フィリプセンがヴィンゲゴー、トーマスとの三つどもえを制し初優勝!|ツール・ド・フランス さいたまクリテリウム
福光俊介
- 2022年11月06日
3年ぶり開催の「J:COM presents 2022ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」。2022年のツール・ド・フランス本大会で活躍した選手を中心に、地元日本勢が迎え撃った戦いは、終盤に抜け出した3選手による優勝争いに。最後は今年のツールでも2勝を挙げたスプリンター、ヤスパー・フィリプセン(ツール・ド・フランス クリテリウムレジェンズ、ベルギー)が制し、クリテリウムメインレースで初優勝を果たした。
ツール2022ステージ2勝のフィリプセンがスプリント力発揮
2013年に初開催されたツール・ド・フランス さいたまクリテリウムは、ツール本大会と同じA.S.O.(アモリ・スポル・オルガニザシオン)の主催のもと、さいたま新都心を舞台に開催してきた。2019年大会を最後に、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって中止を余儀なくされてきたが、ついに今年、復活開催が実現。3年ぶりに帰ってきた大会は、新型コロナ前と同様にA.S.O.主導のもと、ツールを盛り上げた選手たちを中心に高層ビルが立ち並ぶさいたま新都心のコースを駆け抜けた。
ツール関連イベントとしては、10月30日に「ツール・ド・フランス プルデンシャル・シンガポールクリテリウム」が行われ、その出場選手たちの多くが日本へ。11月5日には前日イベントとしてさまざまなアクティビティを楽しみ、この日の本番へと臨んだ。
そして迎えたメインイベント。UCIワールドチーム、国内招待チーム合わせて14チーム・67人がスタートラインへ。1周約3.5kmのコースを17周回。ヘアピンコーナーや鋭角コーナーが連続するテクニカルなレイアウトをプロトンが駆け抜ける。途中、アリーナ席が設けられたさいたまスーパーアリーナ内を通過する演出も。
レースは序盤から逃げと吸収を繰り返す出入りの激しいものとなり、日本チャンピオンジャージの新城幸也(ツール・ド・フランス クリテリウムレジェンズ)がたびたび前線へ顔を見せる。この流れから、2周目に設定された1回目の中間スプリントポイントを1位通過している。
ポイント賞以外にも、ツール本大会と同様に山岳賞もセッティング。4周目に1回目の山岳ポイントが置かれ、本大会で同賞を獲ったヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィスマ、デンマーク)に代わり繰り上げでマイヨアポワを着て走るシモン・ゲシュケ(コフィディス、ドイツ)が1位で通過した。
変わらず出入りが繰り返される中、6周目に置かれた2回目の中間スプリントポイントはマーク・カヴェンディッシュ(ツール・ド・フランス クリテリウムレジェンズ、イギリス)がトップ通過。ここからカヴェンディッシュとマキシミリアン・ヴァルシャイド(コフィディス、ドイツ)との熾烈なポイント賞争いが始まった。
一時的に5人が先頭に立ち、その流れから8周目に設定された2回目の山岳ポイントへ。先頭グループに入っていたゲシュケがここも1位で押さえて、山岳賞獲得へ近づく。逃げメンバーを捕まえて、やってきた3回目の中間スプリント(10周目)はカヴェンディッシュが2度目の1位通過。ここもやはりヴァルシャイドとの争いを制する格好だった。
この直後に先頭がシャッフルし、7人がメイン集団に対してリードを得る。ここで動いたのはマイヨジョーヌ着用の王者・ヴィンゲゴー。先と同様にゲシュケもここに入り込み、12周目に設定された山岳ポイント3回目へ。本大会で山岳賞を争った2人の“再戦”となり、ここはゲシュケに軍配。実質、この日の山岳賞を決定づけた。
一瞬ペースが緩んだタイミングで飛び出したのは、アレハンドロ・バルベルデ(モビスター チーム、スペイン)とヴィンチェンツォ・ニバリ(アスタナ・カザクスタンチーム、イタリア)。今季限りで現役を引退するレジェンド2人による逃げで、しばしのエモーショナルタイム。14周目にはヴィンゲゴー、フィリプセン、ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)、クリストファー・フルーム(イスラエル・プレミアテック、イギリス)の4人が追走グループを形成するが、先頭2人は10秒ほどの差で先行。
協調して逃げたベテラン2人だったが、リードも16周目まで。追走グループが迫ったのを見た両者が握手をして健闘を称え合う。このレースに限らず、長年のキャリアを互いに祝福する感動のシーンとなった。
いよいよ優勝争い。2選手をキャッチすると同時にトーマスがアタックし、マスがすかさずチェック。さらに、最終周回の鐘が鳴ったのを合図にフィリプセンが前をうかがうと、ヴィンゲゴーが反応。フィリプセン、ヴィンゲゴー、トーマスがまとまり、後続に数秒のリード。3人の逃げ切りが濃厚になった。
運命の最終局面。三者がそれぞれを意識し牽制する中、フィリプセンとトーマスが見合った隙にヴィンゲゴーが抜け出し、残り1kmのフラムルージュを通過。さすがにフィリプセンが見逃さずヴィンゲゴーに続くと、そこからスプリント態勢へと移った。
残り250m、上りを使ってヴィンゲゴーが一番にスプリントを始めると、トーマスが横へ。この2人の動きを冷静に読んだフィリプセンは、スピードの違いを見せてひと息に2人をパス。ツール・ド・フランス さいたまクリテリウム2022の勝利を決めた。
2位はヴィンゲゴー、3位はトーマス。その他各賞は、ポイント賞にはカヴェンディッシュ、山岳賞にはゲシュケ、新人賞にはフィリプセン、敢闘賞には新城、チーム賞はモビスター チーム、日本人チーム賞には愛三工業レーシングチームが獲得した。
クリテリウムメインレース 優勝 ヤスパー・フィリプセン コメント
「すばらしいメンバーがそろったレースで勝つことができてとてもハッピーだ。さいたまについては良い話ばかり耳にしていて、いつか来たいと思っていた。そこで勝てて満足している。トンネルを抜けてからフィニッシュまでの切り替えが難しいと感じていたが、自分の強みであるスプリントを生かすことができたので良かった」
ツール・ド・フランス さいたまクリテリウム クリテリウムメインレース 結果
1 ヤスパー・フィリプセン(ツール・ド・フランス クリテリウムレジェンズ、ベルギー) 1:23’44”
2 ヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィスマ、デンマーク)+0’00”
3 ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)
4 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター チーム、スペイン)+0’04”
5 エンリク・マス(モビスター チーム、スペイン)+0’05”
6 ヴィンチェンツォ・ニバリ(アスタナ・カザクスタンチーム、イタリア)
7 クリストファー・フルーム(イスラエル・プレミアテック、イギリス)+0’07”
8 マーク・カヴェンディッシュ(ツール・ド・フランス クリテリウムレジェンズ、イギリス)+0’24”
9 岡本 隼(愛三工業レーシングチーム)
10 マキシミリアン・ヴァルシャイド(コフィディス、ドイツ)
チームタイムトライアルレースはイスラエル・プレミアテックが優勝
クリテリウムメインレースに先だって行われたチームタイムトライアルレースは、イスラエル・プレミアテックが一番時計を記録。各チーム2~4選手が出走し、チーム内一番手でフィニッシュラインを通過した選手のタイムが採用された。
約3.1kmの走破タイムで競ったレースは、イスラエル・プレミアテックが3分48秒50をマーク。二番時計の宇都宮ブリッツェンに4秒差をつける快勝だった。
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PROFILE
サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。