BRAND

  • FUNQ
  • ランドネ
  • PEAKS
  • フィールドライフ
  • SALT WORLD
  • EVEN
  • Bicycle Club
  • RUNNING style
  • FUNQ NALU
  • BLADES(ブレード)
  • flick!
  • じゆけんTV
  • buono
  • eBikeLife
  • Kyoto in Tokyo

STORE

MEMBER

  • EVEN BOX
  • PEAKS BOX
  • Mt.ランドネ

ジロ・デ・イタリアを欠場したアルケア、他レースでUCIポイント荒稼ぎの怪現象|ロードレースジャーナル

vol.39 ジロ回避のアルケア・サムシックがUCIチームランキングで上位へ
ロット、イスラエルは来季下部降格のピンチ

国内外のロードレース情報を専門的にお届けする「ロードレースジャーナル」。今季最初のグランツール、ジロ・デ・イタリアが劇的な幕切れとなり、いまなお興奮冷めやらぬ方も多いことだろう。そのさなか、UCIワールドツアーを取り巻く情勢に不思議な現象が起こっている。それによって、来季のロードレースシーンの構図が変わる可能性まで出てきた。その「不思議な現象」とはいったい……。詳しく掘り下げてみたい。

ジロを終えてチームランキングがシャッフル

UCI(国際自転車競技連合)は5月31日、同日付のワールドランキングを発表。ジロを終えた直後で、個人・チームともに順位は大きく変動を見せている。

チームランキングでは、ジロ個人総合2位のリチャル・カラパス(エクアドル)擁するイネオス・グレナディアーズが2ランクアップしてトップに浮上。同3位のミケル・ランダ(スペイン)が所属するバーレーン・ヴィクトリアスも同様に2つランクを上げて2位になった。一方で、総合エースだったジョアン・アルメイダ(ポルトガル)が無念のリタイアとなったUAEチームエミレーツは1ランクダウンで3位、これまでトップを走ってきたユンボ・ヴィスマは3ランク落として4位になった。なお、ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア)をジロの頂点まで押し上げたボーラ・ハンスグローエが5位で続いている。

ジロ・デ・イタリア個人総合優勝のジャイ・ヒンドレーを擁するボーラ・ハンスグローエはUCIチームランキングで5位に浮上 ©︎ LaPresse

チームランキングは、所属選手を対象にチーム内上位10人の個人獲得ポイントが「チームポイント」に反映される。例えば、現在首位のイネオス・グレナディアーズであれば、現ポイント6947点のうち、チームトップのダニエル・マルティネス(コロンビア)が個人で獲得している1465点から、同10番手のリッチー・ポート(オーストラリア)の340点までが「チームポイント」として反映される。

今後の出場レースや結果によって変動するが、過去52週間の獲得ポイント合算で決まる個人ランキングとは異なり、チームランキングは当該シーズンで獲得したポイントだけが有効である面も押さえておきたい。とにかく、チーム内11番手以降の選手はどれだけポイントを稼いでいようと、チーム分には反映されないのである。

ロードレースUCIランキング(UCIウェブサイト内)

2022年シーズン終了後にUCIワールドチーム2チームの入れ替えを予定

なぜ「チームランキング」「チームポイント」に目を向けているのかというと、UCIワールドツアーは今季が「区切りのシーズン」であり、過去3シーズンのチームポイント合算で上位18チームに2023年シーズン以降の同ワールドチーム権利が付与されることになっているからである。

UCIは2019年末に、向こう3年間のUCIワールドチーム(第1カテゴリー)を決めた。昨年限りでチーム クベカ・アソスが第1カテゴリーから離脱した以外は、ここまで大きな変化はないまま各シーズンが送られてきた。この3シーズンが終わるにあたって、UCIワールドチームの3シーズン獲得ポイントの下位2チームと、同プロチームで獲得ポイント上位2チームとが入れ替わる予定になっている。

つまりは、今シーズンは“勝負の年”であり、昇降格ラインに位置するチームはラストスパートをかける必要があるのだ。

2022年シーズン終了後にUCIワールドチームと同プロチームの入れ替わりが行われる予定だ(写真はイメージ) ©︎ LaPresse

ジロ回避のアルケアが裏番組でUCIポイントを量産

この観点でチーム情勢を見ていく中で、特異な状況が生まれているとの指摘がある。

ベルギーのアナリストJavi Angulo氏が投稿したツイートによれば、ジロをスキップしたチーム アルケア・サムシックは同大会期間中(5月6~29日)に別レースでUCIポイントを量産しており、それはジロに出場していた11のワールドチームより上であったことを挙げている。

確かにチーム アルケア・サムシックは、ジロの裏でUCIプロシリーズ(UCIワールドツアーから1階層下にあたる)を2つ勝っている。同シリーズは優勝するとUCIポイント200点。とりわけ、5月15日に行われたトロ・ブロ・レオンでは1位・3位・6位・7位に選手を送り込んでおり、このレースだけで1580点を占めている。

