ロードサイクリングの安全性向上を目指し、UCIなど5団体が共同で新組織「SafeR」を設立
福光俊介
- 2023年07月02日
国際自転車競技連合(UCI)、自転車競技主催者協会(AIOCC)、プロサイクリング協会(AIGCP)、女子サイクリングチーム協会(UNIO)、プロ選手会ならびに女子プロ選手会(CPA)の5団体は6月30日、スペイン・ビルバオのツール・ド・フランス開幕地で開かれた記者会見で、新組織「SafeR(SafeRoadcycling)」の創設を発表した。これはUCIおよび全スポーツ関係者にとって関心が高まっている、UCI国際ロードカレンダーにおける競技の安全性の向上を目指していくもの。
主催者が設定するレースコースの安全性を分析し未然に重大事故を防ぐ
SafeRの創設は、プロロードシーンにおける重大事故の増加傾向に直接対応するものになるという。レースにおける安全性をより一層確保していくため、構造的かつ系統的なアプローチを施していくこととなる。
新組織の運営に際しては、レース主催者・ライダー・チーム・UCIが共同で資金を提供し、以下の責任を負うことになる。
・UCIワールドツアー、同ウィメンズワールドツアー、同プロシリーズのレースにおけるルート設定におけるリスクを分析
・プロロードサイクリング関係者、特にUCIに対して安全に関するアドバイスを行っていく
・レース主催者およびチーム(ライダー含む)の安全監査を実施
・四半期ごとの安全性報告書の発行
この取り組みのベースとなるのは、2021年にUCIが導入した「Rider Safety – New Regulations in 2021 – Explanation Guide for Organisers, Teams and Riders」。また、同年にUCIがヘント大学(ベルギー)と提携して設置した「レースインシデントデータベース」に、SafeRが直接アクセスできるようにすることも明らかになっている。
UCIワールドツアーでは、6月15日のツール・ド・スイス第5ステージでジーノ・メーダー(バーレーン・ヴィクトリアス、スイス・享年26歳)がダウンヒル中、時速100kmを超えていたと思われる状況でコースアウトし落車。その影響で翌日に息を引き取る悲しい出来事が起こっている。これまでにも、レース規模の大小・レベルの高低問わず、激しいクラッシュによって選手生命に影響する事態が発生している。それらを未然に防ぎ、安全かつエキサイティングなレースシーンの構築をSafeRには求められることになる。
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PROFILE
サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。