山本大喜が勝利し、日本ロード史上初の兄弟でチャンピオン｜ロードレース全日本選手権

6月23日から25日の3日間、静岡県伊豆市にある日本サイクルスポーツセンター（以下、日本CSC）で、男女エリートおよびU23、マスターズ、パラサイクリングカテゴリーのロードレース全日本選手権が開催された。
大会最終日となる6月25日は男女マスターズおよび男子エリートのロードレースが開催され、男子エリートでは2周目に形成された逃げ集団のメンバーが最後まで逃げ切り、逃げ集団から残り2周で飛び出した山本大喜（JCL TEAM UKYO）が悲願のロードレース全日本チャンピオンのタイトルを獲得した。

昨年同様、新城幸也ら豪華メンバーがそろった男子エリート

6月23日から25日の3日間、静岡県伊豆市にある日本サイクルスポーツセンター（以下、日本CSC）で、男女エリートおよびU23、マスターズ、パラサイクリングカテゴリーのロードレース全日本選手権が開催。
大会最終日となる6月25日は、3日間に及んだ熱戦の最終レースとして男子エリートのレースが開催された。

男子エリートには132名の選手がエントリーし、2名がDNSという形で130名の選手がスタートラインに並ぶ。
日本人唯一のワールドツアー所属選手であり、ディフェンディングチャンピオンである新城幸也（バーレーン・ヴィクトリアス）をはじめ、一昨年のチャンピオンである草場啓吾（愛三工業レーシングチーム）や、U23世代の選手を含め所属する日本人選手6名全員が参戦となったEFエデュケーション・NIPPOディベロップメントチーム、一昨日開催された個人タイムトライアルでも大活躍となったJCL TEAM UKYO勢ら多くの日本人トップライダーたちが参戦し、昨年同様豪華な選手たちによるハイレベルなレースが展開されることが予想された。

スタートからハイスピードで進む中、2周目に8名の勝ち逃げ集団が形成される

昨年の同大会でトップ10に入った選手たちを先頭に、130名の選手がスタートラインにつくと、レースは11時00分にスタート。

1周目から13分20秒台のラップタイムと、昨日開催された男子U23の最速ラップタイムに迫るラップタイムでレースがスタートすると、2周目には今大会全体を通じて最速となる12分40秒台のラップタイムを出すという序盤からハイスピードなレースが展開される。

そんな展開となった2周目に9名の選手が集団から抜け出し、1名がドロップする形で以下の8名がメイン集団とのタイム差を1分以上つけて先行する。
・石上優大/渡邊翔太郎（愛三工業レーシングチーム）
・岡 篤志/山本大喜（JCL TEAM UKYO）
・橋川 丈（EFエデュケーション・NIPPOディベロップメントチーム）
・山本元喜（キナンレーシングチーム）
・井上文成（シマノレーシング）
・石井祥平（アーティファクトレーシングチーム）

石上は「勝つためにこの逃げを選択しました」とレース後に語り、山本大喜も「チームの戦略としては僕が序盤から逃げに乗る予定はありませんでしたが、兄（元喜）のチェックに入ったら良いメンバーの逃げだったので、このまま行こうと思って逃げに乗りました」、アマチュア選手として唯一逃げに入った石井も「あのメンバーだったら勝ち逃げになると思ったので」と、逃げに乗ったメンバーの多くが勝ち逃げになることを意識して8名の逃げ集団を形成するに至った。

新城や留目らによるペースアップにより、メイン集団の人数は徐々に減っていく

愛三工業レーシングチームやJCL TEAM UKYO、EFエデュケーション・NIPPOディベロップメントチーム、キナンレーシングチーム、シマノレーシングとメンバーを多く抱え、かつレースを動かす力を持ったチームのメンバーが逃げ集団に選手を送り込んだこともあり、逃げ集団とメイン集団のタイム差はどんどん広がっていく。

途中、永山貴浩（備後しまなみeNShare）や鳴海 颯（ソフェル・サヴィーニ・デュー・オムズ）がメイン集団から飛び出すものの、逃げ集団とのタイム差が広がり過ぎていたこともあり、追走という形で逃げ集団とメイン集団の間に位置する形となる。

メイン集団内では宇都宮ブリッツェンが引くものの、選手同士や会話する声も聞こえ、選手がコースいっぱいに広がるほどペースが落ちると、組織的にレースをコントロールするチームがいないこともあってか、6周目には逃げ集団とのタイム差が5分以上に広がる。

タイム差が広がり過ぎたこともあってか、7周目には新城がラップタイムを2分近く上げる強烈なペースアップを図る。この動きでメイン集団の人数が60人ほどにまで減ると、逃げ集団も14分台中盤から後半のラップタイムを刻み、タイム差は3分20秒程度にまで縮まる。

