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愛車を持ってホテルへ行こう! 自転車フレンドリーなホテルがイタリアで増加|つれてってイタリア〜ノ

ヨーロッパ、特にイタリアではおびただしい数のバイク(自転車)ホテルが存在している。自転車と共に旅を楽しみたい人にとっては非常に便利な環境となっている。日本でも自転車に優しい宿は増えているが、まだまだ少ないのが現状。いまイタリアのホテル界で起きていることとは? 日本大好きのサイクリスト、マルコさんによる、インタビュー&レポートです。

イタリアではおびただしい数のバイクホテルが存在

イタリアバイクホテル全国マップ。イタリアバイクホテル加盟施設は70カ所 (2023.6月現在) © Italy Bike Hotel

自転車と旅をする。遠方にレースに参加するときや外泊を伴うツーリングの際、多くのサイクリストが直面しているのは自転車の保管場所問題です。
日本でも確実に自転車への理解が広まりつつあります。しかし、国内のほとんどの宿泊施設では自転車の館内への持ち込みは歓迎されていません。部屋が狭い、または壁や床が汚れることを心配されるからです。高価だろうが、安価だろうが、自転車は外に置いておくものだとして、部屋への持ち込みは断られてしまいます。サイクリストに優しい宿が増えてはきましたが、そんなホテルが日本にはまだまだ多いのも事実。

一方、ヨーロッパ、特にイタリアではおびただしい数のバイクホテルが存在しており、自転車と共に旅を楽しみたい人にとっては非常に便利な環境が構築されています。
今回のコラムでは、なぜヨーロッパで自転車の受け入れは寛容になったのか? Italy Bike hotel協会の創業者で名誉会長でバイクホテル、イタリア有数のバイク・ホテル、Dory Hotel(ドリーホテル)のオーナーであるStefano Giuliodori氏(ステファノ・ジュリオドーリ、65歳)に聞いてみました。
これを参考に、日本でも自転車にとって受け入れやすい環境が広がればと思います。

Italy Bike hotel協会の名誉会長、ジュリオドーリさんインタビュー

ステファノ・ジュリオドーリさん(左)とファヴァロ・マルコさん、バイクホテルも出展したサイクルモードTOKYO20232にて

――現在、イタリアにおけるバイクホテルの歴史は20年を超え、ジュリオドーリさんの活躍は大きく関係しています。なぜ自分の経営のホテルを自転車フレンドリーのホテルにしたのですか?

もともと私の家族は戦後からリッチョーネという有名なビーチリゾートでホテルを経営していました。この地域の特徴は夏のバカンスシーズン中に盛り上がり、それ以外は閑散期です。でもリッチョーネの周辺は古いお城や中世の街並み、広大なワイン畑が広がり、文化的に豊かな場所でもあるので、もっと知ってほしいとずっと考えていました。
1993年に父から経営を譲り受けたとき、行動に移しました。新しいアイデアを探すため1997年にベルリンで行われている世界最大のトラベル・ツーリズム・トレードフェアITB(Internationale Tourismus-Börse Berlin)を見に行くよう勧められました。ITBで出会ったのが、まさに北ヨーロッパで広まりつつあったサイクルツーリズムの世界でした。全く知らない世界でした。さまざまなセミナーを見に行ってから、自分のホテルを自転車が受け入れやすいホテルにしようと決心しました。

アルプス、ドロミティ山脈で楽しめるルート© Italy Bike Hotel

イタリアでのバイクホテルのサービス

ドリーホテルのガイド付きサイクリングツアー © Hotel Dory Riccione

――行動力はすごいですね。1990年代にイタリアでバイクホテルはなかったですか?

ほとんどなかったですね。グランフォンドや地元のロードレース開催に合わせて、一時的に自転車を預けるホテルはありましたが、本格的に1年を通してサイクリストの要望に応えるホテルはありませんでした。サイクリングツーリズム文化が早く開花した隣の国オーストリアでさえバイクホテルと呼ばれるホテルは1軒しかありませんでした。妻と一緒に車に自転車を積んで、実際に現地まで見に行くと、施設のオーナーは優しくて、提供サービスを全部見せてくれました。思った以上に充実していました。教えてくれたコースを走ったり、他のサイクリストと仲良くなったり、この体験から多くのことを学びました。自分自身も想像以上に楽しめたので同じサービスを提供しようと思い、1997年にユーロバイク(*Euro Bike、世界最大の自転車の品評会)にブースを出してみたら、大きな注目を集めました。手探りの状態でしたので、周りの自転車ショップやガイドに大きく救われました。

――実際、バイクホテルになるには何が必要ですか。

バイクホテルになるには、サイクリストたちは何を求めているかを徹底的に調べるべきです。まずは安全に自転車を保管できる清潔な場所が必要。サイクリストにとって自転車は貴重な物で清潔な場所に置いておきたい。部屋への持ち込みは不可能な場合、監視カメラ完備で鍵のかかる専用置き場を作る必要があります。その専用置き場はきれいで整頓された場所でなければならないと思います。私のホテルではデザインやライティングのディテールにもこだわりました。
自転車を修理できる専属のメカニックがいればいいのですが、お客さん自身が自由に使えるメンテナンスコーナーが欠かせません。洗車コーナーとウェアのクリーニングサービスも必須です。パニーニやバナナといった補給食の提供やレストランの通常営業時間外の食事提供もサイクリストへの最大の配慮です(※ヨーロッパに24時間営業のコンビニはありませんので、スーパーの営業時間外で食料の購入は極めて困難)。
レンタサイクルサービス業務も重要なサービスの一つです。車でお越しのお客さんは自分で自転車を運びますが、飛行機や電車、遠方からお越しのお客さんは荷物を極端に減らしたい。そこでレンタサイクルの提供は重要。ホテル内にレンタル自転車を置くスペースがなければ、近隣のレンタサイクルショップと組めばいいと思います。そして最後にやらなくてはいけないのがツアーガイドの育成です。

――ガイドの育成で大事なことは?

