ペテル・サガンが9カ月ぶりの勝利! ツール・ド・フランスへ復活を証明か!?|ツール・ド・スイス
福光俊介
- 2022年06月15日
現在スイスで開催中のステージレース、ツール・ド・スイス。先ごろ閉幕したクリテリウム・ドゥ・ドーフィネと並び、ツール・ド・フランス前哨戦としても知られるこの大会。今年は新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)の参戦でも注目を集めている。そんななか、第3ステージではペテル・サガン(トタルエナジーズ、スロバキア)がスプリント勝利。今季初めての勝ち星はトタルエナジーズ加入後最初の勝利であり、じつに9カ月ぶりにやってきた歓喜の瞬間だった。
第1・第2ステージの失速を跳ね飛ばす鮮やかな勝利
6月12日に開幕した大会。第1ステージは小集団スプリントをスティーブン・ウィリアムズ(バーレーン・ヴィクトリアス、イギリス)が、第2ステージはアンドレアス・レックネスン(チーム ディーエスエム、ノルウェー)が単独逃げ切りでそれぞれ勝利。続く第3ステージは、4カ所のカテゴリー山岳を越えて前線に残った60人によるスプリントでフィナーレへ。そこで抜群のスピードを披露したのがサガンだった。
今大会のサガンは、第1・第2ステージともに勝負どころを前に集団から遅れていたこともあり、この日の快勝に驚いたファンや関係者も多かった様子。とはいえ、レース前半からトタルエナジーズのアシスト陣が集団コントロールに加わり、サガンのためにレース構築に努めていた。その意味では、チームメートの働きに報いる勝利となった。
スイスの勝利は復活宣言!? 次なる注目はツール・ド・フランスに間に合うかへ
サガンが勝利するのは、個人総合優勝を果たした昨年9月のツール・ド・スロバキア以来、じつに9カ月ぶり。UCIワールドツアーに限定すると、昨年5月のジロ・デ・イタリア第10ステージまでさかのぼることになり、1年以上ビッグレースの勝ち星から見放されていたことになる。
これまでの間、ツール・ド・フランスではヒザの負傷で第12ステージで出走を取りやめたほか、トタルエナジーズに加入した今季早々に2回目の新型コロナウイルス感染があり、その影響で目標だったロンド・ファン・フラーンデレンとパリ~ルーベ出場を断念。春のクラシックシーズンを打ち切っていた。
しばしの休養後、アメリカへわたって個人キャンプを実施し立て直しを図ると、6月上旬にグラベルレースに出走。さすがに“本職”とする選手たちとの競い合いとはならなかったものの、サガンなりの脚づくりでこの大会に臨んでいた。
こうなってくると、注目すべきは7月1日に開幕するツール・ド・フランスに間に合うかどうか、になってくる。レース後のインタビューでは「ステージ優勝の1つにすぎないよ」とクールに答えた彼だが、ツールについて問われると「ツールへ向けてビルドアップしていけることを個人的にも期待している」とコメント。その言葉からは、ツール本番を意識していることがうかがえる。
戦線復帰にあたり、「苦しい時期だった。2カ月間レースから離れていたので、カムバックするのは簡単なことではないと思っていた。この間は“自分の何が悪いのか”を見つめ直す期間だった」と振り返ったサガン。このスイスでの勝利が復活ののろしとなるのか。完全復調へのロードが、今まさに始まったといえそうだ。
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PROFILE
サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。