マイカが難関山岳で独走勝利、エイキングが総合首位を維持|ブエルタ第15ステージ
福光俊介
- 2021年08月30日
ブエルタ・ア・エスパーニャは現地8月29日に行われた第15ステージで、今大会の第2週を終了。週の最終日は4つの長距離登坂を含んだ197.5kmのコースが設定され、残り87kmから独走に持ち込んだラファウ・マイカ(UAEチームエミレーツ、ポーランド)が複数の山岳区間をトップで走破。リードを守ってブエルタでは4年ぶりとなるステージ優勝を挙げた。個人総合順位はこの日も大きな変動はなく、オドクリスティアン・エイキング(アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ、ノルウェー)がマイヨロホを守って最終週へと向かうことになった。
このステージに賭けたマイカが狙いどおりの逃げ切り
大会第2週最後の2日間は、本格的な山岳ステージの連続。特に、ナバルモラル・デ・ラ・マタからエル・バラコまでの197.5kmによる第15ステージは、2カ所の1級山岳を含む4つのカテゴリー山岳を上る。そのいずれも登坂距離の長さが特徴。極端な急坂こそないものの、コース全体を通しての獲得標高は3600mを超える。
前日のステージでリチャル・カラパス(イネオス・グレナディアーズ、エクアドル)が途中リタイアし、この日はヨナタン・カイセド(EFエデュケーション・NIPPO、エクアドル)が出走を取りやめ。163人がスタートラインについた。
リアルスタートから50kmは平坦区間。早々に25人の先頭グループが生まれ、さらに10人が先行。全体がハイスピードで進み、逃げる選手たちとメイン集団との差は30秒前後を維持。結局、この逃げは容認されず、集団へと引き戻されている。
最初の登坂区間である1級山岳アルト・デ・ラ・センテネラ(登坂距離15.1km、平均勾配5.5%)に入ると、マイカとマキシム・ファンヒルス(ロット・スーダル、ベルギー)が飛び出し、ファビオ・アル(チーム クベカ・ネクストハッシュ、イタリア)が合流。さらに次々と追走を試みる選手が出て、20人の第2グループへと膨らむ。やがて先頭ではファンヒルスが遅れ、マイカとアルの2人が頂上に先着。スタートからの2時間は、この1級山岳を含みながら平均時速43kmを記録する高速レースとなった。
先頭の2人は次の上り、2級山岳プエルト・デ・ペドロ・ベルナルド(9km、4.2%)へ。淡々と上っていたが、頂上まで3.5kmとなったところでアルが遅れ、フィニッシュまで87kmを残した状態でマイカが単独先頭となる。その後ろでは数人が追走グループから飛び出すシーンも見られるが、それを待つことなくマイカは1人で突き進んでいった。
3つ目の上りである1級山岳プエルト・デ・ミハレス(20.4km、5.4%)の入口では、マイカと追走メンバーとのタイム差は約2分20秒。この頃にはメイン集団がリーダーチームのアンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオが徹底してコントロールしており、タイム差は6分以上。ステージ優勝に向けてはマイカが少しずつ優位な状勢となっていく。この上りの中腹では、追走グループからステフェン・クライスヴァイク(チーム ユンボ・ヴィスマ、オランダ)が抜け出して、マイカとの差を約1分30秒まで縮めるが、それ以上迫ることはなくほぼ同じ差で推移する。
ペースを乱すことなく走り続けるマイカは、最後のカテゴリー山岳である3級のプエルト・サン・フアン・デ・ナバ(8.6km、3.8%)も問題なくクリア。追うクライスヴァイクとの差も1分30秒前後で変わらず、あとはトラブルなく走り切るだけとなった。
下りと平坦による最後の5.4kmもきっちり走り抜いたマイカは、長い距離になった独走を実らせて1人でフィニッシュへ。天を指さしながらのウイニングポーズで、2017年大会以来のステージ優勝。かつてはグランツールで総合表彰台を経験し、山岳賞争いでも常連だったクライマーが、その力を再び誇示してみせた。
クライスヴァイクは、マイカから1分27秒後に2位でレース完了。その後ろで単独走に持ち込んでいたクリス・ハミルトン(チームDSM、オーストラリア)が3位と続いた。
逃げを容認したメイン集団は、終盤に入ってもアンテルマルシェ勢がコントロールを継続。ダビ・デラクルス(UAEチームエミレーツ、スペイン)のアタックにはルイス・メインチェス(南アフリカ)が抑え役として対応。個人総合8位につけるアダム・イェーツ(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)のアクションでは、他の総合勢に交じってマイヨロホのエイキング自ら反応するなど、上々の戦いぶり。最終局面を前にイェーツが飛び出したが、そこからは個人総合3位のプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)を擁するチーム ユンボ・ヴィスマがメイン集団をまとめてフィニッシュへ。イェーツの後、15秒差で続いた。
これらの結果から、エイキングはマイヨロホを守って第2週を終えることに成功。週の初日である第10ステージで手にしたリーダージャージを5日間守り続け、大会最終週へ向かうことになった。個人総合2位のギヨーム・マルタン(コフィディス、フランス)との総合タイム差は54秒、同3位のログリッチとは1分36秒の差で終盤戦に入る。
