レース中にブエルタを棄権した総合3位だったロペス、レース後に謝罪したその背景とは
Bicycle Club編集部
- 2021年09月08日
先日閉幕したスペイン一周のロードレース「ブエルタ・ア・エスパーニャ」。そのほぼ終わりに差し掛かった第20ステージで注目を集めた事件があった。当時総合第3位だったミゲルアンヘル・ロペス(モビスター チーム、コロンビア)が突然レースを止め、ブエルタを棄権したのだ。2日前の第18ステージ優勝していたロペスだけに、スペインでは大きな注目を集めた。スペイン在住の對馬由佳理が現地で報道されていることを含め、現在までの経緯を説明する。
総合第3位だったロペスの突然のレース中止
事件が起こったのは、ブエルタ・ア・エスパーニャの第20ステージ。この日のステージのゴールとなるガリシア地方のモスまで約60kmとなった地点で、この時リーダージャージを着ていたプリモシュ・ログリッチ(チーム ユンボ・ヴィスマ、スロベニア)やエンリク・マス(モビスター チーム、スペイン、この時点で総合2位)、ジャック・ヘイグ(バーレーン・ヴィクトリアス、オーストラリア、この時点で総合4位)、アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアーズ、イギリス、この時点で総合6位)等がメイン集団を飛び出し、第3集団を形成したときに発生した。というのもこのリーダージャージ集団の動きに乗り遅れたのが、当時総合順位3位、表彰台を目前としていたロペスだっだ。
ロペスはチームメイトのホセ・ホアキン・ロハスとともにペースをあげて第4集団を引率し、リーダージャージ集団に合流しようと試みる。しかし、ロペスと同じグループには当時総合5位のエガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ、コロンビア)がいた。ログリッジと同じ集団にいたマスの総合第2位を確実にしたいモビスターは、ベルナルを警戒したためか、ロペスに対し「ペースを落として、追走をやめるように」と指示をする。
この指示に納得できなかったロペスは、ゴールまで20kmとなった地点で突然レースを中止する。そしてベテランアシストのイマノル・エルビティ等の説得にも関わらず、最後にはブエルタの棄権を選択したのであった。
ロペスは自らの行為を公式に謝罪。しかし、移籍の可能性
ロードレースは個人競技ではあるが、1人の優勝者を出すためにはチーム全体が同じ目的のために動く必要がある競技である。そのため、レース中に監督が選手に対して出す指示には絶対的な力があり、選手は基本的にその指示に従う必要がある。
そのため今回のロペスのレース棄権は、モビスターへの反抗として多くの自転車関係者に受け取られることになり、スペインを始めとするマスコミで大きく報道された。
同日夜、ロペス自身はモビスターのSNSアカウントを通じて自らの行為を公式に謝罪する。この日まで自分をサポートしてきたチームメイトやスタッフ、スポンサーそしてファンに対して、自分の行動がプロの自転車選手として間違ったものであったことを認めたのである。
一方、モビスター総監督であるエウセビオ・ウンズエ監督は翌日のブエルタ最終日に姿をあらわし、報道陣のインタビューに応えた。
まず、第20ステージでの出来事に対しては「自分も長年自転車レースの世界で生きてきたが、昨日のようことは本当に初めてでした。ロペスは自力で昨日のレースの状況を変えることができなかったし、リーダージャージ集団にはタイム差をうまく利用された形になってしまいましたね。そのことがロペスにとって、かなりフラストレーションを感じる出来事だったのでしょう。ブエルタ・ア・エスパーニャのような3週間のレースでは、たとえ総合順位が6位か7位になったとしても非常に価値のある結果だと僕は考えているのですが、同じような意見を持つ人ばかりとは限りませんからね」と話した。
また、今後ロペスと契約を続けるのかという質問に対しては「今はその問題は少し脇においておいて、無事にブエルタを終えられることを楽しみたいですね。同時開催された女子のレース(チャレンジ・バイ・ラ・ブエルタ)ではアネミエク・ファンフルーテン(モビスター チーム、オランダ)が総合優勝しましたし、まずはチーム全体でお祝いしたいですね」とブエルタ最終日には回答を避けていたが、2日後には「ロペスがチームを移籍するは、彼の持っている選択肢の一つ」 とコメントし、移籍の可能性も認めている。
最終的にマスが総合2位でレースを終えることになったモビスター。エース級の実力者を多数抱えるチームが持つ潜在的な問題が、改めて表面化した今回のロペスのブエルタ棄権となった。
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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。
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