インカレ最終日、大学対抗で男子は日大が、女子は日体大がそれぞれ優勝を飾る
Bicycle Club編集部
- 2022年09月05日
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9月1日から4日にかけて鹿児島県の錦江町・南大隅町で「文部科学大臣杯第77回全日本大学対抗選手権自転車競技大会(インカレ)」が開催。
大会最終日となる9月4日には男女ロードレースが開催され、男子はU23全日本ロードチャンピオンの仮屋和駿(日本大学)が、女子は渡部春雅(明治大学)がそれぞれ優勝を飾った。また、ロードレースの結果および前日まで開催されていたトラック競技の結果で争われる大学対抗は、男子は日本大学が、女子は逆転で日本体育大学がそれぞれ総合優勝を飾った。
天候が目まぐるしく変化した大会最終日
大会最終日となる9月4日は、錦江町・南大隅町にまたがる24.2kmの周回コースで男女それぞれのロードレースが開催。
24.2kmの周回コースは、S/F地点通過後すぐに約4kmの上りがあり、細かいアップダウンをこなした後に約2kmの長い下りがあり、最後は約6kmに渡る美しい海岸線を走る、テクニックとパワーの両方が必要なレイアウトが用意された。
前日の予報どおりスタート地点では雨が降り続き、雨の中でのレーススタートとなったが、周回コースの地点によって、また時間によっては晴れ間を見せる瞬間もあり、コースの中でコンディションが異なる難しい状況の中でのレースとなった。
男子個人ロードレースはU23全日本チャンピオンの
仮屋和駿(日本大学)がマッチスプリントを制して初優勝
男子個人ロードレースは155名の選手がスタートラインに並ぶと、定刻どおり8時30分に24.2kmのコースを6周する合計145.2kmのレースがスタート。
スタートしてすぐに上り始めから天野壮悠(同志社大学)らがペースを上げるものの、逃げ集団の形成には至らず、集団のまま下りを終えて海岸線の平坦区間へ。
このまま2周目の上りに突入するかと思われた矢先、中村龍吉(中央大学)のアタックをきっかけに10名ほどの選手が抜け出す。
しかし、この動きも長くは続かず、集団のままレースが進行する中、4周回目の下り区間で落車が発生。この落車に神村泰輝(早稲田大学)や谷内健太(京都産業大学)といった優勝候補の選手たちが巻き込まれ、レースをリタイアすることに。
5周回目を迎え、新たに谷 彰太(日本大学)と林原聖真(明治大学)が先行すると、さらに留目夕陽(中央大学)や仮屋和駿(日本大学)ら数名の選手が追走をかけた状態で最終周回の6周目を迎える。
谷が先頭から離脱し、林原が単独で先行するもコース後半で吸収されると、今度は最後の上り区間で仮屋がアタック。
このアタックに反応できたのは白尾雄大(明治大学)のみで、2人は下り区間を終えても捕まらずに海岸線区間の平坦区間を踏んでいく。
追走集団とは差がつまらず、逃げ切りが確定となった2名がS/F地点に姿を見せると、白尾の後ろからスプリントを開始した仮屋がそのままの勢いでフィニッシュラインを先頭で通過し、6月に開催された全日本選手権で獲得したU23全日本選手権チャンピオンの証であるジャージをまとった状態で仮屋がインカレロード初優勝を飾った。
仮屋は「コース的に、後ろが止まった状態で前が淡々と踏むと差が広がってしまうので、チーム全体としては人数の多い逃げ集団は行かせたくない。できれば5~10人ぐらいの逃げ集団を行かせたいという話をしていました。(レース中盤の落車について)有力どころの選手が巻き込まれる形となってしまい、真剣勝負という意味では残念な形となってしまいました。ただあの落車で集団内が引き締まるような感じもあり、そこから活性化してレースが始まったなという感じです。(チームメイトを含む2名の逃げについて)あのタイミングで集団内には中央大学の選手は留目選手だけだったのに対して、日大としては4人残せていたので、日大としては前々で展開したいという中で谷選手が抜け出してくれたので、そこが良かったかなと思います。(谷選手が先頭から脱落した点について)予想外ではありましたが、勝負所はチームメイトと決めていてそこで行けば勝てると思っていたので、チームメイトと差を詰め、奥の補給所からの上りでアタックしました。僕としては2~3名で、それもスプリントで勝てる選手と一緒に最後の平坦区間に入りたいと思っていたので、作戦どおりに走ることができました。最後は白尾選手と2人でローテーションしながら、この2人でワン・ツーフィニッシュできるように最後まで踏み切りました」とレース全体を振り返る。
