Setouchi Vélo高知県いの町ミーティング開催、eバイクを生かしたサイクルツールズムに期待
Bicycle Club編集部
- 2023年09月21日
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昨年10月に発足した官民を跨いだSetouchi Vélo(セトウチ ヴェロ)協議会が活動を開始し、瀬戸内地域でのサイクリングの普及・促進を推進、国内外への情報発信を軸に活動を行っている。ここでは8月23日には高知県いの町で行われたトライアルライドとミーティングの内容についてお届けする。
仁淀川流域で高知市近郊からUFOラインまでつながる“いの町”
Setouchi Vélo協議会はいままで愛媛県今治市、兵庫県南あわじ市で開催されており、その第3回が8月24日に高知県いの町で開催された。本来のスケジュールでは各市町村や県の担当者など関係者がトライアルライドに参加し、実際にeバイクを使って体験することで、サイクルツーリズムを体験する予定だった。しかし、この日は悪天候のため急きょトライアルライドは中止となり、開催地いの町、池田牧子町長によるいの町の紹介、さらにプロライダーの門田基志さんらによるヨーロッパの先進事例などが紹介された。
いの町では町の端から端までクルマで2時間という距離もあり、新型コロナウイルスが蔓延する以前からオンライン会議を取り入れるなど先端的な取り組みをしてきた。
いの町といえば木材資源を生かした和紙の町、さらに「仁淀ブルー」で知られる仁淀川が流れることでも有名だ。今回、トライアルライドではこの仁淀川沿いをeバイクを体験する予定になっており、土佐和紙工芸村「くらうど」から名越屋沈下橋などを巡る予定だった。ちなみにこのいの町、サイクリストの間で有名となっているUFOライン(町道瓶ヶ森線)も町内にあり、サイクリストにとっても魅力的なエリアといえる。
いの町長によると「インバウンド外の皆様方にお越しいただき、自転車を活用して清流仁淀川、西野川、また古くから残る街並みの魅力を発信してまいりたいと考えています。仁淀川流域でのサイクルツーリズムはサステナブルツーリズムにつなげていく絶好の機会ととらえています」と今後のインバウンドツーリズムに自転車を生かしていくことに期待を寄せている。
セッションではヨーロッパの先端事例を紹介
セッションではいの町の紹介のほか、有識者による先端事例紹介。ミーティングでは事務局となる本四高速の取締役常務執行役員 森田真弘さんの挨拶をはじめ、開催エリアの担当者による地域の事例紹介、さらにオージーケーカブト 広報チーム リーダー 柿山昌範さんによる安全講和が行われた。
前 国土交通省 自転車活用推進本部事務局次長(現 内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局参事官) 金籠史彦さんからは「自転車活用のこれから ~自転車で街と人がつながる!元気になる!!~」をテーマに国内外の事例を紹介した。今年の5月にドイツ・ライプツィヒで開催された自転車会議「VELO CITY2023」の内容など、海外から知見を学ぶだけではなく、日本の知見も広めていくことで日本のことを知ってもらうことの大切さを強調した。なお、来年「VELO CITY2024」はベルギー・ヘントで開催される。
また、9万kmにもおよぶEURO VELOを計画し取りまとめているヨーロッパ自転車連盟では、予算をコミットし、リーダーがどれだけ投資をするかを明確にしているため実現性が高いことも注目したいという。こうした投資によりヨーロッパでサイクルツーリズムがEURO VELOにより実現しているポイントを解説した。
高知県 文化生活スポーツ部スポーツ課 企画監、谷内康洋さんからは、高知県のサイクルツーリズムの事例紹介が行われた。
高知県では空港から近いサイクリングロード、大潮の干潮時には幸運の道が現れるという宿毛市の咸陽島、さらに予土線のサイクルトレイン、四国カルストなどぐるっと高知サイクリングロードとして43コースのサイクリングコースを設定している。このほか県内84カ所に『こうちサイクルオアシス』を設置。四国一周1000kmチャレンジと連携するなどし、いままでに4424名(海外137名)がチャレンジして完走者は1881名にも及んでいる。
