年間1万8000㎞を走る自転車界のトップが話す自転車の近未来
Bicycle Club編集部
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ロードバイクを軸とするKhodaaBloom(コーダーブルーム)はじめ、こちらはマウンテンバイクを軸とするNESTO(ネスト)などを製造・販売するホダカ株式会社の山﨑一(やまざきはじめ)会長は、年間1万8000㎞を走る超ハードなサイクリスト。日々“日本人に合う自転車とは”を模索し、自らも自転車を積極的に楽しんでいるというわけだ。
先日開催されたB.B.BASE×Y’s Road KhodaaBloom号ライドに参加した際、そんな山﨑会長に話を聞く機会があったので、自社のブランドのこと、そしてこれからのスポーツバイクがこれから先どうなっていくのかを聞いてみた。
日本人による日本人のためのブランド「KhodaaBloom」
ホダカ 山﨑一会長
KhodaaBloom(コーダーブルーム)という自転車ブランドをご存知だろうか? かなりのスポーツバイク歴をもつライダーでも海外ブランドかと思っているかもしれないが、れっきとした日本のスポーツバイクブランドである。
国内で売られているスポーツバイクの多くは海外ブランドのもの。ということは、そのほとんどは欧米人の体型をもとに設計・製造されていると言える。スポーツバイクは人力という小さな出力をもとに走らせる乗り物なのだから、乗り手の体型をもとに設計されるべき。なのに、多くのスポーツバイクユーザーはここにあまり関心がないかのようで、目に映るのは海外ブランドのバイクばかりな気がする。欧米人の体型に合わせた海外ブランドのスポーツバイクは、日本人にとって必ずしもベストとは言えないだろうし、スポーツバイクが使われるシーンも欧米と日本では違うはずだ。
いや……じつは私も恥ずかしながらKhodaaBloomが日本のブランドだということをよく知らなかったのだ。なので、40kmのショートツーリングでKhodaaBloomのクロスバイクRAIL ACTIVE(レイル アクティブ)の走りを満喫。その後、ホダカの代表取締役会長として、さらに一般社団法人自転車協会の理事長としても活躍される山﨑さんにバイクに関するいろいろなお話を聞いてみたというわけだ。
楽しかったこのイベントの様子はこちらから↓
「フルモデルチェンジはやりませんよ。なぜなら……」
5万円台のクロスバイク、RAIL ACTIVEがあんなによく走るなんて驚いた私。
あのRAIL ACTIVEは最新作なのか?
―山﨑会長―
いえ、ベースは従来からある普及モデルRAILです。
例えば、クルマを持っている方なら、フルモデルチェンジされると「古いモデルになっちゃったな」と残念に思うじゃないですか。皆さんが一番手に取る普及モデルはフルモデルチェンジをしないことで、いつまでも新鮮な気持ちで乗ってほしい、モノを大切に使う気持ちにもつながりますしね。
よって我々は、ニューモデルは出しますけれど、普及モデルのフルモデルチェンジはしないのです。今から10年前に買ったお客さんも、「古いものに乗っていない」という、常に新鮮な気持ちで長く乗れるように。たまに、「変えた方がいい」って同業者から言われます。「変えることで売上が増えるから」と言われますが、そういうことじゃない。乗っている方の気持ちを大切にしたい。
ウチの自転車を長く乗った人が、「またあそこのブランドの自転車を買えば、長く、新鮮な気持ちで乗れる」と思って選んで欲しいんです。
今日乗っていただいたクロスバイクRAIL ACTIVEのスペックは、他社のロードバイクと比べても、フレーム重量的にはあまり引けをとっていないと思います。それくらいの性能は与えていますからフルモデルチェンジの必要もない。
乗っていただいた5万円台の普及モデルRAIL ACTIVEより上の高価なモデルもありますが、それに乗っていただいて「ハイスペックだ!」と感じてもらっても価値は低い。普及モデルでハイスペックと感じるから意味があるのでこちらを乗っていただきました。一番ユーザーが買いやすいモデルで、そのモデルでも佐渡210kmを十分走破できる性能を与えてこそ魅力を感じられる。高いモデルの性能が良いのは当たり前ですからね。
これからのマウンテンバイク事情が大きく変わる!?
