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ポガチャルが意地のステージ優勝、ヴィンゲゴーは総合2連覇へ|ツール・ド・フランス

ツール・ド・フランス第20ステージが現地7月22日に行われ、今大会最後となる山岳ステージをタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)が制した。ポガチャルは第17ステージで大きく遅れ、個人総合優勝の望みがほぼ絶たれていたが、しっかり調子を取り戻して意地の走りを見せた。個人総合のマイヨ・ジョーヌはヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィスマ、デンマーク)が堅守。最終・第21ステージでは総合争いが行われない慣例のため、ヴィンゲゴーの大会2連覇が確定的になった。

アダムとのコンビネーションでステージ優勝つかんだポガチャル

大会は残り2ステージ。前々日、前日と平坦ステージをこなして、最終決戦地のヴォージュ山脈へとやってきた。個人総合争いにおける事実上最後のステージは、133.5kmとレース距離こそ短いものの、6つの山岳カテゴリーを詰め込んだ高難度のレイアウト。フィニッシュ前36kmから始まる1級山岳プティ・バロン(登坂距離9.3km、平均勾配8.1%)と、1級山岳コル・デュ・プラッツァーヴァーゼル(7.1km、8.4%)が確実に重要局面となる。そして、プラッツァーヴァーゼルからフィニッシュまでは約8kmの平坦路。この日は風が強く、最終局面の流れに影響するかが見ものでもあった。

© A.S.O. / Charly Lopez

4年ぶり32回目のレーススタート地になったベルフォールを出発すると、リアルスタートと同時にヴィクトル・カンペナールツ(ロット・デスティニー、ベルギー)がアタック。チームメートのヤスペル・デブイスト(ベルギー)を引き連れてリードを図る。しかし、この日最初の登坂区間である2級山岳バロン・ダルザス(11.5km、5.2%)でデブイストが遅れると、頂上まで4.4kmのところでカンペナールツも集団に引き戻されてしまう。集団はジュリオ・チッコーネ(イタリア)の山岳賞確定を狙うリドル・トレックがペーシングを担い、実際にチッコーネを頂上で1位通過へと導いた。

© A.S.O. / Charly Lopez

この頂上からの下りを終えようかというところで、個人総合4位でスタートしたカルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアーズ、スペイン)がクラッシュ。チームメートのサポートで集団復帰したものの、顔から流血し負傷している様子がうかがえる。

慌ただしい状況が続く中、メイン集団が割れてヴィンゲゴーが一時的に先頭グループに加わる場面も。16人のパックで少しの間進んだが、他選手との利害が一致しないこともあり後ろへと下がっている。

以降、先頭グループはメンバーを入れ替えながら進むが、次々と上るカテゴリー山岳はチッコーネがマティアス・スケルモース(デンマーク)とのコンビネーションで1位通過を繰り返す。2級山岳クロワ・デ・モワナ(5.2km、7%)、2級山岳グロス・ピエール(3.2km、8%)と押さえると、3級山岳コル・ド・ラ・シュルト(4.3km、5.4%)の1位通過でついに山岳賞を確定。ウイニングセレブレーションさながらの喜びようで、マイヨ・アポワを自ら祝った。

© A.S.O. / Charly Lopez

このころには10人を切り、少しずつメンバーが絞り込まれていた先頭グループ。目的を果たしたチッコーネらも下がり、1級山岳プティ・バロンに入ると5人のリードに。メイン集団ではステージ優勝にフォーカスするUAEチームエミレーツ、リーダーチームのユンボ・ヴィスマが代わる代わる牽引役を務め、先頭パックとの差は1分から1分30秒で推移。

