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マジソン郡の橋を渡り545km走るウルトラ・グラベル|竹下佳映のグラベルの世界

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真っ暗な中、やっとCP2到着。PHOTO: Greg Grandgeorge

昼間の気温も大して高くなかったのでそれなりの格好をしていましたが、さらに気温が下がる夜中走行に向け、保温性の高い素材で重ね着します。冬用トップ、厚手のアルパカ・ウール靴下、冬用キャップ、早朝に使った防水オーバーパンツを重ね、手袋も乾いた防寒用のものに交換しました。ガーミンを充電器につなげ、ライトに付いた汚れを拭き取ります。後部の赤ライトは朝のBロードで落として紛失していましたが、念のために2つ目のライトをハイドレーション・バックパックに付けていたのが正解でした。

CP2が閉鎖するのが23時で、2時間以上余裕をもって到着していたので、今回も特に急いで去る必要はありませんでした。ここで焦って何かをし忘れて、暗闇で対処する羽目になるよりも、少し時間をかけて準備万端にしておきたかったのです。街灯がなく夜間は本当に真っ暗になるので、できれば誰かと一緒に走れればいいなと思っていました。ただ、皆それぞれペースが違うのでどうやら単独走行になりそうでした。準備は万端なのでソロでも問題はありません。さて出発しようというところで、もう一人用意をし終えたライダーがいたので二人で発つことになりました。CP2が最終チェックポイントで、ゴールまでは約150マイル(241㎞)です。その間にもう1カ所だけ、補給・補充できる場所があります。

 真っ暗闇のライド

ボランティアが撮影したTree in the Road。ライド中は真っ暗で目の前に来るまで気づかなかった。PHOTO: Paul Hamburg

コロラド州から来たというジョナサンは、こんなに粘着性のあるグラベルは見たことがないと言っていました。私の住むところも、自宅からかなり離れないと砂利道すらありませんが、こういったタイプのグラベルはありません。「アイオワ州へようこそ!」です。一緒に走る仲間がいるというのは楽しいもので、お互いのこれまでのレースやライドの話、今後の計画についての話で盛り上がりました。途中ジョナサンのサイコンとライト調整、タイヤの空気漏れもあり、最終的にチューブを入れて対処するのに何度も立ち止まらなければなりませんでしたが、二人一緒にいて本当に良かったな、と思いました。

夜中になって疲れたからといって、道の名前を最後まで確認するのを忘れてはいけません。レース前に注意されていたにも関わらず、やらかしてしまいました。モッキンバード・アベニューとモッキンバード・プレイスの違いでコースから外れてしまい、間違いに気付いたのは、暗く静かな墓地にたどり着いてから。かなり不気味でした。どこで間違ったのか確認してから、3㎞ちょっとだけの寄り道だったので、特に焦ることもなく引き返しました。冒頭で説明した、この大会の前身であったトランス・アイオワの頃はGPS付きのサイコンはなかったでしょうし、夜間走行は相当大変だっただろうな、と思いました。迷子になるのはほぼ免れなかったのではないでしょうか。

私たちの軽い会話は段々と少なくなり、いつの間にか眠気が襲い掛かってきました。「ララララララ」と大声を出してみたり、頬を叩いたり、ガムを噛んだりしましたが、どんなに頑張っても眠いものは変わらず、まぶたは重くなるばかり……。二人とも居眠り走行になりそうだったので、立ち止まって頭をハンドルバーに乗せて休ませ、睡眠ではないものの5分位目を閉じることにしました。これが結構効果的で、集中力が切れるたびに何度も行いました。

外はとても静かで、空にはシカゴ都市圏では見えない数の星が輝いていました。満月だったら周囲もよく見えていたのではないでしょうか。風力発電の風車のてっぺんについた赤色の航空ビーコンが同時に点滅しているのだけが暗闇に浮かんでいました。

農家が近くにあったのでしょう、低いうなり声が聞こえました。声から判断すると大型犬が2頭。どうしよう……いつでも全力疾走できるように心の準備をしながら二人ともゆっくりとスピードを上げました。ヘッドライトがまぶしくて犬の目には私たちがいったい何なのかわからなかったのか、近くまでは寄ってきませんでしたが、かなり怖かったです。

少しでも脳の活動を活発にして眠気と闘おうと、キューシート上の曲がり角があるたびに声に出すことにしました。その中で出てきたのが「Tree in the road」(道に木)。一瞬どういうことなのか理解できませんでした。距離的に近くなっても丸太や枝が地面に転がっている様子もないことから、ジョナサンは「もう誰かが(倒れた木を)片付けた後なんじゃない?」と言いましたが、もう一度よくよくシートを見てから「でも、道の上(ON)の木じゃなくて、道の中(IN)の木って書いてあるよ」と私は答えました。

 

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PROFILE

竹下佳映

竹下佳映

札幌出身、現在は米国シカゴ都市部に在住。2014年に偶然出会ったグラベルレースの魅力に引かれ、プロ選手に混ざって上位入賞するなどレースに出続けている第一人者。5年間グラベルチーム選手として活躍し、2022年からはプライベーターとしてソロ活動。ここしばらく飛んでいないが飛行機乗り。

竹下佳映の記事一覧

札幌出身、現在は米国シカゴ都市部に在住。2014年に偶然出会ったグラベルレースの魅力に引かれ、プロ選手に混ざって上位入賞するなどレースに出続けている第一人者。5年間グラベルチーム選手として活躍し、2022年からはプライベーターとしてソロ活動。ここしばらく飛んでいないが飛行機乗り。

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