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笑いあり涙ありのOMM LITE/BIKE 参戦レポート! 前編

7月23〜25日の3日間、長野県の白馬地方で行われたランとバイクのイベント「OMM LITE/BIKE」。「OMM lite bike」を簡単に説明すると「ロゲイニング」の大会。OMMは「Original Mountain Marathon」というイギリス発祥のもっとも古い山岳レース(今のアドベンチャーレースの基になっている)のこと。厳しい環境下で行うOMMに適したアイテムとしてOMMのウェア&グッズのブランドがスタートしています。ちなみに「ロゲイニング」とは、山野に接地されたポイントを、地図やコンパスだけを頼りに、制限時間内にできるだけ多く回って得られた得点を競う屋外スポーツのこと。ここでは長野県伊那と松本で自転車とアウトドアを扱うショップCLAMPクランプのスタッフ新井さんが参戦レポートをお届けする。

OMMってどんなイベント?

ここも、ここも、ここも、とついつい欲張ってタイムオーバーしてしまうと、制限時間オーバーから1分につき5点という痛いペナルティが……

CLAMPスタッフ新井です 。ここでは「OMM LITE/BIKE(以下略OMM)」の存在をすでに知っている方にも、そうでない方にもOMMというイベントの楽しさを頑張ってお伝えしていきます。ボリューミーな内容になっているので、準備から大会2日目終了までを前編と後編に分けてお送りします。ラストまで盛り上がってますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

普段から山に行く人であっても、レインウェアを持たなかったり、ジーンズで登山したり、GPS頼りで地図読みの知識を全く持たない方が、慣れた方の中にも見受けられます。

OMMというイベントは全体を通して、必携品リストにレインウェアやファーストエイドキット、服装は乾きやすいものと指定があり、GPSの使用は禁止なので地図読みができないと全くレースにならない、などの特徴があります。

こちらはレース前、仲間に水をぶっかけられている僕。汗をたくさんかいたり、水をかぶりまくったりするOMMで乾きやすい服はマストです

なので、レースに参加することで自然と山に行く時に役立つ装備や知識が手に入ることになり、この「遊んでいる内に大切なスキルや経験が身につく」という点がCLAMPとして熱く賛同できるので、ショップを挙げて参加しているという背景があったりします。

自由なスタイルで楽しむことはとても大事ですが、万が一のために必要なスキルが、参加条件をクリアしつつ楽しむことで勝手に身につくって、素敵なコンセプトだと思いませんか?

地図を読み、話し合い、走って、ポイントを探して、補給して……を繰り返すうちにいろいろなスキルがレベルアップする実感が得られます。写真は地図とにらめっこする女子チームのナツさん

また、そもそもOMMにはランだけによる本戦が存在しているのですが、レギュレーションやルールの厳しい本戦とは違い、OMM lite bikeはいい意味で圧倒的にゆるく、レース中は選手同士が手を振りあって挨拶、川を見つけては時間を気にせず水浴びに行く選手がいる、1日目の夜から2日目の朝方まで飲み明かしている選手もいる、などなどとても自由で、どこか夏休みの旅行のようなリラックスした雰囲気が漂っている感じがします。

服が濡れるとか靴が水浸しになるとか、そんなことがどうでも良くなる気持ちよさが、レース中の川遊びには存在します。この快感が味わいたいから猛暑の中参加するといっても過言ではありません

本戦と違ってレース中にコンビニやお店で補給が可能になっているのも、食いしん坊なのに補給食の忘れ物が多い僕のような人にとって、非常にありがたいですよね。

そんな感じで初めての方でも楽しみつくせるOMM lite bikeやその先の本戦のこと、OMMというブランドについてなど、詳しいことは下記リンクのwebページからぜひのぞいてみてください!

