BRAND

  • FUNQ
  • ランドネ
  • PEAKS
  • フィールドライフ
  • SALT WORLD
  • EVEN
  • Bicycle Club
  • RUNNING style
  • NALU
  • BLADES(ブレード)
  • flick!
  • じゆけんTV
  • buono
  • eBikeLife
  • Kyoto in Tokyo

MEMBER

  • EVEN BOX
  • PEAKS BOX
  • Mt.ランドネ

22歳エヴェネプール衝撃の独走劇でアルカンシェル。新城幸也は39位|UCIロード世界選手権

2022年の世界王者を決める、UCIロード世界選手権は最終日だった925日に男子エリートロードレースを実施。266.9km・獲得標高3945mに及んだ戦いを制したのは、最後の25kmを独走したレムコ・エヴェネプール(ベルギー)。2位以下に2分以上の差をつける圧勝劇だった。日本からただひとりの参戦だった新城幸也は39位。レース終盤までメイン集団に位置して、激戦を走り抜いた。

レース距離266.9km、獲得標高3945mの丘陵コース

オーストラリア南東部・ウロンゴンを舞台に開催してきた大会は、男子エリートロードレースが最終種目として行われた。

266.9kmのコースは、この街の北にあるヘレンズバラをスタートし、6.9kmのニュートラル区間を経て27.7kmのワンウェイルートをはじめに走行。ウロンゴンの街に入ると、34.2kmの大周回「マウント・キーラ・ループ」を1周。標高473mまで上ったのち、ダウヒルを経て再びウロンゴンへ。

そこからは、17.1kmのウロンゴン市街地サーキットを12周回。1周回あたり33カ所のコーナーが待ち受けるテクニカルなレイアウトで、マウント・アスリーとマウント・プレザントの2つの登坂区間も控える。後者は登坂距離1.1km・平均勾配8.6%・最大勾配14%。この頂上からコントロールラインまでは8.5km。最大の勝負どころになると同時に、その後の区間をどうクリアしていくかも見ものとなる。

コースの獲得標高は3945m。丘陵コースのイメージで、パンチャーやアタッカー、独走力に長けた選手に有利に働くのではとの戦前の評判だった。

マチューが前夜にトラブル、30kmしか走れずリタイア

この日1つ目の衝撃が走ったのはリアルスタートしてまもないタイミング。逃げ狙いのアタックがたびたび起きる中、それとはまったく関係しないポジションを走っていたマチュー・ファンデルプール(オランダ)がリタイアしたのだ。30kmほどしか走らず、バイクを降りてしまった。

©️ UCI

優勝候補に挙げられていたマチューだが、トラブルに見舞われたのはレース前夜。ヨーロッパのサイクルメディアによれば、レースに備え早めに就寝していたマチューの部屋を2人の少女が執拗にノック。これに怒ったマチューが両者を突き飛ばし、1人は転倒、もう1人は壁に衝突しヒジに軽度の擦り傷を負ったという。

これを受けて宿泊ホテル側が警察に通報し、24日午後1040分にニューサウスウェールズ州警察がマチューを暴行の容疑で連行。27日に出廷することを条件に保釈されたのは、レース当日の午前4時だったという。

レース前のインタビューでこの事実を認めたマチューは、「始めの数回は我慢していたが、その後あまり良くない形でノックをやめるよう忠告した」とコメント。その後警察へ行ったことについても説明した。

一連の事態を受けて、現在マチューのパスポートは当局が押収しており、オーストラリアの市民権を持たない者のケースについては4週間から6週間の拘留期間が設けられる可能性があるという。

結局、ほとんど寝られないままレースに臨むことになって、勝負にはまったく参加できず。バイクを降りて、レースの行方をチェックしないままコースから引き上げている。

残り25kmでエヴェネプールが独走に持ち込む

驚きの出来事がありながらも、もちろんレースはそのまま進行していく。序盤のワンウェイルートで12人が逃げグループを形成し全体が落ち着くかに思われたが、ウロンゴンを通過してマウント・キーラ・ループに入ったところでメイン集団がペースアップ。これでプロトンが2つに分かれる状態が発生し、優勝候補ではワウト・ファンアールト(ベルギー)やタデイ・ポガチャル(スロベニア)らが前方へ。エヴェネプールや3連覇を狙うジュリアン・アラフィリップ(フランス)、アフリカ勢初のロードのアルカンシエルに期待がかかるビニヤム・ギルマイ(エリトリア)らは後方に待機した。