さらに高知らしさとしてガストロノミーツーリズムが挙げられ、カツオをはじめ、しょうが、みょうが、ゆずが日本一という食に関する知名度を組み合わせた観光誘致を進めてきた。
いっぽうサイクルツーリズムに関しては人手不足という課題もあるという。「現場での受け入れ不足もあり量から質への転換をおこなっていく必要があります。そのため時間をかけて人材の育成、さらに広域で連携し、いままでの行政主導から地域に参加していただけるような環境づくり、そして台湾からのチャーター船、さらにクルーズ船も来るようになったのでプロモーションしていくことで広めていきたいと思っています。そのためにもオンリーワン、持続可能なサイクルツーリズムを目指したいと思っており、中国、関西圏と連携することで進めていきたいです」と今後のSetouchi Véloと連携することで、この人材育成も含めて解決していきたいと前向きな姿勢を示した。
また、4月から導入されたヘルメットの努力義務化の話題も含め、オージーケーカブト 広報チーム リーダー 柿山昌範さんからはヘルメットにまつわる安全講和について触れる講演がおこなわれた。
「交通事故は全体として減っているが、自転車事故は減っていないんです。そのメインは若年層や高齢者。頭を守れば安全なのはわかっているがかぶってもらえない現実があります」とヘルメットの必要性を訴えると同時に、発泡スチロールで作られているヘルメットの特性上、暑い場所での保管を避けるなどの具体的なヘルメットの扱いについての説明も行われた。
eバイクを使ったサイクルツーリズムの活用について
その後のパネルディスカッションが行われ、コーディネーターの門田基志さん、パネリストとして前 国土交通省 自転車活用推進本部事務局次長(現 内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局参事官) 金籠史彦さん、八重洲出版迫田賢一統括部長、バイシクルクラブ(本誌)編集長山口博久が登壇した。テーマは、「自転車先進地ヨーロッパの状況とそこから日本は何が出来るか!」と題して、Setouchi Véloの取り組みについて、eバイクを取り入れることでより多くの人にサイクルツーリズムを楽しんいただき地域を楽しんでいただけるか?について議論を繰り広げた。
「ヨーロッパの山の中を走っているとですね、eバイクに乗った高齢の方に抜かれることがあるんですよね。老若男女の方々がいろんなシチュエーションで楽しめるのがeバイクです」(門田基志さん)
「今まで自転車に乗って楽しもうなんてことを考えたこともなかった方々にぜひ自転車に乗ってもらいたいんです。そこできっかけとしてものすごく有力な道具がeバイクで、政策的にも注目しています」(金籠史彦さん)
「先日愛媛県の上島町でeバイクに乗ったりBBQしたり、シーカヤックしたり、朝焼けの中でヨガをしたり、釣りをしたりして、ほかのアクティビティーと組み合わせて楽しんできました」(迫田賢一さん)
「eバイクがあると体力差をカバーしてくれるので、仲間やツアーで楽しむときにペースが同じになるので、みんなで楽しむことができます」(編集長山口博久)
パネルディスカッションではそれぞれの立場から体験をもとにeバイクの楽しみ方、有効性について紹介していった。
Setouchi Véloはルートだけではなく、自転車文化を創出するプラットフォーム
Setouchi Vélo協議会は、瀬戸内圏全体をサイクリングで自在に周遊できる、世界に誇るサイクリングの推進エリアとするため、兵庫県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、といった瀬戸内圏8県と中四国の経済連合会、国土交通省の地方整備局や地方運輸局など約30の団体が集まり設置された。その構想として欧州全土を結ぶEURO VELOのようなネットワーク、さらにサイクリングルートといった「線」だけではなく、瀬戸内エリアが自転車文化の先進地となるような「面」での地域活動を目指したプラットフォームだ。
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