OMM JAPAN 公式ホームページ
https://theomm.jp

準備編

今大回は、昨年の同大会で総合2位を獲得した僕&メカニック寺尾のペアに、大柄な体格で「怪獣」の異名を持つ松本蔵店の店長、兵藤を加えた3人チームでの参加でした。

昨年の大会を振り返って、「OMM bikeは26インチMTBの方が楽しそうだよね」という僕と寺尾の知見、「去年は初出場で散々迷ったのに上位入賞できたから、迷わなければどんなバイクでも1位が取れそうだ」という若さから来る根拠のない自信、さらには「変なバイクで勝った方がかっこいいよね」という優勝は確実だから何をしてもいい、という過激な思い込みにより、3人全員が26インチのOLD MTBで出場することに。今思えば、この決定こそが悪夢の始まりだったのかもしれません。とか言いながら結局こんな達成感に満ちた表情はしてますが……。

結論として、どんなジャンルのバイクに乗っても楽しめるレースであることは間違いありません。速いヤツになりたいのか、変なことをしてる面白いヤツになりたいのか、それが今年の僕たちにとって究極の二択でした

僕は15年前のKONAのXCフレームに、ブレーキレバーがシフトレバーになっている今ではレアなSTIのSHIMANO DEORE、舗装路からトレイルまで走れるPANARACERのロングセラータイヤMACH SSというパーツチョイス。

寺尾はブルーとオレンジのツートーンカラーが綺麗なSTORCKのフレームにフロントトリプル、VブレーキのSHIMANO XTR、タイヤはSIMWORKSのSUPER YUMMYというパーツ構成。

兵藤はフルサスバイクROCKY MOUNTAIN ELEMENTにチタンクランクCANE CREEK eeWINGS、フロントシングルのSRAM NXにタイヤはMAXXIS HOLY ROLLERというトレイルまで攻め倒せる構成。

その他、コンパスやエマージェンシーキット、雨具や緊急用のアルミシートなど、出場にあたって携帯しなければいけないものを一式そろえて、これで準備はバッチリです。

ガスコンロや鍋、お酒は必携品ではありませんが、あればOMMの夜がさらに充実すること間違いなし

大会1日目

ブース出店のために前日入りして会場でテント泊していた僕は、朝7時頃に松本からやってきた他のメンバーと合流。

今年初参加のメンバーたちは、元気だけどどこか表情が硬いような気が。僕はそんな様子を見て、初参加だった昨年を思い出していました。

会場で見かける短めのショーツを履いた選手たち。自分たちの方が年齢は若そうなのに、男女問わずliteの選手がショーツからのぞかせるこんがり焼けた血管が浮き出るまで絞られた脚は、アスリートそのもの。頑張って痩せたつもりなのに、目標とする腹筋を割ることすら達成できなかった僕は、他の参加者たちのバキバキの脚を見てビビりまくっていました……。

今年は2回目ということもあり、会場の雰囲気に呑まれることなく、メンバーと合流するなり早速ルートを話し合い、落ち着いて持ち物やバイクのチェックを行うことができました。

昨年の思い出などを談笑していると、表情が硬かった仲間もリラックスしてきたようで、そんな仲間の姿を見て、僕もだんだん気持ちが楽になっていった気がします。

どのポイントを捨てるか、どこから回るか、きっちりと作戦を立てるチームを横目に、僕たちは「とりあえず全地点取るよね」「当たり前じゃないっすか、余裕ですよ」というガバガバな作戦しか立てていなかったのです

準備とポイントやコースについての会議がちょうど終わった頃、ほどなくして第1組がスタートしていきます。イベントを主催するノマディスクの取締役、MCジェフの掛け声で会場全体が「オーエムエム! オーエムエム!」と熱狂していくのを尻目に、スタートゲートからどんどん選手たちが飛び出していきます。

僕のチームは第2組で15分後からのスタートなので、それまでは写真を撮ったり、スタートの雰囲気を味わいながらのんびりと過ごします。

ほぼ最後尾に並んでいた僕たちも気づけば最前列へ、チップ係の僕がゲートの読み取り機にチップをピッと差し込んでいよいよスタート。見送ってくれるOMMスタッフの方やCLAMP代表のタケさんに手を振りながら白馬の街へ向かってペダルをこぎ始めます。

一緒に参加していたCLAMP女子チームと「序盤は飛ばさないだろうから、しばらく一緒に走れたらいいよね」なんて話していましたが、初参加でテンションがぶち上がっていた兵藤が怪獣っぷりを遺憾なく発揮、速いペースに耐えきれず、スタートから10分も経たない内に早速女子チームと分断が起きます。

分断後、キツい林道を自転車を押して登っても笑顔になっちゃうアウトドア好きの女子メンバー、大矢ちゃん。じつは余裕だった説が……?