フィニッシュまで31km、プティ・バロンの中腹で動いたのはティボー・ピノ(グルパマ・エフデジ、フランス)。今季限りでのキャリア終了を発表し、最後のツールを戦うフランス自転車界の至宝がラストチャレンジとばかりにアタック。追走を始めたトーマス・ピドコック(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)、クリス・ハーパー(チーム ジェイコ・アルウラー、オーストラリア)、ワレン・バルギル(チーム アルケア・サムシック、フランス)に対して30秒差、メイン集団に1分20秒の差をもって頂上を通過。ダウンヒルを経て、最終山岳のプラッツァーヴァーゼルに向かう。

この間の下りでは、個人総合10位のダヴィド・ゴデュ(グルパマ・エフデジ、フランス)が落車。ヴィンゲゴーらから差をつけられるが、総合トップ10入りをかけて前を追う。

ついに迎えたプラッツァーヴァーゼル。依然ピノがトップを走るが、追走も差を縮める。ハーパーを振り切ったピドコックとバルギルがピノに迫る。約1分後ろを走るメイン集団でも動きがあり、ポガチャルがアタック。すかさずヴィンゲゴーがチェックに動き、両者が見合っている間に個人総合8位につけるフェリックス・ガル(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、オーストリア)も追いついた。

© A.S.O. / Charly Lopez

残り13kmを切ったところでピドコックとバルギルがピノに追いつくと、すぐにヴィンゲゴーら3人も合流。この後ろからはアダム(UAEチームエミレーツ)とサイモン(チーム ジェイコ・アルウラー)のイェーツ兄弟が追っていることもあり、ポガチャルは先頭交代に加わらず。ヴィンゲゴーもディフェンシブに徹しており、主に引っ張るのがガル。それまで先頭を走ってきたピドコックやバルギル、ピノはついていくことができなかった。

ガルがプラッツァーヴァーゼルの頂上を1位通過し、最後の平坦路へ。幾分3人が牽制気味になり、その間にイェーツ兄弟が追いついてきた。残り4.8kmで5人の先頭グループになると、アダムが牽引を担ってフィニッシュへと急いだ。

最後の1kmを切り、フィニッシュに向かっての連続コーナーを抜けると残りは200m。先に仕掛けたのはヴィンゲゴー。マイヨ・ジョーヌに花を添える勝利を狙って腰を上げたが、ここで強さを見せたのはやはりポガチャルだった。ヴィンゲゴーや最後まで追い続けたガルを振り切り、一番にフィニッシュラインを通過。雄たけびとともに喜びを全身で表した。

© A.S.O. / Charly Lopez

今大会序盤から力強い走りを見せ、第6ステージでは優勝。昨年同様にヴィンゲゴーと激しいマイヨ・ジョーヌ争いを展開していたが、第5ステージでヴィンゲゴーから1分以上の遅れを喫したほか、第3週に入って第16ステージの個人タイムトライアルでもタイムをロスト。さらには第17ステージでの大ブレーキと、数ステージでの大きな遅れが痛手となってツール王座奪還は厳しい状況となってしまった。しかし、4月のリエージュ~バストーニュ~リエージュでの手首のケガを乗り越え、今大会ではここぞという場面でしっかり勝ち切ってみせた。第17ステージでの敗北を受けてステージ優勝狙いを公言しており、有言実行の勝利でもあった。

©︎ A.S.O. / Pauline Ballet

2位にはガルが続き、3位にまとめたヴィンゲゴーはリードを失うことなく個人総合2連覇を決定的に。開幕以降、大きくタイムを失うことなく常にハイクオリティの走りを披露。第16ステージでの驚異的な走りはマイヨ・ジョーヌを力強くたぐり寄せる形になった。

©︎ A.S.O. / Pauline Ballet

このステージの結果を受けて、個人総合トップ10に変動。1位ヴィンゲゴー、2位ポガチャル、3位アダムは変わらないが、4位にサイモンが浮上。ロドリゲスと順位が入れ替わっている。また個人総合9位でスタートしたセップ・クス(ユンボ・ヴィスマ、アメリカ)が落車の影響で遅れたこともあり、ギヨーム・マルタン(コフィディス。フランス)がトップ10圏内に返り咲いている。

