日本大好き! スペインのプロ自転車選手イニーゴ・エロセギが日本語でブログを書く理由
Bicycle Club編集部
- 2022年02月19日
スペインのプロ自転車選手に日本語を話す選手がいる。世界のトップ選手が走るワールドツアーを走るモビスターチームに所属する、バスク出身のイニーゴ・エロセギである。先日は日本語で書いたブログを公表し、日本のファンの間でSNSを通して大きな話題となった。
そんな日本が大好きなエロセギに、日本との出会い、そして今シーズンへかける思いをスペイン在住のジャーナリスト、對馬由佳理さんが聞いた。
ツール総合4位という祖父を持つサラブレッド
エロセギは、スペイン・バスク地方のビルバオにもほど近いジエルベナ出身の24歳。ジュニア時代からその実力はスペインの全国レベルで知られており、アンダー23時代にはナバラの名門チームリザルテ(Lizarte)に所属。現在はケルン・ファルマの総監督であるフアンホ・オロス氏の指導を受け、2018年にはアンダー23のスペインチャンピオンになるなど、順調に実力をのばしてきた選手だ。
2020年にはモビスターに加入し、プロ選手としての一歩を踏み出すことになったエロセギ。しかし、その直後新型コロナウイルスの影響があり、レース数が減少した上に、エロセギ自身も体調を崩すなどしたこともあり、なかなか出走できない日々が続いていた。
彼の祖父もまたプロの自転車選手という自転車一家だ。1960年代に活躍したホセ・アントニオ・ミメニェという選手がその人で、1966年にはツール・ド・フランスで総合第4位、ジロ・デ・イタリアとブエルタ・エスパーニャではステージ優勝の経験もある名選手である。
特に昨シーズンは新型コロナウイルスに感染するなどして、レースから離れる日々の多かったエロセギであったが、2022年はプレシーズンのチーム合宿に参加した後に、ボルタ・ア・ラ・コムニタット・バレンシアーナからシーズンをスタートすることになった。
第1ステージのスタート地点なったレス・アルケリアスで、一際明るい笑顔でサイン台に登っていたエロセギ選手に、このレースへの思いを聞くことができた。
「(見事な日本語で)おはようございます! お久しぶりです!!」
「昨年は新型コロナウイルスに感染した後に、体調が回復するのにかなり時間がかかってしまいました。またレースの数自体も減っていたこともあり、シーズン後半はレースに出走する機会がほとんどなかったんです。だから久しぶり走ることができることが本当にうれしくて、今日のレースをすごく楽しみにしてました。今日からチームのために目一杯働きますよ」
その言葉どおり、バレンシアのレースではチームのダブルエース、アレハンドロ・バルベルベとエンリク・マスをアシストするために十分働いていたエロセギ。
バレンシアからバスクの自宅に戻った彼に、今季の目標と日本への思いをインタビューすることができた。
アニメが日本から来たと知らず、子どもの頃から見ていた
今季のレースに関する目標は、どのようなものでしょうか。また、すでに出走が決まっているレースはありますか?
「今季の私の目標は、しっかりトレーニングしてケガや病気をせずに、確実に自分の能力を向上させることです。この2年間体調を悪くしていた時期が長かったので、今季は体調を崩さずにレースで良い結果を出したいですね。
今年、私がどのレースに出走するのかは、現段階では特に決まっていません。チームが私を必要だと判断したレースに出走して、一戦一戦でベストを尽くして結果を出すことになります。私自身は、今年はジロやツールあるいはブエルタのような3週間のレースを走ってみたいと思ってはいますが、それにはチームが私を信頼してくれるような結果を日々のレースで残していく必要がありますね」
いつ頃から日本語の勉強を始めましたか? また、小さい頃から日本のアニメを見るのがお好きだったのでしょうか?
