ジロ・デ・イタリア完走の新城幸也「プロトンのレベルアップを感じた3週間」と振り返る
福光俊介
- 2023年05月31日
5月28日に閉幕したジロ・デ・イタリアを走り切り、キャリア16回目のグランツール完走を果たした新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)。このほど、国内のサイクルメディアや関係者を対象にオンライン記者会見を行い、走り終えた直後の心境や身の回りに起きていた出来事などをユーモアも交えながら語った。
走るたびに強まったチームの結束。全日本出場は?
日本時間5月30日の夜に行われた記者会見。バーレーン・ヴィクトリアスのベストチーム(チーム総合1位)を記念するTシャツで臨んだ新城は、まず「無事に16回目のグランツールを完走できてうれしい」と笑顔を見せた。その中で感じたこととして、「1年以上グランツールを離れていて(2021年のブエルタ・ア・エスパーニャ以来のグランツール出場だった)、改めて過酷さを実感したし、プロトン全体のレベルアップも感じた。良い刺激になった3週間だった」と振り返った。
これまで、自身が2度獲得したツール・ド・フランスのステージ敢闘賞のほか、チーム総合、チームメートのジャージ獲得など、何度もポディウムに登壇または登壇する選手に立ち会ってきたが、ポイント賞が所属チームにもたらされたことは初めてだという。今大会では新型コロナウイルス感染者が続発。その他アクシデントも含め、途中離脱する選手が多かった中、出走8人全員が完走したのはバーレーン・ヴィクトリアスとユンボ・ヴィスマの2チームだけだったことにも触れ、「スタッフや選手ひとりひとりの取り組みあってのもの」と胸を張った。
チームは、ダミアーノ・カルーゾ(イタリア)が個人総合4位に入り、ジョナサン・ミラン(イタリア)はステージ1勝に加えてポイント賞のマリア・チクラミーノを獲得。前記のとおりチーム総合1位も収め、改めてチーム力・組織力の高さを示す大会となった。
そんな中、開幕直前のメンバー変更で急きょイタリア入りしレースに臨んだ新城。「1週目は準備不足だったが、2週目から少しずつ調子が上がっていった。その頃は雨続きで、乾いた靴で走れたことがないような状態。それを乗り越えて、3週目でようやく自分のリズムで走れるようになった」とみずからの走りを総括。事情が事情ゆえ、最初から最後までベストコンディションでは走れなかったというが、山岳比重が高まった大会後半にかけてはエーススプリンターのミランをタイムアウトさせることなく走れるよう、常にトップとのタイム差を計算しながらステージを進行。経験豊富なベテランとして、若い選手たちを引っ張った。
関連して、軽い装備で雨風をしのげるウェアの進化や、日々結束力が高まっていったチームのムードも口に。どんなことがあってもチームメートに対してマイナスな感情を持つことはなかったと言い、「ミランが負けるたびに謝ってくれたけど、みんな勝ちたいと思って全力で走った結果だから、彼を責めることなど一切なかった」。また、総合エースのカルーゾとは生活リズムからまったく違っていたそうで、「彼は山岳ステージで上位に入るから、僕たちが走り終わる頃にはすでにホテルへ向かっている。そして、僕たちがレースを終えてホテルに着く頃には、彼は夕食を終えている。彼に会えるのは朝のチームバスだけだった」との裏話も。
ジロを走り終えた直後で、この先のレーススケジュールについては未定。出場となれば連覇がかかる全日本選手権ロードレースも、「チームと相談して決める」と述べた。
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PROFILE
サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。