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ポガチャル、個人総合2連覇、ワウトはシャンゼリゼでも勝利!|ツール・ド・フランス

世界最大のロードレース、ツール・ド・フランスは現地718日に行われた第21ステージで3週間の戦いに幕を閉じた。この日は最終日恒例のパレード走行ののち、パリ・シャンゼリゼ通りを舞台とした平坦レース。ステージ優勝争いは当然スプリントとなり、前日に個人タイムトライアルを制したワウト・ファンアールト(チーム ユンボ・ヴィスマ、ベルギー)が勝利。今大会3勝目を挙げた。ステージ勝利通算35勝のツール新記録を目指したマーク・カヴェンディッシュ(ドゥクーニンク・クイックステップ、イギリス)は3位だった。そして、個人総合ではタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)が昨年に続く連覇を達成。シャンゼリゼのポディウムで晴れてマイヨジョーヌを戴冠した。

山岳・TT・スプリント何でもござれのワウト

626日にフランス北西部・ブルターニュ地方のブレストで開幕したツール2021。世界王者ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ、フランス)の快勝で戦いが本格化すると、ツール初出場のマチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス、オランダ)が第2ステージ以降マイヨジョーヌを着続け、ニューヒーロー誕生に沸いた。第1週後半に本格山岳ステージが始まると、前回覇者のポガチャルが本領を発揮。あっという間にマイヨジョーヌを手中にすると、その後の総合争いにおいてはライバルを寄せ付けない強さを見せ続けた。

一方で、5年ぶりのステージ優勝に泣いたマーク・カヴェンディッシュ(ドゥクーニンク・クイックステップ、イギリス)が、復活を遂げる快進撃。エディ・メルクスの持つステージ優勝記録34勝に並んでみせた。その他のステージでは、逃げからチャンスを得る選手が次々と現れ、ツール初勝利に歓喜した。

日々ドラマが続いた大会は、ついに最終日を迎えた。前日行われた第20ステージで、ポガチャルのツール2連覇が決定的になり、残る焦点は最終ステージの勝者と、カヴェンディッシュの勝利数新記録なるかに。トップスプリンターにして「世界スプリント選手権」と称するほど重要な一戦であるシャンゼリゼでの勝負に選手たちはモチベーションを高めた。

そんなレースだが、スタート前にヤコブ・フルサン(アスタナ・プレミアテック、デンマーク)が体調不良で出走を見合わせ。大会前に受けた新型コロナウイルスワクチン接種の影響が続いているとコメントしており、間近に迫る東京五輪へも不安材料になっている。

ここまで走り抜いた141人が、パリ郊外のシャトゥを出発。レース距離自体は108.4kmだが、そのうち半分ほどはパレード走行。本格的な走りに移るのは、シャンゼリゼ入り後になる。

©︎ A.S.O./Charly Lopez

パレード走行では、2連覇を決めたポガチャルを中心に、このステージではマイヨジョーヌカラーを差し込んだ特別ジャージで走るUAEチームエミレーツの選手たちが記念撮影。そのほか、選手同士で健闘を称えあったりと和やかな時間が続いた。この間、ステージ唯一の山岳となる4級の上りが設けられたが、セレブレーションタイム中だったUAEチームエミレーツの選手たちが前方に位置したまま頂上を通過。記録上はミッケル・ビョーグ(デンマーク)が1位通過となった。

©︎ A.S.O./Charly Lopez

時速30kmいくかどうかのスピードで進むプロトンは、いよいよパリ市内へ。ここからはUAEチームエミレーツが少しずつ集団牽引のペースを上げて、首都凱旋ムードを高めていく。そして、ルーブル美術館の中庭を抜けてシャンゼリゼ通りにやってくると、UAE8人が横並びとなっての凱旋パレード。1回目のコントロールライン通過をもって、“レーススタート”とした。

©︎ A.S.O./Aurélien Vialatte

シャンゼリゼ周回が始まると同時に、パトリック・コンラッド(ボーラ・ハンスグローエ、オーストリア)、シュテファン・ビッセガー(EFエデュケーション・NIPPO、スイス)、カスパー・ピーダスン(チームDSM、デンマーク)、ハリー・スウェニー(ロット・スーダル、オーストラリア)が先行。このうち、ピーダスンが集団へと戻るが、3人はそのまま先行して、68.3km地点に設けられた中間スプリントポイントを上位通過。20秒程度のタイム差でメイン集団もやってきて、ここはカヴェンディッシュが1位通過。マイヨヴェールの獲得に向けても、着々と状況を整えた。

