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女性パイロットが自転車、グラベルレースに魅せられた理由|竹下佳映のグラベルの世界

驚くような過酷な未舗装路を走るグラベルレース。なかでもグラベルレースが活発な北米で活動するグラベル界の第一人者竹下佳映さん。はじめてのグラベルライドはいきなりレースだったというから驚きだ。飛行機のパイロットの資格を取るため渡米した竹下さんが、サイクリング、そしてグラベルレースに出会い、その魅力にはまるまでの経緯を自身の言葉でお伝えする。

大学時代に移動手段として出会ったロードバイク

自転車を「失くしてしまう」ほど深さのある穴は、一年を通して乾くことはない。2016と2018に参戦したウエストバージニア州のヒリービリー・ルーベ。Photo: Hilly Billy Roubaix

19歳の時に、大学に行くのに一人渡米しました。当時、自動車の運転免許を持っていなかったため、大学キャンパス内での移動手段として自転車を買いにいきました。近所の自転車ショップに並んでいたのは、ドロップハンドルバーのロードバイク。競輪選手でもない一般人がママチャリではない自転車を買えると知って驚きました。同時に自転車の値段にもビックリしました(余談:自動車免許の前に、飛行士免許を取得しました。航空経営学卒)

大学卒業後はシカゴの都市圏に引っ越し、就職しました。暖かい季節は仕事の後に近所の森林公園に行っては自転車に乗ったりしていました。色鮮やかなスパンデックスを着て颯爽と自転車を走らせる人たちを見かけるようになり、この時初めて自転車がスポーツとして認識されていることを知りました。

この頃は、飛行機の操縦資格を取得し、シカゴ郊外の空港で小型機をレンタルして操縦したり、知り合いや友人を観光飛行に連れて行ったりもしていました。アクロバット飛行もやってみたいし、グライダーもよいかも、習ってみようかな、と考えていた時に、森林公園でよく見かけて顔見知りになったライダー(元Pepsiチームの選手)からトレーニングライドに誘われました。そして数年後、サイクリングは私の生活の一部となったのです。

2014年にグラベルに出会い、いきなりレース参戦

グラベルを知る前から、ちょくちょく出入りするべきでないところに出入りしていたので、グラベルに出会うのは時間の問題だったのかも。Photo:Kae

週末のクラブライドや、センチュリーライドから始まり、地元のクリテリウムやロード、ブルべ、エンデュランスロードに少しずつ挑戦していきました。グラベルとシクロクロスを始めたのは2014年です。

2014年2月に休暇を取ってアリゾナ州に行くことにしました。

シカゴの冬は長く厳しく、冬期間にロードバイクに乗ることはまずありません。アリゾナ州南部の温暖な気候で久々に太陽の下でのライドです。たまたまグループライドで出会った、夏場は涼しいミネソタ州、冬場は暖かいアリゾナ州で、という渡り鳥的生活をしているサイクリストと話していた時に、「グラベル」が話題に上がりました。ミネソタ州ではすでに人気となっているらしいですが、私は全く聞いたこともない「グラベル」への第一印象は「なんかよくわからないけど、楽しそう」。

シカゴに戻ってから早速インターネットで検索してみましたが、これといった情報は何も見つかりませんでした。うまいことクルマで2時間程離れた場所にグラベルレースを発見し、まずはやってみよう!ということで、夏場の通勤に使っていたアルミのシクロクロスバイクで参加しました。

ハンドルバーには補助ブレーキ(インライン・ブレーキ)・前後フルサイズのフェンダー・巻きラッパホーン装備、通勤中の安全性アップのために反射テープがフレームのそこら中に貼られていて、パフォーマンスは一切求めないセットアップです。

初のグラベルレースで砂利道を経験、横風の洗礼を受ける

ザ・テン・サウザンド、10,000フィート(約3050m)の獲得標高コースのグラベルレースが2014年夏に登場。200kmロード走行は慣れていたものの、完全セルフサポート、セルフナビゲーション、グラベルロードでの200km、と言うのは私にとって初めてだった。 Photo: Ten Thousand

