日本一過酷で楽しいマウンテンバイクレース「松野四万十バイクレース」に挑戦してきた
Bicycle Club編集部
- 2023年12月02日
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11月5日に松野四万十エリア(愛媛県松野町・宇和島市、高知県四万十市)で松野四万十バイクレース2023が開催された。日本一の過酷さを誇るマウンテンバイクレースと言われており、最長のアルティメットクラスでは約130km、オフロード率約50%、最大比高約800m、獲得標高3000m超を走る過酷なレースとして有名だ。ここでは杉本雄隆さんによるレポートをお届けする。
マウンテンバイク初挑戦で松野四万十バイクレースへ参加!
今回レポートするのは、私、杉本雄隆。ニセコクラシックやグラベルイベントに参加したことはあるが、マウンテンバイクレースは今回がはじめて。マウンテンバイク初挑戦で、いきなり松野四万十バイクレース(以下略、MSBR)のアルティメットクラス参加して無事フィニッシュできるのか⁉ バイシクルクラブ編集部からイベントレポートを依頼されたときには楽しみ半分、不安半分だった。
レース前日夕方にマウンテンバイク用のシューズとペダルを購入し、当日朝にお借りするバイク(ジャイアント・アンセム)を受け取った。今振り返ってもかなり無茶なことをしているなと思いつつ、レースプロデューサーの門田基志さん(チーム・ジャイアント)よりマウンテンバイクの操作方法など教えていただいて、一夜漬けならず、浅漬け勉強をしてレースに挑んだ。門田さんから、国内トップクラスのライダーでも7時間以上かかるコースであること聞き、さらに緊張感が高まる。
MSBRの特徴として、過酷なコースのためチーム単位での申し込みが基本だ。ただチームが組めない場合でも主催者がチームメイトをマッチングしてくれる。予め申告された個人の走力に合わせたマッチングを提案してくれ、愛知県より参加のベテランライダーの山内譲太さん(チーム光)と2人チームで走ることになった。山内さんはSDA 大滝クロスマウンテンバイク(100km)で15位になるなど経験も豊富、初挑戦の自分には頼もしい限りのペアだ。マウンテンバイクの操作方法をスタート15分前に教わった初心者と、長年マウンテンバイクを楽しんできたベテランライダーのデコボココンビだ!
杉本としてはペアを組ませていただき「山内さんに待っていただくことになるな~」っと申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
虹の森公園まつのを5時30分スタート。真っ暗闇の滑床林道に向かって走っていく。コイデルの2人、門田、西山さんペアを先頭にライトをつけた選手たちが続いていく。
スタート直後からチームメートの山内さんは良いテンポで走っていく。杉本もロードではそれなりに走れるという自負もあり、なんとか離れないよう食らいついていく。
バイクは通常のマウンテンバイクのほかにも、e-MTBでの参加ライダーもちらほら見受けられた。それもそのはず、MSBRではアルティメットクラス(130km)のほか、アドバンスドクラス(103km)、チャレンジクラス(41km)ではeバイクカテゴリーもあり、コース上には充電ポイントも設置されている。eバイククラスでは限られたバッテリーのなかで、チームで戦略をたてながらゴールを目指していた。
もっと多くの人にレースを楽しんでもらう新しい試みとして、このeバイクカテゴリーはすごくアリだと思った。
出だしは好調! 山の上のエイドで太鼓のお出迎え
2時間ほど上り、空が明るくなってくる頃にはマウンテンバイクの走らせ方もわかってきて、下りも気持ちよく走れるようになってきた。そうこうしているうちに林道の頂上へ到着した。
コース序盤の長いヒルクライムでは体力的にも余裕があり、チームメートの山内さんとテンポを合わせながら走りきることができ、第1チェックポイント「鹿のコル」にアルティメットの部としては4番手で到着。「順位も悪くない、これならいけるかも」という自信もついてきた。
またエイドステーション横では、太鼓の生パフォーマンスもあり地元の方々のおもてなしにマラソンレースを走りきる元気をいただいた。これはテンション上がる! エイドを過ぎるとしばらく黒尊スーパー林道の下り区間、朝日で明るくなるなか、木々の間から見える宇和海の絶景を眺めながら下っていく。
リバークロスに、自転車を押さずにはいられない激坂
黒尊スーパー林道の舗装路区間を下り、2つ目の西谷林道に入る。ここのエイドでは焼きそばと合わせて、松野町で獲れた鹿を使ったソーセージを焼いてくれる。
普段は閉鎖されている国有林内の林道をなかを特別に走る貴重な機会を満喫していると、リバークロスが現れた。大会スタッフから「思い切り突っ込んでください!」とかけ声をいただき、勇気を出してマウンテンバイクで川に突っ込むと、なんとかバランスをとりながら無事に渡ることができた。はじめてのリバークロス体験、アドベンチャー感たっぷり、これは興奮する。
3つ目の林道区間、玖木(くき)林道に差し掛かるとバイクをおもわず降りて押してしまうような20%を超える長い激坂が続き、余裕だった脚も重くなり、徐々にペースが上げられなくなってきていた。前を見ると坂はまだまだ続く……。正直、心が折れた。そしてようやくたどり着いた玖木のチェックポイントでは4位だだった順位が11位まで落ちてしまった。
落ち武者が襲撃⁉ エイドで心も体もリフレッシュ
日見須林道では「これでどうや!」というコースプロデューサー門田さんの笑い声が聞こえてきそうな激坂が続き、ようやく下りへ。約80km地点にある日見須林道の出口のチェックポイントへたどり着く。
スマホの電波も入らない山奥に落ち武者たちがいきなり襲撃してきた(笑)。というのは冗談で、落ち武者姿のスタッフから大歓迎を受ける。これは笑うしかない。最高!