©︎ A.S.O./Charly Lopez

それから集団は、アルペシン・フェニックスやドゥクーニンク・クイックステップを中心にペーシングを続ける。残り30kmを前に逃げる3人をキャッチ。代わって、イーデ・スヘリンフ(ボーラ・ハンスグローエ、オランダ)がアタックし、アラフィリップとフィリップ・ジルベール(ロット・スーダル、ベルギー)が同調。アラフィリップとジルベールは早々に集団へと戻る判断を下すが、ミケル・ヴァルグレン(EFエデュケーション・NIPPO、デンマーク)とブレント・ファンムール(ロット・スーダル、ベルギー)が抜け出して、スヘリンフに合流。この3人が集団に対して2025秒の差で先行した。

©︎ A.S.O./Aurélien Vialatte

しばしこの状況のまま進行したが、最終周回の鐘とともに集団が3人を吸収。スプリント決戦に向けて主導権争いが激化する。ドゥクーニンク・クイックステップのほか、ボーラ・ハンスグローエ、コフィディス、チーム バイクエクスチェンジと、トレインが次々と前線へ。混戦の中から、最終コーナーとなるコンコルド広場を良い形でクリアしたのはユンボ・ヴィスマだった。

残り500mでマイク・テウニッセン(オランダ)がスピードを上げると、すぐ後ろについたファンアールトが最後の200mで一気に加速。そのまま誰にも先頭を譲らず、一番にシャンゼリゼのフィニッシュラインを通過した。ファンアールトの番手を争っていたヤスパー・フィリプセン(アルペシン・フェニックス、ベルギー)が2位に入り、カヴェンディッシュはブロックされる形で加速ができず、3位に終わった。

ファンアールトは今大会3勝目。第11ステージではモン・ヴァントゥの上りで勝負を決め、前日は個人タイムトライアルで、そして今回はスプリントと、まったく異なるコースと状況で勝ってみせた。個人TT後の記者会見ではシャンゼリゼでのスプリントを狙うとの宣言をしていたが、まさに有言実行の勝利とした。

この後ろでは、ポガチャルがチームメートに守られながらレースを完了。これで、ツール・ド・フランス2連覇を決定させた。

ポガチャルは、スロベニア南西部のクラネック出身の22歳。昨年のツールでは最終日前日の大逆転劇がいまなお大きなインパクトだが、今季はリエージュ~バストーニュ~リエージュを制してワンデークラシック初タイトルを獲るなど、その活躍はグランツールにとどまらない。今大会は第1週でマイヨジョーヌを着用すると、その座を最後までキープ。ピレネーでの山岳ステージ2連勝のほか、個人タイムトライアルで争った第5ステージを勝っており、2位以下の総合タイム差以上に要所での強さが際立った。

©︎ A.S.O./Aurélien Vialatte

個人総合ではポガチャルに続き、2位にヨナス・ヴィンゲゴー(チーム ユンボ・ヴィスマ、デンマーク)、3位にリチャル・カラパス(イネオス・グレナディアーズ、エクアドル)が入賞。なお、ヴィンゲゴーは24歳、ヤングライダー賞対象選手がワン・ツーを占めるのは1958年以来63年ぶりとなっている。

©︎ A.S.O./Romain Laurent

その他各賞は、ポガチャルがマイヨジョーヌだけでなく山岳賞のマイヨアポワ、ヤングライダー賞のマイヨブランも獲得し、2年連続で大会3冠を達成。ポイント賞のマイヨヴェールにはカヴェンディッシュが10年ぶりの受賞。チーム総合はバーレーン・ヴィクトリアス、大会を通じ印象的な走りを見せた選手に贈られるスーパー敢闘賞にはフランク・ボナムール(B&Bホテルズ KTM、フランス)が輝いている。

©︎ A.S.O./Romain Laurent

フランスを一周した長き戦いが終わり、次の注目レースは724日に行われる東京五輪ロードレースだ。ツールで活躍した選手も多数が来日し、富士山を望む難コースに挑む。

ステージ優勝 ワウト・ファンアールト コメント

©︎ A.S.O./Romain Laurent

「本当に信じられないことになった。このツール・ド・フランスは大成功だ。苦難からはじまり、ここに至るまでジェットコースターのような日々だった。個人的に3勝は予想外。どれも貴重な勝利だが、いつまでも余韻には浸っていられない。今夜の東京行きの便に間に合うようにしなければ!