―マウンテンバイクの将来―
山﨑会長は一般社団法人 自転車協会の理事長でもある。なので、今後の自転車事情についても聞いてみた。特に私の好きなマウンテンバイクについて……。
話は変わって、今年5月に閣議決定された第2次自転車活用推進計画では、マウンテンバイクのコース整備や森林の保全管理等の推進について取り上げられた。マウンテンバイクは走れるフィールドを見つけにくく、このように電車で山のそばまで連れて行ってくれて電車を降りたらすぐにトレイルライドを楽しめられれば、新しいマウンテンバイクの楽しみ方としてとても素敵じゃないか?と思うのだが……。
―山﨑会長―
そうですね。でも、マウンテンバイクに関しては違うアプローチが始まっていますよ。
日本の国土は70%が山林なのに、今までは国立公園だからとか、スキー場の雪付きが悪くなるからという理由でなかなか走る場所を確保することが難しかった。林業が盛んな頃は、林道すらも大手を振って走れなかった。でも今は国土の70%もの土地を、スキーやスノーボードと同じようにマウンテンバイクのソフト面(走る場所)の充実に使おうという動きに変わりつつあります。時代が変わってきたんですよ。
「“マウンテンバイク=ダウンヒル”じゃなくて、マウンテンバイカーたちが紅葉を見ながらトコトコと山を走り、途中でお弁当などを食べて下ってくる……そんな、危険と隣り合わせじゃない楽しみ方もマウンテンバイクにはあるんです。そのためにはまずフィールドを整備しないと!」と一般社団法人 自転車協会はマウンテンバイクフィールド助成金制度を設立。そして「誰もが利用できる公開されたフィールドであること」などを条件に2018年と2019年に募集を行ったら、一昨年、昨年で延べ60個所から応募があり、延べ39個所のフィールドを応援させていただきました。
また、最初は「商売として成り立つかどうか?」ではなく、まずはユーザーに利用してもらうことを目指します。そして、地元の方々にはマウンテンバイクユーザーに熱く接してもらうこと、地元のマウンテンバイクインストラクターをスキーやスノーボードのように将来は育成していこうということになりました。
このフィールドでは、まずマウンテンバイク購入前にはフィールドに用意されているレンタルマウンテンバイクや、お店の試乗車などで“楽しさ”を満喫してもらって、初めて購入へ……という流れを目指しています。フィールドで乗る楽しさを味わってもらえたら、長くマウンテンバイクを楽しんでもらえるんじゃないかな? と思います。なのでこれからは、間違いなくマウンテンバイクユーザーは増えていくし、「走るところがない……」なんて考えなくてよくなると思うんです。
現マウンテンバイカーの皆さん、そしてこれからのマウンテンバイクユーザーの皆さん、どうぞ明るい未来に期待してください!!
今後はeバイクも大きく変わりますよ!!
―変わりゆくeバイクー
マウンテンバイクに明るい未来が……と言っても、さらにその上を行く伸びを見せるであろうと思われるのがeバイク。eバイクはどう変わっていくのか?
―山﨑会長―
体力の衰えをカバーしてくれるeバイクは、これからユーザーが多くなると予想されます。ただ、スポーツバイクとしてみた場合、アシスト上限が24km/hなのはいいとして、アシストが弱まる速度をもう少し引き上げてあげないと面白くない。つまり、現状は10km/hを超えるとスピードが出すぎないようアシスト力を制限していくため、20kmを過ぎるあたりではほぼアシストをしてない状態で、24m/h未満で完全にアシスト力はゼロになる。スポーツしているつもりが、スピードによってはバッテリーやモーターの重量が足かせのように感じられてしまいます。
いっぽう、アシスト上限速度を30km/hとかに引き上げてしまうと原動機付き自転車と同じになってしまって、オートバイが歩道を走るようなものです。なので、アシスト上限速度は24km/h未満のままで、アシスト比率のてい減について、安全面にも配慮しながら国と検討を進めております。これからは、全年齢層が楽しめる楽しいeバイクライフがやってくると信じています!
最後に……
世界の工業製品の中で、自転車以外はほぼ日本の製品が席巻しています。なのに、自転車だけはそうじゃない。ここをぜひ変えていきたいですね。そのためには、いいものを作るだけじゃなくて時代に合ったブランディング、走るエリアの整備などもしっかりやっていきたい。これからのホダカ、そして日本の自転車シーンに注目してください!
インタビューに答えてくれた人 山﨑一(やまざきはじめ)
ホダカ株式会社 代表取締役会長。一般社団法人 自転車協会理事長。社員全員が自転車に乗るという、自転車メーカーの鑑のようなホダカの頂点に君臨。自身ももちろん自転車に乗り、昨年はプロ選手も驚きの年間1万8000kmをマーク。私のまわりに、これほど自転車に乗る人はいない……。
取材協力
ホダカ
https://khodaa-bloom.com/
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PROFILE
Bicycle Club編集部
ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。
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