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ツール・ド・フランス、優勝は誰か? アルプスの本格山岳を前に総合争い3つの論点

世界最大のロードレース、ツール・ド・フランスは本記執筆時点で第7ステージまでを終了。続くステージからは、いよいよ本格山岳へとプロトンは足を踏み入れる。いつもであれば山岳で大きく動く総合争いだが、今年は個人タイムトライアルステージを挟んだこともあり、有力選手間でのタイム差がついた状態で山岳を迎える。これから有力選手・チームはどんな戦術で挑んでいくのか。「3つの論点」として、この先の注目ポイントを押さえていく。まずは個人総合トップ10、さらにグランツールを狙える総合系ライダーはどうなっているかをチェックしてみよう。

個人総合トップ10と総合系ライダーの順位(第7ステージ終了時点)

個人総合トップ10ライダー ★印は著者が選んだ総合系のライダー

1 マチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス、オランダ) 25:39’17”
2 ワウト・ファンアールト(チーム ユンボ・ヴィスマ、ベルギー)+0’30″ ★
3 カスパー・アスグリーン(ドゥクーニンク・クイックステップ、デンマーク)+1’49”
4 マテイ・モホリッチ(バーレーン・ヴィクトリアス、スロベニア)+3’01”
5 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)+3’43″ ★
6 ヴィンチェンツォ・ニバリ(トレック・セガフレード、イタリア)+4’12″ ★
7 ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ、フランス)+4’23″ ★
8 アレクセイ・ルツェンコ(アスタナ・プレミアテック、カザフスタン)+4’56”
9 ピエール・ラトゥール(チーム トタルエナジーズ、フランス)+5’03″ ★
10 リゴベルト・ウラン(EFエデュケーション・NIPPO、コロンビア)+5’04″ ★

10位以下の総合系ライダー

11 ヨナス・ヴィンゲゴー(チーム ユンボ・ヴィスマ、デンマーク)+5’18”
12 リチャル・カラパス(イネオス・グレナディアーズ、エクアドル)+5’19”
13 ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)+5’29”
14 ウィルコ・ケルデルマン(ボーラ・ハンスグローエ、オランダ)+5’31”
15 エンリク・マス(モビスター チーム、スペイン)+5’33”
16 バウケ・モレマ(トレック・セガフレード、オランダ)+5’43”
17 ヤコブ・フルサン(アスタナ・プレミアテック、デンマーク)+5’51”
19 ダヴィド・ゴデュ(グルパマ・エフデジ、フランス)+6’10”
25 リッチー・ポート(イネオス・グレナディアーズ、オーストラリア)+7’33”
27 エマヌエル・ブッフマン(ボーラ・ハンスグローエ、ドイツ)+8’06”
29 ベン・オコーナー(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、オーストラリア)+8’31”
30 ギヨーム・マルタン(コフィディス、フランス)+8’52”
31 ミゲルアンヘル・ロペス(モビスター チーム、コロンビア)+8’55”
33 プリモシュ・ログリッチ(チーム ユンボ・ヴィスマ、スロベニア)+9’11”

論点1 ファンデルプールはどこまでマイヨジョーヌを守れるか

2ステージを勝利し、以来マイヨジョーヌを着用し続けるファンデルプール。自身は当初、ジャージのキープは第5ステージの個人タイムトライアルまでと考えていたというが、周囲の予想をもはるかに上回る快進撃で、トップを守り続けている。

7ステージでは、マイヨジョーヌを着用したまま逃げグループに飛び込むロードレースのセオリーに縛られないチャレンジングな走りを披露。もっとも、このステージがクラシックレースに近いコースレイアウトとあり、彼の脚質にピッタリだったことも関係しているといえ、結果的にレースを支配することとなった逃げに乗り込む嗅覚と、それでいてファンアールトら現在の総合ライバルの様子をうかがいながら走るあたりはさすが。集団待機を余儀なくされたUAEチームエミレーツなどのお株を奪うレース運びは見事だった。

