サイクリング中に熊に遭遇。命をつないだ対処法とその体験談を聞いてみた
Bicycle Club編集部
- 2023年08月22日
日本には野生の熊が生息しており、この7月には新潟でクマ出没警戒注意報が出されたほか、8月に入ってからも岐阜や秋田など各地で熊による被害が報告されている。じつは山の中を走るこの多いサイクリング中に熊に出会うという情報も寄せられており、注意が必要だ。ただ、クマ出没注意の看板を見ても物珍しく写真に収めるくらいの人も多いのではないか。しかし、実際に熊はいて、遭遇すると非常に危険な目にあうこともある。今回、実際にサイクリング中に熊被害にあったAさん(男性、40代)から話を聞いたので紹介する。
いつもどおり国道わきの旧道を走っていたら、突如熊と遭遇した
Aさんは2023年6月に東日本の某地域で熊に襲われた。その約3年前にこの地域に引っ越してきたAさんは、地元の人から熊の話と警戒のために熊鈴など音を鳴らすことを怠らないようアドバイスをうけていた。
「今までもMTBでトレイルとかよく走っていたけど、前に住んでいた地域だと熊がいるなんて考えたことも無かったんです。だからこの場所にきて、熊がいるから、とは聞いても注意はしていましたけど実感はあまりなく。それで最初2年間は熊鈴をサドルバッグにつけてたんですが、今年から外しちゃったんですよね。気の緩みでした」
クルマが嫌なので林道ツーリングを楽しんでいるというAさん。当日も早朝5時30分に友人と集合しライドを楽しんでいたそうだ。
「峠を越えるのに国道を走るんですが、クルマ通りが多くてトンネルが怖いので、その手前でちょうど旧道に入る道があるのでそちらに行きます。いつもどおりですね。途中で道が崩れているのかシングルトラックになる部分もあったり。近所のサイクリストの間では割と人気のスポットでよくみんな走ってますね。この旧道はトンネルを迂回しているような形なので、この後また国道に戻るんです。その国道に戻る手前に倒木があって。自転車を降りてそれを乗り越えようとしていたら5m先に熊がいました」とAさん。まさかこんなクルマの騒音がする国道近くで遭遇するとはさすがに思わなかったという。
「猿とか鹿とか、そういった野生動物に出くわすこと自体はよくあるんですよ。そのときはこっちがじっとしてれば向こうが逃げていくので。今回も同じように考えたんですよね。じっと騒がずに止まろうと。そしたら向こうが急にとびかかってきました。自転車から降りていたので、熊との間に自転車を置いてバリケードのようにしようとしましたが、軽々と飛び越えてきて」
熊に遭遇したときの防御姿勢をとったが、ヘルメットはかみ砕かれた
「そのとき、熊に襲われた際の防御姿勢を知っていたのでとっさにその姿勢になりました。うつ伏せに寝て、顔を地面に向けて攻撃されないようにして、手で首の裏を抑え急所を守る。リュックを背負っていれば背中も守れたんですが」とAさん。「これをすれば命は助かる」と習ったというとおりにやったAさん、結果として大ケガは負ったものの命は救われた。
「防御姿勢中に頭全体を嚙まれました。ヘルメットの上からだったんですが、後から見たら真っ二つでしたね。その後も頭を噛まれ続け、サングラスもなくなっていました。あごの骨も折られましたね。体感では30秒から1分くらい襲われた後、なぜか熊が逃げて行ってくれました。その後は意外と冷静で、自分で携帯電話から救急車を呼び、何とかなりました。近くの集落に助けを呼びに行ってくれた友人も無事で、そのあと合流できました」とAさん。
縫合の針数が約250から300針におよんだということからも、その攻撃のすごさがわかる。
熊対策は重要。やっている人はいるが、まだ少ない
今回Aさんは熊鈴をつけずにライドしていたが、改めて熊対策の重要性がわかったという。
「今思えば、地元にはちゃんと対策してる人ももちろんいて。ハイキングに行っても、ずっと喋ろう、と言ってくれる人がいたり。ラジカセで音を流す人もいました。あともちろん熊鈴とか。やっぱり最低限でも熊鈴はいるなあと思いました。ただ、まだまだサイクリストなどで熊鈴をつけている人は少数派ですね」とAさん。
サイクリストにとってクルマの通らない林道は、昨今のグラベル熱の高まりもあり人気がでてきている。だからこそ、改めてその危険性についても正しく理解し、予防していく必要がある。どんなアウトドアレジャーにも危険はつきものだが、正しく対処できているからこそみんなが楽しめるようになり広まっていく。今回のこの熊被害によって得た知見が、サイクリストだけでなく、一人でも多くのアウトドア愛好家に広まってほしいと思う。
参考 登山中に熊に襲われた事例
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Bicycle Club編集部
ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。
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