©️ UCI

それからもアクティブな状況は続き、“第1”プロトンからサムエーレ・バティステッラ(イタリア)、パヴェル・シヴァコフ(フランス)、ピーター・セリー(ベルギー)、ベン・オコーナー、ルーク・プラップ(ともにオーストラリア)が抜け出して逃げグループへの合流を目指す。複数の有力国が前線へと上がっていったことで、後方に取り残された他国は急いで前を追う格好に。ドイツが追走を図っていた“第2”プロトンからは、ニコ・デンツ(ドイツ)とアンドレアス・レックネスン(ノルウェー)がアタックしたが、前への合流はならず。第1プロトンから飛び出した5人が先頭グループに合流した一方で、2つに分かれていたプロトンはやがて一体化。ここから各国が改めてレースを組み立てていくことになった。

©️ UCI

メイン集団に変化が起きたのは、ウロンゴン市街地サーキット残り5周回(8周目)を迎えたところ。フランスのペースアップをきっかけに、再び集団が割れるような流れになって、22選手による第2グループが形成される。有力国はここにエースクラスまたは2番手クラスを確実に送り込み、それほどタイム差はなかった先頭グループに労せず合流。この時点で、ワウトやアラフィリップ、ポガチャルといったスーパーエース級の選手たちは後方待機を選択している。

そうした中、先頭グループにうまく潜り込んでいたのがエヴェネプールだった。人数をそろえる国の多くが複数メンバーを前線に入れていたが、先のブエルタ・ア・エスパーニャを制した若きグランツールレーサーが先手を打つべく残り2周でアタック。これに乗じたのはアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン)だけ。2人になってからはエヴェネプールが引っ張る時間が長いものの、それを気にすることなく先を急ぐ。その後ろでは、マティアス・スケルモース(デンマーク)、ロレンツォ・ロータ(イタリア)、マウロ・シュミット(スイス)、パスカル・エーンコーン(オランダ)が追走グループを形成。さらに後方ではロマン・バルデ(フランス)らが追いかけ、それからようやくメイン集団、という構図になっていた。

決定的な瞬間は、フィニッシュまで25kmを残したタイミングでやってきた。マウント・プレザントでエヴェネプールがルツェンコを突き放すことに成功。こうなるとエヴェネプールは後ろを待つことはなく、逃げ切りに賭けて独走態勢に入った。2分以上のタイム差があるメイン集団では、無線禁止の規則によって前線の情報が入っていなかったファンアールトが登坂区間でアタック。ただ、メンバーを完全に絞り込むまでには至らず、逃げから落ちてきた選手たちを少しずつ拾っていくのが精いっぱい。

©️ Tim De Waele / Getty Images

完全にペースに乗ったエヴェネプールは、最終周回に入ってからは後ろとの差を広げる一方。追走メンバーは上りでエーンコーンが遅れ、3人になったところで単独2番手を走っていたルツェンコをキャッチ。銀メダルと銅メダルを意識した駆け引きへと移っていく。

十二分にリードを得たエヴェネプールは、最後の最後までスピードが衰えず。ブエルタを制した登坂力はもちろん、個人タイムトライアルにも生かされる独走力を武器に、このレースのナンバーワンライダーを完璧なまでに証明。大観衆の待つフィニッシュエリアにやってくると、涙を浮かべながらのウイニングライドを決めてみせた。

©️ Tim De Waele / Getty Images

史上7番目の若さでつかんだマイヨアルカンシエル

この日……いや、今シーズン最大級の“衝撃”を演じたエヴェネプールは、2000125日生まれの22歳。スポーツにおけるバックボーンはサッカーで、名門アンデルレヒトやPSVの下部組織でプレー。将来を嘱望され、U-15ベルギー代表のキャプテンも務めた。プレー中のケガをきっかけに乗り始めた自転車で才能が開花するや、サッカーから完全に競技転向。ロードレースを始めて1年ほどでロード世界選手権のジュニア部門で圧勝。アンダー23を飛び越えて、18歳でドゥクーニンク・クイックステップ(現クイックステップ・アルファヴィニル)入りを果たした。