「小さい頃は、スペインのTVで放送されているような日本のアニメ、例えばドラゴン・ボール、ワンピース、ポケモンにデジモン、クレヨンしんちゃんにドラえもんなどをたくさん見ていました。でもその頃は、そうしたアニメが日本のものだということを私は知らなかったんです。
その後はいろいろな漫画も読んでいたのですか、今から4年前にちょっと個人的に大変なことが重なったことがあって、その時ふと「子どもの頃に観た好きなアニメを、今もう一度見てみようかな」と思ったんです。そしてこの決断が私の人生を変えましたし、日本のアニメがその頃の私を救ってくれました。特にワンピースは私の人生にとって一番大切なアニメで、辛い時はワンピースを見ることで私は何度も救われたりもしたので、一番大好きなアニメなんです。
また、小さい頃はビデオゲームでもたくさん遊びました。友人や家族と一緒にポケモンで遊んだ記憶は、私の幼い頃の思い出の中で最も幸せな記憶の一つです。
そして、私はもともと外国の文化にすごく興味がありましたし、世界の人と知り合ってみたいと思っていたんです。だから日本はいつも興味が尽きない国だったし、アニメやビデオゲームだけじゃなくて、日本に関する本とかTVとかも見るのが大好きでした。そのため4年前にまた日本のアニメを見るようになって、ますます日本が好きになったし、どうにかして日本に行ってみたいと思うようになりました。
だから、2019年の10月に日本を旅行する事ができた時は、本当にうれしかったし、この旅行は私の人生で一番幸せな旅行になりました。そして、この日本旅行以来、日本のことがますます大好きになったんです。とにかくチャンスがあれば日本に行きたいと持っていますし、なるべく早いうちに以前のように日本を旅行できるようになってほしいと思っています。もし、今年中に日本に入国できるようになったら、今シーズンが終わった後にまた日本に行きたいですね。
日本語の勉強を始めたのは2020年からです。次に日本に旅行した時もっと日本をよく知りたいと思ったし、日本人の友人も欲しいと思ったのが理由です。2020年の年末に日本語を勉強する本を買って独学で勉強をはじめたのですが、今は日本語の勉強は私の大好きなことのひとつです。
私は日本語を勉強して、日本のアニメも見て、日本の漫画はもちろん、日本の歴史や文化や慣習の本を読むのも大好きです。そして今ではTwitterでたくさんの日本のファンとお話することもできます。だから、私はすごく幸せです」
お話のあった2019年の日本旅行で、一番印象に残ったことってなんですか?
「まず印象的だったのは、現代性と伝統のコントラストでした。大都会のものすごく近代的な高層ビルがある同じ場所に、突然古いお寺や神社が現れることにまず驚きました。私、旅行中は街をあちこち歩きまわるのが大好きなんです。だから、東京・上野のホテルに泊まった時には、毎朝浅草まで歩いて浅草寺を見て、その周囲の小さな道を歩き回るのが本当に楽しかっですね。また、東京のような世界有数の大都市に上野公園のような場所があり、その公園がまるで山の中にあるような感じだったのにすごく驚きました。もちろん、大都市から離れた地域もすごく印象的でした。日本旅行で退屈する人は、まずいないでしょうね。
でも、じつは日本旅行中に一番印象に残っているのは、日本のみなさんがすごく親切だったことなんです。日本を旅行している間、何か私が困っているとそばにいる人がみんな手助けしてくれました。しかも、手助けしてくれた人、みんな笑顔で礼儀正しい人ばかりだったんです。ほんと、あの旅行で手助けしてくれた日本の方には、感謝しています。」
日本でレースを走る自分を想像することはありますか?
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「もちろん、あります! 日本でレースを走ってみたいですし、この数年のうちに日本でもトップクラスのレースができればよいな、と思っています。きっと、日本でのステージレースは厳しい上りがあって、美しい景色を見ることができるレースになるでしょうね。
私自身は近い将来、日本国内でワールド・ツアーレベルのチームが多数出走するのステージレースが開催されてほしいと思っています。そうすれば、世界中の自転車ファンは日本の景色を見ることができるでしょうし、日本の自転車ファンは世界トップレベルのレースをもっと目の前で見る機会が増えますよね。そのためにもし私にお手伝いできることがあるのなら、喜んでバックアップさせていただきます。
また、私は日本で一定期間トレーニングしてみたいんです。もしも、日本に問題なく入国できるようになったら、毎年数カ月は日本に住んでみたいです。もしもそうなった場合には、シーズンが終了後に日本に行って、最初の数週間は日本で休養ながら観光して、その後シーズン前のトレーニングをすることになるでしょうね。
将来的には、もっと長い時間を日本で過ごすことになれば良いな、と思っています。そして日本の若いサイクリストが世界で走るためのお手伝いをすることもできるようになれば、私はとてもうれしいです」
▼エロセギ選手のブログはこちら
「ボルタ・ア・バレンシア」のブログを書いた!
私は日本語で書いたの最初のブログをです。日本語を上手じゃないけど、たくさんの勉強した後で、これは書ける素晴らしい!🇯🇵😄皆さんがWTレースを内からよく知っている欲しい。だから、ブログは読んで楽しんで願っている!🙏🏻😊https://t.co/tBrBeXzlAe
— iñigo elosegui (@ini_elosegui) February 12, 2022
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