©︎ A.S.O./Pauline Ballet

こうなってくると、どこまでマイヨジョーヌを着られるか、である。ファンデルプールは第7ステージのレース後、「できるだけ長くこのジャージを着続けたい」と言及。一方で、「本格的な山岳をこなせるかは分からない」としており、まずは3つの1級山岳を上る第8ステージが重要になる。これまで出場してきたステージレースでは、本格山岳では勝負しておらず、彼自身も「脚質や体重を考えると山岳で戦うのは現実的ではない」との発言もしており、どこかで苦戦することも覚悟はしているだろう。当面は、今の貯金を取り崩しながらリードを守っていきたいところ。

論点2 集団に利用されたUAE、ポガチャルのマイヨジョーヌ着用タイミングに影響か

7ステージで逃げに選手を送り込めなかった5チームの1つが、ポガチャル擁するUAEチームエミレーツだった。最大29人の逃げを容認することとなり、さらにはマイヨジョーヌのファンデルプールや同様に総合上位を走るファンアールトらの先行を許す結果に、ポガチャルは「失敗だった」と認めた。

©︎ A.S.O./Pauline Ballet

このステージでは、大人数の逃げが行った時点で、メイン集団をコントロールする責任があることは理解し、すぐにペーシングに入ったというが、強力メンバーがそろった先頭グループの勢いに勝ることはできず。ファンデルプールからは343秒差でアルプスでの戦いを迎える。

タイム差や順位を見る限りは、先々の戦いへの問題はないと見ても良いだろう。グランツールの総合成績で実績のある選手の中では事実上のトップであり、アルプスやピレネーでの消耗戦が始まれば、自然と有利な展開になる可能性が高い。ただし、仮にこの先どこかでリーダーチームとなった際に、第7ステージ同様に多くのチームが前線に選手を送り込み、メイン集団がUAEだけを利用するような戦術がないとも限らない。実際に、そうなった際に対処に追われるであろうことが、このステージで露呈されてしまった。山岳に入り本領発揮するであろうポガチャルだが、どのタイミングでマイヨジョーヌを獲りに行くかも慎重に判断していかないといけない。

論点3 ユンボ、イネオスは総合エース変更か?

7ステージでは、チーム力的に今大会有力視されていたチーム ユンボ・ヴィスマとイネオス・グレナディアーズの状態も明白になった。

チーム ユンボ・ヴィスマは絶対エースのプリモシュ・ログリッチ(チーム ユンボ・ヴィスマ)が2級山岳でまさかの脱落。第3ステージで激しく落車し、そのダメージが心配されていたが、やはり傷みは軽いものではなかったよう。このステージを終えて、ファンデルプールから911秒差の個人総合33位。ここからの浮上は厳しいと言わざるを得ない。

イネオス・グレナディアーズは、同じく2級山岳でゲラント・トーマス(イギリス)が遅れかけた。頂上手前で何とか踏みとどまり、そのままメイン集団でフィニッシュしたものの、こちらも第3ステージでのクラッシュで負った肩の脱臼の影響は少なからずあるようだ。

©︎ A.S.O./Pauline Ballet

こうなってくると、両チームの戦術もツール全体の流れに影響を与えることになりそうだ。ユンボはここまで、ファンアールトとヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)が上位に位置。ともにグランツールの総合エース経験こそないが、山岳・タイムトライアルともに力を発揮できるタイプという点で共通している。果たして3週間戦い抜けるか、との疑問はあるが、それはこれから分かることだろう。いずれにせよ、状況次第では彼らが上位戦線にトライしていくことも大いに考えられる。

その場合、ログリッチはどうするのか。アシストの仕事をこなすのか、ステージを狙っていくのか、という焦点も出てくる。あくまで推察になるが、五輪や連覇のかかるブエルタ・ア・エスパーニャを控えていることも考えると、このツールを地固めの場とすることもあり得る。いずれにせよ、軽くはない落車ダメージを癒やす必要性はある。

©︎ A.S.O./Charly Lopez

イネオスはリチャル・カラパス(エクアドル)が戦える状態にあることを証明。第7ステージでは、メイン集団から飛び出すアタックも見せ、状態は悪くないようだ。こちらは、カラパスにせよトーマスにせよ、ユンボ勢やポガチャルから総合タイム差をつけられており、追わなければいけない立場にある。

両チームの方向性も、アルプスの山道できっとはっきりすることだろう。

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PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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