は直ちにストレートエンドへの変更を決意した。いうなれば歴史を知り(意味を知り)未来を開拓したのだ。偶然なりメーカーの事情なり意味がわかれば、その束縛からわれわれの未来が開放される。
ここに歴史を振り返る意味がある。やや大げさになってしまったが……。コーヒーの香りのなか、自転車を眺めながらそんなことを考えるのも悪くない。
Cherubim Master Builder
今野真一
東京・町田にある工房「今野製作所」のマスタービルダー。ハンドメイドの人気ブランド「ケルビム」を率いるカリスマ。北米ハンドメイド自転車ショーなどで数々のグランプリを獲得。人気を不動のものにしている
今野製作所(CHERUBIM)
革命を起こしたいと君は言う……の記事はコチラから。
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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。
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