初めてのグラベルレースが、初めて砂利道を走る日となりました。

コースは畑が拡がる平地、春先は風の強い日が多く、この日も朝から秒速10メートル程の風がひっきりなしに吹き付けました。風は横殴り、さらにタイヤの空気圧は高過ぎているうえに、舗装路以外のハンドリングは不慣れというマイナス要因が重なり、最初の10kmでは横風区間では普通に走ることに苦戦しました。

グラベルロードの一番右端にいたのに、強風であっという間に一番左側まで流され、その間に誰かに後ろから衝突されるのではないかと冷や冷やしました。グラベルロードの左端の先の溝に落ちる寸前で自転車から降りて、一息ついて、道の一番右まで歩いて戻り、自転車に跨り、再度こぎはじめます。そして、同じことを何度も何度も何度も繰り返して、やっと最初の横風区間を乗り切りました。落車しなくてよかった……といま思い出すと苦い思い出です。

追い風区間は超高速で前進し、180度進行方向が変わったときは、まったく進んでいる気分になりませんでした。実際していなかったのでしょう。

見渡す限り続くトウモロコシ畑では、全然トウモロコシが育っていない時期だったので、風除けの役目は果たしてくれません。ハンドルバーに付いていたイベント登録番号の紙が、風に取られて飛んで行ってしまいました。

「まずい、これは失くす訳にはいかない」ということで、自転車を道端に置いて、畑の中まで走って追いかけ、風に乗って逃げる番号をやっと捕獲しました。

最後の最後まで、いつタイヤが取られて転倒してしまうかとドキドキしながら走り続け、冷たい雨が降り始める直前に、ゴール地点に辿り着きました。すべての面でかなり疲れていましたが、完走時の「やりとげた!」と言う達成感は素晴らしく、次にグラベルを走る機会がもう待ち遠しかったです。

わからないから起きるハプニングにドキドキ

機能している橋があるのに、川を走らされるのは、なぜ……。冬間近のレース、インディアナ州、グラベル・グロベルにて。Photo: DINO

その年、いくつかのグラベルライドやイベントに参加し、完全にハマりました。私の住んでいる地域ではグラベルはまだ認知されていなかったので(地元にグラベルロードがない)、クルマでかなり離れたところに行くのが当たり前でした。2015年からは州外も含めた遠地まで遠征し、さまざまなグラベルレースに参加しました。

今となっては、インターネットで調べれば、グラベル関連の情報やグラベル専用機材(グラベル・アパレルまで!?)が星の数ほど見つかりますが、その頃は何もありませんでした。グラベルの世界とは本当に未知の世界で、何が起こるかわからない、何が見れるかわからない、謎に包まれたワクワクするもの、という感じでした。

グラベル初期は、みんな手探りで、試行錯誤の繰り返し。 チューブレスがいいらしい。でもパンクはするからチューブ携帯必須。 どういったタイヤ・トレッドがいい? 空気圧は? タイヤ幅は? どうやったら上手くグラベルを走破できるのか? どこにグラベルロードがあるのか? どのエリアが一番面白そうなグラベルなのか?

ワイオミング州でライド中に、放牧牛の群れに行く手を遮られる。右へ行くかと思いきや左に戻り、の繰り返しで、待っても待っても退いてくれない。 Photo: Kae

一言にグラベルと言っても、砂、砂利、小石、大きい石、岩、粘土状の泥から、小川、川、沼、雪、氷、ハードパック、農道、ファイヤーロード、森林道、獣道、シングルトラック、ダブルトラック、古くて窪みばかりの状態の悪い舗装路、など何でもありです。

行く地域によっても全然違い、グラベルロード状況も、ライドのタフさも天候でかなり左右されます。チャレンジ精神と冒険心の塊のような私にはピッタリだったのでしょう。行く先々で出会った、都市圏での日常生活や、舗装道路からはまず見ることのできない風景に、毎回ドキドキしました。

