筧 五郎が教える「ヒルクライムレース前にやっておきたいこと」
坂本 大希
- 2023年05月23日
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富士ヒル(Mt.富士ヒルクライム)や乗鞍(マウンテンサイクリングin乗鞍)などヒルクライムレースに向けて日々トレーニングを積んできたサイクリストも多いだろう。そんな人にとっての大きな悩みは、「レースの直前に何をすべきか?」だ。
ここでは富士ヒルや乗鞍など、国内の主要ヒルクライムレースでの優勝経験も豊富な筧 五郎さんに「レース直前に何をすべきか?」そのポイントを聞いてみた。
2週間を2セットに分けて、同じことを繰り返す
レースまで残り2週間を1週間で区切り、同じルーティンを2週間で繰り返すことが大事だと筧さんは言う。
「あと2週間あるなら、まずは1週間ずつ2セットに分けて、レース前週に一度ベストタイムを出すように行動します。そしてそこまでの工程を同じように1週間を繰り返し、レース本番でまた全く同じことをやる。これが大事ですね。だけど、同じことをやっていてもレースの前週は緊張感という点で大きく変わってきます。だから何か足りないと焦ってしまって、普段と違うことをしてしまう人が多い。怪しいトレーニング方法をしたり、変なドリンクを飲んだり、水を抜いてダイエットしてみたり。結果として焦って緊張し、良い結果にはつながらないことが多い。だからこそ、一度成功体験を得た週のルーティンをそっくりそのままやるのが大事です。レースの1週間前はレース時と同じセッティングで、同じ時間にスタートをするように試走する。そのとき、どこにクルマを停めて、アップのためのコースはどこにするかも全てシミュレーションしておく。バイクも含めて何か不具合があった場合にはまだレースまで1週間近くあるのでリカバリーできるしね」
とにかく落ち着いて普段どおりに臨むことがポイントのようだ。
荷物は部屋に広げてすぐに見えるように
また筧さんは荷物についても特徴的な準備方法を行っている。
「荷物について僕がよくやるのは、レーパンやウェア、サングラスやヘルメットなど、全部見えるところに置いておくことです。部屋に置きっぱなしで広げて置いています。バッグに前もって入れておくと、あれ?入れたかな……?となってしまいもう一回出すことになる。だからこそ、余計な不安をしないためにも、目視ですぐ見えるように広げて置いておく。だから1週間ずっと置いていることになるけど(笑)」
変なことをする=結果が出ない
同じことを繰り返して落ち着いて臨むことだ大事だというが、逆に何かすべきことはあるのだろうか。
「やるべきことは特別ないですね。絶対にやっちゃいけないのは変なこと、普段と違うことをやること。逆に言えば、レースまでの1週間で絶対に良いタイムを出すという集中力を、そのまま次週行われるレースに持ってこれればそれだけでいいんだよね。トレーニングを変えたりなんてこのタイミングではやってはダメ。変なことをすると結果が出ない、と思ってくれた方が良いですね。特にレース前はやはり緊張して不安になりやすく、そうすると何か特別なことをしたくなりがちだから気を付けてほしい」
緊張を楽しむこと。これが一番!
それでもどうしてもレース前の緊張だけは拭えない。筧さんでさえもいまだレース前は緊張するとのことだ。どう対処しているのだろうか。
「レース前の緊張を不安につなげるのじゃなく、レースへのわくわく感だと思って緊張ごと楽しんでもらえるのが一番いいよね。俺は家庭と仕事以外に、こんなにも集中して取り組んでいてすごい、のようにとにかくポジティブに考えるようにして楽しんでほしいですね。だから、他人のブログを読むのはやめた方がいいね(笑)。自分を信じて、その瞬間を楽しむことに集中することです」
後悔するなら、いまやっとけ
インタビュー後、帰り際に筧さんから、最後にこれだけは伝えたいと話があった。
「色々と話してきたけど、後悔するならやっとけってことは言っておきたい。後で悔やむと書くから“後悔”という言葉になる。今のこのシチュエーションは今このときにしか体験できないことで、後からは絶対にまた来ない瞬間。だから、やれることはやっとかないとね。だから改めて最後に伝えておきます。後悔するならやっとけ!」
ということでレース直前は、いつもどおりを心掛けて楽しもう。
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PROFILE
坂本 大希
元海上自衛官の経験を持つライター。1年間のドイツ自転車旅行をきっかけに自転車が好きになる。2022年秋ごろよりグラベルイベントに多数参加。2023年のUnbound Gravelで100マイル完走。グラベルジャーナリストになるべく知見を深めるため取材に勤しんでいる。
元海上自衛官の経験を持つライター。1年間のドイツ自転車旅行をきっかけに自転車が好きになる。2022年秋ごろよりグラベルイベントに多数参加。2023年のUnbound Gravelで100マイル完走。グラベルジャーナリストになるべく知見を深めるため取材に勤しんでいる。