少し離れたと思ったら、迷って地図を凝視している間に追いつかれて合流、という不毛な千切り合いを繰り返しながら、スタートから1時間が経過、その後の予定ルートの違いにより別行動に。僕たち男子チームは、依然として余裕をぶっこき全ポイントの取得を目指し、アップダウンの激しい北の地域も可能な限り回る作戦でした。

俺たちのプライドが!! バイクから降りることを絶対に許さねえぇぇぇ!!!!!!!!
※写真はイメージです。僕たちではありません。よく分からないプライドだけでどんな急な上りも踏み倒そうとしたのは猛省

当初は北半分を制限時間5時間の半分で取り終える予定でしたが、路面の悪い林道の上りなどで自ら脚をいじめ抜いた結果、北のポイント取り終えようとする時点ですでに3時間以上が経過、さすがに2地点ほどを諦めて南下することに決定しました。

マップ上で北から南の地域に移動するには舗装路を8㎞ほど走る必要があるのですが、その大半が緩い上り坂になっていて、斜度がきついところもあります。

時間がかなり押していたのでペースを上げたかったところですが、ここで想定外の事態が発生。レース開始から先頭で、重たいフルサスでハイペースを刻んだ兵藤の脚には、もはや南下する上り坂を踏むだけの力が残されていませんでした。兵藤の体力は無尽蔵だと思い込んで前を引いてもらっていた僕たちは、すっかり弱った姿を見て、申し訳なくもどこか切ない気持ちに。

普段から大量のカロリーを摂取する兵藤、自販機も少なく思うように補給できない北の地域にすっかりやられていました

チーム全員で一緒に行動することが原則で、勝つことよりも安全にゴールすることの方が大切なOMM、悔しながらに僕たちのチームは初日の上位ランクインを諦めることにしました。無理をして南の地域に挑戦しようとせず、スタート地点周辺のポイントだけでもきっちりと回収、余裕を持ってゴールして2日目に備える作戦に。

ちょうどスタート地点からそう遠くない農道に、昨年と同じ場所で簡単に取れるポイントがあったので、ひとまずそこを取ろうと急な坂を500mほど下っていった矢先、視界に妙なものが写り始めます。

そこには昨年は無く、地図上にも表記されていない電気柵が、見渡す限り広く頑丈に張り巡らされていました。それはもう、生まれたばかりのウリボーでさえ侵入できないほどきっちりと。

「高電圧注意」と仰々しく書かれたゲートのすぐ先には、今年も簡単に取れたはずのポイントが。ここで引き返して回り道をすると大幅なタイムロス、上位を諦めたとはいえさすがにゲートは通り抜けたい、そんな欲望に駆られて「サイクルシューズは電気を通さない素材だから」と焦った寺尾が足先でゲートに触れた瞬間でした。

「うわっ! いってえ!! 脚が! いや、首も痛い!! いたいいたいいたい!!」

シューズのつま先で触れただけなのに、寺尾の全身を稲妻が駆け抜けました。あれはドラクエでいうところの「ライデイン」ぐらいの衝撃に見えました。少なくともただの「デイン」でないことは見ただけで分かりました。

僕達はもはや目の前のポイントなどどうでも良くなり、今のレベルではまだ倒せそうにない「電気柵」という魔物から逃げるように元来た坂を登り、最寄りのセブンイレブンにスイーツという回復薬を求めて泣く泣く駆け込みました。

この日も平和に見えた白馬の自然。レースと他の選手を舐めてかかる若者には容赦なく、その頬を思いっきり引っ叩いたのでした

なけなしの体力で20分も頑張ったのに、ポイントは1点も取れずに全身で電気ショックを受けに行っただけ。その事実は35度の暑さの中、想定よりも走らない26インチMTBを汗だくで踏み倒した僕たち3人の心をへし折るのに十分すぎる破壊力を持っていました。

この時点で残り時間は1時間と少し。

初日の上位ランクインを諦めた悔しさを胸に秘めながらも、ここから僕達は謎の悪あがきを開始してしまいます。電気柵の衝撃で全ての作戦は頭から吹き飛び、もはや「余裕を持ってゴールして2日目に備える」なんて数十分前のことはもう誰も覚えていません。

