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空気圧調整ホイールも登場! 北の地獄・パリ~ルーベプレビュー|ロードレースジャーナル

vol.36 30セクション・総距離54.8kmのパヴェ
昨年とは真逆の好天予報でレースはどう動く⁉️

国内外のロードレース情報を専門的にお届けする連載「ロードレースジャーナル」。盛況の春のクラシックシーズンは、いよいよ「北の地獄」パリ~ルーベがやってくる。例年より1週遅れて4月17日に行われるレースには、おなじみの石畳(パヴェ)が30カ所・総距離54.8kmにわたって登場する。これまで数々の名勝負と衝撃をもたらしてきたが、今年はどんな戦いとなるだろうか。

3年ぶり「帰還」の4月開催

数あるワンデーレースの中でも、とりわけ格式があるといわれるレース群「モニュメント」に位置づけられ、別名「クラシックの女王」とも呼ばれる。そんな異名とは裏腹に、レースは過酷を極める。今年であれば前述のとおり30カ所・54.8kmに及ぶ握りこぶし台の石が敷き詰められたパヴェを走ることとなり、通常のライドでは考えられないほどの振動や全身への負荷が選手たちを苦しめる。また、開催地フランス北部は天候が変わりやすく、風雨に打たれ、さらにはコース周辺から流れ込む泥によってパヴェが滑りやすくなり、予期せぬクラッシュが多発する。それはもはや、地獄絵図そのものだ。

まさに「地獄」となったのが前回大会だ。数日前から降り続いた雨により、パヴェは泥沼状態に。まともに走行できる状況になく、各所で単独または複数人を巻き込んでのクラッシュが頻発。何事もなく走り抜いた選手たちがそのまま優勝争いへと転化していく格好となった。

パヴェが泥沼化した2021年のパリ〜ルーベ ©︎ A.S.O./Pauline Ballet

昨年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で10月開催だったが、一昨年の中止をはさんで、大会は本来の4月へと3年ぶりに「帰還」。フランス大統領選挙第1回投票が行われた関係で、通例の4月第2週開催から1週ずらしてのレース実施となるが、やはり「北の地獄」は春の風物詩でなくてはならない。

ちなみに、気になるレース当日の天候は晴れの予報。気温も20度近くまで上昇する見込みで、昨年とは真逆のコンディションとなりそうだ。ここ数日間でパヴェの整備も完了したそうで、路面状況も良好とのこと。晴れたら晴れたで、パヴェでは砂ぼこりが舞うなどパリ~ルーベならではの光景が見られるはず。その点は、過酷なレースであることには変わりがない。

晴れれば晴れたでパヴェには砂埃が舞う。やはりパリ〜ルーベは過酷であることに変わりはない(2019年大会より) ©︎ ASO/Pauline Ballet

五つ星パヴェ3カ所、全30セクション・全長54.8kmのパヴェ

コースをチェックしていこう。パリから北に位置するコンピエーニュをスタートし、ルーベまでの257.5kmで争われる。

スタートからおおよそ3分の1は平坦路を走り、96.3km地点から全30カ所・全長54.8kmのパヴェセクションへと挑むことになる。

 

パヴェ全30セクション
30 96.3km地点(残り161.2km)トロワヴィル~アンシー 2.2km ★★★
29 102.8km地点(154.7km)ヴィースリー〜キエヴィ 1.8km ★★★
28 105.4km地点(152.1km)キエヴィ~サンピトン 3.7km ★★★★
27 110.1km地点(147.4km)サンピトン 1.5km ★★
26 117.9km地点(139.6km)ヴェルテン~サン=マルタン=シュール=エカイヨン 2.3km ★★★
25 123.7km地点(133.8km)オウシー 0.8km ★★
24 130.6km地点(126.9km)ソルゾワール~モグレ 1.2km ★★
23 134.9km地点(122.6km)ヴェルシェン=モグレ~ケレネン 1.6km ★★★
22 137.6km地点(119.9km)ケレネン~マン 2.5km ★★★
21 140.7km地点(116.8km)マン~モンショー=シュール=エカイヨン 1.6km ★★★
20 153.7km地点(103km)アブルイ~ワレー 2.5km ★★★★
19 161.9km地点(95.6km)トルエー・ド・アランベール 2.3km ★★★★★
18 167.9km地点(89.6km)ワレー~エレーム 1.6km ★★★
17 174.7km地点(82.8km)オルネン~ヴァンディニー 3.7km ★★★★
16 182.2km地点(75.3km)ヴァルレン~ブリヨン 2.4km ★★★
15 185.6km地点(71.9km)ティヨワ~サール=エ=ロジエール 2.4km ★★★★
14 192km地点(65.5km)バーヴリー=ラ=フォレ~オルシー 1.4km ★★★
13 197km地点(60.5km)オルシー 1.7km ★★★
12 203.1km地点(54.4km)オシー=レ=オルシ~ベルシー 2.7km ★★★★
11 208.6km地点(48.9km)モン=サン=ペヴェル 3km ★★★★★
10 214.6km地点(42.9km)メルニー~アヴラン 0.7km ★★
9 218km地点(39.5km)ポン・ティボー~エンヌヴラン 1.4km ★★★
8 223.4km地点(34.1km)タンプルーヴ(レピネット) 0.2km ★
8 223.9km地点(33.6km)タンプルーヴ(ムーラン=ド・ヴェルテン) 0.5km ★★
7 230.3km地点(27.2km)シソワン~ブルゲル 1.3km ★★★
6 232.8km地点(24.7km)ブルゲル~ワヌアン 1.1km ★★★
5 237.3km地点(20.2km)カンファナン=ペヴェル 1.8km ★★★★
4 240km地点(17.5km)カルフール・ド・ラルブル 2.1km ★★★★★
3 242.3km地点(15.2km)グルソン 1.1km ★★
2 249km地点(8.5km)ヴィレム~エム 1.4km ★★
1 255.8km地点(1.7km)ルーベ 0.3km ★