ここを過ぎると、次のチェックポイントとなる松野南小学校までは杉本が得意とする舗装路なのでペースよく快調に飛ばす。そして、小学校では地元の歓迎を受け、おにぎりなどをいただき心も体もリフレッシュ、これはマジうれしかった。
あとは残る目黒林道へ。「これはいけるかも!」と完走が見えてきた。
ところが、残り30kmで迎えたこの目黒林道がきつかった。
標高差約600mのヒルクライム。「もう終わりか」と思うとさらに上りが続き、体力・集中力ともに使い果たしてしまった。なんとかチームメートの山内さんと声を掛け合って上っていくが、バイクを押して歩くことがかなり多くなっていった。ここで諦めてしまうと山内さんにも迷惑をかけてしまうので、気合と根性で最後の林道を上り切った。
気づくと買ったばかりの新品のマウンテンバイクシューズはコース終盤バイクを押して歩くことが多く、泥まみれになっていた。
距離130km、獲得標高3000mを10時間44分で走り切った
あとは舗装路でひと山越えればゴールだ。ふと時計を見ると16時を過ぎていた。朝5時30分にスタートしたので、10時間以上走り続けている。足先の感覚はほぼなくなっていて、日没前になんとか走りきろうという目標だけが自分の支えになっていた。そしてついに虹の森公園まつのにたどり着いた。
完走タイムは完走タイムは10時間44分、10位で走り切った。距離130km、獲得標高3000m超の初挑戦マウンテンバイクレースは一日がかりのの大冒険となった。ゴール後、チームメートの山内さんから「最高のパートナーだった」と言われたときは涙が出くらいうれしかった。
もう終わりかと思うと、さらに上りが続く激坂に何度も諦めそうになるタイミングもあったが、山内さんから「もうすぐゴールですよ! 頑張って!」励ましていただき、ようやく最後の上りを越えた。そしてやっとの思いで日没前にゴール地点へたどりつけたのだった。
松野四万十バイクレースアルティメットクラスのコース
優勝は門田・西山ペア 商品にはお米など地元の名産品がたっぷり
優勝チームしたコイデルの西山さんによると「トラブルなくゴールすることを第一に、チームメートのお互いの体力を確かめ合いながら最後までペースを落とさずトップで走りぬきました。勾配20%超えのセクションが続く山、緩やかな勾配が長く続く山などさまざまなバリエーションの林道が魅力的でしたね」とレースを振り返る。トップチームでも7時間以上かかる過酷なコースだ。
今回もっとも過酷なアルティメットクラスを中心にレポートしたが、アドバンスドクラス(103km)、チャレンジクラス(41km)、eバイククラスもありビギナーでも楽しめる。大会の特徴として作りたての焼きそばや落ち武者が登場するなどユニークなエイドステーションでしっかり補給ができ、さらにレース中のトラブルにも対応できるメカニックブースがある。マウンテンバイクを純粋に楽しみたい人から本気でレースに挑みたい人まで、多くの人が満喫できるレースだった。
これまでロードバイクのレースをメインに出場していた私、杉本だが、松野四万十バイクレースを通して、マウンテンバイクレースの過酷さと楽しさのとりこになってしまった。また松野町に戻ってきてMSBRを楽しみたいと思う。
DATA
開催期間
11月5日(日)
開催場所
開会式:道の駅・虹の森公園
コース
愛媛県松野町及び四万十町(一部宇和島市含)
距離
アルティメットクラス:130km
アドバンスドクラス(eバイククラスあり):103km
チャレンジクラス(eバイククラスあり): 41km
主催
松野町役場松野四万十バイクレース実行委員会事務局(ふるさと創生課内)
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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。
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