5月15日に行われたトロ・ブロ・レオンでチーム アルケア・サムシックはUCIポイント1580点を獲得。トップ10に4人を送り込みレースを席巻した ©︎ A.S.O./Jonathan Biche

これらが大きく利いて、チーム アルケア・サムシックは5月31日時点でのUCIチームランキングで7位。ジロでマチュー・ファンデルプール(オランダ)らが活躍したアルペシン・フェニックスより1つ上のランクに位置する。

また、3シーズン合計のチームポイントでも昇降格ラインを大きく上回っており、このまま順調に戦いを進められれば、来季からのUCIワールドチーム入りは可能だ。

最重要は出場したレースで確たる結果を残すこと

チーム アルケア・サムシックが「ジロをスキップした」と前述したが、同チームは昨シーズン、UCIプロチームでは2番手だったことから、ジロを含む今季のワールドツアー全レースへの出場権を確保していた。ただ、これらチームにはレースごとに出場権を返上する権利もあり、チーム アルケア・サムシックはジロには出場しないとの判断を下していた経緯がある。

同チームがはじめから「ジロには出ず、同時期の別レースでポイント量産を狙う」とのスタンスだったかまでは図りかねるが、現行のポイント・ランキング両システムでは、このような状況が生まれても不思議ではない、ということが明白になった。

Angulo氏のツイートを受けて、トレック・セガフレードのチームマネージャー、ルカ・グエルチレーナ氏は、「降格を避けようと、主力ライダーを小規模なレースへと送り込んでポイント量産を狙うチームが出てくる可能性がある」と指摘。「最高のライダーが最高のレースで戦えるようにする」というUCIワールドツアーの根本に触れる問題が発生することを危惧している。

絶好調のチーム アルケア・サムシックを牽引するナイロ・キンタナ。ツール・ド・フランスでの活躍に期待がかかる ©︎ Getty Images

とはいえ、チーム力や活躍度を数値化して、そこから最高のチーム群を決める点は誰にとっても明瞭で、文句が出にくいスタイルではある。決定までの過程に問題視する向きは出てこようとも、現行ルールに基づいて動く中で起きている事象である以上、割り切って考えるより仕方ないだろう。前記したチーム アルケア・サムシックのポイント量産は、順位によるポイント付与が大きいUCIワールドツアーに出ずとも、活躍次第で多くの得点を稼ぐことができることを表した好例ともいえる。

1つ間違いないのは、どのチームも、出場するすべてのレースで確たる結果を残すこと。これに尽きるだろう。

3シーズンのポイント合算によるチームランキング

最後に、5月31日時点での3シーズンのポイント合算によるチームランキングを上げておきたい。このままいけば、ビッグレースで大活躍のアルペシン・フェニックスと渦中のチーム アルケア・サムシックはワールドチーム昇格へ。一方で、ロット・スーダルとイスラエル・プレミアテックが降格ライン上に位置。今後の状況次第では、EFエデュケーション・イージーポストやチーム バイクエクスチェンジ・ジェイコ、コフィディスあたりも危険な状況に陥る可能性がある。

2020-2022 チームポイントランキング
※2022年5月31日時点、カッコ内数字は2020年・2021年・2022年の獲得ポイント

1 クイックステップ・アルファヴィニル 29976pts(9776・15641・4559)
2 イネオス・グレナディアーズ 29574pts(7628・14999・6947)
3 ユンボ・ヴィスマ 29421pts(9919・12915・6587)
4 UAEチームエミレーツ 27536pts(8503・12356・6677)
5 バーレーン・ヴィクトリアス 21848pts(4686・10429・6733)
6 ボーラ・ハンスグローエ 21227pts(6739・8222・6266)
7 アルペシン・フェニックス 17888pts(4788・8251・4849)
8 グルパマ・エフデジ 16705pts(5614・6715・4376)
9 トレック・セガフレード 16504pts(6591・6594・3319)
10 アスタナ・カザクスタン チーム 14780pts(6612・6469・1699)
11 アージェードゥーゼール・シトロエン チーム 14697pts(3628・7151・3918)
12 チーム アルケア・サムシック 13858pts(3967・5000・5161)
13 アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ 13778pts(2778・5571・5429)
14 チーム ディーエスエム 13627pts(7583・3887・2157)
15 モビスター チーム 12935pts(2957・6656・3322)
16 コフィディス 12842pts(2806・5481・4555)
17 チーム バイクエクスチェンジ・ジェイコ 12486pts(4986・4686・2814)
18 EFエデュケーション・イージーポスト 12400pts(5577・5362・1461)
---昇降格ライン---
19 ロット・スーダル 11650pts(3231・4704・3715)
20 イスラエル・プレミアテック 11122pts(2358・6705・2059)
21 トタルエナジーズ 8128pts(1418・3192・3518)
22 ウーノエックス プロサイクリングチーム 5747pts(1347・2847・1553)

福光 俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

SHARE

PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

福光俊介の記事一覧

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

福光俊介の記事一覧

No more pages to load