やはり五つ星パヴェで何が起きるかに注目が集まる。アランベール(セクター19)、モン=サン=ペヴェル(セクター11)、カルフール・ド・ラルブル(セクター4)の3カ所。セクション距離や石畳の粗さなどから見ても、脚やテクニックの差がはっきりと出やすく、集団を絞り込むポイントとしては有効だ。また、カルフール・ド・ラルブルは最後から4番目のセクションとあり、しばしば決定的な局面が生まれる場所でもある。大小問わず、精鋭がパックを組んでこのパヴェへ飛び込んだ際は、何らかのアクションが起こるはずだ。

©︎ A.S.O./Pauline Ballet

タイヤ空気圧管理システムが正式採用に

タフなレースをさらに変化をもたらす要素になるだろうか。

国際自転車競技連合(UCI)はこのほど、4月1日からタイヤ空気圧の組み込み管理システムをロードレースにおいて認可していることを発表した。

タイヤ空気圧管理システム「スコープアトモス」 ©︎ Scope

UCI規則1.3.004に沿って認可されたタイヤ空気圧管理システムは、ハンドルバーに装着されたボタンによって操作され、機械式バルブを通じてエアリザーバーとチューブレスタイヤ間の空気の流れを調整するという。あらかじめエアリザーバーに空気を重鎮しておくことで、エアを抜くだけでなく、入れることも可能なのだとか。加えて、サイクルコンピュータに空気圧が示され、リアルタイムでタイヤ状態の確認ができる点も大きい。

©︎ Scope

何より、路面状況に合わせて適切な空気圧にできれば、転がり抵抗は30ワット低減するとのこと。これまでであれば、タイミングを見ながらバイク交換をして路面変化に対応する選手・チームの姿が見られたが、これを使えばその手間を省けるというメリットもある。

サイクルコンピューターに空気圧が示される ©︎ Scope

これはオランダに本社を置くスコープ社がチーム ディーエスエムとの共同のもと開発。4月15日に正式公開され、市販されることも決まっている。そのお値段、3998ユーロ……日本円にして約547,000円!

つまりは、チーム ディーエスエムがこの機能を史上初めて搭載しレースに臨むというわけ。この機能が一番適しているであろうパリ~ルーベでのお披露目は、いったいどんな結果をもたらすだろうか。

絶対的存在のマチュー 打倒のカギは数的優位に持ち込むことか!?

パリ~ルーベではロードレースのセオリーが一切通用しない。どんなに脚があって、勝負強さを持ち合わせていようとも、ひとつのクラッシュやライバルの動きによってレースプランが大きく崩れてしまう恐ろしさが潜んでいる。

このレースほど予想が難しいものはないだろう。そうした中でも、ダントツの優勝候補筆頭に上がるのがマチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス、オランダ)だ。4月3日のロンド・ファン・フラーンデレンを制し、ルーベでは石畳2冠がかかる。これを達成できれば、史上12人目。近年ではトム・ボーネン(2005年、2012年)、ファビアン・カンチェラーラ(2010年、2013年)に続く偉業になる。

前回、激闘の末に3位だったマチュー・ファンデルプールが初優勝に挑む。ロンド・ファン・フラーンデレンとの2冠もかかる ©︎ A.S.O./Pauline Ballet

なんといっても、どんなレース展開にも対応できるのが最大の武器。このところのレースではライバルのマークが厳しいこともあり、小集団に絞り込んでからのスプリント勝負に持ち込むことが多いが、もともとはフィニッシュ前のスピードを生かすもよし、独走にするのも良し、どちらでもOKなのが強みだ。ルーベであれば、状況次第ではパヴェでライバルを切り離すことも大いに考えられ、マチューの脚質的に独走に持ち込みやすいシチュエーションはいくつもあるはずだ。

もしかすると、マチュー自身も数人の争いで最終局面を迎えることを避けたいと考えているかもしれない。何より、昨年のこの大会で3人による争いに敗れて3位に終わった苦い経験がある。また、前週のアムステル・ゴールドレースでは次々と繰り出されるライバルたちのアタックに消耗し、終盤で飛び出した2人を追い切れなかった。徹底したマークにあうため、追う展開になるとどうしてもパックを引かざるを得ない情勢になりやすい。そうなると、おのずと消耗度が増してしまい、持ち味を生かしきれずに終わってしまう。そうした流れはできるだけ避けたいところだ。

