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レース界を席巻する稀代のクライマー 金子宗平|El PROTAGONISTA

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ロードレースデビューは高3での国体少年の部

高校3年でのハルヒルの総合優勝は思わぬ方向に金子を導いた。通っていた群馬高専の体育教師が偶然自転車競技のコーチであったことをきっかけに、急遽10月の国体出場の打診を受ける。登坂力を買われての大抜擢であったが、なんと全国区の大会で金子は準優勝してしまう。

すると事態は急転し、地元のJプロツアーチームである群馬グリフィンの入団へと進展。2016年から2年間はヒルクライムに参戦しながらも日本のトップリーグでの活動することに。「ロードレースでも優勝したい!」。国体2位の経験が彼の性格にまた新たな火をつけていた。

チームに所属したことで供給されたパワーメーターは、これまでより細かな出力管理が可能になり、自分の新たな可能性を導いていく。当時すでに320W近くのFTPを有していた金子は、そこからロードレースを戦える力を理解した。それと同時に体を研ぎ澄ましてパワーウェイトレオを調整し、ヒルクライムにも挑戦する社会人トップクライマーたちへの憧れも一層強くなっていった。

競技から一度離れ、新たな自分の身体に

2018年の高専卒業後、金子は専攻科への進学を区切りにレース活動から離れ学業に専念。しかし専門過程での勉強に慣れてきた2年目にレース活動の再開を考えるようになった。1年ぶりにまたがったロードバイク、山を上った感触は意外にも軽かった。研究に没頭していた1年間で68㎏あった体は、いつの間にか60㎏に。

「トレーニングを再開すると、体重はさほど増えないまま出力はかつてのFTPの域にすぐに戻ってきたことに驚きました。これが新しい自分の体だと」。

この年の赤城山ヒルクライムでは加藤大貴、池田隆人ら強豪に続き3位に入賞し復調を証明。2020年、東京大学大学院に進学すると、学業の傍らヒルクライムの強豪が集まる群馬のカウ・グンマに入団し、各地のヒルクライムレースに参戦を続けた。そして冒頭の活躍にある全日本選手ロードで彼の名は一躍輪界を轟かせた。

2022年、ついに日本の頂点に立つ

2022年、群馬グリフィンからオファーを受け、古巣に復帰。ヒルクライムの能力向上を目論んでJプロツアーに参戦すると、初戦の西日本ロードクラシックで小林マリノらトッププロと抜け出し5位でゴールに飛び込み、シリーズの暫定上位にランキング。するとまたも金子の気持ちを動かした。「自分の性格上、一度位置したランキングを下げたくないんです!」

2022年、古巣の群馬グリフィンにカムバックしレースを迎える金子選手

翌週の群馬大会でもその強さを発揮し、強風の3位争いのスプリントから抜け出し、とうとうJプロツアーでも表彰台に上がった。いよいよターゲットは、前年度出場できなかった全日本選手権TTに絞られた。

「TTは自分のFTPの高さが生かせるうえに、これまで勉強してきた物理や流体力学の専門知識が走り方やポジション作りに役立つと興味を持っていたんです」

2022年6月25日全日本選手権タイムトライアル当日、不規則な強風が吹き込む天候に選手たちは厳しい表情で空を見上げていた。出走3時間前に行われたU23カテゴリーでチームメイトの留目夕陽が優勝すると、金子はすぐさま彼のデータをパソコンに取り込み、アップダウンとテクニカルなコーナーが続くコースでの出力の解析を開始。

頭のなかで正確なシミュレーションを重ねながら、出走の出番を待つ真剣な面持ち

「自分の試走とデータを重ね、留目君が自分より100W高く踏んでいた下り区間でも2秒しか失っていないことを算出しました。慣性が生きる高速域は極力エアロにこだわり踏むべき箇所を特定し、本番に挑みました」

第一ウェーブで出走した金子はすぐに他を圧倒する中間ラップを刻み始めた。途中の経過発表がされる度にどよめく会場、この快進撃はライバルの更新を最後まで許さず、暫定トップタイム49分05秒61(時速43・99㎞)を打ち出した。そして、主力選手たちが出走する第二ウェーブの選手たちがこのタイムを更新しようと前半焦ることで、後半のタイムの後退を招き、金子の記録は次第に圧倒的な数値となっていく……。すべての選手が走り終えたとき、金子は小石祐馬、新城幸也を下し第25代の全日本TTの覇者に君臨した。

TTのゴール直後、手応えを感じ表情を崩す金子選手

 

2022全日本選手権TTでチームメイト留目選手とU23・エリートをダブル制覇する快挙

「TTでの優勝は僕の力の証明。この経験をもって乗鞍に向かっていきたい。すべてはヒルクライムの頂点に立つために!」。

剛脚と分析力で向かい風をも勝機に変える革命児、金子宗平の走りに注目したい。

ライダープロフィール

群馬グリフィン 金子宗平

PERSONAL DATA

生年月日:1997年11月14日生まれ 埼玉県出身
身長・体重:170㎝・64㎏

HISTORY

2016-2017/群馬グリフィン
2020-現在/カウ・グンマ(ヒルクライムチーム〕
2022年/群馬グリフィン / 05月~ 東京大学自転車競

RESULT

2015年/和歌山国体 少年ロード2 位
2015、2016年/ハルヒル総合優勝
2021年/全日本ロード 7位
2022年/全日本TT 優勝 全日本ロード8位、Jプロツアー群馬大会3位、榛名山ヒルクライム 優勝

 

REPORTER/管 洋介
海外レースで戦績を積み、現在はJエリートツアーチーム、アヴェントゥーラサイクリングを主宰する、プロライダー&フォトグラファー。本誌インプレライダーとしても活躍。

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管洋介

Bicycle Club / 輪界屈指のナイスガイ

管洋介

アジア、アフリカ、スペインなど多くのレースを走ってきたベテランレーサー。アヴェントゥーラサイクリングの選手兼監督を務める傍ら、インプレやカメラマン、スクールコーチなどもこなす。

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