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NTTのAIが大予想!ツール・ド・フランスの覇者はログリッチ 気になる予想システム 

今年のツール・ド・フランス(以下略、ツール)の総合優勝はプリモシュ・ログリッチ(チーム ユンボ・ヴィスマ、スロベニア)。こう優勝予想をするのは日本が誇るNTT社のAIシステムだ。

NTT社がツールを主催するASO社とパートナーシップを締結し、ツールをはじめとするASO社主催の世界的レースの展開や結果を最新テクノロジー&AI(人工知能)で分析。各レース直前&レース中に「NTTプレディクター(=予想屋)」として、優勝者やレース展開(逃げは成功するのか否か?)等の予想をSNS等(@letourdata)で発表しているのはご存じだろうか?

ここではUCI(国際自転車連合)公認代理人の山崎健一さんが「AIによるレース予想なんで当たるんだろうか?」ということで、そのシステムのいま、そして将来性を紹介する。そして、最後には山崎さんによるAIには予想不可能ともいえるツールの総合優勝を大胆にも予想する。

@letourdataによる2021年のツール・ド・フランスの予想(2021年6月25日)

  1. プリモシュ・ログリッチ(チーム ユンボ・ヴィスマ、スロベニア)
  2. ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)
  3. タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)

AI(人工知能)によるレース予想なんて当たるはずがないだろっ!(山崎)

PHOTO:A.S.O./Charly Lopez

正直なところまだまだ的中率は低く、現状は“かわいいもんだ!”程度の扱われ方でしょうか⁉

強いて言えば、レース最中に「逃げ集団」と「メイン集団」のスピードを計算し、逃げ切るのか否か?はたまたゴールまでどの程度の距離で逃げが捕まるのか?等の予想に関しては信頼がおけるんでしょうかね……。

そもそもなぜNTTがツール・ド・フランスをスポンサーしているのか?

Tour de France – Revolutionizing the fan experience NTT https://hello.global.ntt

そもそもなぜ、日本が世界に誇るNTTが自転車レースの「AI予想」を⁉と思われる方への背景説明ですが、NTT社内でロードレース分析・予想をしている“精鋭部隊“は、元々南アフリカに本店を置き、英国を拠点に統計・データ分析などを行う「ディメンション・データ社」。2010年に海外におけるAIやビッグデータ分析分野に力を入れたいNTT社に買収されてNTTグループ企業となり、2019年からは社名自体もNTTに変更して、同社内の一部門に。

つまり、「ディメンション・データ社」がツールにも出場するUCIワールドチームのスポンサードになった2016年時点で、既にNTTは自転車レース界に実質上参入していたともいえます。

さらに、なぜNTTは自転車ロードレースを「AI予想」等の実験場に選んだのか?

私自身はNTTの中の人ではないため、実際のところはわかりませんが、関係者に聞くところによると「通信状況が容易ではない非市街地公道で常に移動し続けるGPS発信体との通信、および中継技術の精度を上げる」目的&「AI分析予想材料となる要素が多く、非常にチャレンジングな分野」であること、そして元々サイクルコンピュータ/パワーメーターやITガジェット系との親和性が高い自転車ロード競技側との相性のよさが決め手のようです。

レース主催者であるASO側にとっての利益は明確です。

NTT社からのスポンサー資金獲得+よりリッチなレース観戦体験の提供。そして、逆説的な話ですが、ASOは予測できてしまうレース展開がファンにとって面白くないのは十も承知なため、NTT社の「AI」による予想を逆活用して、より予測がつかないレースコースの設定を突き詰めます。

どうやって「AI分析」してるの?

さて、このAI予想屋「NTTプレディクター」は具体的には何を見てレース分析をし、どのように活用されているのでしょうか?

まず、NTT社は「ASO社が主催するレース」に出場する全選手の自転車(サドル裏)にGPSトラッカーを設置し、レース中のポジションデータをリアルタイムで収集しています。

さらに2015年からの全UCIレースに於ける各選手の各コースタイプのよる結果傾向や、どの選手同士が同じレースで走ったことがあるのか?その際の勝敗傾向はどうか?なども分析材料として活用されています。残念ながら、まだパワーメーターデータの収集に関しては技術的な問題や、チーム側が出し渋っている関係で未導入ですが、それも時間の問題でしょう。

この収集データによって現在「分析・予想」されていること

  1. レース展開で「直後の未来予知」=選手&監督などのプレイヤーが参考にする情報
  2. レースの「最終結果予想」=TV視聴者・ギャンブラー+αが参考にする情報

1.の「直後の未来予知」とはなにか?