その後も新城がアタックを何度も仕掛ける場面や、留目夕陽らによるペースアップがあり、タイム差が徐々に縮まっていく。

タイム差が徐々に縮まっていくのと合わせてメイン集団の人数はさらに人数を減らしていき、メイン集団は18名にまで絞られる。

石上優大のアタックをきっかけに山本大喜が独走

逃げ集団からも1名、また1名とドロップする選手が現れ始め、13周目を終えた段階で先頭は以下の4名に。
・岡 篤志/山本大喜（JCL TEAM UKYO）
・石上優大（愛三工業レーシングチーム）
・山本元喜（キナンレーシングチーム）

15周目以降徐々に逃げ集団のラップタイムが落ち始めると、メイン集団から留目が単独で飛び出す。

「タイム差も縮まってきていて。メイン集団の中でEFは僕と門田さんがいて、僕が集団にキャッチされても門田さんが勝てると思ったので」と留目は18名のメイン集団内でチームメイトがいるメリットを生かそうと飛び出す。

しかし、残り18周目に留目はメイン集団に吸収され、この動きは不発に終わってしまう。

一方4名の逃げ集団は残り2周でもメイン集団と1分40秒ほどのタイム差をつけ先行する。逃げ切りが濃厚となった逃げ集団から石上が単独でアタックし、岡がチェックに入る形で逃げ集団内の協調が崩れ、2023年のロードレース全日本選手権・男子エリートのレースの終盤戦が始まる。

石上、岡を山本兄弟がキャッチすると、今度は弟の山本大喜がカウンターでアタック。兄の山本元喜が追走を仕掛けるものの、山本大喜との差は広がってしまう。山本大喜はそのまま独走で最終周回へと突入する。

山本大喜が勝利し、2位は岡とJCL TEAM UKYOはワン・ツー
さらに山本兄弟ともに日本チャンピオンに輝く

山本大喜が単独先頭となる中、岡が山本元喜に追いつき、セカンドグループは山本元喜と岡の2名に。
山本大喜にトラブルが起き、セカンドグループが追いついたとしても岡がカウンターで勝負できるという、JCL TEAM UKYOとして盤石の体制でレースは最終周回を迎える。

山本大喜は最後の2周回を13分18秒、13分28秒と、3周目以降では最速ラップとなるラップタイムでまとめ、独走状態でホームストレートへと姿を見せる。

山本大喜は最後の最後まで力強くペダルを踏みこみ、フィニッシュライン手前でようやく両手を広げる。
山本大喜は何度も何度も握りこぶしを上げ、ロードレース全日本選手権・男子エリートでの初優勝を達成した喜びを爆発させる。

岡が先行する形でセカンドグループがホームストレートに姿を見せると、そのまま岡がフィニッシュラインを通過し、JCL TEAM UKYOとしてワン・ツーフィニッシュを達成。3位には山本元喜が入り、4位には最後まで粘った石上が、注目された新城は8位でのフィニッシュとなった。

JCL TEAM UKYOとしては一昨日開催された個人タイムトライアルに続き、2枚目の全日本チャンピオンジャージを獲得。世界へと挑戦するために結成されたチームとして最高の結果を残すことができたのではないだろうか。

また3位になった山本大喜の兄、山本元喜は2018年に日本チャンピオンになっており、これで山本兄弟はそろって日本チャンピオンを獲得したことになる。

いっぽう8位でフィニッシュした新城。レース後に「最初から勇気をもって逃げに加わったメンバーが勝ったことは称賛に値します」とコメント。ただ、取り残されたメイン集団で同調できたのが宇都宮ブリッツェンだけだったことについては不満を漏らしつつ、自身も急きょ決まったジロ・デ・イタリアから、外せないアジア選手権を戦ってきたため、この全日本選手権にはあまりよいコンディションで挑めていなかったことを明かした。

全日本選手権 個人ロードレース　リザルト

男子エリート

1位　山本大喜（JCL TEAM UKYO）4:42:14
2位　岡 篤志（JCL TEAM UKYO）＋1:33
3位　山本元喜（キナンレーシングチーム）＋1:38
4位　石上優大（愛三工業レーシングチーム）　＋2:53
5位　門田祐輔（EF Education-NIPPO）＋3:02
6位　金子宗平（群馬グリフィンレーシングチーム）＋3:05
7位　草場啓吾(愛三工業レーシングチーム) +3:51
8位　新城幸也（Team Bahrain Victorious）＋3:51
9位　谷 順成（宇都宮ブリッツェン）＋4:46
10位 阿曽圭佑（ヴィクトワール広島）+5:10

全日本選手権公式サイト