春先の、レースではないライドイベント、フロストバイト40。フロストバイトは霜焼けと言う意味。 Photo:Frostbite 40

2017年に北米のトップチーム入り

2016年のDK200で配られた選手トレーディングカード。私もカードの一枚に選ばれて光栄!PHOTO:Kae

2017年2月に、長らく放ったらかしにしていたFacebookに気が向いたので久々にログインしたら、メッセージが幾つか入っていました。そのうちの一つが、その後5年に渡り所属することとなったグラベル専門のレースチームのオーナーからでした。彼のチームはレースで見かけていて、「グラベルなのに、エアロセットアップだ。スキンスーツまで着ている。皆んな(貫禄があって)怖そう」と思っていたのを覚えています。

前年の夏の終わり頃にもらっていたメッセージだったので、すでに5カ月は放置されていたわけです。時間の経過具合からもう遅過ぎるだろうと思いながら、直ぐに連絡を入れました。翌日の夜には、電話でチームオーナーと何時間も話し込み、すでに2017年のメンバーは決定されていたものの、私も正式なメンバーとして迎えられました。

怖そうと思っていたメンバーは誰も怖いことはなく、グラベルに対する同じパッションを分かち合えて、いつでもグラベルについて真剣に話し合い、家族のように和気あいあいと時間を過ごせる、大事な友人たちとなりました。もうチームから離れてしまった初期メンバーとも、いまでも密に連絡を取り合っています。

まさにここがレースコース、ダーティ・カンザ200(以下DK200、現アンバウンド・グラベル)が開催される、カンザス州のフリント・ヒルズ地域の美しさと、初めて走った時の高揚感は忘れられない。 Photo:C. Heller Photography

全米グラベルランキング1位を獲得、それ以上に得られた友人たち

いつまで経っても私のグラベルキャリアのハイライトの一つ。DK200で女子総合4位。 Photo:Advanced Inst

「グラベル」というジャンルの成長は目覚ましく、そのなかで私も一選手としてたくさん学んで経験を積みました。いい成績を残せたレースもたくさんありましたし、女性グラベルライダー・オブ・ザ・イヤーや全米グラベルランキングで1位を頂戴したりもしました。でも順位や成績がどうのと言うより、もっと大事に思えたのは「自転車のるつぼ」であるグラベルだからこその多様性に満ちたコミュニティです。

過去8年間、あちこちでグラベルしながら作った多くの友人と仲間、そしてその彼らと一緒に共有した時間をとても大切に思っています。そして、グラベルならでの解放感と自由奔放さが大好きです。

バイシクルクラブ2020年3月号で、グラベルの魅力と自転車乗りのるつぼについて語る。オンラインコラムでも、いつか招待したい

2022年シーズンはプライベーターとして参戦

無料で泥パック・サービス(笑)がついてくるレースも多々。Photo:Kae

プライベティア(プライベーター)と呼ばれる、チーム所属ではなく個人でスポンサー・サポートを付けて活動する形態が、グラベルではよく見られます。2022年は私もプライベティアとしてソロ活動を行うことに決めました。サポートして下さる各スポンサーと、いつでも応援してくれる家族・友人・仲間に感謝しています。

新規の大会やフォーマットがどんどん出現し、目紛しく変わり続けるグラベル界。

今まで挑戦した事のない場所・大会などにもチャレンジできればと思っています。仕事や自転車以外の私生活の部分ともうまくバランスをつけて、ケガをせずに健康に、良い1年にしていきたいです。今までの経験やこれからの冒険も『竹下佳映のグラベルの世界』連載コラムで毎月発信していきたいと思いますのでお楽しみに。SNSも2022シーズンは頻繁にアップデートするつもりですので、ぜひチェックしてください。

竹下佳映

札幌出身、現在は米国シカゴ都市部に在住。2014年に偶然出会ったグラベルレースの魅力に惹かれ、プロ選手に混ざって上位入賞するなどレースに出続けている第一人者。5年間グラベルチーム選手として活躍し、2022年からはプライベティアとしてソロ活動。ここしばらく飛んでいないが飛行機乗り。

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