全日本選手権とインカレでのロード2冠について仮屋は「僕が1年生のときに4年生だった武山先輩が全日本を取って、インカレでも1位を取って。1個のタイトルではまぐれと言われてしまうこともあるんですけど、2個、3個とタイトルを取ることが強い選手の条件だと思って練習を積んできた。日大全体がそういう雰囲気で練習を積んできました」と語る。
今後については「U23のレースではリザルトを残せているんですが、JCLやUCIレースといったエリートのレースでは全然リザルトが残せていないので、これからまたしっかりと練習をして、来年、再来年とエリートで結果が出せるように頑張りたいです」と仮屋は目標を語ってくれた。
女子個人ロードレースは渡部春雅(明治大学)が独走で優勝を飾る
女子個人ロードレースは18名の選手がスタートラインに並ぶと、こちらも定刻どおり8時33分に24.2kmのコースを3周する72.6kmのレースがスタート。
1周目は特にアタックなどはなく、ペースについていけない選手が遅れる形で2周目の時点で以下の7名が集団に残る。
・岩元杏奈/川口うらら(日本体育大学)
・成海綾香(鹿屋体育大学)
・阿部花梨(順天堂大学)
・太郎田水桜(法政大学)
・渡部春雅(明治大学)
・大蔵こころ(早稲田大学)
レースが動いたのは2周目の下り区間から平坦区間にかけて。
下り区間で渡部、成海、川口の3名が若干先行すると、後ろから他の選手たちが追いついたタイミングで阿部がアタックを決める。
阿部は平坦区間を終えて上り区間の入り口に入っても集団に追いつかれず、良いペースで先行する。
上り区間で岩元、川口、渡部の3名が阿部に追いつき、先頭が4名になると、渡部や川口、岩元がアタックを繰り返しては追いつかれて牽制状態に戻るというのを繰り返す状況に。
上り区間の頂上前に再び渡部がアタックすると岩元が追走し2名が先行する状況に。
岩元は渡部の前に出ないものの、渡部はペースを落とさずに逃げ続けると、コース奥の平坦区間を終えた段階で後続とのタイム差は18秒に。
渡部は岩元を振り切ろうと最後の上り区間でアタックを仕掛けるものの決まらず、2名のままで下り区間へと入る。
このまま2名でのスプリントになるかと思われた矢先、下り区間を終えて平坦区間に先頭が姿を見せると、渡部が岩元に対して若干の差をつけて先行する。
渡部はこのリードを守ろうと平坦区間も全力で踏み続け、岩元との差を徐々に広げていくと、そのまま単独でフィニッシュし、インカレロードを大学生となってから初めて制すこととなった。
渡部は「日体大の2人が有力で、6月に開催された木祖村での個人ロードでは交互にアタックされて潰すという形にされていたので、この2人を徹底マークして、1~2周目は自分からは絶対にいかず、3周目で勝負だと考えていました。3周目にアタックしたんですがなかなかうまくいかず、日体が後ろにつくとローテーションしないので自分だけ力を使うという場面も結構あって難しかったんですが、最後の下りを攻めたらタイム差がついたので、その後の平坦は踏んで踏んでという感じでした。最後の平坦区間では追い付かれるのが怖かったので、後ろは全く見ずに、とにかく姿勢を低くして踏んでいました」とレース全体を振り返る。
普段はあまりガッツポーズを自分からは見せない渡部が今回のフィニッシュでは自然とガッツポーズを見せていたが、「一昨日のオムニアムも勝てなくて、なかなか調子が上がらない時期もあって。調子が悪い時期にはいろいろな人が一緒に走ってくれたり応援してくれたりして支えてくれていたので、今日は絶対に勝ちたいという思いがありました。そんな中で優勝することができてホッとしたという感じと、みんなに恩返しができたかなという感じで、自然とガッツポーズが出ていました」と渡部はガッツポーズの理由を語る。
今後の目標については「今後は国体があって、冬にはシクロクロスを今年も走ります。(今年もシクロクロスの全日本タイトルを狙うか伺うと)頑張ります(笑)」と渡部は最後に語った。
大学対抗、男子は日本大学が、女子は逆転で日本体育大学が優勝
トラック競技を終了した時点では日本大学と中央大学が同点でトップに立っていたが、ロードレースでは日本大学の仮屋和駿が1位、岡本勝哉が10位を獲得したのに対して、中央大学は留目夕陽が8位で完走するのみとなり、日本大学が大学対抗連覇を飾ることとなった。
