2024年パリ五輪へ、名伯楽ゲーリー・サットンが語るアメリカナショナルチームの今
中田尚志
- 2022年12月10日
自転車競技では、各国ナショナルチームは東京五輪からパリ五輪へと向かっている。各レースで成績をおさめることで国別の出場権を獲得し、本大会へ出場することができる。
東京五輪トラック種目で2つのメダルを獲得したアメリカナショナルチーム。特にオムニアムで金メダルを獲得したジェニファー・バレンテの活躍は、日本の梶原悠未を抑えての勝利ということもあり記憶に残る試合だった。ここではそのアメリカナショナルチームを指揮したゲーリー・サットンにインタビューを実施した。
後半となる今回の記事ではパリ五輪に向けての展望をお届けする。
▼ゲーリー・サットンスペシャルインタビュー前編「東京五輪編」はコチラ
2024年パリ五輪に向けて強化を進める各国ナショナルチーム
アメリカナショナルチームのパリ五輪準備
ジェニファー・バレンテ選手のオムニアム優勝おめでとうございます!
五輪金メダルを獲得した後も彼女のモチベーションは高いですね
ジェン(ジェニファー)は、人並み外れた自制心と高い士気を持って物事に取り組む能力がある。世界選手権で彼女はいままで何度となく表彰台に立ってきた。そして今回、個人種目で初めてアルカンシェルを手にした。彼女のハードワークが報われた瞬間だった。
彼女にとって昨年の五輪金メダル獲得はスポーツ選手の頂点に立った瞬間。そして今回の世界選手権優勝は遂に自転車界の頂点を手に入れた瞬間だった。
今回の世界選は東京五輪から大きくメンバーを入れ替えてきましたね
予選ラウンドでジェニファー・バレンテを投入した。第一ラウンドではジェニファーは出走せず、シェーナ・パウレスを起用した。ジェニファーは1時間後にエリミネーションに臨まなくてはならないため、回復の時間が欲しかったからだ。
また目的はもうひとつあった。(パリ五輪を目指す)新しいメンバーに出走の機会を与え場数を踏ませることだ。
ジェニファーはエリミネーションで勝利を狙い、パーシュートは若手に場数を踏む機会を与える。選手育成のプロセスとして、この方法が妥当だと判断した。
どのようにしてタレントを発掘してくるのですか?
多くのライダーはコーチの推薦を受けて全米から集まってくる。また何人かは目覚ましいレース結果を残しピックアップされる。それらの選手がタレント発掘キャンプに参加して、基礎的なスキル、走力などを見極められる。そこから彼らの冒険が始まる。
毎回、五輪が終われば何人かが引退し、メンバーは入れ替わる。そのため我々は五輪に向けて新しい才能を見つける必要がある。今回は次回の五輪まで時間がないためすべての仕事を早く行う必要がある。
例えばドイツ。彼らは世界で最も優れたライダーの一人、リサ※を失った。その中で強化を進めなければならない。彼らは上手く変化に対応している。
※リサ・ブラマイヤー:ロード・トラックで全てのTTレースで世界チャンピオンを獲得した選手。東京五輪後に引退
通常五輪に向けての強化はいつ始めるのですか?
基本的には五輪直後から次の五輪に向けての強化を始める。しかし、東京五輪の前からパリ五輪に向けて強化すべき選手に目を向け、一部の強化はすでに始めていた。
この世界選が終わってから2週間後には大きなトレーニングキャンプを開催する。そこでさらにタレントを発掘して強化していく予定だ。強化は常に動いている。
ここまでパリ五輪に向けての手応えは?
上々だ。やらなければならいことはたくさんあるが、選手たちと共に残された1.5年の間に強化を進めることができると考えている。
ありがとうございました。
今後もご活躍をお祈りしています。
(中田尚志)
中田尚志 ピークス・コーチンググループ・ジャパン
ピークス・コーチング・グループ・ジャパン代表。パワートレーニングを主とした自転車競技専門のコーチ。2014年に渡米しハンター・アレンの元でパワートレーニングを学ぶ。
https://peakscoachinggroup.jp/
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- Bicycle Club
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