休憩中のセブンイレブンの目の前を通り過ぎていく必死なのに笑顔な選手たちを見ていると、どこからか湧いてくる「ひょっとしたら俺たちもまだいけるかもしれない」という熱い思い。

カムバックした優勝への情熱に背中を押されるように自転車に飛び乗った僕たち3人は、やっぱり1個でも多く南のポイントを取ろうと考え直し、南の地域へと改めてバイクを進め始めます。

走り始めて少しして兵藤が「脚がかなり回復したみたい。ここからゴールまでは飛ばしていける」という心強い言葉を発してくれます。兵藤よりもまだ体力が残っていそうな僕と寺尾の前を、スタート直後よりも早いペースで引く兵藤の背中を見て、「これは本当にまだ諦めちゃいけない!」と全員のモチベーションが上がったのでした。

誰かと一緒に走ることでもっと強くなれる、自分のためではなく仲間のために最後までペダルを漕ぐんだ。そんなピュアな思いを選手全員が共有しているような気がするのです

強力な兵藤の牽引によって南に到達した僕たちは、川を越え、田園風景の中を駆け回り、少しは迷いながらもなんとかポイントを重ねていきます……が、ここで想定外の事態が。

南の地域まで、全快したと思い込んでハイペースで踏み倒してしまった兵藤の脚には、もはや平坦な農道を走れるだけの力も残されていませんでした。

再度セブンイレブンにピットイン。ゼリーを飲み、ジュースを流し込み、それでも兵藤の脚は、三度目の正直で全快する気配など微塵もありません。それでも時間は残酷なもの、飛ばしてもここまでくるのに20分はかかったはずなのに、残り時間はほぼ20分、このままではタイムアウトは確実。

腹をくくった僕たちは真顔になり、ロードレースでしか見ないようなギリギリの車間距離で、背中を押し合ってゴール地点を必死に目指していきます。こんなときに限って引っかかる赤信号、そんな嫌がらせにもめげず、ひたすら前だけを見てエアロポジションをキープ。

近づいてくる白馬岩岳、まだ信号と上り坂、トンネルもある。残りは5分、間に合うだろうか。

交差点を限界のスピードでコーナリング、最後の上り坂は下を向いて上半身はグラグラ、それでもなんとか登り切って残り1分!

いける! 踏め! 踏めーーーー!!!!!

やっとの思いでたどり着いたゲート。その先には心配そうな顔で待つタケさんと女子チームの2人!

「早く! ピッてしないと!」「はい! ちょっと待ってください!」「……ピッ!」

残り時間、なんと35秒。間に合ってないかも、そんな恐怖が一瞬よぎりましたが、劇的なゴールでなんとかペナルティは回避。待っていた3人も本当に安心した表情で喜んでくれました。

こうして僕達の1日目は終了。得点は530点、順位は7位と昨年と比べると奮いませんでしたが、

それでも、ゴール直後にジェフさんがかけてくれたホースのシャワーは最高に気持ち良かった! こういう些細な心遣いが本当にしみる。あのときは本当にありがとうございました!

さっきまでの疲れもすっかり忘れて気持ち良くなってしまった僕たちは、先にゴールしていた女子チームの2人と冷えたお酒を買って、さっそく労いの乾杯をしたのでした。

その後は、CLAMPの2チーム全員で温泉に行って、焚き火とBBQをして、心ゆくまで初日の夜を楽しみました。

上田から来られたミュージシャンの音楽が心地よく、キャンプファイヤーの火がお酒を片手にグルーブに乗る選手たちをゆらゆらと照らしていたのが、これぞまさに「OMM lite bikeの夜」といった感じで、映像としてとても記憶に残っています。

こうして満足できる走りができた選手はもちろん、そうでなかった選手も笑顔になれる最高のおもてなしによって、最後はみんなが気持ちよくそれぞれのテントへと吸い込まれて行ったのでした。

~Fin~

 

 

以上で前編は終了です。最後までお読み頂きありがとうございました!

次回後編

「けちょんけちょんにやられた2日目」〜あいつらバイクまで乗り換えたのにダメだったってよ〜

に続く!

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長野県伊那市・松本市にある自転車とアウトドアのショップ。 CLAMPは人と人とが遊びでつながる場所であり、そのために必要な道具やつながりの場を提供します

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