日本大学の我妻コーチは「総合優勝したいという気持ちが強い選手がこの4年間でしっかりと成長して、最後に結果を残したのかなと思います。これまで日本大学がロードで優勝したときを振り返ると、最初から強気で主導権を握ることが勝率を上げる鍵になっているのかなと思っていまして、選手それぞれが自信をもってチームのために動けたからこの結果になったのかなと思います。(レース前に井上監督や我妻コーチから選手たちへ何か指示を出したの伺うと)何も指示は出していません。選手たちが昨晩決めました」と今年のロードレースを振り返る。
「今回の総合優勝もぎりぎりのところでの優勝でした。昨年はトラックで中央大学さんに14点差をつけられて、この14点をどう追いつこうかと考えて。この1年やってきた中で、いいところ悪いところありましたが結果としてその差を今年は0にできたので、これはトラック出場選手の努力の結果かなと思います」と我妻コーチはこの1年を振り返る。
日本大学として大学対抗連覇を果たした今回のインカレ。来年に向けて我妻コーチにお話を伺うと、「今の3年生たちはチーム改革とかを積極的にやれる子たちが多いので、先輩後輩関係なくチーム一丸となって、大好きな自転車を通じて人間成長できればと思います。その先に総合優勝があればいいなと思っています」と語ってくれた。
一方、女子はトラック競技終了時点では鹿屋体育大学が日本体育大学に対して5点差をつけた状態でトップに立っていたが、ロードレースでは日本体育大学は岩元杏奈が2位、川口うららが3位を獲得したのに対して、鹿屋体育大学は成海綾香が7位と順位を落とす形となり、日本体育大学が逆転で大学対抗を制する形となった。
男子個人ロードレースでの落車について
上記レースレポートにも記載したが、男子個人ロードレースの4周目の下り区間で落車が発生。日本学生自転車競技連盟からの発表では少なくとも13名の選手が落車し、そのうち法政大学の選手がドクターヘリで緊急搬送されたが、残念ながら息を引き取った。日本学生自転車競技連盟は今後、競技の安全性向上に関して再検討と改善を継続していくとのこと。
亡くなられた選手のご冥福を心からお祈りいたします。
以下、日本学生自転車競技連盟からの発表全文
3年ぶりの有観客でのインカレ開催について
今年の鹿児島インカレはエリア制限はあるものの、2019年以来3年ぶりに、そして新型コロナウイルス禍となってからは初めて有観客の中での開催となった。
トラック競技の3日間は父兄をはじめ、各校の関係者が応援に駆けつける姿を見かけるなど、少しずつ日常が戻ってきたことを実感する2022年のインカレ。
多くの関係者が現地に駆けつけ、声援が送れる状況に来年以降なることを期待したい。そして何よりも選手が安全に走れるように検証し、対策がなされることを願うばかりだ。
リザルト
男子個人ロードレース(km)
1位:仮屋和駿(日本大学) 3時間49分48秒
2位:白尾雄大(明治大学) +1秒
3位:山本大智(朝日大学) +23秒
4位:篠﨑蒼平(東京大学)
5位:大仲凜功(早稲田大学)
6位:村上裕二郎(明治大学)
7位:玉城翔太(日本体育大学)
8位:留目夕陽(中央大学)
男子ロード総合成績
1位:明治大学 23点
2位:日本大学 17点
3位:朝日大学 11点
女子個人ロードレース(72.6km)
1位:渡部春雅(明治大学) 2時間12分41秒
2位:岩元杏奈(日本体育大学) +35秒
3位:川口うらら(日本体育大学) +1分25秒
4位:阿部花梨(順天堂大学) +1分39秒
5位:大蔵こころ(早稲田大学) +4分22秒
6位:太郎田水桜(法政大学) +4分24秒
7位:成海綾香(鹿屋体育大学) +6分28秒
女子ロード総合成績
1位:日本体育大学 14点
2位:明治大学 10点
3位:順天堂大学 5点
男子総合最終成績(大学対抗)
1位:日本大学 93点
2位:中央大学 81点
3位:朝日大学 67点
女子総合最終成績(大学対抗)
1位:日本体育大学 48点
2位:鹿屋体育大学 41点
3位:法政大学22点
- BRAND :
- Bicycle Club
- CREDIT :
- TEXT&PHOTO:三井至
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