バイクホテルを利用する人の多くは、ガイドと一緒に周辺地域を安全に走って回りたいです。ガイドを担う人には高度なサイクリングスキルが必要だけでなく、広範囲の知識も必要です。その地域の歴史、文化、芸術、自然、農業、経済の知識は頭に叩き込む必要があります。ローカルフードの紹介も重要。ガイドはサイクリングという体験を通して、その地域のアンバサダーになります。結果としてツアーに参加したサイクリストたちは素晴らしい文化体験を持ち帰り、その地域を好きになり、また訪れたくなります。自転車で走ることが重要なポイントです。ツアーの参加者は一緒に汗をかいたサイクリスト同士で自然に友情が生まれます。国籍は関係ないです。実際、過去に当ホテルに泊まったお客さんは毎年、戻ってきています。

バイクホテル、イタリアでの展開とその特徴

ドリーホテルのレンタル自転車コーナー© Hotel Dory Riccione

――どのようにイタリア全国でバイクホテルを展開しましたか?

統一されたサービスがなかったので、まずは少しずつお客さんの聞き取りや他のホテルを参考しながら、スタンダードを作りあげました。最初は地元の20のホテルと組んでRiccione Bike Hotel(リッチョーネ市バイクホテル組合)を立ち上げ、2000年に全国展開に踏み切りました。その年に会長に任命されました。バイクホテルには運営マニュアルがあります。しかし、毎年講習会も行います。加盟する施設はバイクホテルとして認識されるため優れたサービスの提供だけでは不十分で、講習会に力を入れているのが優れたマーケティング戦略です。研修する人は、ホテルのオーナーとガイドさんだけでなく、バイクホテルをプロモートする営業マンも含めます。営業マンにも自転車の知識を求めます。そうでないと、バイクホテルのプロになれません。そして参加者全員に求めることは自転車に乗ることです。お客さん目線で自転車を愛せないと、お客さんのきめ細かい要望に応えられないということです。

――これだけ組織は大きくなると、行政からの援助がありますか?

民官や地域一帯の連携が成功する大きな要素です。この10年でリッチョーネ市観光局、エミリア・ロマーニャ州観光局とリミニ県観光局から大きな支援を受けました。イタリアの中でも自転車誘致に力を入れています。2022年にエミリア・ロマーニャ州観光局長としてイタリア自転車競技連盟の元監督ダヴィデ・カッサーニが任命され、一層にサイクルツーリズムやレースの受け入れは活発になりました。実際、2024年ツール・ド・フランスのグランデパールがイタリアからスタートし、まさにエミリア・ロマーニャ州ボローニャから始まります。そしてイタリア国内の最終ステージは隣町、リミニに行きます。

――ジュリオドーリさんが経営しているバイクホテルの特徴はなんですか?

ドリーホテルではマウンテンバイク、ロードバイクやeバイクを含め150台以上のレンタサイクルを館内でストックしています。 あらゆるサイクリストの要望に応えるためです。バイクホテルの定番補給食(バナナにパニーニ)のスタンダードをほぼ作ったのも私のホテルです。それだけでなく、自転車置き場やメンテナンスコーナー、洗車ゾーン、ガイドツアー、レンタルサービス。そのほとんどの知識は私のホテルで蓄積されたものです。現在、利用客に合わせてさまざまなレベルのツアーを通年提供しています。

――ツアーはどのようなものですか?

やっと新型コロナ感染症拡大が落ち着き、明らかにお客さんが求めるツアーが変わりました。スピードやトレーニングを求めるお客さんは少なくなりました。ゆったりと景色と文化を楽しみたい人が増えました。我がホテルでは全てのツアーに対応できます。

――これからの活動はなんですか?

現在、エミリア・ロマーニャ州地域密着型の新しいプロジェクト、Terra Bici(テッラ・ビーチ)を進めています。テッラ・ビーチとは、「郷土・自転車」を意味し、宿泊、歴史、文化とグルメを中心に融合したサイクリング体験です。今までバイクホテルに加盟していなかったホテルを巻き込み、よりエミリア・ロマーニャ州でのサイクルツーリズムの普及に挑みたいですね。

――このインタビューを読んでバイクホテルになりたい経営者がいれば、どうすればいいですか?

ぜひイタリアに来てください。その知識を教えます。そして多くの日本人のサイクリストをイタリアでお待ちしています。リッチョーネは最高のロケーションです。

――ありがとうございました。

 

ファヴァロ ・マルコ

イタリア出身。イタリア外務省認定教育機関、ダンテ・アリギエーリ協会東京支部理事。自転車競技選手通訳業務のほか、東京オリンピック開催中にイタリア自転車競技連盟広報を担う。現在、Kepelmuurアンバサダーのほか、伊豆市地域おこし協力隊として自転車普及活動中。さまざまなサイクリングイベントを主催しながら自転車が受け入れられやすい環境づくりを研究中。
http://ciclistaingiappone.jp

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Bicycle Club編集部

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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。

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