スプリントに向けて完璧なポジションに運んでくれたマイク・テウニッセンには感謝している。最終コーナーを抜けた後の位置取りが重要だと思っていた。マイクなら絶対大丈夫だと思っていたし、実際その通りになった」

マイヨジョーヌ、マイヨアポワ、マイヨブラン タデイ・ポガチャル スピーチ

©︎ A.S.O./Romain Laurent

「これだけの素晴らしいチームと3週間を戦い抜くことができた。私がその一員だなんて、どれだけ幸せなことか。これは言葉では説明ができない。胸がいっぱいだ。いや、さすがにここで泣くつもりはないよ。

スピーチを準備しておくべきだったのかもしれないけれど、思ったことを言葉にしようと思う。3週間応援してくださって本当にありがとうございました。どこまで美しいコースだった。そこで走れたことにも感謝したい。新型コロナウイルスへの対策とバブルのおかげで、私たちプロトンは無事にパリに到着できた。また来年、きっとお会いしましょう」

マイヨヴェール マーク・カヴェンディッシュ コメント

©︎ A.S.O./Romain Laurent

10年ぶりのマイヨヴェール。まるで若返ったようだね。戻ってこれた実感があるし、夢のような気分でもある。このツールの間、たくさんの人に応援してもらった。本当に信じられない光景だったし、こうしてパリに戻ってこれたことも名誉だ」

ツール・ド・フランス2021 第21ステージ 結果

ステージ結果

1 ワウト・ファンアールト(チーム ユンボ・ヴィスマ、ベルギー)2:39’37”
2 ヤスパー・フィリプセン(アルペシン・フェニックス、ベルギー)ST
3 マーク・カヴェンディッシュ(ドゥクーニンク・クイックステップ、イギリス)ST
4 ルカ・メズゲッツ(チーム バイクエクスチェンジ、スロベニア)ST
5 アンドレ・グライペル(イスラエル・スタートアップネイション、ドイツ)ST
6 ダニー・ファンポッペル(アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ、オランダ)ST
7 マイケル・マシューズ(チーム バイクエクスチェンジ、オーストラリア)ST
8 アレクサンデル・アランブル(アスタナ・プレミアテック、スペイン)ST
9 シリル・バルト(B&Bホテルズ KTM、フランス)ST
10 マキシミリアン・ヴァルシャイド(チーム クベカ・ネクストハッシュ、ドイツ)ST

マイヨジョーヌ(個人総合成績)

1 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア) 82:56’36”
2 ヨナス・ヴィンゲゴー(チーム ユンボ・ヴィスマ、デンマーク)+5’20”
3 リチャル・カラパス(イネオス・グレナディアーズ、エクアドル)+7’03”
4 ベン・オコーナー(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、オーストラリア)+10’02”
5 ウィルコ・ケルデルマン(ボーラ・ハンスグローエ、オランダ)+10’13”
6 エンリク・マス(モビスター チーム、スペイン)+11’43”
7 アレクセイ・ルツェンコ(アスタナ・プレミアテック、カザフスタン)+12’23”
8 ギヨーム・マルタン(コフィディス、フランス)+15’33”
9 ペリョ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス、スペイン)+16’04”
10 リゴベルト・ウラン(EFエデュケーション・NIPPO、コロンビア)+18’34”

マイヨヴェール(ポイント賞)

マーク・カヴェンディッシュ(ドゥクーニンク・クイックステップ、イギリス)

マイヨアポワ(山岳賞)

タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)

マイヨブラン(ヤングライダー賞)

タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)

チーム総合成績

バーレーン・ヴィクトリアス

 

ツール・ド・フランス スタートリスト&コースプレビュー

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PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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