©️ Tim De Waele / Getty Images

その後も着実にレースで結果を残していたが、20008月のイル・ロンバルディアで橋から落下する大事故で骨盤骨折と右肺挫傷で戦線離脱。復帰に9カ月を要したが、苦難を乗り越えて今季は完全復活。シーズン序盤から勝ち星を重ねて、4月にはリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ、7月にはクラシカ・サン・セバスティアンでそれぞれ独走勝利。その後も絶好調で、ブエルタでキャリア初のグランツール個人総合優勝。今大会では18日に行われた個人タイムトライアルで銅メダルを獲得していた。

自転車王国ベルギーとしては、2012年のフィリップ・ジルベール以来のマイヨアルカンシェル。22244日での世界王座は、史上7番目の若さだ。

©️ Tim De Waele / Getty Images

次回大会は8月にグラスゴーで

エヴェネプールの歓喜から221秒後、銀メダル争いがエキサイト。残り1kmを切って牽制状態になった2番手グループに、上りで遅れていたエーンコーンが猛然と追いついてそのままアタック。これは決まらず、再度牽制になったところへメイン集団からヤン・トラトニク(スロベニア)が飛び出して前を走っていた選手たちをパス。

これで2位が決まったかと思われたが、メイン集団が最後の直線でスプリント態勢に入るとトラトニクらを呑み込んで、なだれ込むようにフィニッシュラインを通過。集団の先頭を押さえたのはクリストフ・ラポルト(フランス)で、マイケル・マシューズ(オーストラリア)が続いた。それぞれ銀メダル、銅メダルを獲得し、ワウトは4位だった。

このほか、ポガチャルがメイン集団内で終えて19位。見せ場を作ったルツェンコは24位、アラフィリップは51位だった。

©️ UCI

日本勢唯一の参戦だった新城は終盤までメイン集団でレースを運び、最終的に31秒差の39位で完走。ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア)やアラフィリップらと同じグループで、実質メイン集団に続く大きなパックだった。

8日間の会期で行われたロード世界選手権はこれで閉幕。次回、2023年大会はUCI(国際自転車競技連合)による初の試みとして、すべての自転車競技が一堂に会した世界選手権としてイギリス・スコットランドのグラスゴーで開催される。ロードレース競技は86日から始まり、最初の決勝種目として男子エリートロードレースが行われる。エヴェネプールは、それまでマイヨアルカンシェルを着てレースを走ることになる。

©️ UCI

マイヨアルカンシェル レムコ・エヴェネプール コメント

©️ Tim De Waele / Getty Images

「夢のようだ。本当に信じられないよ! モニュメント(リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ)とグランツール(ブエルタ)に続いて、世界選手権も勝ってしまった! 今年は夢見ていたすべてのレースで勝てたけど、このようなシーズンが再びやってくるなんて思えない。だからこそ、すべての瞬間を楽しみたいんだ。長いシーズンだったけど、こんな形で締めくくることができて、最高に嬉しい。

アレクセイ(ルツェンコ)と抜け出してからは、すぐに一人になりたいと思っていた。だから上りでアタックし、それでも余裕があったからさらにプッシュし続けた。最終ラップは脚が爆発しそうだったけど、フィニッシュが目前だと思って自信を失うことなく走った。レインボージャージはずっと夢見ていたもので、フィニッシュに到達した瞬間は鳥肌が立ったよ」

UCIロード世界選手権 男子エリートロードレース(266.9km)結果

1 レムコ・エヴェネプール(ベルギー) 6:16’08”

2 クリストフ・ラポルト(フランス)+2’21”

3 マイケル・マシューズ(オーストラリア)

4 ワウト・ファンアールト(ベルギー)

5 マッテオ・トレンティン(イタリア)

6 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー)

7 ペテル・サガン(スロバキア)

8 アルベルト・ベッティオル(イタリア)

9 イーサン・ヘイター(イギリス)

10 マティアス・スケルモース(デンマーク)

39 新城幸也(日本)+3’01”

 

UCIロード世界選手権公式ウェブサイト

SHARE

PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

福光俊介の記事一覧

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

福光俊介の記事一覧

No more pages to load

x