裏を返せば、絶対的な強さを誇るマチューに勝つ手立てとして、先手を打っていくことが他チームのテーマになる。できる限り前線に人数を残して、複数人で勝負できる態勢を整えたい。

本来であればマチューと並ぶ存在であるはずのワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ、ベルギー)は、今大会が新型コロナウイルス感染からの戦線復帰。チームは回復状況を精査し、とりわけ心臓機能検査を重視したという。その結果、ルーベ出場へゴーサインが出た。ただ、ベストコンディションではないことをマルティン・ジーマン監督が認めており、今回はアシストとして走る公算だ。そうなると、ユンボ・ヴィスマは今季好調のクリストフ・ラポルト(フランス)を生かす方向で戦うものと考えられる。

戦力の充実度でいえば、イネオス・グレナディアーズが一番かもしれない。アムステルを勝ったミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド)を軸に、フランドル2位のディラン・ファンバーレ(オランダ)、13日のブラバンツペイルで独走勝利を挙げたマグヌス・シェフィールド(アメリカ)とタレントがそろう。この春は好アシストぶりが光るベン・ターナー(イギリス)、さらにはフィリッポ・ガンナ(イタリア)がルーベに照準を合わせてきた。レース展開によっては、彼らがプロトンの主導権を握る可能性だってある。

前週のアムステル・ゴールドレースを制したミハウ・クフィアトコフスキ(中央)は戦力充実のイネオス・グレナディアーズの中核を担う ©︎ Getty Images

前回覇者のソンニ・コルブレッリ(イタリア)は不整脈の影響で欠場するが、バーレーン・ヴィクトリアスも力のある選手をそろえている。この春絶好調のマテイ・モホリッチ(スロベニア)を筆頭に、コンスタントに上位争いに加わっているフレッド・ライト(イギリス)、ディラン・トゥーンス(ベルギー)も有力視される。さらには、われらが新城幸也が初出場。今季はこれまでになく石畳系レースを走っているが、後半までメイン集団で展開するなど、本人は苦手だと言いながらもさすがの適応力を発揮している。果たして「北の地獄」はどう攻略するだろうか。

シュテファン・キュング(スイス)とヴァランタン・マデュアス(フランス)の2人が計算できるグルパマ・エフデジもおもしろい存在だ。伝統のフレンチチームは春のクラシックでも存在感を見せてきている。特に独走力のあるキュングが終盤にうまく飛び出せると、勝機は一気に膨らむ。

一方で、今年はあまり目立っていないのがクイックステップ・アルファヴィニル。戦力が整わず、お家芸のパヴェで苦戦を強いられている。その状況を打ち破るチャンスはルーベしかなくなった。カスパー・アスグリーン(デンマーク)やベテランのゼネク・スティバール(チェコ)、スプリント力のあるフロリアン・セネシャル(フランス)が上位を狙っていく。

アージェードゥーゼール・シトロエン チームには、グレッグ・ファンアーヴェルマートとオリヴェル・ナーセン(ともにベルギー)のベテランコンビが控える。経験や実績は申し分なしで、ルーベの戦い方も熟知している。ファンアーヴェルマートは2017年にこの大会で勝っており、5年ぶりの王座を目指したい。

2017年に勝っているグレッグ・ファンアーヴェルマートはベテランの意地を見せられるか ©︎ A.S.O./Pauline Ballet

トレック・セガフレードが誇る2枚看板、マッズ・ピーダスン(デンマーク)とヤスパー・ストゥイヴェン(ベルギー)にもチャンスあり。昨年は泥に苦戦し良いところなく終わったが、そのリベンジに燃える。両者とも十分な試走でコース状態を把握しているとのこと。パヴェでのテクニックはもちろん、終盤までもつれた際には2人ともスプリント力が武器になる。

前回2位となり観る者を驚かせた23歳のフロリアン・フェルメールシュ(ロット・スーダル、ベルギー)も侮れない。一気に昨年を上回るビッグリザルトはあるか。4月6日のスヘルデプライスでは独走で勝利し、新境地を開いたアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー)は勢い十分のアンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオのエースとして臨む。

前回大会で彗星のごとく現れたフロリアン・フェルメールシュは今年も快進撃を見せられるか ©︎ A.S.O./Pauline Ballet

なお、優勝経験者では前述のファンアーヴェルマートのほか、2014年のニキ・テルプストラ(トタルエナジーズ、オランダ)、2015年のジョン・デゲンコルプ(チーム ディーエスエム、ドイツ)、2019年のフィリップ・ジルベール(ロット・スーダル、ベルギー)が今大会のスタートラインに就く予定。今シーズン限りでの引退を表明しているジルベールは、これが最後のルーベとなる。

この大会には25チームが出場。現地時間午前11時15分(日本時間午後6時15分)にスタートが切られ、同地午後5時頃(日本時間深夜0時頃)にフィニッシュの瞬間を迎える見込みだ。

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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