全選手に付けたGPSによって、NTTプレディクターがレースプロトン内での選手の動きをリアルタイムで見ている事は前述の通りですが、これにより「何十秒以内にアタックが起こるかも」、「どのチームが攻撃の準備をしている」、「集団内の動きが不安定で、落車が起こりやすくなっている」等の極めてリアルタイムな予想がはじき出されます。

残念ながら、この「直後の未来予知」はいまだ実験段階で、せいぜいTV実況者が参考データとして閲覧する程度の段階。

まぁ、視聴者としてはいちいち直後に起こることを実況されてもウザいと思いますが、このデータに最も興味があるのはレースを戦っている最中のチーム監督&選手達ではないでしょうか? さらにそもそも論ですが、ロードレース競技は逐一変わるレース状況をプロトン内にいる選手がコンマ1秒単位で行動選択し、それがレースを左右します。よって、例え車に乗っている監督が「直後の未来予知」を得て選手に無線で知らせたとしても、あまり役には立たない可能性もあるかも⁉

何はともあれ、比較的保守的な世界(欧州)自転車ロード界では、過去に選手がパワーメーター数値を見て走り方を計算することへの批判が起こったように、「AI予想」データをチーム戦略に取り入れてもいいものなのか?はたまた、チーム間の情報格差が生まれるのでは?などの懸念から、活発な議論が近々交わされ始めるのかも知れません。

2.のレースの「最終結果予想」については?

2.のレースの「最終結果予想」に関しては、すでに我々が見ている“可愛いもんだ!“レベルの「逃げが決まるか否か?」や「優勝者予想」です。

現状はエンタメレベル予想の範疇を超えていませんが、この予想が可愛げのないものになる日が結構近いうちに来てしまうのかも⁉ そうなると、ギャンブラー達にとっては喉から手が出るほど情報となり、「情報商材」ビジネスに発展する可能性もあるのではないでしょうか?

スポーツ予想「AI(人工知能)予想」の歴史

日本の法律ではこうした海外でのスポーツ・ベッティングは認められていないない。

さてさて、ここまでは「NTTが世界を舞台に革新的なことを始めている!」的に書いてきましたが……じつはコンピューターの力を借りて行うスポーツ&レース予想は全くもって新しい話ではありません。

「AI予想」の概念自体は既に1950年代には存在したそうで、その後は学者・技術者の方々の血の滲むような努力で着実に発展(例:機械学習=ニューラルネットワーク、深層学習=ディープラーニングなど)。1990年代から米国のNFLアメリカンフットボールにて現場活用されており、実際にチーム監督が試合中にAIがはじき出した「直後の未来予知」を参考にして、選手のフォーメーション策定等を行っています。

「最終結果予想」に関してもアメフト分析専門家による的中率が7割程度なのに対し、AI予想は6割ほどまで精度が上がっているようです。

また、直接的なAI予想ではないものの、米大リーグ野球「MLB」に於いても数理科学&統計学を活用し、コンピューターによるデータ処理と人間による分析をミックスした「セイバーメトリクス」データ分析が2000年代から導入されています。

この方法で大成功を収めたオークランド・アスレティクス“チームの軌跡は、映画『マネーボール』でも語られたので、ご存知の方も多いかと思います。

そのほか、あらゆるものを賭け(=ブック)の対象にする民間「ブックメーカー」大企業がしのぎを削る英国に於いても「AI予想」は注目されています。英国ではじつに1795年から合法的なブックメーカーがビジネスを始め、現在は株式上場企業であるウィリアムヒル社を筆頭に、大手三社が英国内で約9,000もの「賭け所」を営業しています。これらブックメーカーにとって、ギャンブル結果予想の精度は、お金を賭ける一般市民と同等かそれ以上の死活問題です。

というのも、日本で我々が目にする競馬、競輪、公営賭博等での「オッズ=Odds」(的中時の払戻金倍率)は、公表されている計算式(パリミュチュエル方式準拠)で数学的に決まりますが、民間ブックメーカーにより発表されるオッズは、消費者(ギャンブラー)にとって魅力的な“商品”とすべく、予想を専門とするプロの「オッズメーカー」からのアドバイス等を基にして、ブックメーカー側が人為的要素をくわえて設定されています(ブックメーカー方式)。つまり、通常は低めに設定されるべき「大本命」オッズに対して、誤った高配当オッズを設定したらブックメーカーは破産の危険性があります。よって正確な「AI予想」はブックメーカーの収益に直接影響を及ぼします。

これら欧米における“ガチ”のAI&統計分析が導入されている分野の共通点は『お金になる』という点。米国のNFL、MLBなどの経済規模は言うまでもなく巨大なものですし、たとえ一試合の“勝ち星“であっても、スポンサー獲得やマーチャンダイジンググッズ売上等、目に見える金銭的恩恵を受ける人の数は膨大。ブックメーカーに関しては言わずもがな。

つまり、「AI予想」分野は今後ますます巨大なビジネスへと発展する可能性を秘めているようです。

なぜAI予想は難しいのか?

著者が実際に購入した2019年のグランプリの車券

とはいってもねえ……我々ロードレースファンに取ってツール・ド・フランスまわりのレース「AI予想」を見ていると、まだまだ頼りないですよね……。

私個人的にも、はっきり言って「AI予想」なんぞほとんど信用していません!(NTTさんごめんなさいっ!)

