2024年パリ五輪ロードレースのルートが決定! 史上最長のレース距離に
福光俊介
- 2024年07月26日
INDEX
2024年パリ五輪組織委員会は7月4日、同大会自転車競技ロードレースと個人タイムトライアルのルートを発表した。ロードレースは史上最長の距離で争われるほか、個人タイムトライアルは初めてとなる男女同コースで競うこととなる。
パリ2024自転車競技カレンダーと配信予定はこちら▼
パリの名所をめぐるロングコース
この発表は、同日に行われたツール・ド・フランス第4ステージ終了後に、パリ五輪組織委員長のトニー・エスタンゲ氏によってなされた。レースのコンセプトは、「挑戦的かつすべての人に開かれている」という同大会の理念に沿ったものだという。
ロードレースは男子が273km、女子が158kmに設定。長距離であるだけでなく、アップダウンが多く、終盤はパリ市街地の一部であるモンマントルの丘や石畳の路面、鋭角コーナーなどテクニカルなルーティングが特徴的。
具体的には、トロカデロ広場をスタートして、エッフェル塔、セーヌ川、アンヴァリッド、カルチエ・ラタンをめぐる5kmのパレード走行を経て、ルー通りでアクチュアルスタート。その後男子は13カ所の登坂区間にチャレンジし、女子は9つ上ることになる。
パリ西部のワンウェイルートを男子は225km、女子は110kmカバーし、ルーブル美術館やガルニエ宮の前を通ってパリの中心部へ。ここから最後の約50kmで、テクニカルなコーナーや石畳の上を走る18.4kmの周回コースを3回めぐる。特に重要となるモンマントルの丘は、登坂距離1kmで平均勾配は6.5%。特に最終周回は確実にアタックがかかる場所になるだろう。
最後のモンマントルを通過すると、残りは9.5km。最終局面はセーヌ川にかかるイエナ橋からトロカデロ庭園に向かう230mの直線。数人または集団で到達すれば、ここでスプリントフィニッシュとなる。
エスタンゲ氏によれば、「ベルサイユ宮殿やシュヴルーズ渓谷、ヴァンセンヌの森、アンヴァリッド、エッフェル塔などのスケールに驚くことでしょう」とコースセッティングに自信を見せている。
個人TTは平坦勝負
個人タイムトライアルは、アンヴァリッドのエスプラナードを出発し、32.4kmの平坦ルートを走行。サンジェルマン・デ・プレ地区を抜け、セーヌ川にかかるシュリー橋を通過。バスティーユ広場を過ぎると、ヴァンセンヌの森に入り、いくつかのコーナーを抜けて往路と同じ道を逆走。最後はセーヌ川にかかるアレクサンドル3世橋にフィニッシュする。
マチューも満足のコース設定
コース発表を受け、マチュー・ファンデルプール(アルペシン・ドゥクーニンク、オランダ)は地元メディアに対し、「私にぴったりのコースだと思う」とコメント。「フランドル地方のクラシックレースに似たようなレースになるかもしれないね」と続けた。
変化に富み、地脚が試されるであろうコースでの戦いは高い注目を集めることだろう。
パリ五輪 自転車競技ロードレース スケジュール
7月27日(土)
14:30〜16:00 女子個人タイムトライアル
16:30〜18:00 男子個人タイムトライアル
8月3日(土)
11:00〜18:15 男子ロードレース
8月4日(日)
14:00〜18:45 女子ロードレース
配信スケジュールはこちら
ポガチャルは五輪欠場 ワウト、レムコ、アラフィリップは順当に代表入り
(2024年7月25日追記)
6月から7月にかけて出場国の代表選手が続々と決定。先のツール・ド・フランスで活躍した選手の多くも、五輪へと切り替えて順次パリの選手村へと入っている。
男子ロードレース最大出場枠「4」を獲得している国では、ベルギーがレムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ)、ワウト・ファンアールト(ヴィスマ・リースアバイク)が順当にメンバー入り。両選手は個人タイムトライアルとあわせ2種目に出場する。
7月8日に代表選手を発表したフランスは、ジュリアン・アラフィリップ(スーダル・クイックステップ)を絶対エースに据える方針。スピードのあるクリストフ・ラポルト(ヴィスマ・リースアバイク)やヴァランタン・マデュアス(グルパマ・エフデジ)に加え、ツール第2ステージを勝ったケヴィン・ヴォークラン(アルケア・B&Bホテルズ)が抜擢された。
