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湖を泳いで渡る自転車レースにはシュノーケルが必要!?|竹下佳映のグラベルの世界

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カナダ国境に面し豪雪地帯である、ミシガン州の三分の一を占める面積をもつアッパー半島(以下UP)は、州人口のたった3%しか住んでいない、大自然に溢れる場所です。UP最大の市(2万人強)であるマーケットの緯度は北緯46度32分47秒、半島北端の市のコッパー・ハーバーは北緯47度28分8秒、半島の北に浮かぶ島々で構成されたアイル・ロイヤル国立公園の位置は北緯48度6分0秒になります。北海道宗谷岬にある日本最北端の地の碑が北緯45度31分22秒ですので、UPがどれほど北に位置しているのかがわかると思います。

例年どおりならば、コッパー・ハーバーからマーケットまでの約400kmのレースだったのですが、パンデミックの影響で2020年にフォーマットが大きく変わりました。

大人数での集会になるのを避けるため、開催日は予定していた特定日ではなく、7月頭から9月末までの3カ月間に変更。

ローカル雑誌に載ったザ・クラッシャーの記事。

事前にメールで届く「パスポート」と呼ばれる資料とGPSコースファイルに基づき、登録者それぞれが行いたい日時に出発し、制限時間以内に完走するというこのフォーマットは「EX」と呼ばれ、一番速いタイムの完走者だけを称えるのではなく、完走者全員を表彰するというものになりました。パンデミックで特に2020年にはほぼ全てがキャンセルされているなか、この「少人数グループでの冒険」が爆発的な人気になり、参加者の数はいつもの年より多くなりました。

主催者からのメッセージ

『 君たちが参加登録をしたのは、ただのグラベルレースではない。これはエンハンスト(強化された)グラベルレースだ。君たちを待ち受けているのは、自転車を背負って登る岩壁、幾つもの川の横断、岩だらけの下り、4輪バギー専用の荒いトレイル、腰まで深さのある池、砂に泥の道、ありとあらゆる虫、熊、狼、山猫にヘラジカだ。人里から離れた荒野を走り抜けるのは容易ではない。昼と夜の気温差は20℃以上ある。冗談でも過剰表現でもなく全てが事実だ。ミシガン州の最高地点まで上り、スペリオル湖に合流する川を渡り、悪名高い「蚊の渓谷」を通り抜ける。

「途中で諦めたり、メカトラで続行不可能になったり、カナダで泣いている羽目になったら、自分の名前と#CRUSHED(クラッシャーにクラッシュされた・打ち砕かれた)とテキストしてね」という内容。

準備を万全にして、覚悟してこい。道中は仲間と協力しあうのを忘れないこと。想像を越える障害物に出遭うたびに、それは僕たち主催者が意図的にしたことだと思い出すんだ。クラッシャーを乗り越えられるか? それともクラッシャーに打ち砕かれ潰されるのか?』

内容は偽りのない全くの事実で、軽い気持ちで始めたり準備しきれていないと、脱落は免れないイベントです。準備万端であっても、なにせ長いコースですから、天気が崩れたりメカトラだったり、何が起こるかわかりません。

パスポートには、大会の背景・概要、ルール等が記されています。コース上に指定されたチェックポイントでは、証拠としての自撮り写真を撮ることになっていて、位置の経緯度とそこにある「何と」一緒に自撮りしないといけないのかが書かれています。また、ルールの一部として、携帯必須グッズのリストもあります。

グラベル経験者ならば普段のライドから持っているべきものもリストアップされていますが、他の幾つかを紹介します。

  • スタート地点で携帯する補給食 3000 kcal
  • 携帯する飲料水の容量 3リットル
  • 雨具、予備バッテリー(携帯・GPS)
  • 前後ライトの他、ヘルメットライト

長距離で大会側のサポートステーションもないので、まあそうでしょうね。ほかには……。

  • 予備のブレーキパッド
  • 予備のディレイラーハンガー
  • 予備の靴下
  • 携帯浄水器
  • 携帯ナイフ
  • ホイッスル
  • 非常用ブランケット
  • 防水マッチ
  • シュノーケル

ん? 予備のハンガーは携帯することも多いし、予備ブレーキパッドも常に車にありますが、ここまでとなると、バイクレースと言うよりは大冒険に出かける感じかな……。シュノーケルに関してはもう意味がわかりませんが、必須アイテムと言うことでコンパクト収納できるものを用意し、他にもあったら便利だと思うものを用意していきました。

用意したシュノーケル。リストにある携帯必須アイテムは、持っていないと失格となるが、リストには「シュノーケル」と書いてある!