というのも、小生はかれこれ20年来、自転車競技を愛する日本男児のプライドを胸に、国民的スポーツであり、データ分析力、理論的思考等のビジネスマインドを磨いてくれる究極のスポーツ『競輪』に対し、民主主義国家成人が持つ最も尊い権利の一つである「投票(車券を買う事)」権を行使しまくっていますっ(長っ!)

シンプルにいうと、「競輪」で賭けるのが好きですのでっ!

その経験からいうと「AIなんかすっこんでろっ!」が今のところの結論。

理由は、レース結果を左右する不確定&アナログ要素が多すぎて、まだまだ頭が堅いコンピューターに予想なんて到底無理!と思うからです。

まず競輪予想の場合、予想材料としては「少なくとも」下記の要素が絡んできます。

競輪にまつわる予想材料

  • 選手の実力(肉体・性格)
  • 出場選手の出身地(普段の練習仲間、他選手との上下関係など)
  • 競輪学校の卒業年度(同じ釜の飯を食った仲間意識)
  • 対戦相手との相性
  • 天候
  • レースのグレード
  • 開催地
  • 過去のレース展開(差し、捲り、追い込み、BK、連対率などなど)
  • 年間を通してのコンディション推移
  • ギア比(それを選んだ背景・理由が重要)
  • トーナメント時の予選・決勝(決勝がやはり重要なため、予選では100%出し切らないケースもあり)

上記に加え、「レース会場に家族・恋人が足を運んでいるか?」、「スタート地点でネガティブなヤジが飛ばされた」などなど、人間の精神的な要素も絡んできます。あと確実にいえますが、私が知らないだけで、玄人ギャンブラーのみが見ている「材料」も存在します。

これらの情報を基に、競輪予想の世界では、数えきれないほどの参考データ(新聞・ネット情報)や、競輪場での「(公認)予想屋」、コンピューターを活用しての有料分析・予想サービスが長年乱立しており、わたしも予算が許す限りにおいてひととおり試してきました。その20年(この年数は競輪ギャンブラーの中ではヒヨッコです)の経験で導いた結論は『人間の予想には勝てない』です。

もっと具体的に言うと、競輪場にいらっしゃる、長年の競輪競技を観まくって、自身も痛い目に遭ってきた、車券購入のためのマイ鉛筆を競輪場に持参して来られるようなおじいさんには絶対敵わない。

いや、もう、彼らはとにかく当てる。

そして予想が絶対につかない&配当金が安すぎる時は、敢えて「賭けない」という素晴らしい判断も下せるのです(「的中率」ではなく「回収率」)が最重要)!

さて、日本国内にて比較的競走結果データが整理されている「競輪」でさえ予想が難しいと思うのですが、国籍や屋外の行動サーキットで実施される上、国籍・言語が異なる選手が入り乱れ、観客による干渉など不確定要素満載のロードレースなんかできる訳ないないない! 絶対の絶対に無理や!

現在はまだまだ可愛いレベルの「NTTプレディクター」ですが、AIの凄い所はその学習能力にあります。つまり年々その予想精度は向上し、それこそコンピューター何度にはわかりゃしない!と思われていた“ヒューマンファクター“でさえ理解するようになるのかも知れません。

個人的にはNTTさんは日本企業ということで、日本のチームを実験台に使って欲しいですし、さらに完成した大人の選手ではなく、予想がつかない若手選手のデータをAI分析に活用すべきかと思います。

例えば、日本からツール・ド・フランスへの出場&活躍を目指す「エキップアサダ」やその育成チームである「EQADS」とかとかっ!

何はともあれNTT&「NTTプレディクター」さんがんばれっ!!

ところで山崎健一のツール・ド・フランス予想は?

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネで総合優勝したリッチー・ポートPHOTO:A.S.O./ Fabien Boukla

ちなみに今年の「ツール・ド・フランス」における私の予想は以下のとおり。

総合優勝:リッチー・ポート(イネオス・グレナディアーズ)

理由は、ポートがアシストすべきチームメイト・エースらが不幸にもホテルの部屋のダニに噛まれてしっかり眠れずに脱落。なし崩し的にエースになっしまい、諦めていたツール優勝の悲願を達成! そしてその勢いで東京五輪ロードレースも優勝しちゃうんですからっ!(自信あり)

 

 

ツール・ド・フランス スタートリスト&コースプレビュー

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PROFILE

山崎健一

BiCYCLE CLUB / UCI公認選手代理人

山崎健一

UCI公認選手代理人&エキップアサダマネージャー。日本人選手の育成に尽力し、プロ選手からの人望も厚い。バイシクルクラブ本誌では連載「フ●ッキンジャップくらいわかるよ、コノヤロウっ!」を担当。

山崎健一の記事一覧

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