翌23日にプロトンはパリ・シャンゼリゼに凱旋。2024年パリ五輪自転車競技の会場となるサンカンタン・アン・イヴリーヌを出発し、しばしのパレード走行ののちパリの中心部へ。いくつかの名所をめぐったのちに、シャンゼリゼの周回コースで最後のステージ優勝者を決めるとともに、2023年大会の王者と各賞が正式に決定する。

ステージ優勝、ヤングライダー賞 タデイ・ポガチャル コメント

© A.S.O. / Charly Lopez

「ようやく自分らしい走りができた。最初から最後まで調子が良かった。何日も苦しんだだけに、ステージ優勝ができて最高の気分だ。これならあと一週間走れる気がするけど、まぁ帰るとするよ(笑)。

最終局面に向けては、アダムが追いついてくるのを待っていた。彼の強さは知っているし、リードアウトも巧みだ。彼のおかげでフィニッシュに向けて緊張感が和らいで、イメージどおりに走ることができた。チームの働きに心から感謝している。

今大会最高の思い出は、毎日のバスの雰囲気。最悪の思い出は、ロズ(第17ステージ)を上っている間のマルク・ソレルの表情。彼の視線が何よりも怖かったよ(笑)」

個人総合時間賞 ヨナス・ヴィンゲゴー コメント

© A.S.O. / Charly Lopez

「ツール・ド・フランス2回目の個人総合優勝は、初めてレースをしたときと同じくらいすがすがしい気分だ。まだパリのステージも注意しないといけないけどね。最後まで何が起こるか分からないからね。

いまは最高の気分だ。すべてが信じられない。この3週間、とてもクレイジーな戦いだった。ファンにとっては最高のレースだったのではないかと確信している。タデイ(ポガチャル)との戦いは自分でも美しいと思える。彼はナイスガイで、ビルバオからここまで素晴らしい戦いぶりだった。チームにも心から感謝している。彼らがいなかったらツールを絶対に勝つことはできなかった」

ツール・ド・フランス2023 第20ステージ結果

ステージ結果

1 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア) 3:27’18”
2 フェリックス・ガル(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、オーストリア)ST
3 ヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィスマ、デンマーク)
4 サイモン・イェーツ(チーム ジェイコ・アルウラー、イギリス)
5 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ、イギリス)
6 ワレン・バルギル(チーム アルケア・サムシック、フランス)+0’33”
7 ティボー・ピノ(グルパマ・エフデジ、フランス)ST
8 ペリョ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス、スペイン)
9 トビアス・ヨハンネセン(ウノエックス・プロサイクリングチーム、ノルウェー)+0’50”
10 ラファウ・マイカ(UAEチームエミレーツ、ポーランド)ST

個人総合時間賞(マイヨ・ジョーヌ)

1 ヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィスマ、デンマーク) 79:16’38”
2 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)+7’29”
3 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ、イギリス)+10’56”
4 サイモン・イェーツ(チーム ジェイコ・アルウラー、イギリス)+12’23”
5 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアーズ、スペイン)+13’17”
6 ペリョ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス、スペイン)+13’27”
7 ジャイ・ヒンドレー(ボーラ・ハンスグローエ、オーストラリア)+14’44”
8 フェリックス・ガル(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、オーストリア)+16’09”
9 ダヴィド・ゴデュ(グルパマ・エフデジ、フランス)+23’08”
10 ギヨーム・マルタン(コフィディス。フランス)+26’30”

ポイント賞(マイヨ・ヴェール)

ヤスペル・フィリプセン(アルペシン・ドゥクーニンク、ベルギー)

山岳賞(マイヨ・アポワ)

ジュリオ・チッコーネ(リドル・トレック、イタリア)

ヤングライダー賞(マイヨ・ブラン)

タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)

チーム総合時間賞

ユンボ・ヴィスマ 238:31’02”

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PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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