約400kmのコース上にある町はたった一つ。ここでのみ飲食料の購入が可能です。

24時間営業は存在せず、22時までには全ての店が閉まっているようです。ちなみに「EX」フォーマットでは、外部サポート可能となっているので、数は限られていますが、コースが舗装道路と重なってサポートと落ち合えそうな場所を数カ所を確認しました。また途中で棄権する場合の脱出手段も、参加者それぞれで用意する外部サポートとなります。

GPS追跡機器の携帯も必要です。コース上の90%で携帯電波が届きませんが、この発信機は衛星通信で一定時間ごとに位置情報を送信するので、圏外でも追跡ができるというものです。参加登録費用に機器のレンタルが含まれています。

機材に選択に関して。この大会、主催者は「エンハンスト(強化された)グラベル」と呼んでいますが、強化し過ぎて機材の第一候補にグラベルバイクは上がりません。

走りやすいグラベルロードもありますが、ジープはおろか4輪駆動バギーすら走れない場所もあります。この際マウンテンバイクのほうがいいのでは、とも思いましたが、残念ながら私がMTBを持っていません。

フロントシングルに変えれば、グラベルバイクに650Bホイールで50mmタイヤ装備も可能ですが、650Bホイールを持っていません。あるもので対応するしかないので、700CのカーボンCXホイールに、パナレーサー・グラベルキングSK 700×43Cで挑むことにしました。ここ数年の荒いグラベルはこのコンビネーションだったので、乗りにくい場所があったとしても(タイヤ幅が足りないなど)、全体的に見れば、特に心配することはないでしょう。

何キロも続く乾いてフワフワの砂場。湖が近いけど遠い……。

グラベルなんてそういうものです。コース上で「100%完璧なセットアップ」というものは存在しません。コースの一部で最適なセットアップは、別の部分ではそうでなく、ほかのセットアップの方が適している、ということは常です。

このように、ザ・クラッシャーEXの制覇・完走計画中に検討点は山ほどありましたが、一番気になったのは当時未経験の真夜中走行でした。

マイナーな調整で一時停止。

ソロ長距離走行もどんとこいですし、未知の領域に突入するのも躊躇しませんが、民家もないような野生動物が住んでいる深い森の中を一人で一晩中寝ずに走るのは、遭難リスクはもちろん、ほかにも危険要因があり過ぎます。コースオプションは40マイル、100マイル、225マイルと3種類。

今回私は225マイル(約362km)コースに登録したけど、どうしよう。集団スタートなら誰かしら夜間一緒になる可能性があるけど、EXになってしまったからには、誰か一緒に行ける人を探さないと……。

アドベンチャーライドのエキスパートのペトル。

ある日ソロライドに行った先で鉢合わせた、同じくシカゴ郊外に住むアドベンチャーライダーのペトルと話していたら、彼がほか2人とザ・クラッシャーEXに参加予定だと知り、一緒に行くことになりました。チェコ出身のペトルは、アラスカの銀世界を1600km走り抜けるアイディタロッド(※)の2019年と2020年チャンピオン。この少人数グループ、とても心強く、もう何も心配ありません。

※ちなみにアイディタロッドに興味のある方はここから。毎年真冬のアラスカで行われる超長距離犬ぞりレースとして主に知られていますが、同じコースをファットバイクで走る自転車レースです。マイナス50℃にもなる超極寒・猛吹雪の凍り付いた1000マイル(約1600km)を3週間前後走り続ける過酷なものです。www.iditarodtrailinvitational.com

走り始めて、いきなりロッククライミング!
さらに携帯を落とすハプニング

初めは目を疑ったロックセクション。

UPに行くのが久し振りで、2日前まで自宅のあるシカゴと現地時間のタイムゾーンが違うことを放念していました。位置的には600km程真っ直ぐ北上するだけなのですが、一時間「失くなる」ため、当日起床時間はシカゴ時間の朝2時……。眠い目を擦りながら宿舎からスタート地点に向かいます。

 

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PROFILE

竹下佳映

竹下佳映

札幌出身、現在は米国シカゴ都市部に在住。2014年に偶然出会ったグラベルレースの魅力に引かれ、プロ選手に混ざって上位入賞するなどレースに出続けている第一人者。5年間グラベルチーム選手として活躍し、2022年からはプライベーターとしてソロ活動。ここしばらく飛んでいないが飛行機乗り。

竹下佳映の記事一覧

札幌出身、現在は米国シカゴ都市部に在住。2014年に偶然出会ったグラベルレースの魅力に引かれ、プロ選手に混ざって上位入賞するなどレースに出続けている第一人者。5年間グラベルチーム選手として活躍し、2022年からはプライベーターとしてソロ活動。ここしばらく飛んでいないが飛行機乗り。

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