ロードレース一本に絞って金メダル獲得を狙うマチュー・ファンデルプール(アルペシン・ドゥクーニンク)ももちろんオランダ代表入り。ツールでアフリカ系黒色人種の選手として初めてポイント賞を獲得したビニヤム・ギルマイ(アンテルマルシェ・ワンティ)も、唯一のエリトリア代表として出走を予定する。
一方で、ジロ・デ・イタリアとツールの2冠「ダブル・ツール」を達成したタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)は、グランツール連戦の疲労を理由に五輪出場を取りやめることを表明。ツールで山岳賞を獲ったリチャル・カラパス(EFエデュケーション・イージーポスト、エクアドル)は代表選出されず、同国からはヨナタン・ナルバエス(イネオス・グレナディアーズ)が出場。これで、前回東京五輪ロードレースの金・銅メダル獲得者がパリのスタートラインには立たないこととなった。
日本からは男子ロードレースに新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)、女子ロードレースに與那嶺恵理(Laboral Kutxa – Fundacion Euskadi)が代表に選出されている。
男子ロードはレムコ、ワウト、マチュー、アラフィリップが軸との見方
(8月2日追記)
1週間前には個人タイムトライアルで沸いたパリ市内だが、いよいよロードレースが実施される。男子は8月3日、女子は8月4日にそれぞれパリ市内を舞台にレースが展開される。
五輪ロードにはタデイ・ポガチャルとヨナス・ヴィンゲゴーのツール・ド・フランス個人総合1位・2位ライダーが参戦しない。そうした中で、事前の現地報道では個人タイムトライアルを制したレムコ・エヴェネプールとワウト・ファンアールトのベルギーコンビ、今大会はロード一本に賭けるマチュー・ファンデルプール(オランダ)、そして地元の期待を一身に背負うジュリアン・アラフィリップ(フランス)の4選手が中心のレースになると見られている。
個人TTでワン・スリーフィニッシュを飾ったレムコとワウトには、ティシュ・べノートとヤスペル・ストゥイヴェンが強力アシストとして支えることになる。ロード種目2冠がかかるレムコは「展開次第で誰でも勝負ができる。チームとして誰が勝っても問題はない」と、状況次第でアシストや抑え役に回ることを示唆。また、ストゥイヴェンが絶好調との情報もあり、本命2人に変わるアウトサイダーとして優勝争いに加わってくる可能性もゼロではない。
マチューは「優勝候補に挙げられるのは悪いことではない」と自身の立場を前向きに捉える。昨年はツール後のスーパー世界選手権で圧倒的な走りを見せたが、今回はその時ほどの脚の状態ではないことを認めている。ただ、調整はスーパー世界選手権とほぼ同様の流れを汲んだとしており、直前で一気に仕上がってくることもありそうだ。
ツールを回避して五輪にフォーカスしてくるアラフィリップは、そのツール期間中はスロバキアで、パリがTTに沸いている間はチェコでステージレースに参戦し調整。それぞれステージ1勝ずつを挙げ、上々の仕上がりだ。アラフィリップはマチューとは対照的に、「自分が優勝候補とは思っていない」としながらも、モチベーション高く本番を迎えられることを強調。地元の絶対エースとして臨む公算で、アシストにはクリストフ・ラポルト、ヴァランタン・マデュアス、ケヴィン・ヴォークランが就く。
現地8月1日には、コース終盤の最重要区間であるモンマントルの周回コースを試走する機会が設けられた。交通規制の関係上、走行スピードも時速30kmまでと制限された中、アラフィリップはコースチェックを実施。一方で、マチューはコースには行かず、パリ南西部のチームホテル近辺でトレーニングを行なっている。レース直前の取り組みが本番でどう作用するかも見ものといえそうだ。
なお、出場選手は男女ともに90選手。おおむねUCI国別ランキングに基づいて出場枠が設定され、男子はベルギー、スロベニア、フランス、デンマーク、イギリスに最大出場数の4枠が割り当てられている。マチュー擁するオランダは、スペインやイタリア、オーストラリアなどと同じく3枠。
日本からは男子が新城幸也、女子が與那嶺恵理と、ワールドクラスの2人がパリのコースに挑む。
男女とも、レース当日の天候は曇り、気温は26〜27度との予報。個人TTのときのような雨の心配はなく、風も穏やかと見られている。
コース詳細はこちら
SHARE
PROFILE
サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。