瀬戸内エリアから世界へ、自転車文化の先進地として「Setouchi Vélo」が国内外へ発信
Bicycle Club編集部
- 2023年06月30日
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昨年10月に発足した官民を跨いだSetouchi Vélo(セトウチ ヴェロ)協議会が活動を開始し、瀬戸内地域でのサイクリングの普及・促進を推進、国内外への情報発信を軸に活動を行っている。ここでは4月26日には愛媛県今治市で、さらに5月22日には兵庫県南あわじ市でそれぞれ行われたトライアルライドとミーティングの内容についてお届けする。
Setouchi Véloはルートだけではなく、自転車文化を創出するエリアに
Setouchi Vélo協議会は瀬戸内圏全体をサイクリングで自在に周遊できる、世界に誇るサイクリングの推進エリアとするため、兵庫県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、といった瀬戸内圏8県と中四国の経済連合会、国土交通省の地方整備局や地方運輸局など約30の団体が集まり設置された。その構想として欧州全土を結ぶEuro Véloのようなネットワーク、さらにサイクリングルートといった「線」だけではなく瀬戸内エリアが自転車文化の先進地となるような「面」での地域活動を目指したプラットフォームだ。
Setouchi Véloに関する記事こちら
自治体関係者が実際に乗ることで自転車の魅力を体験
Setouchi Vélo協議会では各市町村や県の担当者など関係者が、実際にeバイクでのトライアルライドで自転車の乗り方を習い、ツアーで体験。言葉でしかイメージできないサイクルツーリズムを実際にeバイクを使って体験することで、より具体的な政策提案につなげていくことになる。
「eバイクに乗ってみるとアップダウンのある所でも楽で、もう少し普及してもいいかなと思いますね。ただ、一方では道が狭い箇所では怖さを感じましたし、自転車だと道路のコンディションがよくわかりました。南あわじ市に限らず淡路島には魅力的な裏道が多くあるので、工夫して自転車に適した道を繋いでルートにすることができれば、自転車にとっても自動車にとっても走りやすい環境が実現できるのではないかと思います」と南あわじ市守本憲弘市長もライド後にコメントし、サイクリングの楽しさと同時に今後のインフラの課題、生かし方などを具体的に体感することになった。
今回のトライアルライドではメイン会場となるホテル&リゾーツ南淡路からスタートし、南淡路「道の駅 うずしお in うずまち テラス」、さらに標高150m近くある「うずの丘 大鳴門橋記念館」まで上り、ホテル&リゾーツ 南淡路へ戻る10kmほどの行程を走った。
守本市長によると「南あわじ市はお隣の鳴門市と東かがわ市とは以前から連携しています。今はバスでサイクリストの皆様に鳴門海峡をわたっていただくプロジェクトを共同で行っていますが、今後は兵庫県と徳島県が大鳴門橋の下層に自転車道を整備する計画をしています。実現すればよりシームレスにつながり、自転車で渦潮を見ることもできるようになります。大鳴門橋自転車道の完成により、淡路島がサイクリストにとって楽しい環境が生まれることは間違いありません」と今後の大鳴門橋自転車道の完成によって発展していく瀬戸内エリアに期待を寄せている。
シンポジウムでは先端事例に加え、地域の具体事例も紹介
トライアルライドのあとのミーティングでは有識者による先端事例と開催エリアの担当者による地域の事例紹介が行われた。
今治で行われた第1回目のミーティングではSetouchi Véloの会長でもある愛媛県の中村時弘知事も参加するなか、国土交通省道路局金籠史彦参事官の基調講演、プロサイクリストの門田基志さんによる「Setouchi Véloの可能性」、愛媛県観光スポーツ文化部観光交流局自転車新文化推進課藤原康芳さんによる安全・マナー向上施策についての取り組みについての事例紹介が行われた。
こうした事例紹介を通じて、行政の担当者間での垣根を越えた交流が生まれ、県や市町村といった境界を越えた広域連携が生まれることになる。
2回目となった南あわじ市のミーティングでは、徳島大学山中英生社会産業理工学研究部長による基調講演、本州四国連絡高速道路株式会社森 毅彦常務からの発表が行われた。
クルマや地域住民と自転車利用者とが相互理解、シェア・ザ・ロードが重要に
その後のパネルディスカッションが行われ、コーディネーターの門田基志さん、パネリストとして守本憲弘南あわじ市長、徳島大学山中英生社会産業理工学研究部長、本州四国連絡高速道路株式会社森 毅彦常務、サイクルスポーツ中島丈博編集長、バイシクルクラブ(本誌)山口博久編集長が登壇した。テーマは「Setouchi Vélo今後の展開の可能性」についてで、アワイチがスポーツ現状に関する課題も含め、Setouchi Véloの取り組みについて、ルートだけではなく、グルメなどの地域の魅力を生かしたサイクルツーリズム、そして地域に根差した自転車文化の醸成について議論を深めた。
パネルディスカッションではSetouchi Véloでは自転車文化の先進エリアとなるために必要な事項として、シェア・ザ・ロードといった話題も議論されたのが新しい点だ。シェア・ザ・ロードとは道の幅員が少ないときに、クルマと自転車が双方譲り合って道を使うための標語で、瀬戸内エリアが自転車文化の先進地となるためには、欠かせない考えだ。というのも従来のルートの設定、道路や休憩設備などのハードに論点が行きがちだが、クルマや地域住民と自転車利用者とが相互理解していくことも重要な点だからだ。
実際に淡路島を走ると感じられるのがサイクリストに対して優しいドライバーがすでに多いことだ。いままで以上に地域住民が自転車を楽しむことができれば、その結果、地域の自転車走行空間がより充実し、さらに外から訪れる自転車利用者に対しても優しく接することができることになる。またそういった啓発は、自転車に関わりを持ち始める幼少期の頃から地域一体となって安全教育を進めていくことが大切になってくるだろう。
今後Setouchi Véloが具体化してく上で、クルマや地域住民と自転車利用者とが相互理解にも注目していきたい。
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