なお、新城幸也は153位でステージを完了。チームへの貢献度を日増しに上げていきながら第3週へと駒を進めている。
30日は今大会2回目の休息日。31日からレースが再開され、最終週のはじめとなる第16ステージは、ラレドからサンタ・クルス・デ・ベサナまでの180km。今大会最後の平坦ステージで、スプリンターにとっては絶対に落とせない1日だ。
ステージ優勝 ラファウ・マイカ コメント
「逃げるうえで脚の状態が良いことが大前提だが、必ずしもうまくいくとは限らない。今日は父、2人の子供、そしてチームのためにステージを獲るという強い意志のもと攻撃を試みた。
シーズンインで失敗してしまったが、それを乗り越えて勝利できたことが本当にうれしい。3カ月前に亡くなった父にもステージ優勝を捧げられるのでとても幸せだ」
マイヨロホ オドクリスティアン・エイキング コメント
「チームのみんなには感謝しかない。彼らの素晴らしいコントロールで第2週をマイヨロホで終えることができた。みんながいなければ、これほど厳しいステージでポジションを維持することができなかったはずだ。私たちはチームが本領発揮したときの強さを分かっていて、最後の1kmまでレースをコントロールすることでその真価を発揮することができた。個人的にはライバルとなる選手の出方を見ながら、フィニッシュに到達するだけだった。開幕から2週間経ったブエルタで首位に立っていることを誇りに思う。サポートしてくれるすべての人たちに感謝している」
ブエルタ・ア・エスパーニャ2021 第15ステージ 結果
ステージ結果
1 ラファウ・マイカ(UAEチームエミレーツ、ポーランド)4:51’36”
2 ステフェン・クライスヴァイク(チーム ユンボ・ヴィスマ、オランダ)+1’27”
3 クリス・ハミルトン(チームDSM、オーストラリア)+2’19”
4 アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)+2’42”
5 ジュリオ・チッコーネ(トレック・セガフレード、イタリア)+2’57”
6 オドクリスティアン・エイキング(アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ、ノルウェー)ST
7 フェリックス・グロスシャートナー(ボーラ・ハンスグローエ、オーストリア)ST
8 セップ・クス(チーム ユンボ・ヴィスマ、アメリカ)ST
9 ダビ・デラクルス(UAEチームエミレーツ、スペイン)ST
10 エンリク・マス(モビスター チーム、スペイン)ST
153 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス、日本)+35’47”
個人総合(マイヨロホ)
1 オドクリスティアン・エイキング(アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ、ノルウェー) 59:57’50”
2 ギヨーム・マルタン(コフィディス、フランス)+0’54”
3 プリモシュ・ログリッチ(チーム ユンボ・ヴィスマ、スロベニア)+1’36”
4 エンリク・マス(モビスター チーム、スペイン)+2’11”
5 ミゲルアンヘル・ロペス(モビスター チーム、コロンビア)+3’04”
6 ジャック・ヘイグ(バーレーン・ヴィクトリアス、オーストラリア)+3’35”
7 エガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ、コロンビア)+4’21”
8 アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)+4’34”
9 セップ・クス(チーム ユンボ・ヴィスマ、アメリカ)+4’59”
10 フェリックス・グロスシャートナー(ボーラ・ハンスグローエ、オーストリア)+5’31”
129 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス、日本)+2:43’31”
ポイント賞(プントス)
ファビオ・ヤコブセン(ドゥクーニンク・クイックステップ、オランダ)
山岳賞(モンターニャ)
ロマン・バルデ(チームDSM、フランス)
新人賞(マイヨブランコ)
エガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ、コロンビア)
チーム総合成績
イネオス・グレナディアーズ
ブエルタ・ア・エスパーニャ2021スタートリスト&コースプレビューはこちら↓
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- TEXT:福光俊介 Photo:Luis Angel Gomez / Photogomezsport / Charly López
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PROFILE
サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。